アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物により四塩化炭素をフッ素化する際の, 各種の金属塩化物の触媒効果を求め,またその接触機構につき検討した。
まず, フッ素化剤をフッ化ナトリウムとし, 四塩化チタンなど8 種の多価金属塩化物, 第1周期のマンガンから亜鉛までの2 価の遷移金属塩化物を触媒として加え, オートクレープ中, 反応温度250℃, 反応時間2 時間の反応条件下に, 促進効果を比較検討した。この結果, フッ素化反応系内でフッ化ナトリウムと反応して, リガンド交換活性な高配位錯フッ化物を生成しやすい金属塩化物に触媒活性が認められた。
つぎに, 触媒を塩化第二鉄とし, 数種のアルカリおよびアルカリ土類金属フッ化物でフッ素化し, その結果を無触媒の場合と比較した。一方, 反応後に塩化第二鉄の昇華付着量を測り, 錯塩化度の目安とし, 錯塩化度の大小と触媒効果の大小との関係を求めた。これらの結果からも塩化第二鉄が反応系内で金属フッ化物と反応して錯フッ化物を形成しやすい場合ほど, その触媒としての効果が大きいことがわかった。
以上の実験の結果から, 金属塩化物の触媒効果は, 熱力学的に安定であるが, 反応性の大きい外軌道, 高配位錯フッ化物の生成およびこれらが反応に関係することが確かめられた。
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