工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
70 巻, 3 号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
  • 竹村 安弘, 森田 義郎, 山本 研一
    1967 年 70 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は高温における石油系炭化水素の部分酸化反応および水蒸気改質反応用のNiO-Al2O3触媒の構造,還元性状,および酸化性状を研究することである。触媒中の還元されて生じたニッケルの酸化性状を空気,スチーム,炭酸ガスの各雰囲気で研究した。そして前報で「再スピネル化」と仮称したNiAl2O4の生成をX線回折粉末法,熱分析,および電子顕微鏡で観察した。空気中では再スピネル化は700~865℃と870~980℃で2段に速やかに進行し,また化学組成がNiO1+xで示される過剰酸素を含有する酸化ニッケルを経由するものと考えられる。スチームまたは炭酸ガス雰囲気ではスピネル生成反応は空気酸化の場合よりもおそい。再スピネル化で生成したスピネルの結晶はα-アルミナの比較的平滑な表面に生成しスピネル結晶は微細である。
  • 竹村 安弘, 森田 義郎, 山本 研一
    1967 年 70 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はニッケル触媒の物理的性質とその耐イオウ性との関係を研究し,さらに高温における被毒機構を考察することである。既報においては,比表面積の大きいシリカ担体付ニッケル触媒がCS2に対しもっとも抵抗性の大きいことがわかった。本実験ではシリカ,ケイソウ土,およびケイ石のようなケイ質物質担体付ニッケル触媒を用いた。これらの触媒の被毒はCS2を定量添加したn-C6H14の水蒸気改質反応で行なった。未被毒および被毒触媒への室温における水素吸着量を測定し,担体の比表面積はBET法で測定した。またX線回折法によって触媒中のニッケルの結晶子の大きさを検討した。その結果,耐イオウ性と水素吸着量の間に直線的関連性が,また耐イオウ性と担体の比表面積との間にも関連性が見いだされた。ニッケルへの水素の吸着量は被毒によって, 未被毒触媒への水素の吸着量の3 分の1 に減少した。同時にニッケルの結晶子の大きさは, 再生後でも, たとえば253から286Åに増大した。以上の結果から耐イオウ性触媒としてのもっとも重要な因子は大きい比表面積を持った担体上へのニッケルの十分な分散であることがわかった。
  • 杉浦 正昭
    1967 年 70 巻 3 号 p. 237-240
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ポリビニルピロリドン(PVP)を含む臭化銀ゾルの界面活性剤および金属イオン(Al3+, Ce3+, Pb2+) による凝析について低いPVP濃度でそのゾルの電気泳動および濁度を測定し,またそれら電解質を含むPVP溶液の電気泳動および粘度を測定して研究を行なった。
    陽イオン活性剤では濃度の上昇とともにゾルの負のζ電位は次第に減少し正に変換する。さらに高い濃度では正のζ電位は急速に増加する。ゾルの濁度はζ電位0付近において最大値となる。
    陰イオン活性剤ではゾルのζ電位あるいは濁度の値は変わらないが,活性剤はPVP分子に吸着する。
    金属イオンでは濃度の上昇とともにゾルの負のζ電位は減少するが正に変わらない。
  • 須沢 利郎, 江口 太
    1967 年 70 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    主として低P V A 濃度におけるP V A - C R ( コンゴーレッド) 水溶液に尿素を添加したときの粘度を測定した。PVA-CR水溶液のみの場合,CR濃度が増加し,PVA構成基本分子約20~25あたり,CR1分子の割合となるCR濃度において,ηsp/cpCd(CR濃度)曲線に極大を生じ,溶液中に残存するCRのために,PVA-CR複合物分子が棒状より糸まり状に変化することを示唆した。PVA-CR水溶液の粘度におよぼす尿素の効果は, 尿素濃度をCuとすれぼηsp/cp=A+B・Cu (A:尿素無添加のときのηsp/cpの変化を示すパラメーター)であらわされる。B=0はηsp/cpCd曲線に対する尿素の効果が変化し始めるCR濃度に相当し,それはCR:PVAのモル比で示せば約6となる。B>0のときはηsp/cpCd曲線の上昇を意味し,PVA分子鎖に沿ってかなり離れた距離にあるOH基間の分子内水素結合が尿素によって切断されることを示唆する。B<0のときはηsp/cpCd曲線の低下を意味し,PVA-CR複合物分子が尿素によって収縮することを示唆する。
  • 山本 顕一郎, 加藤 昭夫, 清山 哲郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々のリンの酸化物よりオキシ塩化リンの工業的製法を検討するに当って,五酸化リンに炭素を混合し,塩素を作用させてオキシ塩化リンを得る反応を330~500℃の温度で行ない, とくにこの反応に及ぼす一酸化炭素の影響を調べた。一酸化炭素は反応に伴う生成ガスであるが,最初から還元剤として一酸化炭素を併用するとオキシ塩化リンの生成量は増大し反応が促進されることが判明した。これは熱力学的な平衡計算によって首肯されるが五酸化リンに対する還元にあるものと考えられる。しかし塩素ガスと一酸化炭素のみを作用させた場合にはオキシ塩化リンの生成は見られず, 添加物として炭素が必要であること, また炭素はその反応性が活性炭>木炭>黒鉛の順に異なることから,炭素は還元剤であると同時に塩素化の触媒であると見なされる。以上の結果から,オキシ塩化リンの生成反応をその還元過程と塩素化に分けて論じた。生成物はオキシ塩化リンでその他のリン塩化物(PCl3,PCl5)の生成は認められなかった。
  • 目黒 謙次郎, 小石 真純, 林 剛
    1967 年 70 巻 3 号 p. 249-252
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カーボンは大別すると核成長型と分解型がある。本研究ではこの中間のカーボンを試作しその性質を調べた。すなわち, ジビニルベンゼン重合体( 架橋高分子) を加熱分解してカーボンを作り, その性質を特に示差熱分析, X 線分析, 電子スピン共鳴吸収および吸着などから調べた。その結果, 表面積の大きいカーボンが得られ, かつ600~700℃で構造変化のあることが確かめられた。すなわち, この温度あたりでカーボンの結晶子の成長がおこり始め, この成長が多方向であるため結晶子間で炭素原子を最後にとりあいを演じ, 結果において割れ目が入り電子スピンが生ずると考えるとX 線分析, 電子スピン共鳴吸収, 表面積の増加を説明できる。
  • 加藤 悦朗, 長谷川 勝
    1967 年 70 巻 3 号 p. 252-260
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    加えた過剰シリカの転移の挙動により, 炭素系複合焼結体の抵抗温度特性を変えることを検討した。焼結体の抵抗温度特性は, 焼結体中に生成または残存するクリストバライトの(およびわずかの程度でトリジマイトの)高低型転移により起こる異常熱膨張と密接に対応し,抵抗温度係数はこの熱膨張の程度によって0に接近またはさらに正に変化する。焼成温度は, クリストバライト含有量の変化および結晶の不完全性の程度の変化によって, 熱膨張と同様抵抗温度特性に影響する。一般に焼結体の比抵抗値の高いほど, この転移の影響は大きく現われる。またこの影響は, サーマルブラックのような, 粒径が大きく,“ストラクチャー”のない炭素を用いた場合顕著であり, とくに熱膨張係数の小さいガラス状カーボンの粉末を用いた場合に最も顕著で, 200℃の抵抗が常温の約10倍にも達するものが得られた。加熱冷却におけるこれらの抵抗温度変化曲線は, 転移に関係する明瞭なヒステリシスループを描く。
  • 宮崎 秀甫
    1967 年 70 巻 3 号 p. 261-263
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    半水セッコウのα型とβ型の本質的差異と,これらの生成機構に関する知見をうる目的で,二水セッコウの脱水過程を検討した。その結果,二水セッコウは減圧または乾燥気流中など常に水蒸気の存在しない条件で脱水されると,1段階に無水塩まで脱水され,途中に半水塩の生成は認められなかった。つぎに二水セッコウおよび半水セッコウの加熱脱水過程中の水の状態の変化を知るため,試料を200℃までの各所定温度に保持して測定した陽子磁気共鳴吸収スペクトルの形および吸収幅を検討した。その結果,二水セッコウの水は大部分が構造水と考えられ,これに対しβ型半水セッコウではほとんど中心ピークのみの吸収を示し,その水の大部分が可動水の形であると考えられる。α型半水セッコウは二水セッコウとβ型半水セッコウとの中間的性質を示し,β型に比べ構造水により近い状態であることを認めた。
  • 清山 哲郎, 江頭 誠, 坂本 栄治, 河野 昌子
    1967 年 70 巻 3 号 p. 264-268
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    清山哲郎・江頭誠・坂本栄治・河野昌子近年アルミン酸ナトリウム溶液の炭酸ガスによる分解反応においては,ドーソナイトNaAl(OH)2CO3(以下D)が随伴生成することが見出されてきた。このものはアルミニウム精練過程において注意すべき物質であるので,この生成,性質について検討した。この炭酸ガス分解反応ではアルミナ水和物は反応の初期にpH約13から,Dは溶液中にHCO3-イナンが増大しはじめるpH領域([Na+]≒3gion/lの時pH=12.8~12)から生成をはじめる。電子顕微鏡観察より,Dは水和物が2次的に変化して生じるものではなく,水和物結晶上に溶液から晶出することがわかった。Dは50℃以上では極端な繊維状生長をする。顕微鏡電子回折の結果,繊維周期は5.60Åで,繊維軸は〓方向と推察される。赤外吸収ではHCO3-の存在が認められ,これはDの生成条件とも一致する。Dの示性式は,NaAlO(OH)HCO3と推定される。Dは水に対して難溶性であるが,沸騰水中では容易に分解し,擬ベーマイトになる。Dの安定なpH範囲は約5~11である。Dを加熱すると,400℃で炭酸ガスを放出し,さらに700℃にて構造水を放出してNaAlO2などに変化する。
  • 松野 清一
    1967 年 70 巻 3 号 p. 269-273
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    リン酸水素カルシウムの加熱による脱水およびリン酸の縮合過程を中心として,リン酸水素カルシウムの熱変化を総合的に研究した。
    リン酸水素カルシウム2水塩CeHPO4・2H2Oを常圧下で加熱していくと,115~210℃間の段階的な吸熱変化を経て,X線的に完全な無水リン酸水素カルシウムCeHPO4となるが,この間の脱水量は19.8%程度(理論量20.9%)であり,なお約1%の結晶水が残り,このものの赤外吸収スペクトルには,この水分に基づく吸収が認められた。また,2水塩に認められたP-OHの吸収以外に,2790cm-1および1450~1300cm-1にもP-OHの伸縮振動および変角振動のものと思われる吸収が認められた。この約1%の水は360℃までの加熱で徐々に失われる。360℃以上になるとゆるやかな脱水変化が起こり,450℃付近までにはγ-ピロリン酸石灰となるが,この際にも,X線的に完全にCeHPO4が分解してγ-ピロリン酸石灰となっても,約1%の水分が残っており,このものの赤外吸収スペクトルには結合水に基づく吸収とP-OHに基づく吸収がわづかに認められた。γ-ピロリン酸石灰は少量の水を含む準安定な形態と考えられる。
    このほか,920cm-1,720cm-1に吸収極大を持っP-O-Pの吸収も認められ,この吸収は時間の経過,温度の上昇とともに徐々に増大し,特に720cm-1の吸収はγからβ,そしてα-ピロリン酸石灰と転移するにしたがって高波数側に移動した。これはγ,β,α-ピロリン酸石灰の順にP-O-Pの結合が強まることを意味するものと思われる。このほか,リン酸水素カルシウムおよびその加熱生成物のク溶性についても若干の検討を加えた。
  • 有森 毅, 片岡 三郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 274-277
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ブラジル産リン酸アルミニウム鉱の利用法を探究する目的で,湿式アルカリ法および乾湿併用法による抽出について実験を行なった。
    湿式アルカリ法による抽出条件について詳細に研究を行なった結果,NaOHの使用量はNa2O/Al2O3(モル比)=2.5,Na2O/P2O5,(モル比)=2.0,その濃度は比重1.1で,煮沸点で抽出するのがよいことを知った。また鉱石のバイ焼温度と抽出率との関係にっいて実験を行なった結果,アルミナ抽出率が700℃以上で急に減少する事実を認めた。これは鉱石中の少量のCaOおよびSrO分が700℃以上で,3CaO(SrO),5Al2O3の化合物を形成するためと考えられる。この方法の好条件で良鉱を処理すると,アルミナ99%, P2O5 90%の抽出率を得た。
    石灰乳の存在におけるアルカリ抽出実験を行なった結果,鉱石中のリン酸分を不溶性のリン酸カルシウムとし,アルミナのみをNaAl2Oとして抽出するためには,3Ca(OH)2/P2O5(モル比)=1.3当量で170℃ 加圧処理で,その目的を達した。しかしこの場合アルミナの抽出率87.7%で,抽出残分のク溶性リン酸分は鉱石中のリン酸分に対し69.7%を示した。
    鉱石に炭酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを混合してバイ焼し,後これをカセイソーダ液で抽出する乾湿併用法について実験を行なった。この方法も上述の方法と同様に鉱石中のリン酸分を不溶性にし,アルミナをアルミン酸ナトリウムとして溶出せしめるのであるが,好条件でアルミナ抽出率88%,抽出残分のク溶性リン酸分は鉱石のリン酸分の40%に過ぎない。
    以上の実験結果より湿式アルカリ法が最も好適な抽出法であると結論された。
  • 菅原 勇次郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 277-280
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報ではクロムミョウバンをトレーサーに用いて成型シリカ・アルミナヒドロゲルの流通式水洗浄操作に関する基礎研究を行なった。
    本報では前報の研究知見に基づいて, 活性白土製造時の硫酸溶離溶液( 不純硫酸アルミニウム溶液) よりつくった塩基性硫酸アルミニウムヒドロゲル成型物中のFeSO4の水洗除去の研究を試み, その結果つぎのことがわかった。(1) 重力洗浄を活用して,まず浸漬静置状態で, つぎに流通状態で洗浄するとFeSO4が効率よく水洗除去できる。ただし浸漬静置時間には最適値がある。(2) 洗浄水流速は小さいほど所要洗浄水量が少なく, しかもよく洗浄される。また, 同時に鉄分の濃厚な廃液が得られる。(3) 重力洗浄を効率よく行なったのち, さらに亜ニチオン酸ナトリウム溶液で洗浄すればほとんど無鉄のアルミナ(FeSO3含量0. 003wt%程度)が得られる。
  • 国富 稔, 功刀 利夫
    1967 年 70 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    18種類の添加剤について,合成水晶の成長に及ぼす効果を検討した。実験は,添加剤の種類および濃度以外の実験条件を,できるかぎり同一として行なった。
    その結果,次のようなことがわかった。
    (1)Z軸方向およびX軸方向の成長:量(Gz,Gx),晶癖(Gz/Gx),原料の溶解減量などは各添加剤濃度によって種々な変化をする。(2)Gz,Gxが最大値,最小値を示す場合,その添加剤濃度は約0.1~0.5wt%でかつ良質水晶を得る限界濃度でもある。(3)Gz/Gxの値は非常に広範囲にわたり,一般に添加剤濃度とともに増加する。(4)結晶の品質を添加剤の原子番号とイオン半径に関連づけられる。(5)添加剤は原料の溶解に非常に影響し,またしばしばアルカリ,シリカ成分と反応して複合ケイ酸化合物を形成する。
  • 日比野 泰三, 三浦 英二, 関谷 均
    1967 年 70 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジルコニアとシリカとからジルコンを合成するとき,低融点不純物を添加するとその合成反応を促進することがある。この機構を解明するために, 低融点不純物- ハロゲン化アルカリ, 酸化バナジウム(V), 酸化銅(II), 酸化モリブデン(III), および酸化アンチモン(III)-を添加したとき, 各加熱温度にたいするジルコンの生成量, ジルコニアおよびシリカの変化を求め, また添加量の影響および添加方法の反応におよぼす影響などを解明して, つぎのような結果を得た。
    1) 低融点不純物は粒子間に液相のうすい層を生成し, 物質の拡散移動を容易にして反応を促進させるが, 液相を生成するときいつも反応を促進させるとはいえない。
    2) 反応を促進させるためには, 陽イオン間反撥力をしゃ蔽して, それを拡散させ, 近づけて反応させるに適した条件が必要で,それにはハロゲン,活性な酸素がよい。
  • 阿部 光雄, 見城 忠男, 伊藤 卓爾
    1967 年 70 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々のアンチモン酸化合物を合成し,それらのイオン交換性を測定した結果,アンチモン酸アルミニウム,アンチモン酸ジルコニウムおよびアンチモン酸スズが物理的および化学的に安定な陽イオン交換体であることがわかった。
    とくに,それら安定なアンチモン酸化合物のうち,アンチモン酸ジルコニウムについて合成条件およびイオン交換性について比較的詳細に検討した。
    アンチモン酸ジルコニウム陽イオン交換体はピロアンチモン酸カリウム水溶液と硫酸ジルコニウム水溶液との反応によって得られた沈殿を水洗,乾燥することによって白色の塊状物として調製された。
    イオン強度を等しくした0.1N(KCl+KOH)溶液を用い,バッチ法によるpH滴定曲線は弱い一塩基性酸を示した。
    このアンチモン酸ジルコニウムへのK+の吸着量はpHの増加とともに増加した。
    さらに, 0.8φ×10cmのカラムを用い希硝酸を溶離液としてミクロ量のLi, Na, Kを効果的に分離することができた。
  • 高橋 不二雄, 水口 純, 鈴木 周一
    1967 年 70 巻 3 号 p. 296-299
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    マンガンの原子価変化に伴う酸化還元反応を用いた燃料電池を組立て, 有機物酸化反応および電極反応についてpH, マンガンイオン濃度, 燃料として用いた有機物の完全酸化の可能性などの点から検討を加えた。カソードに二酸化鉛板, アノードに白金板を用いた。有機物燃料としてグリコール酸とブドウ糖を用いた。2価マンガンはアノードで電極反応によって3価または4価マンガンになり, 生成した3価, 4価マンガンは燃料を酸化することによって2価マンガンに戻る。このようなマンガンの触媒的反応によって電池に用いられる燃料は完全に燃焼させて炭酸ガスと水にすること, およびその反応に相当する電気量が発生することを認めた。この反応はつぎのように示される。
  • 鴻巣 久雄, 益子 洋一郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    非分散型紫外線ガス分析計を使用して空気中の有機溶媒蒸気の紫外全波長領域における吸光度を直接に測定し,これを迅速簡易に定量した。本研究では比較的高沸点の試料を測定するために試料加熱気化器を試作し,これにより試料を気化させたのち,試料蒸気を気体セルに常圧で導入した。本分析計による測定精度を統計的方法によって検討した。試料の検出限界はトルエン,エチルベンゼン,クロルベンゼン,アニリン,シクロヘキサノン,ピリジン,ニトロメタン,ニトロエタン,テトラクロルエチレン,フルフリルアルコールについてそれぞれ4, 3, 13, 1, 65, 2, 44, 47, 1, 1ppmであった。クロルベンゼン,アニリン,シクロヘキサノン,ピリジン,ニトロメタン,ニトロエタンは濃度と吸光度との間に直線関係が成立した。濃度をx(ppm),吸光度をyとしたときのクロルベンゼンの回帰直線はx=6.38×104y-0.7である。クロルベンゼンは労働衛生許容濃度(75ppm)まで測定でき,その95%の信頼限界値は75±15ppmであった。本分析計は多くの有機溶媒蒸気の許容濃度以下まで測定できる。
  • 松本 克己
    1967 年 70 巻 3 号 p. 305-307
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    液状不飽和ポリエステル樹脂より重合性単量体を前もって分離することなくガスクロマトグラフィーを行なうことにより,樹脂中に存在する重合性単量体を定量することを報告する。
    シリコンDC550を25wt%保持させたセライト545のカラムを180℃ で用いてヘリウムガスの流速を変化させる方法により,メタアクリル酸メチルエステル,スチレン,ビニルトルエンおよびフタル酸ジアリルエステルを定量した。ヘリウムガスの流速は10分間20ml/min引きつづき100ml/min20分間とし,コハク酸ジエチルエステルを内部標準として用いた。
    流速変化とベースラィン調整とは手動で容易に行なえる。また,コハク酸ジエチルエステルは内部標準としてだけでなくポリエステル樹脂の粘度低下剤としても作用しているので,試料採取とカラムへの注入は容易である。操作の簡単なこの方法で,液状不飽和ポリエステル樹脂中の重合性単量体は再現性良く定量される。
  • 丹治 日出夫, 内山 正夫, 天野 杲, 徳久 寛
    1967 年 70 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シクロペンテンの熱分解反応を反応温度416~532℃,初圧12~30mmHg,反応時聞5~600分の範囲で静置式装置をもちいておこなった。反応はシクロペンタジエンと水素を生成する単純な脱水素反応とみなすことができる。圧力の経時変化より反応は1次反応速度式にしたがい,反応速度定数はlogk=13.34-59,900/4.575Tによってあらわされることが明らかとなった。上記の速度定数をもちいてシクロペンタンの熱分解反応について検討した。シクロペンタンの熱分解反応のうち脱水素反応については従来シクロペンテンをへてシクロペンタジエンを生成する2段階の逐次反応が提案されていたが,そのほかに直接シクロぺンタンからシクロペンタジエンを生成する反応をも考慮しなければならないことが示された。この反応は661℃においては全反応の約10%を占めているが,低温ではより重要な反応と考えられる。
  • 和田 啓輔, 山下 順三, 橋本 春吉
    1967 年 70 巻 3 号 p. 311-315
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    カルボン酸金属塩の熱分解機構を総合的に整理し検討する研究の一環として, 5 種類の脂肪酸の1 1 種類の金属塩の熱分解反応をしらべた。金属塩の熱分解開始温度は, 金属の電気陰性度が増加するほど, また脂肪酸の炭素数が減少するほど, 低くなる傾向にある。また, アルカリ金属塩, アルカリ土類金属塩からはケトンのみが生成するが, 重金属の塩からは, ケトンの他に酸および酸無水物が生成する。これらの事実は, 標準状態における熱力学的計算の結果と傾向がよく一致し, 金属の酸化物と炭酸塩との相対的な安定性が熱分解生成物の種類を規定する重要な因子であることを示唆するものであり, 金属の脱離を律速段階とする4 員環遷移状態を含む求核的な機構でよく説明される。また酸無水物がケトン生成の中間体であると考える説は否定される。
  • 橋本 静信, 藤井 宏紀, 砂本 順三
    1967 年 70 巻 3 号 p. 316-319
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    α-ニトロナフタリンを酸,およびキノン触媒の存在下イソプロパノール溶液中光照射を行なうとα-ナフチルアミンが生成する。このとき,α-ニトロナフタリンよりα-ナフチルアミンへの還元は,第1次還元機構によると推測された。キノン触媒使用時は,触媒の吸収波長に相当する波長の光を照射することにより還元の進行することがわかった。反応中副生するアセトンを遂次除去し,またα-ナフチルアミンの吸収波長に相当する波長の光をしゃ断することによりα-ナフチルアミン収率を向上させえた。
  • 池田 卓雄, 真鍋 修, 檜山 八郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 319-323
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    J酸(6-アミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸)の芳香族ジアゾ化合物に対する反応性を明らかにするために,P-ジアゾトルエン(I)またはp-ジアゾクロルベンゼン(II)をJ酸およびNW酸(1-ナフトール-4-スルホン酸)に種々のpHにおいて競争的カップリングを行なった。生成物中の各色素をペーパークロマトグラフィーにより分離し比色法によりそれらの生成量を定量した。生成色素のモル比から,みかけの速度定数比kOH/k'NWおよびk'NH2/k'NW(添字のOH,NH2およびNWはそれぞれJ酸の2-および5-およびNW酸の2-位置におけるカップリング反応を示す)を求めた。カップリング成分の反応種がナフトレートイオンおよび遊離アミンであるとした真の速度定数比kOH/kNWおよびkNH2/kNWをみかけの速度定数比およびJ酸とNW酸のPKa値より求めた。kOH/kNWはIのとき85.8,IIのとき212であった。kOH/kNWはpHに無関係であるべきであるが高pH域で減少し,またkNH2/kNWはpHとともに増加する。このkNH2/kNWの挙動はJ酸の5-位のカップリングにはナフトール型とナフトレート型の二つの反応種が関係していることから説明される。ナフトール型の速度定数比kNH2-1/kNWおよびナフトレート型の速度定数比kNH2-1/kNWはIのとき,それぞれ0.05, 0.3であり,IIのときは0.05, 0.25であった。
  • 池田 卓雄, 真鍋 修, 檜山 八郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    前報に報告したのと同一の方法で,γ酸(7-アミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸)のカップリング反応を動力学的に研究した。真の速度定数比kOH/kNWp-ジアゾトルエンの場合には25.8,p-ジアゾクロルベンゼンの場合には63.0である。γ酸のアミノ側のカップリングではナフトール型の速度定数比kNH2-1/kNWおよびナフトレート型の速度定数比kNH2-2/kNWが得られ,P-ジアゾトルエンの場合には0.002と0.1,p-ジアゾクロルベンゼンでは0.006および0.9なる値が得られた。これらの結果をJ酸の反応のデータと比較し考察を行なった。実験したpH範囲では4-アゾおよび2,8-ジスアゾ色素の生成は認められなかったが,酸性での反応においては少量のγ酸の自己カップリング色素の生成が認められた。これはジアゾ交換反応とそれに続くγ酸とのカップリング反応によって生成したと考えられる。
  • 池田 卓雄, 真鍋 修, 檜山 八郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 327-328
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究ではγ酸およびJ酸の場合と同様の方法でH酸(8-アミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸)のカップリング反応を動力学的に研究した。ジアゾ成分がp-ジアゾトルエンのときは真の速度定数kOH/kNWはpH4.5から8.7の範囲ではほぼ一定値80.5であるが,p-ジアゾクロルベンゼンではその値はpHの上昇につれ減少する。
    H酸のアミノ基のオルト位でのカップリングはジアゾ成分がp-ジアゾトルエンのときナフトール型の速度定数比kNH2-1/kNW0.15,ナフトレート型のkNH2-2/kNW2.0であり,ジアゾ成分がp-ジアゾクロルベンゼンのときはkNH2-1/kNWおよびkNH2-2/kNWはそれぞれ0.35および30であった。7-アゾ色素の生成は約pH7で最小であり,このことはkNH2-2/kNWの値が異常に大きいことから理解される。
    これらの実験条件下ではジスアゾ色素の生成はほとんど認められなかった。
  • 犬飼 鑑, 細川 研三
    1967 年 70 巻 3 号 p. 329-331
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    3-トリフルオルメチルアニリン-6-スルホン酸をジアゾ成分とし, アセト酢酸アニリドおよびそのメチル, メトキシ, クロル,ニトロ, フルオル, トリフルオルメチル置換体とカップリングさせ, ついで塩化カルシウムおよび塩化バリウムでレーキ化することにより一連の難溶性の含フッ素アゾ顔料を合成した。これらの合成条件を検討するとともに,印刷紙および着色塩化ビニルシートを作成して色調,耐光性などの顔料適性を測定し,置換基の影響を検討した。合成した顔料はいずれも黄色の色調を示し,メチル,メトキシ置換体の耐光性は良好であった。
  • 吉川 貞雄, 久我 和彦, 上田 陽一郎, 後藤 正文, 杉山 広和
    1967 年 70 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    効率のよいα-アミノ酸のラセミ化触媒をうることを目的として,種々のサリチルアルデヒド誘導体を合成し,金属イオンの共存下におけるラセミ化能力を測定するとともにラセミ化に必要な構造上の特長を検討した。サリチルアルデヒド誘導体とグルタミン酸によって生成したシッフ塩基の金属キレート化によるラセミ化反応には,芳香族上の置換基の影響が強くあらわれ,pH10.0,80℃,Cu2+イオン存在下では,4-ニトロ>6-ニトロ>3,5-ジニトロ>5-ニトロ>3-ニトロ>4-スルホ>5-スルホンアミド>5-スルホ>置換基なし>3-エトキシ>4-ヒドロキシの順序となる。このうちニトロ基を有するものは,4位,6位,3,5位のものはpH10で時間の経過とともに活性が低下し,3位および5位のものもpH11で低下が認められるのに対し,スルホン酸誘導体には活性の低下が認められなかった。
  • 西田 清二, 小川 毅一, 宮下 功
    1967 年 70 巻 3 号 p. 337-342
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    石炭の湿式酸素酸化機構を媒体および触媒による反応状況の変化ならびにモデル物質の反応結果より考察した。天北藤田炭(C=69.5%)を水媒体中,酸素初圧75kg/cm2,反応温度105℃でモリブデン酸アンモン(Mo)添加のもとに酸化するとフミン酸の生成が選択的に促進されたが,メタバナジン酸アンモン(V)によっては石炭の酸化反応全般が非選択的に促進された。また酢酸媒体では水媒体より石炭の酸化速度が小さくなったが,得られたフミン酸は分子量が大きく,,ここのの反反応応でではは主主ととして石炭分子の低分子化が抑制されることが明らかになった。
    一方H2O2の分解ならびにピロガロールの酸化分解結果からVは石炭分子中のフェノール構構造造のの崩崩壊壊おおよよびび過過酸酸化化物物のの分分解解にに強強い活性を有するが,Moは前者の反応のみに弱い活性をもつこと,さらに酢酸中ではフェノール構造の崩壊が抑制されることが推測された。
    これらの結果から低石炭化度炭がフミン酸に転化する過程では石炭分子中のフェノール構造が崩壊すると考えられた。
  • 勝原 淳, 山崎 寿一, 橋本 浩明, 小林 正久
    1967 年 70 巻 3 号 p. 343-344
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者らは以前に,ハッカ油中から10種のセスキテルペン炭化水素を分離し,そのうち,β-エレメン,カリオフィレン,δ-力ジネン,γ-カジネンを確認したが,その後未確認成分のうち(+)-ε-ムーロレン,(+)-アロマデンドレンを確認し,さらに2種のセスキテルペン炭化水素を新たに分離し, (-)-カラメネンと(+)-α-カラコレンを確認した。また, ペパーミント油高沸点部分を蒸留中に留出してくるアズレンはS-グァイアズレンであることを明らかにした。
  • 西内 豊道
    1967 年 70 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    冷菓用安定剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC) , アルギン酸ナトリウム(Alg), およびアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)の水溶液ならびに酸性冷菓の基本酸度と考えられる0.35%乳酸水溶液中の結合水量(-15℃における不凍結水分) をディラトメーター法で測定し, 次の結果をえた。
    (1) 試料高分子の基本分子当りの結合水モル数mは, 希薄溶液において希釈とともに急増する。また試料水溶液の全水分中結合水% は, 試料濃度約0.4%までは濃度とともに急増し, 濃度約0.4~2.7%の間では一定(約10%)で, さらに濃くなると再び増加する。
    (2)既報のポリアクリル酸ナトリウムやP V A に比較して, 試料のm値はとくに希薄溶液において著しく大きい。これは試料分子中に親水性のOH基と親水性の解離基COO~Na+基とが共存し, 希薄溶液において分子の広がりが大きく, 親水基と水との接触が多くなるためと考察した。
    (3)安定剤水溶液濃度とm値との間には,1/m=a+b.C[a,b:定数,C(base mol/l)]なる関係式が成立する。(4)0.35%乳酸水溶液中では, CMC, Algの希薄溶液におけるm値の低下が著しいが, PGAのそれはあまり変化がない。
  • 臼田 誠人, 鈴木 修, 中野 準三, 右田 伸彦
    1967 年 70 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の酸化セルロースの81.25%リン酸による均一加水分解速度を20,30および40℃ で測定し,加水分解速度に及ぼす変質基の影響を検討した。リンターセルロースを二酸化窒素で酸化して得たウロン酸基を含む酸化セルロースの加水分解速度はカルボキシル基量とは関係がなく一定で,木材セルロースとリンターセルロースの加水分解速度の相違はカルボキシル基量によるものではない。過ヨウ素酸塩で酸化したセルロースの加水分解速度は,アルデヒド基量の増加とともに増大し,これをさらに亜塩素酸塩で酸化したり,水素化ホウ素ナトリウムで還元したりすると,加水分解速度は低下するが,なお未処理試料のそれより大きい。以上の事実からウロン酸型のカルボキシル基はグルコシド結合を活性化することはないが,C2またはC3位にアルデヒド基が形成されると,グルコシド結合の加水分解は促進されるものと考えられる。過ヨウ素酸塩で酸化したセルロースの加水分解における活性化エネルギーは,二酸化窒素で酸化したセルロースや未処理セルロースのそれよりも低い。したがってC2,C3間で開裂したグルコース残基ではβ-1,4結合以外の所でも加水分解が起こるのであろう。
  • 倉林 正弘, 柳谷 康新, 鎌倉 卓郎
    1967 年 70 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シアン化水素はアルカリの作用で黒かっ色のアズルミン酸と呼ばれる重合物を生成するが,この重合反応については未知の面が多く,特に,溶媒を用いた場合は別として,液体シアン化水素そのものの重合速度を取り扱った例は見当らない。著者らはまず液体シアン化水素について,アルカリ濃度の対数とガラス電極pH計の示度とが比例し,pH3以上では重合の進行が見られ,またpH7~9では重合中pHがほぼ一定に保たれることを知った。つきに10~25℃ において重合進行状況を比色法によって測定した結果,反応が定常的に進行し,重合速度がアルカリ濃度に比例し,特殊塩基接触反応であり,見掛けの活性化エネルギーとして9.2kcalを示すことなどが見出され,この反応がシアンイオンによるアニオン重合であることが推定できた。また含水シアン化水素については,含水量が10%までの範囲では水分はアルカリ性を低下し,重合を抑制する作用のあることを明らかにした。
  • 箕浦 有二, 杉村 孝明, 平原 拓治
    1967 年 70 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジフェニルスルフィド(DPS)およびその酸化生成物であるスルホキシド(DPSO),スルホン(DPSO2)および,ジベンジルスルフィド(DBS),その酸化生成物であるスルホキシド(DBSO),スルホン(DBSO2)などのイオウ化合物が,ビニルモノマーのラジカル重合に及ぼす影響について考察した。
    本報では,アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤としたメチルメタアクリレートおよびスチレンの重合におけるこれらの化合物の連鎖移動作用について検討し,連鎖移動定数を求め,さらに,これらのイオウ化合物に対するQ,e値を求めた。
    いずれも,比較的小さい連鎖移動定数を示し,これらのイオウ化合物の酸化状態が増すにつれて,連鎖移動定数は,小さくなった。ジフェニル化合物では, dπ-pπ interactionが, ジベンジル化合物では極性項よりも, 電子共有型共鳴が, 連鎖移動反応に寄与することが判明した。また,Q値は,いずれも10-3のオーダーで小さく移動剤ラジカルは直ちに再開始に入っていくものと思われる。ε値は,これらのイオウ化合物の酸化状態が増すにつれて増大した。
  • 松本 昭, 大岩 正芳
    1967 年 70 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フタル酸ジアリル(M1)とスチレン(M2)の共重合を,過酸化ベンゾイルを開始剤として60,70,80,90℃ で,また過酸化ジ-tert-ブチルを開始剤として100,110,120,130℃ でそれぞれ行なった。モノマー反応性比はMayo-Lewisの共重合式を適用して求め,つぎの値を得た。温度
    またモノマー中のブタル酸ジアリルのモル分率が増加するにしたがって,重合速度がいちじるしく減少するとともに,共重合度が低下し,さらに温度上昇による重合速度の増加はいちじるしいことを見出した。またフタル酸ジアリルの鎖内環状化反応は,スチレンとの共重合においてもおこり,その割合はスチレンの増加とともに減少することがわかった。
  • 東 広巳, 浪川 茂夫
    1967 年 70 巻 3 号 p. 365-368
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    AlMe3-エタノールアミン系およびAl(iso-Bu)3-エタノールアミン系触媒を用いて-78℃で有機溶媒中,アセトアルデヒドの重合を行なった。AlMe3-H2O系触媒(モル比2:1または1:1)を使用した場合は線状高分子ポリマーは得られず,ほとんどメタおよびパラアルデヒドのみを与えた。これに反し,AlMe-エタノールァミン系触媒の場合は,AlEt3-エタノールアミン系の場合と同様に,収率よく結晶性ポリアセトアルデヒド(ポリアセタール型)を与えることがわかった。モノエタノールアミン(MEA)を共触媒とした場合はAlMe3とMEAとのモル比が1:1<3:1<2:1の1の順序で良好な結果を与え,ジエタノールアミン(DEA)の場合は2:1の場合がよい結果を与えた。この場合,重合溶媒としてトルエンおよびエーテルを用いたが,両者の間では,結晶性ポリマーの収率に差異はほとんどみとめられなかった。AlMe3-トリエタノールアミン系触媒の場合はモル比が2:1の場合がよい結果を与えたが,再現性が悪かった。AlMe3-MEA・HCl系の場合も結晶性ポリマーを与えるが,得られるポリマーは容易に粉末状となった。Al(iso-Bu)3-MEA系でも結晶性ポリマーは得られるが,その収率は低い。また,Al(iso-Bu)3-H2O(モル比2:1)系触媒では,ほかの触媒系の場合より結晶性ポリマーの収率は低いが,非晶性ポリマーの収率は高いという結果が見出された。
  • 東 広巳, 浪川 茂夫
    1967 年 70 巻 3 号 p. 368-371
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    AlEt3と3-アミノプロパノール-(1)(モル比1:1)の反応によって生成する錯化合物が純粋に結晶として単離された。このものは無色の柱状結晶であるが, 空気中にさらすと容易に分解して白色粉末となるので, その諸性質についての正確な数値を得ることは困難であった。しかし種々の性質を検討した結果, その構造は[I] もしくは[I]'であろうと推定された。
    また, AlEt3とN - フェニルエタノールアミンとの反応(モル比1:1) で生成する錯化合物も純粋に結晶として単離された。このものは無色の板状結晶である。その構造は次式で示す[II] もしくは[II]'であろうと推定した。
    さらに, これら2 種の結晶物を触媒としてアセトアルデヒドの重合を行なった結果, 前者の場合は結晶性ポリマーが収率よく得られたが,後者の場合は良好な結果は得られなかった。
    また, [AlEt2OCH2CH2NH2]2(A) 単独および( A ) / AlEt3系を触媒として用い, アセトアルデヒドの重合を試みた。その結果,AlEt3を加えることによって最終的に達する結晶性ポリマーの収率はほとんど変わらないが, AlEt3は重合速度を大ならしめるという効果があることがみとめられた。
  • 小林 四郎, 三枝 武夫, 古川 淳二
    1967 年 70 巻 3 号 p. 372-374
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    endo-トリメチレンノルボルネンの重合を種々のチーグラー型触媒によって行ない,生成ポリマーの構造を赤外吸収スペクトルでしらべた。ノルボルネンとまったく同様に,endo-トリメチレンノルボルネンの重合は,ビシクロヘプテン環の開環でトランス(a)またはシス(b)二重結合ユニットを与える形式の重合と,ビニレン型(c)重合の三つの形式が起こり,その相対的な割合は触媒の種類により変わることが明らかになった。
    重合触媒としては,AlEt3-TiCl4,AlEt3-TiCl4-塩,AlEt3-TiCl4,Et2AlCl-VCl4,AlEt3-WCl6,AlEt3-MoCl5系を用いた。AlEt3-TiCl4(3/1)では(a),AlEt3-TiCl4(2/3)では低重合度,非晶性の(c)のユニットから成るポリマーとなるが,AlEt3-TiCl4-塩基(3/1/4)の三元系触媒では(a)と(b)混合型のユニットから成る高重合度,可溶性のポリマーが得られた。またポリマーの溶解性は重合形式だけでなく,X線回折で調べた結晶性に大きく依存することが判明した。他の触媒系についても,生成ポリマーの構造はノルボルネンの重合にほぼ対応するが反応性はずっと低い。
  • 小林 四郎, 三枝 武夫, 古川 淳二
    1967 年 70 巻 3 号 p. 375-377
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ノルボルネンの重合については三形式の反応が知られている。すなわち,ビニレン型重合(a)と,開環してトランス二重結合ユニットとなる重合(b),および開環してシス二重結合となる重合(c)である。本研究ではチーグラー触媒系にハロゲンを添加したときの生成ポリマーの構造を,赤外吸収スペクトルおよびX線回折法によって調べた。(a)+(b)の混合型ポリマーを与える触媒系,すなわちAlEt3-TiCl4(2.5/1)にヨウ素を添加すると(b)の生成が抑制され,三成分系AlEt3-TiCl4-I2(2.5/1/1/~3)では,高結晶性のビニレン型ポリマー(a)のみとなる。一方,二成分系AlEt3-TiCl4(0.5~6/1)では(a)は起こらずに(b)+(c)が起こる。これらの触媒系のノルボルネン重合における挙動と,ブタジェンのシス-1,4-高重合触媒としての挙動を比較した。さらに,三成分系AlEt3-TiCl4-Br2および二成分系AlEt3-TiBr4についても検討した。
  • 石森 岐洋, 鶴田 禎二
    1967 年 70 巻 3 号 p. 378-384
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    有機亜鉛化合物とエーテルとの反応を分光学的に検討した。ジエチル亜鉛(ZnEt2)に対するさまざまのエーテルの相対的配位強度(donor power)をZnEt2の赤外吸収バンドの波数より定めた。このような方法で定めたさまざまのエポキシドの相対的配位強度とTaftの極性因子(σ*)との間には直線関係が存在する。ZnEt2とテトラヒドロフラン(THF)との反応は次のような平衡反応である。
    平衡定数K1およびK2を,Lorentz式を用いて赤外吸収曲線のバンド分離を行なうことにより定めた。THFまたはNEt3に対する有機亜鉛化合物のルイス酸(または受容体)としての性質をIR,またはNMRスペクトルにより調べた結果,次のような順,ZnEt2>EtZnOR>Zn(OR)2が見いだされた。
    有機亜鉛化合物に関して得られた結果をもとに,ZnEt2-ROH系によるプロピレンオキシドの重合を配位アニオン機構という観点より考察した。
  • 岩月 章治, 西尾 圭司, 山下 雄也
    1967 年 70 巻 3 号 p. 384-387
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    p-ジオキセン(PD)-無水マレイン酸(Manh)のラジカル交互共重合系の溶媒(ベンゼン,トルエン,m-キシレン,クロロホルム,四塩化炭素,ジオキサン,四臭化炭素およびn-ブチルメルカプタン)への連鎖移動反応を検討し,考えられているPD-Manhの錯合体のラジカル付加の方向を考察した。重合は開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを使用し60℃で静置重合した。得られた共重合体はLiClを0.1wt%含むN,N-ジメチルホルムアミドを溶媒とし,ウベローデ希釈粘度計を使用し30℃で粘度測定し固有粘度を求めた。上記あ各溶媒での連鎖移動定数と溶媒の連鎖移動における一般反応性項(Qtr)と極性項(etr)とから,PD~Manh系のe値はほぼ+0.4~0.5となる。したがってPD~Manh交互共重合系の溶媒の連鎖移動反応ではManhラジカルが重要な役割をしていること,および考えられているPD~Manh錯合体はラジカル攻撃をPD側で受けManhラジカルを生成して生長していることがわかる。
  • 町 末男, 藤岡 修二, 鍵谷 勤
    1967 年 70 巻 3 号 p. 388-390
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本報では,各種の溶媒の存在下でエチレンの高圧放射線重合反応を行ない,重合速度および重合物の重合度に対する溶媒の種類の影響を調べ,溶媒の作用について検討した。重合反応は内容積100mlのステンレス鋼(SUS-27)の耐圧容器内で,圧力300kg/cm2,温度24~26℃,線量率2.5×104rad/hrの条件下で溶媒50mlを用いて行なった。メタノール,エチルエーテル,酢酸エチルを溶媒とした場合には重合速度は比較的大きく, 1 ~ 5 g ポリマー/l・hrである。一方, n-ヘキサン, トルエン, キシレンを用いた場合には重合速度は小さく,0.05~0.2gポリマー/l・hrであることが見出された。GR(放射線によるラジカル生成のG値)の大きい溶媒を用いた場合は重合速度は大きく,GRの小さい溶媒の場合には重合速度は小さい。これらの結果は,溶媒存在下のエチレン放射線重合反応においては開始ラジカルは溶媒およびモノマーから生成し,その速度定数は溶媒とモノマーのGRに比例するという考えによって説明し得る。
  • 横山 正明, 紺屋 栄
    1967 年 70 巻 3 号 p. 390-393
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ホスホン酸ジイソシアネートは脂肪族, 芳香族ジイソシアネートに比べ, 著しく反応性に富む。アルキルおよびフェニルホスホン酸ジイソシアネートと種々のジオールとの反応を直接重付加,溶液重付加の二方法で行ない,ポリホスホリルウレタンを合成し,その性質を調べた。用いたジオールは脂肪族10種,芳香族3種で,ホスホン酸ジイソシアネートは,脂肪族3種とフェノールの計4種である。これらの反応はいずれも,室温で発熱して進行する。脂肪族アルコールとの反応は,アルコールの炭素鎖が長くなるにしたがって反応性は低下する傾向がみられる。えられた重付加物の融点は,ほとんどのものが100℃ 以下で低く,炭素鎖の長くなるにしたがって低下し,メチレン基4以上のアルコールからえられた重付加物は粘稠なペースト状である。また側鎖の多いアルコールからえられた重付加物ほど融点は低い。芳香族ジオールとの反応からえられた重付加物も融点は低い。しかし脂肪族のそれよりやや高い。極限粘度も小さく,いずれも0.1以下で高ポリマーのものではない。
    熱分析の結果,重付加物は約20O℃ から減量が始まり,300℃ をこえると急速に分解する。
  • 西村 正人, 藪 幹雄, 杉原 瑞穂
    1967 年 70 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    線状のポリスチレンスルホン酸(PSA)とポリピニルアルコール(PVA)とからなる均質膜は,100~150℃で適当な時間熱処理すると高度に不溶性となり,容易にかつ安価に性能の優秀な均質陽イオン交換膜が得られることを見出した。そこでこの両者からなる均質膜および合成繊維補強材に浸漬塗布して得た補強膜について,膜組成と熱処理条件を変化させて,得た膜の性能を検討した。
    その結果,適切な条件下では,きわめてすぐれた性能を有する陽イオン交換膜が得られ,膜中陽イオン輸率0.92~0.96(1N/2N塩化カリウム溶液間),比抵抗50~130Ω・cm(1N塩化カリウム溶液中),膜中陽イナン濃度3~5.5Nの値を示し,高濃度電解質溶液中で,すぐれた陽イオン選択透過性を有する膜を得た。また均質膜を熱処理すると高度に不溶化する主要な原因につき検討した結果,膜中のPVAのOH基が,PSAの酸性を触媒として,分子間で脱水縮合して架橋し,形成される網目構造中にPSAがとじこめられて不溶化するものと推論した。
  • 菅坡 和彦
    1967 年 70 巻 3 号 p. 399-401
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 今村 寿一, 太田 暢人
    1967 年 70 巻 3 号 p. 401-403
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 飯田 弘忠, 遠藤 基雄
    1967 年 70 巻 3 号 p. 403-404
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 東 広巳, 浪川 茂夫
    1967 年 70 巻 3 号 p. 404-405
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 橋本 静信, 小池 和太郎, 松田 芳樹
    1967 年 70 巻 3 号 p. 406
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
  • 1967 年 70 巻 3 号 p. A17-A28
    発行日: 1967/03/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    These abstracts are prepared for the benefit of our readers abroad to assist them, to form a general idea of the contents of the present issue, written in Japanese by the respective authors. Readers are recommended to refer to the tables, the figures, the formulae etc. in the original papers.
feedback
Top