工業化学雑誌
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73 巻, 5 号
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  • 山田谷 正子, 木下 武, 下村 欣也, 内田 〓
    1970 年 73 巻 5 号 p. 847-851
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウム水溶液とからアルミナ水和物を沈殿させる場合, 溶液の濃度, pH, 温度などを変化させ, さらに炭酸アンモニウムを添加して, アルミナ水和物を生成した。そしてこれら沈殿条件が水和物を 500℃ で焼成してえられるアルミナの性質におよぼす影響を検討した。
    アルミナ水和物については,結晶構造および不純物 SO3 含量を, 500℃ 加熱後のアルミナについては, 結晶構造, 結晶子の大きさ, 単位粒子径分布, 表面積および細孔径分布などの測定を行ない, また電子顕微鏡により粒子形状を観察した。その結果, 水和物では沈殿条件によって, 結晶構造および SO3 含量が変わるが, アルミナでは結晶構造, 単位粒子径分布はほとんど変わらず, 細孔構造が著しく変化することを知った。沈殿時における炭酸アンモニウムの添加は,アルミナ水和物の SO3 含量を低下させ, バイヤライトの結晶成長を防止し, アルミナ (500℃ 加熱) の細孔容積を著しく増加させる効果を示した。
  • 上原 勝, 鈴木 貞雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 852-855
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    担持パラジウム触媒の水素収着を, X線回折測定より研究した。その結果, パラジウム中に溶解した水素によるパラジウム格子の膨張と, 水素収着量との間には直線関係があることがわかった。したがって, この結果はX線回折測定によって水素収着等温線が測定されること, およびパラジウム触媒による水素化・脱水素化反応が作用状態にある触媒のX線回折測定により検討できることを意味していると考えられる。
    そこで, パラジウム触媒による n-ブタンの脱水素化反応を, X線回折測定より検討した結果, パラジウム-活性炭触媒では, 160℃ 以上の温度で反応が起こっていることがわかった。すなわち, 飽和炭化水素から比較的低温で不飽和炭化水素の生成の可能性のあることが示された。
    また, パラジウム-活性炭触媒の場合, 溶解水素によって形成されるα相とβ相とが共存する条件 (圧力または温度) は, 従来とは異なり, 一定にならず, ある条件範囲にわたっていることがわかった。さらに, α相にもβ相にも入らない中間格子定数を有する固溶体 (d=3.977Å) が再びみつかった。
  • 上原 勝, 鈴木 貞雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 855-859
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    各種担持パラジウム触媒による水素収着等温線を測定したところ, 従来より知られているα相-β相共存の水平部を有する階段型等温線を示さない場合があることがわかった。得られた等温線の型は,大別すればつぎの3種になる。
    (i) 完全階段型等温線, α-β共存の水平部が明瞭で, ある一定の水素圧でα-β相転移を起こす場合。これに属するパラジウムは, ほぼ均一なパラジウム粒子から成っていると考えられる。
    (ii) 不完全階段型等温線, α-β共存の水平部が不明瞭で, α-β相転移を起こす条件にある範囲を有する場合, これに属するパラジウムは, ほぼ連続的な粒子分布を持っていると考えられる。
    (iii) 非階段型等温線, α-β共存の水平部が認められない場合。これに属するパラジウムは結晶格子を形成していないか, または極端に小さな結晶格子で, 担体の影響を大きく受けていると考えられる。
    これら3種の等温線の型は, 担持パラジウムの比表面積の増大とともに, 完全型→不完全型→非階段型に変わる傾向がある。
  • 江頭 誠, 住江 久欣, 坂本 光久, 清山 哲郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 860-865
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    オレフィン酸化における酸化ビスマス-酸化モリブデン系触媒の機能を明らかにするために, 6種の触媒のプロピレンによる還元反応を 450~700℃ で行ない, 触媒の相変化とプロピレンからの生成物の相違を追跡した。
    X線回折によれば, 触媒はいずれも MoO2 と金属ビスマスまで還元されるが, その経路は各化合物により異なる。(1) MoO3[I]→Mo4O11→MoO2, (2) Bi2O3・3MoO3[II] または Bi2O3・2MoO3[III]→Bi2O3・2MoO3[IV]+MoO2→MoO2+Bi, (3)[IV]→MoO2+Bi, (4)3Bi2O3・MoO3[V]→IV+Bi→MoO2+Bi, (5) Bi2O3[VI]→Bi。一方 I, II, III, IV の還元反応ではアクロレインと炭酸ガスが接触酸化反応と同じ選択率で生成し, V では中間体 IV の還元が起こるようになって初めてアクロレインが生成する。また VI では生成物は炭酸ガスのみである。このようにアクロレイン生成には MO6+→Mo4+ の還元反応が不可欠であり, Mo6+ は酸素キャリヤーとしての役割を果たしている。
    さらに, II, III, IV の還元反応初期のみかけの活性化エネルギーを求めた結果, 接触酸化反応と同じ値が得られた。これらの事実から, 接触酸化反応は触媒の酸化還元サイクル (Mo6+〓Mo4+)で進み, しかも還元過程を律速段階とするといえる。
  • 赤林 宏, 吉田 明利, 大坪 義雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 866-871
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    メタノールシリカゾルに種々の物質を添加し, ゲル化の状態を検討した。ゲル化性を示した薬品は, 炭酸アンモニウム, 酢酸アンモニウム, 水酸化ナトリウム, 炭酸ナトリウム, 水酸化カリウム, 亜硫酸水素アンモニウムおよび種々のアミン類である。これらの塩,アミンをメタノールシリカゾルに添加し,添加量,水分を変化させ,粘度の経時変化を測定した。メタノールシリカゾルは塩の種類と量によってゲル化が左右される。また系中の水分はゲル化の速度を変え,水分 8~32% の間に最もゲル化し易い点がある。ゲル化剤として酸性とアルカリ性の二つの種類があり, 各ゲル化機構は異なると考えられるが, 外観上の差異は認められない。生成したゲルはいずれの場合も比較的かたく, メタノール, 水によってうすめても, 再びゾルにもどらない点と, 水分の影響を考え,塩によるゲル化はシラノール基の脱水によるシロキサン結合がシリカ粒子間に生成し,網状構造をとってゲル化したものと推定される。
  • 赤林 宏, 吉田 明利, 大坪 義雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 871-874
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    種々の粒子径をもった水性シリカゾルからメタノールシリカゾルを作り, これにアンモニア, モルフォリン, モノエタノールアミン, ジエタノールアミン, トリエタノールアミン, モノメチルアミンを加え, そのときの添加量, 温度を変え, 粘度変化を回転 粘度計によって測定した。
    アミン類は水溶液中の解離恒数の大きいものほど粘度を上昇させる。また添加量に比例し粘度も上昇し, そのときの温度は低い方が粘度が高く, 高い場合は粘度は低い。ゾル中のシリカ粒子は大きい方が粘度上昇が少ない。ゲル化の状態は粘度が徐々に上る場合と, 短時間に粘度が上昇して, それ以後は大きな変化がない二つの場合がある。粘度が上昇しゲル化したものでも, 再び応力を加えるか, メタノールまたは水を加えればゾルに復する。以上のことから, メタノールシリカゾルのシリカの濃度がある点より大きい場合は, アミンによって粒子間の接近あるいは結合によって網状構造をとり, 粘度が上昇し, あるいはゲル化する。そしてその結合が応力または希釈によって粘度の低下あるいはゾルにもどると考えられる。
  • 四ツ柳 隆夫, 後藤 克己, 永山 政一
    1970 年 73 巻 5 号 p. 874-878
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    フミン酸と金属イオン凝集剤との相互作用の機構を明らかにするために, 酸性 pH 領域におけるフミン酸の凝集挙動を調べた。凝集剤としては, 塩化第二鉄, 塩化アルミニウム, 硝酸クロムおよび過塩素酸2核クロム錯体を使用した。塩化アルミニウム凝集剤の場合, 三つの独立した凝集領域, すなわち, フミン酸凝集領域, 通常, 水処理に利用される凝集領域および, pH4~5 付近の第三の凝集領域 (B) の存在が観察された。凝集領域 (B) においては, アルミニウムイオンとフミン酸の沈殿する pH 領域はよく一致するが, 両者の残留率は一致しない。また, この pH 領域は Al(OH)2+ イオンが主として存在する pH 条件とよく対応する。
    類似の凝集領域は第二鉄塩やクロム塩を凝集剤とした場合にも存在し,それぞれ, Me(OH)nα+ や Me2(OH)a'n'+の存在する pH 領域とよく対応した。また, OH- をもたない金属イオン Mex+ が主として存在する領域では凝集領域 (B) は観察されなかった。以上の結果は, フミン酸と金属塩凝集剤との間の相互作用の中に, 静電気力によるものと錯形成反応によるものの他に, 金属イオンに結合した OH- とフミン酸の官能基 (-COOHなど) との相互作用があり, これが凝集反応において重要な役割を果すことを示すものである。
  • 平尾 穂, 大門 信利
    1970 年 73 巻 5 号 p. 879-883
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本報告は溶融温度の異なる二種類の合成フッ素雲母 {フッ素金雲母[F2KMg3(AlSi3O10)], 四ケイ素雲母 (F2KMg2.5Si4O10)} 結晶粉末を適当量混合し, 結合剤としてリン酸を用い, 加圧成型後, 焼成して吸水率 0% できわめて高い密度の合成雲母成型品を得ることを目的とした製造方法である。
    試料粉末の粒度, 混合比, リン酸の添加量, 加圧成型法, 成型圧および焼成温度等について, 各因子の成型品におよぼす影響を調べ, 吸水率 0% の成型品を得る最適条件を求めた。最適条件はつぎのようであった。(1) 試料粉末の粒度 : 325メッシュ以下, (2) 混合比 : 50~50(wt%), (3) リン酸の添加量 : 5~10%, (4) 加圧成型法 : 室温真空加圧成型, (5) 成型圧 : 2000kg/cm2 以上, (6) 焼成温度 : 1100°~1200℃。
  • 中根 正典, 三宅 義造, 一柳 博康, 藤原 京治
    1970 年 73 巻 5 号 p. 883-886
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    電子工業用材料とくにシリコン, ゲルマニウムのドーピング剤として使用する高純度オキシ塩化リンの製造が要求されている。そこで本研究はこの目的に使用することのできる純度の製品を得るための精製法を確立するために行なった。
    蒸留精製過程における多くの不純物の挙動について検討し, 市販のオキシ塩化リン中には比較的多くのヒ素およびイオウ化合物が含まれていること, そしてイオウ化合物の除去がもっとも困難な問題であることがわかった。そこでイオウ化合物を除去する目的で, 蒸留における種々の添加剤の効果を検討した。この結果銅粉の添加はイオウ化合物の除去は勿論ヒ素の除去に対しても, もっとも効果のあることを見出した。
    高純度オキシ塩化リンの製造法と発光分光分析法を確立した。この分析法を用いて, 本法によって精製した製品の純度を検定し, ほぼ6-ナイン程度であることを認め, 十分上記目的に合致するものであることを確認した。
  • 奥脇 昭嗣, 佐藤 正喜, 岡部 泰二郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 886-891
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    亜硫酸を用いる湿式銅製錬の工程で生ずる硫酸-硫酸銅混合溶液より硫酸を分離し, 硫酸銅を回収使用する方法として, イオン交換膜法について研究した。
    実験は旭硝子製拡散透析槽 T-Ob 型にセレミオン DMT, 電気透析槽 Du-Ob 型にセレミオン CMV2-セレミオン AST を装着して行なった。
    1. 拡散透析においては, 約 94% の収率で還元母液中の硫酸銅を回収できる。一方, 拡散液中の硫酸も 70~80% の収率で回収できる。
    2. 電気透析においても, 拡散透析の場合と同程度の硫酸銅の回収ができ,またその濃度は混合溶液の硫酸銅より高くなる。しかし, 得られる硫酸濃度は 2.5mol/l 前後にしかならず, 濃縮電力は 3,000kWh/t・H2SO4 以上を要する。このように電気透析によって高濃度硫酸を能率的に取得するのは困難である。
  • 小村 照寿, 今永 広人, 渡辺 信淳
    1970 年 73 巻 5 号 p. 892-895
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    塩化マグネシウムの電解における陰極電流効率の低下に対する酸化マグネシウムおよび酸化ホウ素の作用機構について検討した。酸化マグネシウムはマグネシウムの溶解度には影響しないので,その効果は浴中へのマグネシウム粒子の分散を引き起こすためと考えられる。このようなマグネシウム粒子の凝集の妨害は, 溶融塩中に分散した酸化マグネシウムがマグネシウム粒子の表面に吸着することによるものと推定される。
    また, 酸化ホウ素の添加はマグネシウムの溶解度にほとんど影響がないうえ, これは陰極で電気化学的な還元もうけない。しかし, 酸化ホウ素はマグネシウムと反応してマグネシウムの損失をまねくばかりでなく, 反応の結果マグネシウム粒子の表面に酸化マグネシウムやホウ化マグネシウムなどを生成する。そのため, マグネシウム粒子の分散をも助長することになるので, マグネシウムの電流効率は大きく低下するものと推定される。
  • 菅坡 和彦, 藤井 綾子, 高木 憲夫, 久保 勝, 久野 武夫
    1970 年 73 巻 5 号 p. 896-900
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    この研究では塩化マグネシウム水溶液の隔膜電解における, 電解条件と生成水酸化マグネシウムの性質との関係を追求した。その結果に基づいて, 粗大粒子の水酸化マグネシウムの沈殿過程を推察した。
    陰極電流密度および電流濃度が大きい場合には, 陰極液中に生じた沈殿は通常の水酸化マグネシウムであることが確かめられた。これに対して, 陰極電流密度および電流濃度が小さい場合には, 電解初期に「中間生成物」を生じ, これが電解後期に水酸化マグネシウムになることが認められた。「中間生成物」を生ずる電解条件で最終的に得られる水酸化マグネシウムは比較的大きな結晶であることが認められた。「中間生成物」の生成条件を明らかにした。
    化学分析, X線回折および熱分析の結果に基づいて, この「中間生成物」はmagnesium hydroxide chloride hydrate, Mg3・(OH)5Cl・4H2O であることを推察した。
  • 宮崎 和英
    1970 年 73 巻 5 号 p. 900-904
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルカリ・マンガン乾電池の二次電池化の試みに伴う問題点を摘出するため, その充放電時の陽極二酸化マンガン粒子の状態変化をX線回折とX線マイクロアナリシスとを併用して観察し, つぎのことを明らかにした。
    (1) 二酸化マンガンの放電を軽度にとどめてもカリウム・イオンが粒子内に侵入していることが認められ, 放電が進行するにつれて亜鉛イオンも外部から粒子内部へ滲透してくる。
    (2) このカリウムと亜鉛は, 充電によっても粒子外へ駆逐されることなく粒子内に留まることが認められる。
    (3) 放電の最終的な生成物はヒドロヘテロライトであり, これに至る途中の生成物として四三酸化マンガンと, Potassium Permanganite がある。後者は主として間欠重放電の場合に部分的に生ずる。
    (4) 四三酸化マンガンを充電すると Potassium Permanganite に移行し, もとの二酸化マンガンの状態にまでさかのぼって回復しない。この Potassium Permanganite は, 放電すると直ちにヒドロヘテロライトになる。それら各段階でのミクロ的状態は明らかに異なる。
    (5) このように, 放電の浅い深いにかかわらず二酸化マンガン粒子中にいったん侵入したカリウムと亜鉛は, これをいわゆる充電によって粒子から引き離すことは困難であり, ミクロ的に斯る不可逆的な変化が生じていることが従来アルカリ・マンガン乾電池の二次電池化の試みを困難ならしめてきた重要な原因のひとつであるように思われる。
  • 佐藤 誠, 松木 健三, 菅原 陸郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 905-908
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    回転白金電極上に, 二酸化マンガンを電析させて調製した回転二酸化マンガン電極上での二酸化マンガンの析出反応について検討を行なった。実験は, 硫酸マンガン 0.1~0.004mol/l, pH1~3 の溶液を用い, 温度は 25 ℃ で行なった。えられた結果を要約するとつぎのとおりである。(1) ポテンシャルスイープ法により, 試料極の自然電極電位から貴の方向へ分極させて分極曲線を測定すると, 残余電流がみられず, 電流は急に増加してピークを示す。(2) ピーク電流におよぼす回転数, 温度および濃度などの影響から, 析出反応は溶液内におけるイオンの拡散律速とは考えられない。(3) スイープ速度 (ν) をかえて分極曲線を測定すると, ピーク電流は v1/2 と直線関係を示す。これは低次の酸化物 (MnOOH) が H+ イオンを遊離して二酸化マンガンを生成し, H+ イオンが二酸化マンガン固相中を拡散して消失する過程が律速段階になっているためと考えた。したがって, 溶液内における拡散と同様に, ピーク電流は v1/2と直線関係を示すものと説明することができる。
  • 高橋 不二雄, 相沢 益男, 水口 純, 鈴木 周一
    1970 年 73 巻 5 号 p. 908-912
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    生体内エネルギー代謝を利用した有機燃料電池の開発を目的として, 生体内電子伝達系物質である Nicotinamide adenine dinucleotidephosphate (NADP) の酸化還元系をアノード反応に導入することを試みた。燃料としてブドウ糖完全酸化の中間物であるグルコース-6-リン酸 (G-6-P) を使用した。
    その結果, G-6-P がすべてグルコン酸-6-リン酸 (GA-6-P) に酸化されるまで, つぎに示す生物化学的電池反応のサイクルが行なわれていること, すなわち直接電極反応をし難い有機物の化学エネルギーを生体内電子伝達系物質を介して電気エネルギーに変換し得ることがわかった。
  • 高橋 不二雄, 相沢 益男, 水口 純, 鈴木 周一
    1970 年 73 巻 5 号 p. 912-915
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD) の酸化還元系を用いた電池のアノード反応が遅い原因を, アノード界面における反応物質 NADH, および反応生成物質 NAD の吸着状態から検討した。その結果, 三角波ボルタンメトリーによる白金極の電流, 電位曲線において, いわゆる水素前置波の抑制度から NAD が NADH よりも強く吸着していることが見出された。すなわち反応生成物が電極界面から脱着し難く, 反応物質の活性点を奪っているためアノード反応が遅くなると考えられる。
    これらの知見をもとに, アノード反応を速くする方策を検討した結果, つぎのような全反応式で示される電池, すなわち NADH に加えて, さらに NADH から水素を受容する化合物をも添加し, これを直接のアノード反応物質とすることにより, アノード特性を著しく向上し得た。
  • 池田 早苗, 武者 宗一郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 916-919
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    回転白金電極 (1000rpm) を指示電極, SCE を対極とし, 硝酸銀を滴定剤とする短絡電流滴定法によって, 硫化染料中に含まれれる遊離イオウを精度よく定量できる分析方法を確立した。
    硫化染料中の遊離イオウをベンゼン, アセトン, 二硫化炭素などで抽出したのち, シアン化カリウムを反応させてチオシアン酸イオンとする。過剰のシアンイオンをホルマリンでマスクし, 0.02% ゼラチン存在下希硝酸酸性で電流滴定を行なう。ベンゼン。アセトン抽出の場合はそのままアセトン中でシアンイオンと反応させて滴定できるが, ベンゼンまたは二硫化炭素で抽出する場合は, これらの溶媒を除去したのち, 60% イソプロピルアルコール-水中でシアンイオンと反応させる必要があった。この方法 (ベンゼン抽出の場合) によって各種硫化染料 (0.1~0.5g) 中の 0.08~9.8% の遊離イオウを変動係数約 1% の滴定精度で定量することができた。
    電位差滴定, ポーラログラフィーとも比較し, 定量値の一致を確認した。
  • 鴻巣 久雄, 佐藤 忠
    1970 年 73 巻 5 号 p. 919-923
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    反応性無機ガスを定量するため, 従来の凝縮気化法の装置を改良し, 数種の代表的な試料ガスに応用した。本装置は総ガラス製で, サンプリング系, 凝縮・気化系およびその測圧系より構成される。測定にあたっては, 系内を 10-2mmHg 程度の真空にし, 液体窒素で冷却してあるトラップに一定量の試料ガスを導き, 反応性ガスを凝縮捕集して非凝縮ガス (窒素) を排気する。ついでトラップを室温にし ( 二酸化窒素の場合は 98℃ ), 一定容積中に気化させた反応性ガスの圧力をブルドン型真空計で測定する。試料ガスには, 反応性ガスに窒素をバランスガスとして高圧ガス容器に充填した各種2成分混合ガスを用いた。本法により塩化水素 0.01~1.2%, 塩素 0.07 ~10.2 % , 二酸化窒素 0.01~0.13%, 硫化水素 0.008~1.0%, 二酸化イオウ 0.002~0.10%, アンモニア 0.02~1.1% を定量した。分析所要時間は 10~20 分である。変動係数は 2.5% 以下である。本法と化学的分析法との間には 10% 以内の差異があった。
  • 荒木 峻, 鈴木 繁喬, 高畑 靖世
    1970 年 73 巻 5 号 p. 923-928
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    試料を連続的に導入すると同時に液体 (PEG 400) をキャリヤーガスと逆方向に移動させる方法で試料処理量を増大した向流型連続ガスクロマトグラフを試作し, その基本的条件を検討した。二成分系の分離条件は, 分離管温度, キャリヤーガス流量, 液体 (PEG 400) の流量の関数として導びかれ, 実際に沸点の近似したシクロヘキサン (bp 80.7℃)-ベンゼン (bp 80.1℃) 系や共沸混合物を作る n-ヘキサン-エチルアルコール系などの分離を行なった。また理論段数についての考察をおこない, 理論段数を求める式も検討された。
  • 中田 昌宏, 福士 幸雄, 冨田 弘, 益子 洋一郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 929-932
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    クロルおよびブロムベンゼン類のガスクロマトグラフ分析を行なった。固定相液体にシリコーン SE 30 およびベントン 34 を用い, 昇温および恒温操作でこれらの化合物の異性体について良好な分離が得られた。それらの保持時間より沸点未知の 1,2,3-, 1,2,4,5-, 1,2,3,4-, ペンタおよびヘキサブロムベンゼンの沸点を推定し満足な結果を得ることができた。ベントン 34 固定相液体は熱安定性が悪く, 160℃ 以上ではその分解が激しく, 劣化に伴って試料の保持時間が大きく変動し, とくに極性物質についてこれが著しい。この原因について調査した結果, 熱または酸化分解により, 固定相液体の極性が低下し, 無極性に移行し, 劣化過程で混合固定相液体に類似する挙動を示すことによることがわかった。
  • 越後谷 悦郎, 渡辺 徹, 佐野 宏
    1970 年 73 巻 5 号 p. 933-937
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    Bi-Mo 触媒を使用してブテンの酸化脱水素反応を流通法で行ない, 触媒活性と選択性に及ぼす担体の効果を検討した。
    活性アルミナを 30wt% 含有する触媒が最も高い活性を示し, 反応温度 450℃ においてブタジエン収率 65%, 選択率 71% が得られた。
    同時に起こるブテンの異性化反応を考慮に入れて, 酸化脱水素反応の速度論的検討を 340~420℃ の範囲で Bi-Mo-Al 触媒と Bi-Mo 触媒それぞれで行なった。速度はいずれも酸素に○次, ブテンに一次とする式でよく整理できる。Bi-Mo-Al 触媒上での異性化反応速度が Bi-Mo 触媒上のそれより数倍速いことが判った。
    Bi-Mo-Al 触媒および Bi-Mo 触媒中には Bi2O3・3MoO3 なる化合物が存在することが, 示差熱分析とX線回折によって確かめられたが, この化合物と触媒活性との間の関係は見い出せなかった。
  • 田中 久吾, 小林 孝, 井上 伍郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 938-942
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アセトアルデヒドとシクロヘキサノンの共酸化による ε-カプロラクトンの合成法の検討を目的として, まずアセトアルデヒドの加圧液相酸素酸化による過酢酸の合成条件について検討した。探索実験の結果から, 触媒として硝酸コバルト, 溶媒として酢酸エチルを選び, この組合わせで速度論的検討を行なった。その結果, 酸化反応は反応初期と反応中期以後では異なった反応機構で反応が進み, 反応速度は, 初期ではアセトアルデヒド濃度の1次, 過酢酸のほぼ 0.5 次に, 中期以後ではアセトアルデヒド濃度の 1.5 次に比例することを認めた。触媒としてコバルトアセチルアセトナート (C o(acac)3) を使用すると, 反応初期からアセトアルデヒドの 1.5 次に比例する。このことから, 硝酸コバルト触媒 (Co(NO3)2・6H2O) の場合は, 反応中触媒の原子価が変わり, そのため連鎖開始反応が異り反応次数が変るのであろうと推論した。過酢酸の生成速度, 収率は溶媒によって影響される。酢酸溶媒では, 過酢酸以外の過酸化物の生成が促進され, 過酢酸の収量も減少する。酢酸エチル溶媒では過酢酸以外の過酸化物の生成はほとんど認められなかった。これらの結果をもとにして, 過酢酸合成の最適条件を求めた。
  • 田中 久吾, 小林 孝, 井上 伍郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 943-945
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンの過酢酸酸化によるε-カプロラクトンの合成反応について検討した。この反応はシクロヘキサノンと過酢酸の濃度のおのおの1次 (計2次) 反応として表わされ, 酢酸の存在により反応は促進されることを認めた。反応温度が 50℃ を越すとε-カプロラクトンの収率は低下することから反応温度の上限を 50℃ と定めた。
    次に過酢酸とアセトアルデヒドの反応を酢酸エチル溶媒, 硝酸コバルト触媒存在下で検討し, この両反応の結果から, 過酢酸に対するシクロヘキサノンとアセトアルデヒドの反応性を比較した。その結果, アセトアルデヒドの方がシクロヘキサノンよりも約 13 倍も速やかに過酢酸と反応することが判った。
    次にシクロヘキサノンとアルデヒドの共酸化反応を検討し, 硫酸第一鉄の添加がアルデヒド基準のε-カプロラクトン収率 (アルデヒド利用率) を向上させることを見出した。シクロヘキサノンとアセトアルデヒドの共酸化反応はシクロヘキサノンがアセトアルデヒドの酸素酸化反応に関与してアセトアルデヒド単独の酸化の場合よりも酸化速度は低下する。そのために, アセトアルデヒドの酸素酸化と過酢酸とシクロヘキサノンの反応のおのおのの最適反応条件の組合わせが, 共酸化反応の最適条件とはならなかったが, アルデヒド利用率 71% を達成し, 2段法のそれに匹敵する値を得ることができた。
  • 相 衞
    1970 年 73 巻 5 号 p. 946-950
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    V, V-P, V-Mo 系触媒を用いて, 空気過剰の条件下 (HC/Air=2/98), 420~720℃ で, トルエンの接触気相酸化を行ない, ベンズアルデヒドの生成におよぼす触媒および反応条件について検討を行なった。V2O5 単独触媒では, 最高反応温度が触媒の融点 675℃ を越えられないので, ベンズアルデヒドの生成率は最高 16% 程度であった。V-P 系触媒の組成を P/V=0~2.0 とリンの添加量を変えても, トルエンの反応率,ベンズアルデヒドの生成率には変化はみられなかった。ただ, 触媒の融点が 1000℃ 以上に上るため, 高温での反応が可能になり, ベンズアルデヒドの生成率は 18% 近くになった。P/V=1.7 の触媒を用いて接触時間, 反応温度の効果を調べた。ベンズアルデヒドには高温で短い接触時間が好ましく, マレイン酸生成には逆に接触時間が長い方が好ましく, 最高生成率は 50% に達した。V-Mo 系触媒では Mo 含量が 0~33% (atom) では, その活性は V2O5 と同じであった。Mo 含量が 40% 以上では, トルエンの酸化活性も低いが, ベンズアルデヒドの分解活性がきわめて低く, その最高生成率は約 40%mol に達し, マレイン酸の生成率は 4% 以下と低かった。
  • 相 衞
    1970 年 73 巻 5 号 p. 950-954
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    V2O5 および V2O5-MoO3 系触媒を用いて, ブタジエン, フラン, クロトンアルデヒドの接触空気酸化を, 350℃, 空気過剰のもとで行ない, V-Mo 組成の変化による, ブタジエン酸化の活性, 選択性および反応機構におよぼす効果を検討した。
    V2O5-MoO3 触媒のブタジエンなどの酸化活性は, Mo 含量 20 atom% 付近が最大であり, ブタジエン, フラン, クロトンアルデヒドの反応性は, ほぼ同じ程度であった。ブタジエン酸化の中間生成物であるフラン, クロトンアルデヒド生成量は, V-Mo 組成によらず, ブタジエン反応率約 50% 付近に頂点をもつ山型となり, V-P 系触媒にくらべ, フランの生成量は 1/3 程度で, またフランの約 1/2 のクロトンアルデヒドの生成がみられた。
    無水マレイン酸への選択率は, ブタジエンからは, V2O5 触媒で 43%, V2O5-MoO3 (Mo/V>1/2) で 53%, フランからは, V2O5 で 60%, V2O5-MoO3 で 73% であった。Mo 添加により, ブタジエンから無水マレイン酸への選択率が増加するのは, ブタジエンからフランへの段階が影響されたのではなく, フラン以後の段階の選択性が高められたためと考えられる。
  • 津嘉山 正夫, 堀江 徳愛, 増村 光雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 955-959
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    多量の希硝酸 (7%) を用いて, o-および p-置換塩化ベンジルならびにα-クロルメチルナフタリンの酸化を, 不均一相で検討した。電子放出性基 (-OCH3, -CH3)は, 置換塩化ベンジルのアルデヒドへの酸化を容易にする。また, ベンズアルデヒドならびに o- および p-置換 (-OCH3, -CH3) ベンズアルデヒドが, それぞれ 70% 以上の高収率で相当する置換塩化ベンジルから得られた。また電子吸引性基 (-Cl, -NO2) は, 置換塩化ベンジルのアルデヒドへの酸化を抑制する傾向があり, o- および p-クロルベンズアルデヒドは, 50~60% の収率で o-および p-クロル塩化ベンジルから得られた。特に, o- および p-ニトロ塩化ベンジルは,全く酸化されなかった。α-クロルメチルナフタリンは, カルボン酸まで容易に酸化されるので, 40% 以下の収率でα-ナフトアルデヒドが生成された。
  • 川瀬 健雄, 荒井 弘通, 冨永 博夫, 功刀 泰碩
    1970 年 73 巻 5 号 p. 959-964
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    常圧流通式反応装置により o-, m-, p-クレゾールの水素存在下における熱分解反応を研究した。反応条件は温度 670~730℃, 滞留時間 0.4~2sec, 水素対クレゾールモル比約4とした。次に示す水素化脱メチル基反応および脱ヒドロキシル基反応が併発, 逐次的に進行することが知られた。
    クレゾールについての擬次反応速度定数は次のとおりであった。
    o- または p-位にヒドロキシル基またはメチル基が存在するとき, 水素化脱メチル基または脱ヒドロキシル基反応速度が加速される効果が明らかにされた。
  • 吉川 彰一, 林 隆俊, 谷 忠彦, 大嶋 尚
    1970 年 73 巻 5 号 p. 964-969
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    著者らは NaCl・KCl と CuCl または ZnCl2 との混合溶融塩中で C6H5・Cl や C6H5・C2H5 の塩素化を試み, 混合溶融塩の組成や反応条件と反応生成物との関係を検討した。
    芳香族化合物の 250~550℃ での塩素化において, 塩の組成や反応条件を適当に変化させると, それに応じて溶融塩の反応媒体としての作用が著しく異なってくることを認めたが, それは, 溶融塩の構造と密接な関係をもっているように思われる。例えば, C6H5・Cl の塩素化反応において塩化亜鉛のような分子性の溶融塩を選んだとき 250~300℃ 程度の反応温度では, o-, p-配向性のフリーデル・クラフツ型親電子的塩素化反応に対する促進効果が認められ, o-, p-位への置換塩素化物に富む反応生成物分布がえられたが, 塩化亜鉛が分子性を失なった 550℃ 程度の反応温度ではラジカル的反応が主体となり, 置換反応の方向性が失なわれるという結果からみても, 用いた塩の構造に応じてそれぞれ異なる型式の塩素化反応が進行し, それに応じた反応生成物分布が示され, さらに塩の選択や反応条件を綿密に検討することによって, 特定の反応生成物を比較的高収率で得られることを知った。
  • 嶋尾 一郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 969-971
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アルキルベンゼンをパラホルムアルデヒドと塩化亜鉛触媒とによってクロルメチル化した。過剰のアルキルべンゼン中で競争反応を行ない, 生成物をメチルエーテルに変えてガスクロマトグラフィーによってその相対量を測定した。アルキルベンゼンの相対反応速度 kR/kB は, ベンゼン:1,トルエン:6.0,エチルベンゼン:2.2,クメン:0.72, t-ブチルベンゼン:0.36であった。p-位置相対速度は Baker-Nathan の順に合致した。トルエンの相対反応速度 kT/kB は, 水の存在あるいは酢酸溶媒中で大となった。
    塩化キシリル以外のクロルメチル化物はか p-ニトロ安息香酸ナトリウムによりエステルとし, メタノールで分別結晶し p-体を分離した。そのエステルを加水分解して p-アルキルベンジルアルコールを得た。
  • 菅原 駿吾, 石川 延男
    1970 年 73 巻 5 号 p. 972-979
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    熱的に安定なポリアミドあるいはポリエステル用のモノマーを見いだす目的で, いくつかの多フッ素化イソフタル酸あるいはテレフタル酸を合成した。すなわちジフルオル-, トリフルオル-, クロルポリフルオル- あるいはブロムポリフルオル- 安息香酸類を約2当量の n-ブチルリチウムを用いてリチウム化し, えられたフルオルリチオ安息香酸リチウムをカルボキシル化してつぎの化合物をえた。
    2,4-ジフルオルイソフタル酸 (2,4-ジフルオルまたは 3-ブロム-2,6-ジフルオル安息香酸より), 4,6-ジフルオルイソフタル酸 (5-ブロム-2,4-ジフルオル安息香酸より), 5-クロル-2,4,6 -トリフルオルイソフタル酸 (3,5-ジクロル-2,4,6-トリフルオル安息香酸より), 2,4,6 -トリフルオルイソフタル酸 (2,4,6-トリフルオル安息香酸より), 2,6-ジフルオルテレフタル酸 (3,5-ジフルオル安息香酸より), 2,5-ジフルオルテレフタル酸 (4-ブロム-2,5-ジフルオル安息香酸より)。
    これらポリフルオルベンゼンジカルボン酸類のジアミド類あるいはジメチルエステル類も合成した。
  • 山田 和俊, 小中原 猛雄, 飯田 弘忠
    1970 年 73 巻 5 号 p. 980-984
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    インジゴ系染料の構造研究および質量スペクトルにおける開裂経路を決定するために, まず簡単なイサチン誘導体の質量スペクトルを測定した。それらの準安定イオンピーク, 高分解能質量スペクトル, 同位体ピークおよび二価イオンピークを解析しそれぞれの開裂経路を解明した。
    イサチン, 5-クロル-6-メトキシイサチンにおいては2個の CO が順次脱離し, インドール5員環部からの開裂が優先し, ついでアニリン開裂に類似の裂パターンがみられた。なお分子イオンからの HNCO の脱離の副経路も認められた。
    1-メチルイサチン, 1-メチル-5-クロル-6-メトキシイサチンにおいては1個の CO が脱離したあとさらに CO または CH2NH を脱離した。CO を脱離した場合はベンズアゼチニウムイオン (C7H6N+) が必ず認められ, わずかではあるが1位からの脱メチル反応も附随して表われた。全化合物こわたり 5, 6 位の塩素原子やメトキシ基の脱離は非常におこくいことがわかった。
  • 山田 和俊, 小中原 猛雄, 飯田 弘忠
    1970 年 73 巻 5 号 p. 984-988
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    イサチン類の質量スペクトルの知見にもとづいて, インジゴ系染料の質量スペクトルを解析した。
    インジゴの質量スペクトルにおいて分子イオン M+ は相当する準安定イオンピークを伴い, CO を順次2個失う。そしてさらに水素原子を失ったあとイオンの中央より分解しデヒドロベンズアゼチニウムイオンラジカル C7H5N.+ を生じる。このイオンは M+ より分子内水素結合に基づく脱フェニル化反応によっても生じ, このあとプロトン付加されてベンヅアゼチニウムイオンを生じるかまたは CN,・CNなどを失って開裂する。インジゴの場合にも 1-メチルイサチンの場合と同様にベンヅアゼチニウムイオンと C7H4O.+ の二つの生成が考えられた。これらの経路は 5, 7, 5', 7'-テトラブロムインジゴの同位体ピークによっても確かめられた。なおチオインジゴ系染料の質量スペクトルについても類似の経路が認められた
  • 小松 紀陸, 長沢 啓作, 小西 謙三, 黒木 宣彦
    1970 年 73 巻 5 号 p. 989-991
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-メチルイミダゾールに種々の芳香族アミンのジアゾ化物をアルカリ中でカップリングすることによりアゾ染料を合成し, 金属塩改質ポリプロピレン繊維および未改質繊維に染色した。イミダゾール環を含んだアゾ化合物は Fargher と Pyman によって合成されたが, 染料として繊維の染色に用いられなかった。ニッケルおよび亜鉛塩改質繊維は濃色に, 黄味茶, オリーブ, 黄味赤, 茶紫に染色され, 特にニッケル塩改質繊維は耐光性, 洗たく, ドライクリーニングおよびまさつ堅ろう度がすぐれていた。しかし未改質繊維は染色されなかった。亜鉛塩改質繊維はニッケル塩繊維よりも鮮明に染色されたが, 耐光性は非常に劣っていた。このように3種類の繊維はそれぞれ染色物の色調, 堅ろう度および染料の染着性が異なっていた。これらの事実は金属塩改質ポリプロピレン中でそれらの染料が金属とキレートを生成していることを示している。
    イミダゾール環は塩基性窒素原子を持っているため, それらの染料はカチオン染料としてカシミロンFに染色できる。モノアゾ染料は染着性は劣るが, ジスアゾ染料のなかには染着性がよく, 耐光性およびその他の堅ろう度のすぐれたものがあった。
  • 小松 紀陸, 改森 道信, 小西 謙三, 黒木 宣彦
    1970 年 73 巻 5 号 p. 991-995
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2,4-, 2,5-ジメチルイミダゾ一ルに種々の芳香族アミンのジアゾ化物をカップリングしてアゾ染料を合成し, 金属塩改質ポリプロピレン繊維に染色した。未改質繊維には染まらず, ニッケルおよび亜塩塩改質繊維には濃色に染まり, 特にニッケル塩改質繊維は耐光性, 洗たく, ドライクリーニングおよびまさつ堅ろう度がすぐれており, 亜鉛塩改質繊維は耐光性が劣っていた。2-メチルイミダゾールからの染料と比べて色調が深くなり鮮明であった。
    pHによる吸収スペクトルの変化を測定した結果, アゾ基のオルト位の水酸基は解離しやすく, 中性付近ではニッケルと 1 : 2 型錯体を生成し, また水酸基を持たない染料は 1 : 4 型を生成することが連続変化法により測定された。カシミロンFに酸性染色した結果, 2-メチルイミダゾールからの染料よりも染着性, 耐光性ともに1級ほどよくなっているが, 耐光性は3級であった。
  • 小松 紀陸, 安藤 虎彦, 小西 謙三, 黒木 宣彦
    1970 年 73 巻 5 号 p. 995-999
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    2-フェニルイミダゾールをカップリング成分とするモノアゾおよびジスアゾ染料を合成し, 金属塩改質ポリプロピレン繊維およびカシミロンFに染色して, 染着性, 色調, 堅ろう度について調べた。未改質繊維には染色されず, ニッケルおよび亜鉛塩改質繊維には濃色に染色された。耐光性はニッケル塩改質繊維にはすぐれていたが, 亜鉛塩改質繊維には非常に劣っていた。また 2-メチルイミダゾールおよび 2,4-ジメチルイミダゾールからの染料と比べて耐溶剤性が劣っていた。
    合成した染料の pH によるスペクトル変化および連続変化法によるニッケルとのキレートの結合比を測定した。
    フェニルアゾイミダゾール類およびフェニルアゾベンゼン系の λmax を測定し, イミダゾール環の λmax に及ぼす効果をベンゼン環と比較した結果, イミダゾール環はベンゼン環より約 20mμ 長波長に λmax を示すことを知った。
  • 亀尾 貴, 真鍋 修
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1000-1003
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    窒素で結合したアゾール類を有する s-トリアジニル色素 (I), (II) を合成し, それらの木綿繊維に対する固着率を測定した。結果, s-トリアゾール環に窒素で結合しているアゾール類はセルロースとの反応に対して活性な脱離基であり, 反応性染料の反応基として利用できることがわかった。またジクロル-s-トリアジニル色素の1つの塩素原子をアゾール類で置換した場合, 残る1つの塩素原子の反応性は, アミン類などで置換したときほど低下していないことを見い出した。
  • 纐纈 銃吾, 小島 清路, 酒井 鎮美, 石井 義郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1004-1006
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    エステル結合をもつ三価のリン化合物である亜リン酸エステル (I), 亜ホスホン酸エステル (II), および亜ホスフィン酸エステル (III) と無水酢酸の反応について, 残存無水酢酸の量を追跡することにより速度論的に検討した。
    (RO)3P (I) R'P(OR)2 (II) R'2P(OR) (III)
    一般にこれらの反応では, リン化合物と無水酢酸のそれぞれについて反応次数が一次であることがわかった。亜リン酸エステルでは置換基であるアルキル基が, メチル, エチル, n-プロピル, n-ブチル, ベンジルなどのように第一級のアルキル基である場合には, 反応はリン原子上の電子密度よりも置換基の立体障害によって支配される。一方, 亜リン酸エステルのアルキル基がイソプロピル, t-ブチルの場合には, 前者にくらべて反応速度が大きく, またフェニル亜ホスホン酸ジエチル, ジフェニル亜ホスフィン酸エチルはともに亜リン酸エチルよりも速度が大きい。これらのことから, エステル結合をもつ3価のリン化合物無水酢酸の反応は Arbuzov 反応と同じく, リン原子の孤立電子対がカルボニル炭素を求核的に攻撃する段階が律速であると考えられる。
  • 松田 住雄, 松田 治和, 山地 安夫, 二宮 健一
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1007-1009
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    ジアルキルスズジカルボキシラートを 250~280℃ で熱分解すると, 脂肪酸金属塩と同様にケトンを生成し, 一方でアルキル基の不均化反応によりトリアルキルスズカルボキシラートも生成した。ケトンの収率は酸残基が長くなると顕著に高くなったが, 生成物を系外に除きつつ熱分解すると低級ジカルボキシラートでもかなり収率が向上した。酸残基の異なるそれぞれ2種のジカルボキシラートまたは金属塩を混合して熱分解すると, 非対称型ケトンが対称型よりも多く生成し, どのような組合せの場合も3種のケトンの生成比率はほぼ同じであった。この場合ジカルボキシラートと金属塩は同じ過程でケトンを生成するものと思われ,また両者の間で酸残基交換が起っていることを推察した。
  • 森 文男, 松田 治和, 松田 住雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1010-1013
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    X-Bu2SnOSnBu2-Y (X, Y=F, Cl, Br, I, OH) 型のジスタノキサン化合物を熱分解すると, ジブチルスズ型およびトリブチルスズ型化合物の混合物が得られた。二つの異なった方法で熱分解したときのこれら生成物の収率を比較検討することにより, 熱分解中に次式のような2つの過程が競争的におこっているものと推定した。
    また, HO-Bu2SnOSnBu2-X (X=Cl, Br, I), F-Bu2SnOSnBu2-X (X=Cl, Br), C6H5O-Me2SnOSnMe2-X (X=Cl, OAc, OCO・C6H5), HO-Me2SnOSnMe2-Cl などの熱分解生成物の結果より, アルキル基の不均化の様式について若干の検討を加えた。
  • 山地 安夫, 森口 十三, 松田 治和, 松田 住雄
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1013-1017
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    R2Sn(OCOC2H4OR')2 (I) (R : CH3, n-C4H9 ; R' : CH3, n-C4H9), R2Sn(OCOC2H4CO2R')2 (II) (R : CH3, n-C4H9 ; R' : C2H5, n-C8H17) および (n-C4H9)2Sn(OCOC2H5)2 (III) の熱分解を行なった。(I) からの生成物はアルコール, アクリル酸, アルコキシプロピオン酸の各エステル, n-ブタン, 1-ブテンのほか, スズに結合するアルキル基の不均化の生成物であるトリアルキルスズ, テトラアルキルスズ化合物が得られたが, (II) からはこのような不均化生成物は得られなかった。(III) からはジエチルケトン, トリブチルスズ化合物などが得られた。これらの生成物の分布は酸残基にある置換基が熱分解反応に大きな影響を与えることを示している。このような置換基にもとずく生成物の差について若干の検討を行なった。
  • 亀山 栄一, 峰岸 裕, 桑村 常彦
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1018-1021
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    長鎖アルキル基あるいはアシル基を有するアミノイミド (それぞれ R-2 および 1-R と略称する) の界面化学的性質と反応性界面活性剤としての応用について検討してきた。本報では, 長鎖アルキル基 (炭素数 6~12) およびアシル基 (炭素数 6~10) を併有するアミノイミド( R-R')を合成し, その性質を R-2 および 1-R と比較検討した。
    R-R' の融点はいずれも 40℃ 前後であり, R-2 および 1-R より低い。R-2 および 1-R のクラフト点は 0℃ 以上にあるが, R-R' については一般にこれを見出せなかった。一方, R-R' では R-2 および 1-R に見られなかった酸化エチレン系非イオン活性剤類似の曇点現象が観測された。水溶液の pH および電気伝導度から, アンモニウムヒドロキシドとしての溶解は考えられないので, 親水基の両端に長鎖基が結合した R-R' の特異な立体構造に基づいて, 水和の温度依存性が現われたものと考えられる。
    表面張力低下能は R-2 および 1-R よりも優れ, Aerosol OT に匹適している。特に対称型のものは低下能が大きく,最低表面張力値は 25.1 dyne/cm である。また, CMC は R-2 および 1-R よりも高く, 二鎖型疎水基構造の特徴が現われている。Gibbs の吸着式を用いて算出した表面分子占有面積は R-R' が最も大きく, 45~49Å2/ 分子であった。
    界面張力および湿潤性には大きな特長は見られない。起泡性および泡沫安定性は R-2, 1-R に比し著しく小さい。
  • 米田 義章, 美濃 順亮
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1021-1027
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    油性汚垢と固体汚垢の混合汚垢の洗浄性を人工ウール汚染布を用いて検討した。
    混合汚垢のモデルとして, オリーブ油ならび二流動パラフィン共伊下のカーボンブラックを選び, その洗浄性について調べた。オリーブ油共存下のカーボンブラックの洗浄性は, オリーブ油の洗浄性によって支配された。しかし流動パラフィン共存下のカーボンブラックの洗浄性は, 流動パラフィンの影響を強く受けなかった。
    カーボンブラックのオリーブ油の吸油量は流動パラフィンの吸油量より少なかった。
    オリーブ油共存下のカーボンブラックの繊維での付着状態は, オリーブ油がカーボンブラックをよくぬらした状態であった。流動パラフィン共存下のカーボンブラックの繊維での付着状態は, カーボンブラックが凝集した状態であった。
  • 渡辺 貞良, 林 治助
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1028-1033
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    未晒 SP の炭酸ナトリウム媒質下における空気酸化精製を前報と同様の方法によって行なった。
    カセイソーダ媒質の場合に比較して, 精製効果や白色度の向上は殆んど同程度であるが, パルプ粘度の低下がカセイソーダの場合よりもさらに少く, 収率も高いのが特徴である。例えば,ブナ SP を 2% 炭酸ナトリウムを用い, 0℃, 3.5kg/cm2 の空気によって酸化した場合, 白色度は 45.3 から 71% (70) へ塩素吸収率は 2.64 から 0.59% (0.41), リグニン含量は 1.99 から 0.12% (0.12) へ減少する。かっこ内の数字は 2% カセイソーダを用いた場合の値で炭酸ナトリウムの場合と大差がない。
    一方, パルプ粘度は % カセイソーダで 5.5 か 4.4 に低下するのに対し, 2% 炭酸ナトリウムでは 5.3 と殆んど低下しない。
    炭酸ナトリウムの濃度が 2% 以下の場合は, 空気酸化によって裂断長, 比破裂度共に原料よりむしろ高値を示す。
    空気酸化試料を次亜塩素酸ナトリウムで漂白した。0.5% 炭酸ナトリウムによる二段酸化または 0.5% 炭酸ナトリウムで空気酸化後, 漂白した場合に特に良好な漂白パルプが得られた。
  • 小山 実
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1033-1037
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    使用されたリグニンスルホン酸は分子量分別された試料で, その平均分子量は 36,000 である。吸着実験は pH および塩化ナトリウム濃度を広い範囲に変えた条件のもとでおこなわれた。
    実験の結果すべての吸着等温線はラングミュアー型であった。まず実験により種々の条件に於ける吸着量を求めた。塩化ナトリウムを加えない溶液からの吸着の場合, 飽和吸着量は pH の低下に伴ない, いちじるしく増加した。例えば吸着量は粘土 1g 当り pH7 で 1.0mg, pH4 で 8.7mg, pH1.0 で 60.6mg であった。一方, 0.4N 塩化ナトリウム溶液からの吸着では pH1.5 から8付近までの広い範囲でほぼ一定 (約 45mg/g 粘土)であった。また, pHを約 6~7 に保ち, 塩化ナトリウム濃度を変えた場合, 吸着量はその濃度に従って急増するが, 0.2N でほぼ最大に達した。条件の変化による吸着量のいちじるしい変化はリグニンスルホン酸の溶液中での大きさの変化が主な原因であることがわかった。
    続いて, 0.4N 塩化ナトリウム溶液の系について, その飽和吸着の時の吸着面積を求めた結果 pH1.8 から 7.8 の広い範囲でほぼ一定 (50~60m2/g 粘土) となり, pH7.8 以上では急減した。すなわちナトリウムモンモリロナイト表面のリグニンスルホン酸を吸着できる面積は中性から酸性の範囲では pH の変化にかかわらず一定であることがわかった。
  • 小出 直之, 飯村 一賀, 竹田 政民
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1038-1042
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    Ti(OR)4-AlR'3 系可溶性重合触媒で生成する常磁性種の構造とその重合活性を明らかにするために, 種々の電子供与体を加えた場合の重合活性の変化とその時の電子スピン共鳴吸収スペクトルの変化について詳細に検討した。
    Ti(OR)4-AlR'3 系に種々の電子供与体を加えた場合, 電子供与体の添加量の増加につれて重合収率は著しく減少する傾向にあり, そのときの常磁性種は Al-Ti3+ あるいは Al-Ti3+-Al の橋かけ構造が解離して Ti3+ 単一種に変化する。常磁性生成種として電子スピン共鳴吸収スペクトルで確認した錯体の中で, 重合活性に最も相関性のある錯体は橋かけ構造の錯体である。
  • 広橋 亮, 飛鋪 靖, 春田 昌宏
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1042-1047
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    バルビツール酸の活性メチレンと p-ジニトロソベンゼンとの反応により得られた p-フェニレンビスアゾピリミジンを合成し, そのモノマーのヒドロキシル基, カルボニル基あるいはイミノ基と p-フェニレンジアミン, p-フェニレンジイソチオシアナート, キシリレンジブロマイドおよびテレフタロイルクロリドとの重縮合および重付加反応をジメチルアセトアミド中で行なった。得られたポリマーの主鎖にピリミジン環を含むことを赤外吸収スペクトル, 紫外吸収スペクトルより確認した。加圧成型した試料の電気伝導度を測定し, その温度依存性の直線関係から見掛けの電気伝導のエネルギーギャップ (ΔEG ) を求めた。室温における体積固有抵抗は 109~1010 Ω・cm で, ΔEG は 0.76~1.33eV であった。またポリマーの光導電性については, 表面伝導型セルに真空下, 可視から近赤外領域の光照射を行ない光電流が観測された。光電流の電界依存性はその両対数値の直線関係が得られたが, 強電界強度になると勾配が小さくなる傾向が見られた。光電流と光強度との関係 (I∝Ln) より強光度になると n の値は大ぎくなる。光電流の波長依存性を調べた結果, 500 あるいは 554mμ にそのピークが認められた。
  • 鍵谷 勤, 飯尾 勝美
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1048-1052
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    過塩素酸銀と種々のハロゲン化アルキルより生成した過塩素酸アルキルによるエピクロルヒドリンのオリゴメリゼーションを行なった。オリゴマーの構造から開始反応機構を考察し, 触媒活性と触媒成分の構造との関係を調べた。過塩素酸アリルあるいは過塩素酸ベンジル系触媒によって得られたオリゴマーの赤外線スペクトルには, アリルニ重結合およびベンゼン核の吸収が観測された。ハロゲンの種類を同一にし, アルキル基を変えた触媒の活性の順序は, 非共役系塩化アルキルの場合, 第三級塩化ブチル>第二級塩化ブチル>塩化イソプロピル>塩化イソブチルであった。また, 共役系の場合, 塩化ベンジル>β-塩化メタリル>塩化アリルであった。つぎに, アルキル基を同一にし, ハロゲンを変えた場合, 非共役ハロゲン化アルキル系の活性はI>Br>Cl の順に大きく, 共役系の場合, 活性はハロゲンの種類によらずほぼ一定であった。また, 非共役系あるいは共役系塩化アルキルの場合, 重合活性の対数と塩化アルキルのイオン解離エネルギーの間には勾配負の直線関係が成立した。また, 共役系, 非共役系を問わず, 重合活性の対数はアルキルラジカルのイオン化ポテンシャルに比例して増大した。
  • 上原 赫, 片岡 仁孝, 田中 誠, 村田 二郎
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1053-1056
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    アセチルアセトンおよび 3-置換アセチルアセトンの銅 (II) キレート (Cu(acac)2 および Cu(3-R-acac)2 を開始剤とするビニル重合系にテトラシアノエチレン (TCNE) を添加すると, 重合開始速度が著しく増大することを見出した。とくに, Cu(acac)2-TCNE 系は 25℃ という低温でも, MMA の重合に対し, かなり高い活性を示した。重合の全活性化エネルギーは7 . 1 k c a l / m o lであった。銅 (II) キレートと TCNE をアセトニトリル中で混合すると, 溶液は黄色を呈し, TCNE のアニオンラジカルに似た可視スペクトルを与えた。また, 液液の比伝導度は反応時間とともに上昇した。TCNE の存在下で銅 (II) キレートの中心金属の還元がおこり, リガンドが酸化されることがスペクトル的に観察された。
  • 渡辺 七生, 酒井 睦司, 榊原 保正, 内野 規人
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1056-1058
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    N-アクリロイルアジリジン (AAz), N-メタクリロイルアジリジン (MAAz), N-trans-クロトノイルアジリジン (CAz) および N-(アリルオキシカルボニル)アジリジン (AOCAz) の4種の単量体について,単独重合およびスチレンとの共重合を, AIBN を開始剤とし, ジオキサンを溶媒として行なった。CAz と AOCAz は重合性低く, 実験条件下では CAz の単独重合体は得られなかった。得られた単独重合体および共重合体は, ベンゼン, アセトン, ジオキサンなどに可溶で, しかも, アジリジソ環をほとんどそのまま保持しているビニル重合体であることが,IR スペクトルから推定された。またモノマー反応性比から求められた Q,e 値は, AAz で Q=0.58, e=0.60, MAAz でQ=0.76, e=0.48 であった。
  • 浜中 佐和子, 森野 敏和, 矢ケ部 憲児, 小川 雅弥
    1970 年 73 巻 5 号 p. 1059-1060
    発行日: 1970/05/05
    公開日: 2011/09/02
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