アルカリルミノール・過酸化水素系の化学発光の発光促進能を有するアミン銅錯塩を見いだすことと, この種の錯塩の触媒機構をしらべる目的で, セレン光電池, ガルバノメーター (感度2×10
-10A), ランプスケールにより測光し, つぎの諸結果を得た。1) 発光促進能を有する錯塩は, 第1級アミンの銅錯塩で, 立体障害により銅に配位しにくい第2級アミンは微光, 第3級アミンは発光能を有しない。2) 発光強度 (G
max) 最高を示す銅とアミンとの混合比は, 銅に配位し易いアミンほど低濃度である。たとえば銅, 1に対して, エチレンジアミン等, 二座配位子は2, 直鎖1級アミンは200~300, 分岐1級アミンは600。3) アルカリルミノール・ビスエチレンジアミン銅・過酸化水素系の発光減衰速度は錯塩濃度とのみ平行関係にある。4) 2種のアミンを共存させた場合は, 銅に配位し易いアミンの錯塩単独の減衰曲線に類似する。5) この系の発光反応は錯基の分解が必要条件である。
以上の諸事実から, この発光系における錯塩の役割は発光過程に直接関与するものと考えられるが,ルミノール・錯塩系の吸収スペクトルおよびロ紙電気泳動図は両者の結合を示さないことから, 過酸化水素により活性化されたルミノールと錯塩との相互作用により, ルミノールが分解され易い電子状態に置かれるものと考えた。
抄録全体を表示