従来のマロン酸合成法に対し,メタル置換およびアルキル化を総て液安中で行う液安-マロン酸合成法を試み,つぎのような結果を得た。
1.マロン酸ジアミドおよびマロン酸ジエチルの液安中でのベンジル化を行い,C-ベンジルマロン酸ジアミドを合成した。メタル置換剤として金属ナトリウム,ナトリウムアミド,ナトリウムアルコラート,カリウムアミドを使用したが,いずれの場合も高収率でベンジル化物を得た。
2.マロン酸ジアミドのアルキル化をR=CH3,C2H5,C3H7,C4H9について行い,それぞれのC-アルキルマロン酸ジアミドを得た。このさいに使用したハロゲンアルキルの種類とアルキル化物の収率との関係はつぎのごとくである。まずI>Br>C1の順でアルキル化物を増し,またC4H9≒C3H7>C2H5≫CH3,n-C3H7>i-C3H7>n-C4H1>i-C4H9≫t-C4H9の順で収率を増す。
3.塩化アルキルによるアルキル化はほかにくらべて長時開であるが45~70%の収率で目的のアルキル化物を与える。従来のマロン酸合成法ではこれら塩化アルキルが活性メチレンのアルキル化に使用されていないのでとくに興味深い。
本実験の液安-マロン酸合成法は低温にもかかわらずきわめて迅速に反応が進行するが,これらの反応はいずれもイオン反応であり,したがって液安がイオン反応に非常に有利な溶媒であることを示している。
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