おもなる無機質成分の野菜中の分布を要約すればつぎのごとくである。
鐵鐵は山東菜・ほうれん草・白莱・大根の葉(間引きしたもの)・さつまいものつる・つる菜・ねぎの葉(青い部分)など一般に緑色の葉を食用とするものに多く,これらの野菜は乾燥試料に對しておよそ0.02~0.03%の鐡を含んでいる。これらについで鐵を多く含んでいるのはなす・かぼちゃの綿などである。
また鐵はきゃべつ・ねぎの葉(白い部分)・大根・さつまいも・じゃがいもなど白またはそれに近い色の野菜類には特に少なく,これらはいずれも乾燥試料に對して1000分のいく%という程度にこれを含むにすぎない。
カルシウムカルシウムは山東菜・白葉・大根の葉(間引きしたもの)・さつまいものつる・ねぎの葉(青い部分)・ほうれん草・つる菜などこれも緑色の葉を食用とする野菜に多く.えんどう(豆),いんげん(豆)・じゃがいも・さつまいもなど豆類といも類に少ない。
カリウムカリウムは山東菜・ほうれん草・大根の葉(間引きしたもの)・かぼちゃのつる・つる菜など主として緑色の葉を食用とする野菜に多く,ねぎの葉(白い部分)・大根・ごぼう・にんじん・さつまいも・じゃがいもなど地中に生育する部分と,えんどう・いんげんなどの豆類とに少ない。
その他の金屬鐵・カルシウム・カリウム以外の金屬は,各種の野菜についてその含量がまちまちで,總括約に考えられるような特質は認められない。
なお亞鉛は多くの野菜について檢出し得なかったが,亞鉛の檢出には10gというような比較的少量の試料では困難なのか,それとも檢出の方法が不適當であつたのかを目下檢討中である。
これを要するに,カロリーを度外において,單に鐵・カルシウムなどの金厩成分を攝取するには,緑色の野菜特に葉菜類が一番よいということができる。
本研究は文部省の科學研究費によつて行われたものである。なお野菜試料をいただいた東京教育大學農學部教授野尻重雄博士に厚く謝意を表する。(昭和26年4月本化學會第4年會にて講演)
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