ブタジエンの低温(70~90℃)気相塩素化反応では3,4-ジクロルブテン(DCB)-1とtrans-1,4-DCB-2の約等量混合物が80%収率で生成した。副生塩化水素量が多く(0.16~0.20mol/塩素mol),また多量の重合物が副生した。ブタジエンの高温(200~320℃)気相塩素化反応では3,4-DCB-1,cis-1,4-DCB-2およびtrans-1,4-DCB-2の混合物が生成し,副生塩化水素量も少い。
ブタジエンは塩素の4~5倍モル過剰に使用し,反応温度に予熱して後できるだけすみやかに混合することが望ましい。稀釈剤の使用は置換反応を活発にするので望ましくない。炭酸カルシウムを中和剤とするDCBのシアノ化反応において,反応温度,反応時間,触媒の種類と量,溶媒および水量の影響について検討した。水を溶媒とし,過剰のシアン化水素を使用して,80℃以上の温度で連続シアノ化すれば,90%以上の高収率で1,4-ジシアノブテン(DCNB)-2が得られる。
各種DCBのシアノ化速度を求め,cis-1,4-DCB-2のシアノ化が最も遅いことがわかった。さらに触媒の回収方法,回収触媒の形態,生成1,4-DCNB-2の脱塩素精製および転位反応などについても検討した。ナトリウムフェノラートを使用する脱塩素精製では,塩素含有量20ppm以下の1,4-DCNB-1を容易に得ることができた。
1,4-DCNB-2はcis-1,4-DCNB-1とtrans-1,4-DCNB-1の混合物に転位して後水素化される。シス型はトランス型に比べ二重結合の水素化速度は速い。アジポニトリル(ADN)の高圧水素添加によるヘキサメチレンジアミン(HMD)の合成には4倍重量以上のアンモニアを使用することが必要で,アンモニア使用量が少いときや水素化温度が高いときにはヘキサメチレンイミン(HMI)や1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)の副生物が増加する。DACHはジアルジミンの環化水素化により生成する。HMIはアミノアルジミンの環化およびHMDの脱アンモニア閉環によって生成する。
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