反転異性体のポテンシァルエネルギー差に関し,シクロヘキセン誘導体相互の関係,およびこれに対応するシクロヘキサン誘導体との関係について考察した。まず,非結合原子間のポテンシァルエネルギーの加成性を仮定して,つぎの関係式を得た。
E
4e5e-E
4a5a2+(E
4a- E
4e)=E
g-E
tここでE
4e5e-E
4a5a,E
4a-E
4e,E
gE
tはそれぞれ,4,5-ジハロゲンシクロヘキセン-(1),4-ハロゲンシクロヘキセン-(1),1,2-ジハロゲンエタンの異性体間のエネルギー差で,添字は異性体の構造を示す。ついで4,5-ジブロムシクロヘキセン-(1)の気態のE
4e5e-E
4a5aを,溶液のE
4e5e-E
4a5aと赤外線吸収強度の溶媒効果から算出して,この関係式の正しいことを確かめた。その結果4,5-ジハロゲンシクロヘキセン-(1)のE
4e5e-E
4a5aとトランス-1,2-ジハロゲンシクロヘキサンのE
1e2e-E
1a2aの差は,ハロゲンシクロヘキセン-(1)のE
4a-E
4eとハロゲンシクロヘキサンのE
e-E
aの差に帰せられる。
トランス-1.4-ジハロゲンシクロヘキサンのE
1e4e-E
1a4eとハロゲンシクロヘキサンのE
a-E
eの間の関係と同様の関係が,3,6-ジブロムシクロヘキセン-(1)のE
3e6e-E
3a6と3-ブロムシクロヘキセン-(1)のE
3a-E
3eの間に成り立つものと仮定して3,6-ジブロムシクロヘキセン-(1)のE
3e6e-E
3a6aを推定した。噺推定値はこの分子に(3a,6a)構造しか見いだされていないことが十分理解し得る大きなものである。
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