工業化学雑誌
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70 巻, 1 号
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  • 疋田 強, 米田 圀昭
    1967 年 70 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    酸化プロピレンの高温における熱分解および発火を化学衝撃波管を用い, 900~1500°K, 5~25 atm, 反応時間2 msec以内の条件下で調べた。
    圧力測定の結果ならびに生成ガス分析の結果から,酸化プロピレンはそれ自体では爆発性を持たないことが明らかとなった。すなわち高温熱分解の主反応はエチレン,水素,および一酸化炭素への吸熱分解であり,反応後温度および圧力が低下するので爆発的とはなり得ない。
    酸化プロピレンの空気中爆発限界は常温常圧では2.1~21.5%と報告されているが,約1000°K,10~25atmの条件下では2~ 45%に広がることを見出した。また酸化プロピレン, 酸素およびアルゴンの混合ガスについて, 各条件下で発火おくれおよび爆発圧力を測定し,理論酌に計算した爆発圧力と比較した。理論値と計算値は良い一致を示す。発火おくれのデータから発火に至る誘導期中の律速段階は,酸化プロピレンの高濃度領域ではその一次分解反応であり,活性化エネルギーは46.1kcal/molであること,および低濃度領域では酸化プロピレンと酸素との二次反応が律速で,その活性化エネルギーは42.1kcal/molであることを推定した。常温常圧下で酸化プロピレンが定容断熱爆発を生じたときの最高温度および圧力を計算した。
  • 白崎 高保, 岡田 正秀, 上原 勝, 森川 清
    1967 年 70 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    均密共沈法を用いて酸化第二鉄とアルミナとの均質な2元成分ゲル(各種組成物)をつくり,乾燥または焼成して構造と性状を調べ,酸化エチレン重合反応に対する触媒活性を測定し,それらの相互関係を研究した。その結果以下の知見がえられた。
    (1)均密共沈ゲルは,おそらく両成分の単なる混合物でなく,別種の化合物をつくっている。また,その化合形態の変化も比較的低温度でおこる。このことは既報のいろいろな均密共沈物との共通性である。
    (2)酸化第二鉄のモル分率α が1/7~3/4組成の共沈ゲルは結合水(300℃ で脱水)をもっていて,その量はα=1/7が最も多い。また,500℃,2時間焼成物のX線回折図をみると,α=1/7組成物はまったく無定形,α が増すと無定形物のほかにα-Fe2O3型結晶物(Al2O3を一部固溶)ができてくる。
    (3)重合反応に対する触媒活性は,上記のα=1/7組成の500℃ 焼成物が最大である。すなわち無定形でありかつ乾燥キセロゲルのとき結合水たとえば,OHを最も多量にもっていて,焼成によりそれが熱分解してとれたキセロゲル触媒が最高活性を示す。なお,この結合水を多量にもつキセロゲルが得られるのは,均密共沈法の特徴である。
  • 横山 正孝
    1967 年 70 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    鉄鋼の表面に電着塗装する場合,通常リン酸亜鉛化成皮膜の前処理がある。電着塗装中に,そのリン酸亜鉛皮膜は一部破壊されて,塗膜には鉄(III)イオン,亜鉛イオン,リン酸イオンとして溶け込み,塗料浴には鉄(III)イオン,亜鉛イオンとして溶ける。一度塗料浴に入った金属イオンが再び塗膜に入ることがわかった。この現象は多分ミセルの電着によるものであろう。水溶性樹脂基と金属イオンの水酸化物とからなるミセルである。溶解イオン量は電圧,品物の表面積が大きくなると比例的に増加する。したがって,老化した塗料浴での電着塗膜は,新しい塗料浴でのそれより多くの金属イオンを含有すうことになる。その結果として,前者の塗膜性能は著しく低下する。溶出イオンを減少させる方法として,(1)緻密なリン酸亜鉛結晶皮膜の使用で,通常使用のものから出るイオンより鉄(III)イオン88%,亜鉛イオン80%を塗料浴中から減少できた。(2)初期段階で加電圧を徐々に上げることによって,鉄(III)イオンは55%,亜鉛イオンは42%減少した。(3)リン酸亜鉛皮膜上に樹脂膜を被覆することで鉄(III)イオンを80%,亜鉛イオンを40%減少でき,さらに二,三の塗膜性能を改良できた。
  • 真鍋 和夫, 久保 輝一郎
    1967 年 70 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    酢酸マグネシウム4水和物の分解反応の示差熱分析図形は,試料充てん層の厚さにより著しい変動を示す。この事実から,示差熱分析を中心として,熱天秤,X線回折,化学分析などの方法により,空気中における酢酸マグネシウム4水和物の熱分解の過程を追跡した。
    4分子の結晶水の脱水は約60℃ から開始するが,脱水の過程に中間水和物の生成はなく,一段脱水である。
    160℃以下の温度で脱水した無水物は,X線的に無定形状態であるが,180~220℃の温度範囲で結晶化が起こり,α型無水物となる。
    無水物は180~280℃ の温度範囲で数%分解するが,大部分は280℃ まで熱的に安定である。
    無水物は約300℃ で酸化マグネシウムに分解するが,熱分解の過程に中間化合物を生成する。中間化合物は,化学分析により13Mg(CH3COO)2・4MgOの組成をもつ新化合物であると推定される。
  • 橋爪 一生
    1967 年 70 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の水溶性有機化合物を複合させて作った有機複合ベントナイトを700℃ で加熱後,酸,アルカリ処理を行なえば,有機化合物の種類,処理条件によって,生成物のCEC(カチオン交換容量)が25.9meq/100gから460meq/100gを有するきわめて高いCECを有するものまで得られる。
    とくにポリピニルアルコール複合ベントナイトの同様な化学処理生成物は高いCECを有するものが得られやすい。
    高いCECを有する生成物が得られる場合はモンモリロナイト結晶構造上に大別して,つぎの二通りの転移が行なわれていると考えられる。複合している有機化合物の分解熱エネルギーの大小によってモンモリロナイト結晶構造からのOH構造水の脱水,結晶構造変改過程において,一つは350kcal/mol,他は700kcal/molの熱エネルギーを複合有機化合物の分解熱として奪われ,その時に発生する分解ガスとモンモリロナイト結晶とのガス-固相反応を伴って,おもに二つの構造改変後の状態が測定される。
    前者は,モンモリロナイト結晶格子上にもっとも付着しているコロイダルなクリストバライトが除去され,清浄なモンモリロナイト結晶表面群が増加するとともに,結晶構造内に小遷移が生じてSi-Oシリケート層中の酸素欠陥部位にOH-が結合され,アルカリ処理によってNa+収着の交換性化が行なわれるとともに収着量が増加して,CECが増大する場合で,後者は,モンモリロナイト結晶構造が大きく破壊される過程で,Zeolite様結晶を生じてネガチブチャージの増大と交換性化が行なわれて生成物のCECが増加する場合である。
    後者の場合のモンモリロナイト結晶構造の遷移過程中に,7.20Å,5.04Å,3.19Å,2.70Å などのX線回折像を有する新結晶物が生成する。
  • 長谷川 俊勝, 平野 徹
    1967 年 70 巻 1 号 p. 30-32
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    低酸化度ジアルデヒドデンプン(DAS)中のカルボニル基分析に塩酸セミカルバジッド法(I),再酸化法(II)および水素化ホウ素ナトリウム法(III)を適用した。DAS製造時の過ヨウ素酸消費量に対して(I)および(II)により求めたカルボニル基の値は約83%を示した。しかし,(III)で求めたそれ(全還元基とする)は過ヨウ素酸消費量とほぼ同じ値を示した。よって,DAS中には上記カルボニル基以外の還元基が存在するものと考えられる。
    DASの加熱した試料についても同様上記分析法を適用した。その結果,カルボニル基((I)および(II)による)は若干減少するが,全還元基はほとんど変化しないことがわかる。
    サラシ粉酸化デンプンに上記分析法を適用し,DASと同様の結果を得た。これに亜硫酸水素ナトリウムの付加したものは(III)で分析すると非常に多くの還元値を示した。これはカルボニル基に付加した亜硫酸水素ナトリウムのイオウの影響であると考えられる。
  • 武内 次夫, 小林 幸資
    1967 年 70 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    放射線イオン化検出器を用いて,各種有機物の相対感度を測定し,分子量または炭素数が相対感度におよぼす影響を調べた。その結果,n-パラフィン,イソパラフィン,芳香族炭化水素,アルコールなどについて相対モル感度は同族の化合物で分子量に関係なく一定であった。さらにイオン化ポテンシャル,電離断面積,再結合率,試料分子と準安定アルゴン原子の衝突の速度などの他の因子よりも,Penning効果が主にイオン化室内で起こると仮定して求めた理論曲線によっても,この傾向は支持される。しかしながら相対モル感度は検出器によって異なっていた。これは放射線源や内部印加電圧の差による。得られた相対感度値を用いて,同じグループに属する混合試料成分を実験誤差内で定量した。さらに印加電圧,キャリヤーガス流速を変化させた時の感度および相対感度の変化をも調べた。
  • 浅尾 戊
    1967 年 70 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタクロレインの常圧液相酸素酸化反応にたいする触媒種の影響を比較検討した。均一系においては,触媒金属イオンの標準酸化還元電位(E0)とメタクリル酸選択率との間に山形の曲線が得られ,ナフテン酸(あるいは酢酸)銀および水銀(E0≒0.8および0.9V)が,この山形の曲線の頂点付近にあって,比較的に高いメタクリル酸選択率(n-ヘプタン溶媒系,メタクロレイン変化率20~40%において,約60%)を与えた。他の触媒系での選択率は,上記の値より低かった。
  • 二木 鋭雄, 神谷 佳男
    1967 年 70 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アゾビスイソブチロニトリルを連鎖開始剤として用い,70℃でα-メチルスチレン(M)とクメン(RH)の液相共酸化を行ない,共重合の理論をもとに検討した。モノマー反応性比をMayo-Lewis法により求めると,rM=9.3,rR=0.10という値を得,この値はFineman-Ross法によって求めた値とよく一致した。二つのモノマー反応性比の積がほぼ1に等しいという事実から,炭化水素のペルオキシラジカルに対する反応性がペルオキシラジカルの種類には依存しないと考えられる。共酸化速度をα-メチルスチレンの濃度に対してプロットすると直線関係が得られた。2成分の共酸化において,酸化速度が一方の被酸化物濃度と直線関係が成立する場合について考察した。α-メチルスチレンとクメンの場合に直線関係が得られるのは,両者の連鎖停止反応速度定数が等しく,かつrM・rR≒1であり,さらにΦ=ktMR/(ktMM・ktRR)1/2が1に等しいことによると考えられる。
  • 関口 自然, 石井 修司
    1967 年 70 巻 1 号 p. 46-48
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    三フッ化ホウ素エーテラートを触媒とし, MeOH, EtOH,iso-PrOHとエピクロルヒドリンの反応をジオキサン中で行ない, アルコールの相違による反応速度の変化を求め反応機構について考察した。本反応はエピクロルヒドリン, アルコールに関してそれぞれ1次となり,2次速度定数は触媒濃度に比例する。活性化エネルギーおよび頻度因子はMeOH,EtOH,iso-PrOHの順に増加し補償却果を示し,反応速度の変化は活性化エネルギーによって支配されることを認めた。本反応は酸接触2分子機構によって進むとして説明される。
  • 関口 自然, 石井 修司
    1967 年 70 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    三フッ化ホウ素エーテラートを触媒とし,MeOH,EtOH,iso-PrOH,n-BuOHとプロピレンオキシドの反応をアルコール過剰の条件下で行ない,アルコールの相違による反応速度の変化を求め反応機構について考察した。本反応は上記アルコール中では,プロピレンオキシドに関して1 次式となり, 1次速度定数は触媒濃度に比例する。反応速度はMeOH,EtOH, iso-PrOH, n-BuOHの順に減少した。活性化エントロピーは各アルコール中で負であった。本反応は酸接触2分子機構(A-2)によって進むとして説明される。
  • 岡本 能樹, 桜井 洸
    1967 年 70 巻 1 号 p. 52-54
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    α位にアミノ基を持つ長鎖アルキルホスホン酸を次式に従って合成した。CH3(CH2)nCH(COOC2H5)PO(OC2H5)2+NH2NH2→CH3(CH2)nCH(CONHNH2)PO(OC2H5)2+C2H5OH(1)
    CH3(CH2)nCH(CONHNH2)PO(OC2H5)2+NHO2→CH3(CH2)nCH(CON3)PO(OC2H5)2+2H2O(2)
    CH3(CH2)nCH(CON3)PO(OC2H5)2+C2H5OH→CH3(CH2)nCH(NHCOOC2H5)PO(OC2H5)2+N2(3)
    CH3(CH2)nCH(NH・COOC2H5)PO(OC2H5)2+H2O+HCl→CH3(CH2)nCH(NH3+・Cl-)PO(OH)2+CO2+3C2H5OH(4)
    〓(5)
    ただしn=9~15の奇教。得られた生成物の溶解度および表面張力低下能などを測定した。このものは分子内にアミノ基を持つため, ホスホノ基と塩を形成し, 酸性および中性で水および有機溶媒にきわめて難溶性であった。アルカリ性水溶液には溶け, アルキル基の大きいものほど表面張力低下能が良くなり炭素数17のアミノホスホン酸では,濃度0.1%,pH11,温度20℃ で41.0dyne/cmであった。
  • 八木 徹也, 豊田 信義, 中西 敏明, 山本 次男
    1967 年 70 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石油潤滑油留分の飽和成分と無水硫酸の反応において,油の反応率および反応速度と反応生成物であるスラッジの収率に対する反応条件の影響を検討した。試料として潤滑油を発煙硫酸でスルホン化して得られた局方流動パラフィンを用いた。
    無水硫酸の供給速度が比較的小さい場合,反応率および収率は反応時間の経過とともに直線的に増加し,反応温度およびかきまぜ速度には無関係であった。油の反応速度は無水硫酸の供給速度の増加とともに増大するが,ある供給速度以上ではほぼ一定となった。この範囲では反応速度は気相の無水硫酸の分圧の一次に比例した。
    スラッジの分析から主反応であるスルホン化以外に,飽和油の脱水素,無水硫酸の水和などの副反応の起こったことを推論した。
  • 関根 紀之, 神谷 佳男
    1967 年 70 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    五酸化バナジウム触媒を用いメチルナフタリンのアンモ酸化を流通法により行なった。反応温度が低い時にはナフトニトリルが主生成物であるが,温度が高くなるとナフトニトリルが減少して,フタロニトリル,トリシアンベンゼンおよびフタルイミドが増加し,500℃ 以上ではフタルイミドが主生成物である。2-メチルナフタリンについての各生成物収率(mol%)はつぎのようであった。410℃ においてナフトニトリル21.8%,フタロニトリル3.9%,トリシアンベンゼン1.8%,フタルイミド0.7%。452℃においてはそれぞれ0%,16.3%,5.6%,21.3%。
    さらに,ナフトニトリル,ナフトアルデヒドおよび2-メチル-1,4-ナフトキノンをアンモ酸化し,メチルナフタリンのアンモ酸化の機構を考察した。メチルナフタリンの一部はメチル基がアンモ酸化されてナフトニトリルとなり,これからフタロニトリルとトリシアンベンゼンを生成するが, 一部はメチル基のついたベンゼン核が酸化されてメチルナフトキノン径由でフタロニトリルを生成する。高温においてフタルイミドが主生成物となる理由は,フタロニトリルとフタルイミドの間に平衡があることによると考えられる。
  • 黒木 正胤
    1967 年 70 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カルバゾールの直接ハロゲン化において,反応をモノ置換でとどめることは困難とされているが,溶媒としてピリジンをもちいて塩素化,臭素化,ヨウ素化をおこなうと,臭素化,ヨウ素化については比較的好収率で対応するモノハロゲノカルバゾールが得られ,塩素化でも当量以下の塩素を作用させることにより,未反応物との混合物としてモノクロルカルバゾールが得られた。
    また,ピリジンは反応を促進することがみとめられ,ヨウ素化については,これまで不可能であったヨウ素のみによる反応が可能であった。このほか,少量の溶媒量で均一系の反応をおこなうことができ,反応後の処理も容易であるなど,ピリジンをもちいてのいくつかの利点がみとめられた。
  • 永井 芳男, 君島 二郎, 後藤 信行
    1967 年 70 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アミノ-2-ブロムアントラキノン(I)とピラゾールアントロン(II)とのUllmann反応について検討し,この両者よりピラゾールヒドロアジン型染料(III)への直接の縮合閉環が困難であることを認め,オートクレーブ中で微量の水の存在下に縮合を行なって,いったんニール化合物の2-(1'-アミノ-2'-アントラキノニル)ピラゾールアントロン(IV)を合成し,ついでIVをピリジンーメタノールカリウム中で煮沸,環化させ,目的物の建染め染料,6H-アントラ[a,-3,2]アクリジノ[5,6,1-2',1'N]ピラゾールアントラ-5,9,17-トリオン(III)を対理論収率58%で得た。IIIはI,IIそれぞれの2分子縮合物であるインダントロンと,ジピラゾールアントロンとの混合的な構造を有する。
    また,Iの合成については,1-アミノアントラキノンを91%含水酢酸中で臭素化することにより,mp180~181℃の純品を最高83.7%の対理論収率で得た。
  • 永井 芳男, 君島 二郎, 後藤 信行
    1967 年 70 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ピラゾールヒドロアジン染料(I)のハロゲン化により塩素堅ロウ度の高い, 青色系建染め染料種の創製を試みた。
    Iを氷酢酸中で臭素化し,モノブロム誘導体(II)を得た。発煙硫酸溶媒中では常温でさらに臭素化が進行しトリブロム体を得た。Iの氷酢酸中の塩素化では黄色のアジニウム型化合物が得られ,ハイドロサルファイト還元によリモノクロル誘導体を得た。これら誘導体のモメン染色はモノハロゲン化合物ではIと変わらず,トリブロム体のみ,深みを増して青色となった。また,塩素堅ロウ度は全部4~5級に向上した。
    1-アミノアントラキノニル・ピラゾールアントロンは発煙硫酸中で臭素化され,閉環によりIの13,17-ジブロム誘導体を与えるが,塩素堅ロウ度はIと変わらず2~3級であった。これからの結果よりIの直接ハロゲン化ではハロゲンがまず16位に導入され,次亜塩素酸による退色を防いでいるものと考えられる。
    I,IIの次亜塩素酸塩溶液による酸化の機構についても検討し,アルカリ可溶の酸化生成物を単離し,その構造を決定した。
  • 永田 賢司
    1967 年 70 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石炭の陽子磁気共鳴吸収のスペクトルを室温より上の温度で測定を行なった。加熱は内熱法を用い,窒素ガスにより120℃ まで加熱した。測定された信号の吸収幅は測定した温度によって変化することがわかった。ミセルは芳香族環かまたは芳香族縮合環,側鎖および結合にあずかる炭化水素とから成立つとするとき,陽子の信号は側鎖およびミセルのCOOH基およびOH基に結合している水の信号であると思われる。レオロジー的性質については,炭素含有量が89%の石炭のミセルの結合力は最も低く,石炭の脱水によりミセルは不可逆的に変化するように思われる。
  • 糸井 和男, 熊野 茂孝
    1967 年 70 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    SnO結合を有するジおよびトリオルガノスズ化合物をケイ素ヒドリドと反応させると,対応した有機スズヒドリドとSiO結合を有するケイ素化合物が比較的高収率で得られた。トリアルキルスズオキシドとケイ素ヒドリドとの反応は次式に示すように二段に進行し,当モルの反応によっては(1)式に示すようにSiO-Sn結合を有する化合物が得られる。
    (R3Sn)2O+≡SiH→R3SnH+R3SnOSi≡
    (1)R3SnOSi≡+≡SiH→R3SnH+≡SiOSi≡(2)
    1molのビス(トリ-n-ブチルスズ)オキシドと1.5molのメチルヒドロリシロキサン(MHS)との反応において,(2)式による架橋反応の進行にかかわらず生成物は液状を保つ。このことから,得られたポリシロキサンは2分子間で架橋した梯子型ポリマーに近い構造を有すると考えられる。(n-C4H9)3SnOR'とMHSとの反応速度はR'に関してCH3>C2H5>n-C3H7>n-C4H9i-C3H7>>t-C4H9,Sn(C4H9)3>n-C4H9>>Si(CH3)3の順であった。トリ-n-ブチルスズ-n-ブトキシドとMHSとの反応速度はそれぞれ両者の濃度の1次に比例する2次反応として表わされ, 見かけの活性化エネルギーは小さく, 約9kcal/molであった。
  • 中島 通公
    1967 年 70 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化亜鉛-塩化ナトリウム混合塩の濃厚水溶液にポリアクリロニトリルを混合して得られる粥状物(スラリー)の粘度について研究した。同一品種のポリアクリロニトリルを溶剤に対して一定割合でスラリーを作る時,溶剤中のZnCl2のモラリティが一定でNaCl/ZnCl2のモル比(r)が増加するとスラリー粘度(Vsl)は上昇する。またrが一定で全塩濃度(Ct)が高くなるとVslは上昇し, その上昇率はあるCt以上では非常に大きい。この上昇率の急変する境界となるCt(以下境界的塩濃度と記す) はrが増すと,高Ct側に移行する。また塩水溶液中の主な不純物であるZnOもスラリー粘度に影響を持ち,境界的塩濃度よりも低いCt領域ではZnOの増加はVslの上昇を起こす。しかし境界的塩濃度よりも上ではその逆の現象を示している。本研究で採用した実験条件下ではこの境界的塩濃度は-NaClの多少によって高低はあるが-大体Ct=51~54%にあることを認めた。またこの境界附近のCtを有する塩水溶液を用いて作ったスラリーは,放置に際して安定で,低粘度の均一スラリー状態を保つことができる。このようなスラリーの挙動と,塩水溶液へのポリアクリロニトリルの溶解性とについて,その間の関連性を考察した。
  • 中島 通公
    1967 年 70 巻 1 号 p. 90-92
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    溶解法(D法)および溶液重合法(SP法)により,ZnCl2-NaCl水溶液を溶剤とした,ポリアクリロニトリルの濃厚溶液を作り,この溶液の粘度的性質を研究した。実験した範囲内では,ポリマー溶液の安定性についてD法,SP法間の差異および分子量の大小に基づく差異はあまり認められなかった。しかし塩水溶液中の全塩濃度(Ct),塩のモル比NaCl/ZnCl2(=r),ならびにポリマー組成が安定性に及ぼす影響は大で,Ctあるいは1/rが小さいと溶剤のポリマー溶解力が劣り,特にホモポリマーを溶かす場合にはゲル化が起こり易い。ZnCl2濃度の高い塩水溶液を用いれば, ポリマー濃厚溶液は安定であり, 例えば80℃で5時間,あるいは室温で15日間放置しても,ポリマー溶液の粘度(Vps),その流動活性化エネルギー(ΔEη)はほとんど変わらない。この範囲のポリマー濃厚溶液はDMFを溶剤としたものより高いVps,ΔEη を持つが,十分実用的な紡糸適性を持っている。Vps,ΔEηの値の高低に及ぼすCt, r およびポリマー組成の影響について考察した。
  • 東 広巳, 浪川 茂夫
    1967 年 70 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    AlEt3とエタノールアミン類との反応生成物を明らかにするために,AlEt3とエタノールアミン類との反応によって発生するエタンガスの定量を行なった。その結果,AIPとエタノールアミン類とによって生ずる化合物と類似のものが生ずるとして算出されたエタンガス量と実測値とが,モル比1に近い場合ほどよく一致することをみとめた。また,AlEt3/MEA(モル比1)の反応混合系からは推定されたとおりの{AlEt2(OCH2CH2NH2)}2なる化合物が純粋に針状結晶物として単離された。
    これらの反感混合系が重合触媒として活性を示すかどうか検討するために,これらの系を触媒として用い,プロピレンオキシドとエピクロルヒドリンの単独重合およびプロピレンオキシドとフェニルイソジアナートとの共重合反応を0℃ もしくはそれ以上の温度で行なった。プロピレンオキシドおよびエピクロルヒドリンの重合では,いずれの組合せの触媒系でもAlEt3/H2O(モル比2)系触媒と比較して著しく活性が小さく,ほとんどポリマーはえられなかった。一方,プロピレンオキシドとフェニルイソシアナートの共重合反応では,AlEt3/H2O系触媒よりもむしろAlEt3単独触媒の場合の挙動に類似していて,AlEt3-エタノールアミン系ではいずれも収率よくその共重合体(ポリウレタン型)を与えた。
  • 東 広巳, 浪川 茂夫
    1967 年 70 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    AlEt3に対して二官能性として反応あるいは配位する可能性のあると思われるヱタノールアミン類を共触媒として用い,-78℃でアセトアルデヒドの重合を行なった。エタノールアミンとしてはモノエタノールアミン( M E A ) , ジエタノールアミン( D E A ) およびトリエタノールアミン(TEA)を使用したが,前二者のエタノールアミンを共触媒としたAlEt3/MEA,AlEt3/DEA系触媒の場合は,ほとんどメタノールに不溶性の結晶性ポリアセトアルデヒド(ポリアセタール型)のみが得られたが,TEAを共触媒とした場合は、両成分のモル比をかえてもほとんど活性を示さなかった。さらに,AlEt3/MEA(モル比1および2)系触媒にっいては,メタノール不溶性のポリマーの生成率に対する他の種々の重合条件の影響を詳細に検討した。また,MEAの塩酸塩を共触媒に使用しても結晶性ボリアセトアルデヒドが得られるが,他の触媒系の場合と異なって,この系で得られるポリマーは容易に粉末状になることから,きわめて分子量の低い結晶性ポリマーであろうと推定した。
    さらに,本触媒系の作用機構をしらべるため,両成分のモル比およびエタノールアミンの種類をかえた場合に生成すると思われる推定構造式と触媒としての活性の有無を比較検討した。その結果,残存エチル基を有するもののみが活性を有するということがわかった。また,AlEt3/MEA系(モル比1および0.5)とアセトアルデヒドとの接触によってほぼ1molのエチル基が失われることがわかったが,Al-Et結合が直接重合の開始反応に関与しているかどうか不明であった。
  • 荻原 允隆, 荻原 幸江, 久保田 仁
    1967 年 70 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    セリウム塩に対する反応性の異なる4 種のパルプへのメタクリル酸メチルのグラフト重合の特徴を比較した。パルプの易反応性部分の大きさは銅価と比例的関係にあることを明らかにし,易反応性部分の大きいパルプほど一般に高いグラフト率および大きい分岐数を示し,主としてへミセルロースに由来すると考えられる反応性のやや劣る準易反応性部分はグラフト重合に対して著しい影響を与えないことを認めた。易反応性でない部分もセリウム塩とのレドックス開始作用を示すが,その作用は易反応性部分に比べてやや劣り,重合物の分岐の分子量は高く,分岐数は小さい。セリウム塩で前処理したパルプとモノマーとの反応による方法は,パルプ,セリウム塩,モノマーを同時に作用させる方法に比べて,高い枝分子量と約1/10の分岐数を持つ重合体を与える。同時に作用させる方法では,グラフト率はモノマー濃度に直線的に変化するが,分岐数は,これとほとんど無関係であり,セリウム塩濃度の対数と直線的な関係にある。この関係は各パルプの反応性を反映した特有なものであり,グラフト重合における重要な特性と考えられる。
  • 伊藤 政幸, 九里 善一郎
    1967 年 70 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アリルアルコール(All-OH) と無水亜硫酸(SO2)の等モル混合物を-196℃でγ線照射し, ESRにより生成中間体を測定した。
    測定された中間体は,光照射により消失する部分としない部分があり,前者はイオン種,後者はラジカルと考えられる。
    この系を-196℃ でγ 線照射後昇温すると最終生成物としてポリスルホンが得られるが,γ 線照射後同温度で光を照射すると収率は低下する。
    γ線照射しつつ光照射した場合のESRスペクトルおよびポリスルホン収率は,γ 線照射後光照射した場合と同じである。
    これらの結果より,この系の固相重合は,ラジカルおよびイオン種の両者に起因される。
  • 卯西 昭信
    1967 年 70 巻 1 号 p. 112-114
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    1,3,4-オキサジアゾール環とヒドラジン結合を主鎖に有するポリ(2-ヒドラジノ)-1,3,4-オキサジアゾールをジカルボン酸ジフェニルエステルと炭酸ジヒドラジドから合成した。ポリマーは二段階重合,すなわち溶液重合と溶融重合でえられた。炭酸ジヒドラジドとジカルボン酸ジフェニル一般式C6H5OOCRCOOC6H5, R:-(CH2)4-,-(CH2)7-,-(CH2)8-,m-フェニレン)の重合反応には,フェノールと水の生成が見られた。アゼライン酸ジフェニルおよびセバシン酸ジフェニルを用いたものからは可紡性のある高分子がえられた。しかしながらアジピン酸ジフェニル,イソフタル酸ジフェニルを用いたものからは高分子量のものはえられなかった。元素分析および赤外吸収スペクトルの検討によればこのポリマーにはヒドラジン結合と1,3,4-オキサジアゾール環が主鎖中に不規則に配列している。このポリマーはジメチルホルムアミド,ジメチルスルポキシド,m-クレゾール,ギ酸,酢酸,エチレンクロルヒドリンに可溶である。
  • 金沢 孝文, 池田 正義
    1967 年 70 巻 1 号 p. 115-116
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 白崎 高保, 北原 昭勝, 森川 清
    1967 年 70 巻 1 号 p. 116-117
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 池上 裕夫, 久村 寛治, 町田 和夫
    1967 年 70 巻 1 号 p. 117-119
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 安達 和郎
    1967 年 70 巻 1 号 p. 119-121
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1967 年 70 巻 1 号 p. A1-A8
    発行日: 1967/01/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general ideaof the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors.Readers are recommendedto refer to the tables, the figures, the formulae etc.in the original papers.
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