日本化學雜誌
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82 巻, 8 号
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  • 藤本 武彦, 新宮 春男
    1961 年 82 巻 8 号 p. 945-948
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報において確立した (n-1) 個の炭素・炭素結合によってへだてられた共有結合間不安定化エネルギー項 R=20.48/4nkca1/mo1およびその修正パラメーターが 0°K 気体オレフィン炭化水素においてもそのまま成立し,その際 C=C 結合は単に C-C 結合 2 個が並列に存在するとして取り扱ってよいことを本報で明らかにする。すなわち 0°K オレフィンの分子エネルギーの異性化変分 ΔH は,パラフィンの場合の構造補正経験式に 2 個のパラメーター Z と YFを加えた次式によって示される。
    ΔHi(0°K気体オレフイン)={ΣZ+Σ YF+ΣY+ΣX}iso-n+{ΣRn(n≧3)}iso-n kca1/mol ただし, Z(=-1.57 ± 0.21kcal/mol) は二重結合の炭素原子上に新しくアルキル置換塞を異性化導入する場合の分岐形式配分項, YF(=-3.52 ± 0.21kcal/mol) は二重結合の炭素原子を分岐点とする Y 型分岐 (=C<)に対する分岐形式配分項である。 本方法によるヘキセンまでの全異性体 24 個に対する異性化エネルギー計算値の平均誤差は ±0.24kcal/mol である。
  • 藤本 武彦, 新宮 春男
    1961 年 82 巻 8 号 p. 948-955
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第 2 報において報告した 0°K気体パラフィン炭化水素の分子エネルギー構造補正経験則を拡張じて,298.16°~ 1000°Kにおける同様の経験則成立の可能性を検討しだ結果,結合間不安定化パラメーターを温度不依存性のものとし,隣接分岐間の不安定化パラメーターのみその数値を一部修正することによって,異性化エネルギーの分岐形式配分項を各温度で決定すれば,精度よく経験則が成立することを確認した。すなわち,隣接分岐間の anti-1,4 位または syn-1,4 位に対する不安定化パラメーター R 及またはR4' のかわりに 298.16°K 以上では共通に R4s=0.1278kcal/mol {=(R4+R4')/2} を用いることとし,他の不安定化パラメーターは 0°K の場合に等しいとおけば,つぎに示す異性化エネルギー計算式をうる。
    ΔHi(T°K 気体パラフィン)={ΣY(T°K)+ΣX(T°K)}iso-n+{ΣRn(n≥3)}iso-n kcal/mol ただし, T°K の Y(kcal/mol) および X(kcal/mol) はそれぞれ 298.16°:-4.48,-12.80; 400°:-4.46, -12.76; 500°:-4.36,-12.56; 600°:-4.21,-12.26; 800°:-3.99,-11.86; および 1000°:-39.2,-11.68 である。本経験則によるネオベンタンを除くオクタンまでの全分岐異姓体に対する異性化エネルギー計算値の平均誤差 (kca1/mo1) は ±0 .22 (298.16°K), ±0.22 (400°K), ±0.25 (500°K), ±0.30 (600°K), ±0.38 (800°K) および ±0.43(1000°K) である。さらに,不安定化エネルギー項がこのようにほとんど温度不依存性であることは別にジメチルシクロヘキサンの異性化エネルギーの考察によっても支持されることを明らかにした。
  • 荒井 九一朗
    1961 年 82 巻 8 号 p. 955-958
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに著者らは,脂肪族カルボニル化合物について,アルキル基の置換基定数 ΣICαnを定めた。
    著者は,これをアルキル基のみならず水素原子にも拡張し,水素原子をも含めた置換基定数 ΣICαnが Taft の純極牲置換基定数σ*と比例関係にあることを示した。
    脂肪族カルボニル化合物 (RCOR') において,置換基 R および R' の I 効果の総和は,両者についての ΣICαnの代数和をもって示しうる。アルデヒド類および各種アルキルケトンについて,その亜硫酸水素ナトリウム付加化合物の解離定数を実測し,その対数値を上記ΣICαn値について図示すると,アルデヒド,メチルケトン,エチルケトン,プロピルケトンの各系列について直線関係が得られる。ただし,直線の傾斜は,前記の順に大となる。
    この結果は, RCOR' の二つの置換基 R および R' の相互作用にもとづく立体効果によるものと推論した。
  • 佐口 みどり, 浅田 栄一
    1961 年 82 巻 8 号 p. 958-962
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    直鎖状高級脂肪酸混融 2 成分系の長面間隔の変化は炭素数が 2 個異なった系列についてはくわしくなされた例があるが, 2 個以上異なった場合について系統的にくわしく測定された例がない。著者らは X 線回折により炭素数が 2 個ないし 10 個異なる 2 成分系, C12-C22, C14-C22, C12-C18, C16-C32, C12-C16, C14-C18, C18-C22, C16-C18 について測定を行ないその結果を相の変化と結びつけて説明しようとした。
    実験の結果混融した 2 成分からなる固溶体の存在および等分子化合物と思われる生成物の存在を確認することができた。固溶限界について炭素数の差とそれの間に関係のあることが認められた。またその化合物の長面間隔は系を構成している 2 成分の脂肪酸の長面間隔の平均にひとしい長面間隔をもつことがわかった。それらを用いすでに報告された凝固点測定から得られたデータを説明することができる。その他二,三の観察された事項について述べる。
  • 高橋 博彰
    1961 年 82 巻 8 号 p. 963-972
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報で導入した“部分対称座標”という新しい考えにもとづいて,すべてのゴーシュ形 n-パラフィンの G, F 行列を,分子内対称座標に関してつくる一般的な方法を, n-ブタン,シクロヘキサンを例にとって考察した。また,これらの分子の中で,対称性を持っているものについては, G, F 行列が部分行列をもとにして,どのように簡約され得るかを調べた。
  • 尾嶋 平次郎
    1961 年 82 巻 8 号 p. 973-979
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリルミノールの化学発光における [Co(OH2)2(NH3)4]3+ の発光触媒機構を光電測光法により検討した。ルミノール 3×10-6mol, [Co(OH2)2(NH3)4]3+ 2.5×10-5 mol を 1mol/l 炭酸ナトリウム溶液 4.5ml 中に存在させたものを規準発光液とし,発光強度~時間曲線の挙動におよぼす錯塩,ルミノールおよび炭酸ナトリウムの濃度効果,温度効果および阻害剤の効果などをしらべた結果と,コバルト(III)錯塩のアルカリ溶液中の吸収スペクトル的挙動とからつぎのような触媒機構を考えた。 上記アコ錯塩は,アルカリ溶液中でヒドロクソアコ錯塩を経て解離する。その際,配位子として存在した水分子は,
    HO-H → HO⋅+H⋅ (I)
    のようにラジカル解離する。ここに生じた HO⋅ は,あらかじめ錯基に配位した状態にあるルミノールに作用して "コバルト(III)錯基ルミノラートアニオンーヒドロキシル基" なる遷移状態を経て発光中間体(ルミノールペルオキシド)を形成する。(I)で生じた H⋅ は溶液申の O2 と反応して H202 を生じ,これが残存する錯基によって接触的に分解され,そこに生じた H⋅ が発光中間体の脱水素反応を行なうことによって励起状態のルミノールが生成される。
  • 今村 喜央
    1961 年 82 巻 8 号 p. 979-981
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重合温度の異なるポリ酢酸ビニルからえたポリビニルアトアセタール(アセタール化度 80mol%)について,アセタール環 1 平個均の双極子モーメント, û を30°Cのベンゼン溶液で求めた。重合温度と û 値は,それぞれ,
    -40°C; 1.35D, 60°C; 1.33D, 130°C;1.30D
    であった。この結果から,低温露合の試料ほど,イソタクチックな立体特異性の増加が認められた。
  • 今村 喜夫
    1961 年 82 巻 8 号 p. 981-984
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高級パラフィンを四塩化炭素溶液で塩素化して得た塩化パラフィンについて極性基あたりの双極子モーメント (û) を測定した。û は塩素含有量が 37% から 73% まで増加する間に 1.06D から 0.52D (ベンゼン溶液, 30°C) まで減少し,低塩素化度のものでも,ポリ塩化ビニルよりいちじるしく小さい。
    別に測定した赤外吸収スペクトルの測定結果とあわせて,塩素化パラフィンの構造を検討した。
  • 今村 喜夫
    1961 年 82 巻 8 号 p. 984-987
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重合度の異なるエチルセルロースのテトラリン希薄溶液について誘電分散の臨界周波数,νc (kc/sec) を室温から約 100℃ の間にわたって測定した。30℃ における各試料の極限粘度,[η] (dl/g) と νc の間には
    log[η]=0.85-0.53 log νc
    なる関係のあることが認められた。
    また,誘電分散における緩和の活性化エネルギーは低温度領域では, 4.5kcal/mol 前後で,測定溶液の濃度の違いを考慮するとビニル重合体よりも大きな値をもち,重合度によってほとんど変わらない。高温部では,みかけの活性化エネルギーは急に大きくなる。これらの結果にもとづいて,ビニル重合体との誘電的性質を比較した。
  • 後藤 達夫
    1961 年 82 巻 8 号 p. 987-993
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    北上川支流猿ケ石川の札場橋地点で,1957 年の夏期と1958 年の夏期に連日水質観測を行ない,出水時の水質の時間的変化の模様ならびに水質と流量との関係をくわしく検したので,この結果について述べる。
    一般に,出水時には流量の増加にともなって濁度,比抵抗は増加し,逆に硬度,塩基度,カルシウムイオン濃度および塩素イオン濃度は減少する。濁度の最高値は流量の最高値に先行し,比抵抗の最高値および硬度,塩基度,カルシウムイオン濃度ならびに塩素イオン濃度の最低値は流墨の最高値よりもおくれて現われる傾向が認められた。また,減水期の水質の時間的変化の状況から降雨による表面流出の終了するときをほぼ推定することができた。
    さらに,個々の出水時について水質と流量との関係をくわしくみると,同一流量でも流量の上昇期と下降期とでは化学成分の濃度が異なり,化学成分の濃度と流量との関係の時間的変化を示す曲線は複雑なループ型を示した。また,流域の各支流の出水時期が違ら場合は,出水時の水質の変化の模様が異なることがわかった。
  • 後藤 達夫
    1961 年 82 巻 8 号 p. 994-1000
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    北上川の上流区域の各河川の水質を調査した結果,赤川は,その源付近で松尾硫黄鉱山の酸性水の流入の影響を強く受けて,強酸性を皇し,また硫酸イオン,カルシウムイオンおよび鉄などを著量に含有しきわめて特徴的な水質を示していることを明らかにした。また赤川の水質と下流松川の水質,さらに北上川本流の水質との関連について検討した結果,北上川の上流の水質は赤川の水質の影響をかなり強く受けていることを明らかにした。
    また,北上川の船田橋地点で, 1957 年 11 月および 1958 年 9 月の出水の時期に北上川の水質の変化の模様について調査した結果, 1957 年 11 月の出水の場合には,流量が大になるにつれて pH, アルカリ度は増加し,これに反して硫酸イオン,塩素イオン,カルシウムイオンおよび鉄などの濃度は減少して中性に近づいている。しかしながら, 1958 年 9 月の洪水の場合には,とくに流量の最大値付近において, pH が小さく酸度が高まり,また硫酸イオン,カルシウムイオンおよび鉄などの濃度が増加している。後者の場合は,赤川上流の松尾硫黄鉱山地域にかなり集中的な豪雨があり,そのため鉱山地域からの酸性水の流出水がいちじるしく増加したためと考えられる。
  • 鎌田 政明
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1000-1005
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    噴気孔ガス中のラドン,トロンの供給源として,マグマ,および噴気孔付近の地下比較的浅いところに存在する,ある厚さをもった供給帯の二つを一般的なものと考えた。マグマの位置が比較的深い場合には,地下比較的浅いところにある供給帯から由来するラドン,トロンが噴気孔ガスの放射性成分含有量を支配する。ラドンについていえば,供給帯のラジウム含有量が噴気孔ガスのラドン含有量をきめる要因の一つであることはいうまでもないが,そのほかに地下深所からくるガスがこの浅いところにある供給帯を通過するのに要する時間,通過後噴出するまでに要する時間,およびガスに接する供給帯の表面積の大きさが重要な要因であることを指摘した。
    なお噴気孔ガスにともなって,あるいは付近に温泉の湧出があるときには,それらも含めて主成分(水のほか溶存成分)およびラドンの噴出量を考え,噴出直前までの流動体である噴出物中のラドンの濃度を推定する必要があることを強調した。
  • 鎌田 政明
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1005-1008
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    活火山の火口内の噴気孔ガスの放射性成分含有量を知るため 1958 年 7 月 6 日, 7 月26~27 日の 2 回,阿蘇中岳火口底の噴気孔ガスを調査した。 同年 6 月 24 日阿蘇中岳は大規模な爆発を起したが,爆発後まもない 7 月 6 の噴気孔ガスはラドン含有量きわめて小さく,7 月 26~27 日にはやや大きくなった。しかし一般の噴気孔ガスのラドン含有量にくらべれば非常に小さい。このようなラドン含有量の小さいこと,噴気孔活動の勢力の変化にともなうラドン含有量の変化などから,活火山の火口内の噴気孔ガスにおいても,その中にふくまれるラドンは大部分比較的浅いところに存在するラドンの供給帯から供給されていることを推定した。なおトロンは検出できなかった。トロンが検出できないという結果は,全国の火山噴気孔のうち,温度の高い活動的な噴気孔でえた結果と一致するものであるが,その原因については今後の検討を必要とする。
  • 鎌田 政明
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1008-1012
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    箱根大湧谷坊主地獄の噴気孔ガスの放射性成分含有量は, 1951 年以来,ラドン含有量,トロン含有量ともほとんど変化がなく,多少あってもラドン含有量 26~48x10-10curie Rn/l (NTP,H2Oを除く)の範囲内程度のものであったが, 1959 年 12 月以来,ラドン含有量が急激に減じ, 5.7×10-10curie Rn/l (NTP,H20を除く)となった。しかしトロン含有量もほぽ同様の割合で減少したので,トロンとラドンの比にはそれほど変化はみとめられなかった。この変化後,ふたたびラドン含有量はほとんど一定となり, 1960 年 12 月まで 5.4~8.4×10-10curie Rn/l (NTP,H20を除く)の範囲内の値を示した。また Tn/Rn の比もあまり変化していない。
    この変化の原因についていろいろ考察した結果, 1959 年 9 月 ~ 1960 年 3 月の間にこの付近に発生した群発地震の影響であることを推定した。 噴気孔の活動状態 (温度,噴出量) に変化がみられないこと,ガスの主化学成分の組成にラドンのような大幅な変化がないこと,ガス中の Tn/Rn がほとんど変化していないことなどから,深部から噴出するガスの性質の変化,あるいは噴出速度の変化によるものとは考えられず,結局この場合にもラドンなどの供給帯は比較的浅い場所にあり,地震のため,深部からのガスに接する供給帯の表面積, S が減じたものと考えられる。供給帯の中のラジウムなどの分布は比較的分散的と思われるから,噴出するまでの通路が変わって,ラジウム含有量のことなる供給帯をとおるようになったという可能性は少ないようである。噴出孔の移動などもほとんどみとめられていない。
    ラドンのほか,その同位体であるトロンが噴気孔ガス中にみいだされる場合には,この二つの同位体を組み合わせて考える方法が,噴気孔ガスの動き,あるいはラドン,トロンの供給源の研究に有益な方法であることを示した。
  • 吉野 隆
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1012-1013
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2.5~100m mol/l EDTA 基礎液中の Sb8+波の挙動を検討した (pH 3~10)。 実験はすべて非緩衝の基礎液 (全イオン強度約 0.3~0.7,ゼラチン不含) を用い,Sb3+の濃度は 1m mol/lにたもった。2.5~100m mol/l EDTA基礎液中の Sb3+波は pH の全域 (3~10) で観測された。Sb3+波は, log プロットその他から厳密には 2 段波とみられるところの見かけの 1 段波 (10~100m mol/lEDTA: pH4~5, 100mmol/lEDTA: pH 7~8) または比較的明瞭な 2 段波 (2.5~100m mol/lEDTA: pH5.6~7, 10~100m mol/lEDTA: pH9~10) としてえられた。これらの基礎液申のSb3+ E1/2は -0.55~-0.8V(vs.SCE) であった (pH3~10)。水銀滴下間隔が比較的小さい場合,ゼラチン不含の基礎液(2.5~100m mol/lEDTA, pH 3~10) 中で, Sb3+波の E1/2よりも負電位で水波をみとめた。Sb3+ 波は, i/√Hcorr の値の検討から,酸性および中性 (2.5~100ol/lEDTA) では拡散律速で,アルカリ性 (100m ol/lEDTA) では反応速度電流を含むと推定した。申性の第 1 波は,おそらくヒドロキソ錨体 (たとえば [Sb(OH)edta]) の還元による波であろうと予想した。分析の目的には,金属イオンの10倍盤の EDTA を含み, pH を 4~5 に規定した基礎液が適当である。たとえば 10mol/lEDTA,ゼラチン 0.001%, pH4,6 の基礎液中では, Sb3+ 波の E1/2は安定で(約 -0.7 vs.SCE),波高と濃度の比例性も良く (Sb3+: 0~2.0m mol/l), 拡散電流定数 I は 1.64±0.04 であった。
  • 品川 睦明, 木曾 義之
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1019-1024
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    錯イオンの形成および分解の平衡反応を電気泳動法に適用し,スペクトル線状の分離帯を得る新分離法が Schumacher によって報告された。しかしこの方法を実験的に操作するにあたって,分離線に及ぼす pH, 錯化剤の濃度の影響およびその解析についてはまだ不明な点がある。本報はこれについて重要な因子をわけて考察し,それにともなう実験結果をも検討した。本報では錯化剤として,トリリン酸ナトリウムを用い,この目的を果すために良好な効果のあることを知った。
  • 木曾 義之
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1024-1027
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    焦点クロマトグラフ法に必要な錯化剤としてトリリン酸ナトリウムをえらび,鉄,ニッケル,銅,コバルトおよび鉛イオンの分離にあたって pH 勾配と錯化剤の濃度の影響を調べた。また放射性核種 90Sr(90Y) および 106Ru の無担体イオンを試料として,電圧の変化,試料塗付帯の幅の大小による分離線図の状態をも検討した。また実験の結果,トリリン酸塩は本報に対する良好なる錯化剤であることがわかり,また本法の特長としてつぎのこともわかった。加電圧と加電圧時間の積の等しいときは,加電圧の大小に関係なく分離線幅は等しい。試料塗付帯の幅が大きいときは,その幅に多少の差があっても,十分な同一時間後では,同一分離線図を生ずる。分離の順序から判断すると,これら金属錯イオンの安定度の序列はつぎのとおりである。Fe(III)>Pb(II)>Cu(II)>Co(II)>Ni(II)。
  • 辻 章央
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1027-1032
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂を発色の担体どするフェノール性化合物の微量検出法をこころみた。[Cl] 形強堪基性陰イオン交換樹脂 (ダイヤイオン SA-200 または 201) 数粒に検液中のフェノール性化合物を吸着濃縮させてから 4-アミノアンチピリンまたは 2,6-ジブロムキノンクロルイミド試液を発色試薬として作用させると樹脂粒は赤橙色または青緑色に呈色する。通常の点滴法にくらべてはるかに検出感度がすぐれ,またフェノール性化合物と同様に呈色するある種のアミン,イオウ化合物は 2% 塩酸処理により容易に樹脂から脱離させることができるため,フェノール性化合物に対する選択性がいちじるしく向上した。
  • 松岡 学
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1032-1036
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Jopes, Martin らによって紹介されたリン酸銅懸濁液を用いるアミノ酸の定量法において誤差の原因を追求すると,もっとも大きな理由はリン酸銅の溶解度がポーラログラフ的にかなり大きいこととその再現性にとぼしい点にある。これは溶液と固体との間の反応を利用しているためであろう。したがって誤差を小さくし,再現性をよくするためにはこのような反応をさけるべきであると考えられる。さて一方銅イオンは水酸化ナトリウム溶液を用いて pH 9 に調整すると完全に水酸化銅として沈殿し,DC ポーラログラフの最高感度 (0.002μA/mm) でもまったく銅イオンの波を現わさない。 したがってリン酸銅懸濁液を調製しこれをアミノ酸の定量法1033アミノ酸溶液に加えてアミノ酸銅錯塩を生成させるかわりに銅イオンを加えたのち pH 9 に調整する方法がはるかに簡単にアミノ酸銅錯塩を生成し,しかも上述の誤差の原因もさけられるであろうと考えた。この点についていろいろ検討を行ない満足すべき結果が得られたので以下に詳細を報告する。
  • 松岡 学
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1036-1038
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅 1 原子と α-アミノ酸 2 分子とから錯塩を生成することが Kober によって報告されて以来,多くの研究者によっていろいろの方法で証明された。ことにグリシンとアラニンの銅錯塩に関する報告が多いが,これらのアミノ酸は 1:2 (CuA2) の錯塩のほかにさらに配位数の多い錯塩の存在が報告されている。著者は第 1 報でトレオニンおよびセリンの id-pH 曲線が他のアミノ酸とやや異なる曲線を示すこと,および α-アミノ-β-オキシアミノ酸に関する詳細な報告がないのでトレオニンについてポーラログラフ法で検討を行なったところ,このアミノ酸も 1:2 (CuT2) の錯塩のほかに 1:3 (CuT3-) および 1:4 (CuT42-) と考えられる錯塩が,グリシンやアラニンと比較して銅に対する錨形成剤の濃度が比較的低濃度で生成することがわかった。またこれらの錯塩の解離定数はそれぞれ 2.55×-15, 1.14×10-16 および 2.99×10-17 であった。
  • 垣花 秀武, 小島 隆
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1038-1041
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    最近合成された無機イオン交換体,イオナイトC を用いて,0,20,40,60,80 vol% エタノールー水混合溶媒中で,水素イオンとアルカリ金属イオンの交換平衡をおこなわせた。
    水素イオンに対するアルカリ金属イオンの選択係数は, _=_ の順に増大し,またエタノールの濃度が増大するにしたがって選択係数は増大した。
    選択係数 _=_ ,と外部溶液の誘電率 D,との間には
    _=_
    なる実験式が成立することを見いだした。ただし a,k はおのおののイオンに特有な定数である。
    選択係数に対する外部溶液の誘電率の影響を示す係数 a は,リチウム,ナトリウム,カリウムについては, Li < NA < K の順であり,カリウム,ルビジウム,セシウムについては, Cs < Rb < K の順であることを見いだした。
  • 中川 元吉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1042-1045
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリ -n- オクチルアミンの 5vol% キシレン溶液を用いて,いろいろの濃度の塩酸溶液からマンガン(II),鉄(III),コバルト,ニッケル,銅(II),亜鉛の抽出について実験した。 鉄(III)は 4mol/l 以上の塩酸から定量的に抽出された。1~6mol/l 塩酸からの亜鉛の抽出率は 98% 以上であった。銅(II)は水相の塩酸濃度が 6.5mol/l のときに最高抽出率 92% を示し,コバルトの抽出率は塩酸濃度が 8mol/l のときに最高値 93% となった。マンガンは 8mol/l 塩酸からもっともよく抽出きれるが,抽出率は 35% に過ぎなかった。ニッケルは塩酸溶液からまったく抽出されなかった。有機溶媒相に抽出された鉄(III)は 0.5~1mol/l 硝酸で,亜鉛は 0.5~1mol/l 硝酸または 1mol/l 水酸化ナトリウム溶液で,銅(II)とコバルトは希塩酸または希硝酸でよく逆抽出された。トリ-n-オクチルアミンのキシレン溶液による溶媒抽出法でコバルトとニッケルの分離,亜鉛,コバルト,ニッケルの分離,鉄,コパルト,ニッケルの分離などを行ない好結果が得られた。
  • 土屋 智明
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1045-1049
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミン類に対する1-プロム-2-メチル-2-イミダゾリン臭化水素酸塩(NBI)の反応性を検討する目的で実験を行なった。第一アミンとしてはアニリンなど3種の芳香族アミンを選び,エチルアルコール中あるいは四塩化炭素中で反応させたところ,それぞれ相当する核臭素化物を得た。第二アミンとしてはジフェニルアミンなど5種を選びエチルアルコール,四塩化炭素および酢酸ナトリウム・酢酸溶液中で反応させたところ,窒素にフェニル基のあるものは核臭素化物を生成し,その他はそれぞれ相当する酸化生成物と対応する第一アミンとを得た。第三アミンとしては11種を選び0エチルアルコールおよび四塩化炭素中で紫外線照射下あるいは過酸化ペンゾイル(BPO)を触媒として使用するなどいろいろの条件で反応させたところ,NBSと同様窒素にフェニル基を有するものはフェニル核が臭素化され,その他のものはいずれも酸化作用が起り,それぞれ相当するアルデヒドと対応する化合物あるいは第二アミンを得た。以上のようにアミン類に対してNBIは窒素に芳香核の結合する場合は臭素化作用あるいは臭素化作用と酸化作用を示し,その他の場合には酸化作用のみを示し,第三アミンについては収率はNBSにくらべ優るとも劣らない結果を得た。
  • 菅野 秀男
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1050-1051
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6,8-ジニトロデヒドロアビェチン酸および 6-アミノ-8-ニトロ-デヒドロアビエチン酸を水素化アルミニウムリチウムで還元して,相当するアゾ化合物 2 種を合成した。 これらを接触還元していずれも6,8-ジアミノ-デヒドロアビエチノール(IV)となった。IVをジアゾ化して,6,8-ジオキシ-デヒドロアビエチノ一ルに導いた。
  • 杉山 登, 阿部 昭吉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1051-1054
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    キビ(Panicum miliacem L.)のヌカ(精糠)をベンゼンで温抽出し,その抽出液を濃縮して,室温に放置し,板状の結晶を得た。 これから,さきに伊藤がキビ油の不ケン化物として単離している,ミリアシン mp 282℃,[α]D+8.0°を単離した。またキビの種実の各部分をベンゼンで抽出して比較した結果,ミリアシンは種実中の果皮,種皮または胚芽に局在していることを明らかにした。
    ミリアシンは,ステリンに似た種々の呈色反応を示し,その分子式は C30H55O, C31H52O,あるいは伊藤のいうように C82H54Oであり,この酸素はエーテル状酸素である。
    ミリアシンを過安息香酸で酸化すると,ミリアシンより酸素原子を1個多く有するそのオキシド mp 285.5°~286℃, [α]D+52.3°が得られた。このミリアシンオキシドのテトラニトロメタン反応は陰性であって,このことから,バリアシンは二重結合を1個有する5環性化合物であると考えられる。
  • 阿部 昭吉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1054-1057
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ミリアシンおよびミリアシンオキシドは,二酸化セレンによる酸化で mp253℃,[α]D-87.6℃ の化合物 C31H46O3 となる。この化合物は, β-アミリンまたはソイヤサポゲノールDを二酸化セレンにより酸化して得られた物質の紫外線吸収スペクトルに似た吸収を示すことから,=の部分構造を有すると考えられる。またミリアシンを塩化水素で処理し, mp189℃[α]D+41.2°の化合物 C31H52O を得た。さらにミリアシンは,ρ-トルエンスルホン酸または三フッ化ホウ素により, mp125℃[α]D+41.2°の化合物C30H48 となった。この化合物は過安息香酸により mp203℃,[α]D+73.5°の化合物C30H48O2 となり,酸化白金を触媒として水素添加すれば, mp96°~97℃ の化合物 C30H50 となった。またミリアシンオキシドは,塩化水素により mp210°~211℃,[α]D-63.0°の化合物 C31H50O となった。
    以上の反応およびその反応による旋光度の変化を考察すると,ミリアシンはβ-アミリン-オレアナン系またはソイヤサポゲノールDのような構造を有し,その二重結合は Δ18:19 と推定された。
  • 阿部 昭吉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1057-1059
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソサワミレチン(3β-メトキシオレアン-12-エン)(X)を酢酸中で二酸化セレンにより酸化すると, C31H46O3, mp253℃,[α]D-87.8°,λmax 281mμ, log ε 4.2 の板状結晶が得られた。これは 3β-メトキシオレアナ-9(11),13(18)-ジエン-12:19-ジオン(III)であり,ミリアシンまたはミリアシンオキシドを二酸化セレン酸化して得られたものと等しいことがわかった。
    イソサワミレチンは塩化水素により,二重結合の転位を起して, C31H52O, mp189℃, [α]D-23.4° の針状結晶となった。これは 3β-メトキシ-オレアン-13(18)-エン(V) であり,ミリアシンに塩化水素を作用させて得られた mp189℃ の結晶と等しいことがわかった。
    3β-メトキシオレアン-13(18)-エン(V) を過安息香酸により酸化し, C31H52O2, mp262℃, [α]D+42.5°の板状結晶を得た。このオキシドは塩化水素で処理するとC31H50O,mp 210°~211℃,[α]D-63.0℃,λmax(log ε) 243mμ(4.3), 250mμ(4.4), 260mμ(4.2) となった。これは 3β-メトキシオレアナ-11,13(18)-ジエン(IV)であり,ミリアシンオキシドを塩化水素で処理して得た化合物と等しいことがわかった。
    これらの事実と前報の実験結果から,ミリアシンの構造を 3β-メトキシオレアン-18-エン(3β-メトキシゲルマニセン)(I)と推定した。
  • 末永 栄一
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1059-1063
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素,窒素を配位子とする 6歯キレート化合物を合成する目的でピス-(8-オキシキノリン-2-アルデヒド)-エチレンジイミンおよびビス-(8-オキシキノリン-7-アルデヒド)-エチレンジイミンの金属錯塩の合成を試みた。このうち 8-オキシキノリン-7-アルアヒドは合成することができなかったので,誘導体である 5-メチル-8-オキシキノリン-7-アルデヒドを合成し,これとエチレンジアミンとからビス-(5-メチル-8-オキシキノリン-7-アルデヒド)-エチレンジイミンを合成した。これらシップ塩基はいずれも銅, ニッケルと六歯キレートを生成する。これら錯塩はいずれも赤褐色で, 7位にアルデヒド基のあるものは, 2位にあるものよりいちじるしく有機溶媒に溶け難い,また同じく酸素,窒素を配位子とした 1,8-ビス-(サリチリデンアミノ)-3,6-ジオキサオクタンの錯塩と比較するといちじるしく安定である。これらの合成の途中で得られた 5-アルデヒド-8-オキシキノリンとエチレンジアミンとを縮合し,ビス-(8-オキシキノリン-5-アルデヒド)-エチレンジアミンおよび金属錯塩を合成した。
  • 菅野 秀男
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1063-1064
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    6-レテンスルホン酸関係物質を水素化アルミニウムリチウムで還元した。
  • 小松 寿美雄
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1064-1067
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸(NNS)のコバルト錯塩の赤色水溶液による比色定量を Wise らが報告しているが,著者はこの錯塩を無機酸酸性下イソアミルアルコールに抽出する比色定量法を検討した。中性溶液のとき錯塩呈色度は最大であるが,これは NNS 添加後約 50 分常温放置または約 15 分湯浴上加温で得られる。錯塩組成は mol 比で 1:6(Co:NNS) である。抽出最適酸濃度は約 2N 硝酸, 1~3N 塩酸, 6N 硫酸の各酸性下であるが,酸添加により錯塩は初めやや退色するので呈色度が一定になる約 15 分後に抽出分離すればよい。定量法をつぎのように定めた。コバルト 0.005~0.114mg までをとり, NNS 溶液 (0.5mg/矯ml,水酸化ナトリウムで中和したもの) 5~15ml および水を加えて全容 30ml または 40ml にして約 50 分放置後, 5N 硝酸 20ml または 5N 塩酸 10ml を加えて約 15 分放置してからイソアミルアルコール 10mlを加えて抽出分離する。抽出相を波長 532mμ で吸光度を測定した結果 Beer の法則がよく適合する。NNS と反応する CU2+,Fe3+,Pd2+の各イオンの微量の共存は妨害しない。
  • 熊代 泉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1068-1071
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-ケトグルタル酸ジエチルに ο-フェニレンジアミンを作用させて得られるβ-(3-オキシ-2-キノキサリル)プロピオン酸エチルを,オキシ塩化リンにより閉環して, 1-エトキシ-4-クロル-3a,9b-ジヒドロピロロ[1.2-a]キノキサリン(VII)を合成し,VIIから 1-エトキシ-3a,9b-ジヒドロピロロ[1.2-a]キノキサリンおよび6-エトキシ-3a,3b,6a,10b-テトラヒドロ-1,2,4-トリアゾロ[4.3-a]ピロロ[2.1-c]キノキサリンを得た。
    β-プロム-α-ケトグルタル酸ジエチルとο-フェニレンジアミンから,β-ブロム-β-(3-オキシ-2-キノキサリル)プロピオン酸エチルを経由して,trans-β-(2-キノキサリル)アクリル酸誘導体を合成した。
  • 熊代 泉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1072-1075
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-ケトグルタル酸ジエチルとο-アミノフェノールから得られる 2-オキソ-3-(β-エトキシカルボニルエチリデン)-3,4-ジヒドロペンゾオキサジン-1,4を, Vilsmeier の条件で閉環して,1-エトキシ-2,3-ジホルミル-4-オキソ-3a,9b-ジヒドロピロロ [2,1-c] ペンゾオキサジン-1,4(II)を合成した。IIから,4-オキシメチレン-5-オキソ-Δ2-ピロリン誘導体および 1-オキソ-7-オキシ-6b,11b-ジヒドロ (ピリダジノ [4'.5'-c']ピロロ)[2.1-c] ペンゾオキサジン-1,4を得た。
  • 金子 武夫, 乾 利成
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1075-1078
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オキシアミノ酸はべンジルオキシカルボニルク糧リドを炭酸水素ナトリウムの存在で作用させると通常の N-ペンジルオキシカルボニル誘導体を生成するが,水酸化ナトリウムの存在では閉環してもとのオキシアミノ酸の構造を保持したオキサゾリドン誘導体を生成した。このオキサゾリドン誘導体はオキシアミノ酸にアルカリの存在でホスゲンを作用させても得られる。この化合物は非常に安定な物質で,容易にエステル化され,また酸による加水分解で炭酸を失なってもとのオキシアミノ酸にもどる。このような性質は,オキシアミノ酸の水酸基とアミノ基の同時保護の目的に利用できる。DL-セリン,DL-レトレオニン,DL-アロトレオニン,DL-β-オキシバリン,DL-レフェニルセリン,DL-レアロフェニルセリンおよびDL-イソセリンからそれぞれ相当するオキサゾリドン誘導体を合成した。
  • 乾 利成, 金子 武夫
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1078-1081
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DL-トレォニンおよびDL-アロトレオニンはそれぞれアルカリの存在でホスゲンの作用によって水酸基とアミノ基が同時に保護された trans 形および cis 形のオキサゾリドン・カルボン酸に閉環するので,このオキサゾリドン・カルボン酸を用いて光学分割を行なった。DL-trans 酸をブルシンを用いて光学分割し,純粋のD(-)-およびL(+)-trans酸を得た。こうして得たD(-)-およびL(+)-trans 酸を加水分解してD(+)-およびL(-)-トレオニンを得た。一方,DL-cis酸はブルシンおよびキニンを用いて光学分割し,純粋にしたL(-)-およびD(+)-cis酸を加水分解してL(+)-およびD-(-)-アロトレオニンを得た。このようにして得たトレオニンの4異性体の物理的性質およびその呈味性を示した。
  • 荒木 長男, 後藤 良造, 小野 葵
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1081-1085
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多くの芳香族化合物をガスクロマトグラフィーの固定液相に使用して,キシレン異性体に対するそれらの分離効果を研究した。88℃においてp-キシレンを標準にする分離因子(Jones らの定義した S12)をとると,m-およびp-キシレン間の分離およびp-キシレン-エチルペンゼン間の分離と固定液相の躍換基とのあいだには,ハメット則に似た関係があること,また ο-およぴp-キシレン間ならびにトルエン-p-キシレン間にはそのような関係がみられないことを認めた。きらに,キシレン異性体の分離因子と固定液相の置換基とのあいだの関係を明示する分離図を作成した。
  • 菊池 康男
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1086-1088
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無声放電による各種油脂および炭化水素の重合に関する報告は多数提出されているが,ビニル系モノマーについての報告はきわめて少ない。しかし最近とみにこの方面の研究が関心をひいている。
    著者はさきに窒素水素気流中における重合反応について報告したが,本文では雰囲気として窒素,開始剤として過酸化べンゾイル(以下 BPO と記す)温度は 30℃, 放電電圧 12000,8250V を条件とする重合について報告する。
    無声放電による重合反応についての動力学的解析はまだ明らかにされておらず,また著者の研究においても同様動力学的解析の段階に至っていないが,放電電圧の差異による重合反応について定性的に報告する。
  • 岩井 浩一
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1088-1096
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オキシアミノ酸残基におけるペプチド結合の NO アシル転移を利用してタンパク質の特異的分解法を確立することを目的としたこの研究は,クルペインおよびサルミンについて所期の目的を達成し,さらに進んで,両プロタミン中におけるセリン残基の配列様式を定量的に決定することに成功した。すなわち,クルペインおよびサルミンに濃硫酸を 20℃ で 4 日間作用させ,オキシアミノ酸残基の N-ペプチド結合をその水酸基に転移させ,ついで形成された O-ペプチド結合(エステル結)を選択的に加水分解するため, 1) 転移プロタミンに直接 6N 塩酸を 20℃ で 16 時間作用させるか, 2) 遊離されたアミノ基を亜硝酸で脱アミノしたのち, 0.25N 炭酸水素ナトリウムを 20°~30℃ で 1 夜作用させるか,または, 3) アセチル化後 0.3N 炭酸ナトリウムを 30℃ で 4 時間作用させた。生成したペプチド混合物の C- および N- 末端アミノ酸残基の分析結果から,両プロタミン中のセリン残基(80~90% まで解明)は,ともに -Ser-Ser-, -Ala-Ser-, -Val-Ser-, および -Arg-Ser- として存在するが,これらの配列様式の割合は,たがいに異なることを見いだした。トレオニン残基(クルペイン中に少量含まれ,サルミンには不含)は転移・切断率が低く,この方法ではその配列様式を決定することができない*2
  • 柿沢 寛
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1096-1103
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シャクナゲ科植物中に広く存在している有毒成分グラヤノトキシン-I(G-I), C22H36O7を加水分解すれば, 1分子の酢酸を失なってグラヤノトキシン-III(G-III), C20H34O6を生じる。G-I をアセトンと無水硫酸銅で処理すればイソプロピリデン化されるとともに 2 分子脱水した物質 C25H36O5 を生じ,これを接触還元すれば 2mol の水素を吸収して飽和テトラヒドロ体を生じる。この物質はなお赤外スべクトルに水酸基の吸収を示すので, G-III のすべての酸素原子は水酸基となっている。またイソプロピリデン誘導体の酸化反応生成物の物理的,化学的性質から 5 員環第二水酸基が 2 個存在していること,および G-I の過ヨウ素酸酸化物の牲質から α-グリコール基の存在していることがわかった。このほかの反応および物理的性質から G-I は図 7 の部分構造をもった 4 環性の物質であることが明らかになった。
  • 広田 鋼蔵, 飯塚 義助, 竹村富 久男, 田中 達人
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1103-1105
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヨウ素はラジカル重合の禁止剤としてよく知られているけれども,われわれは室温で少量のヨウ素(1%以下)が α-メチルスチレン (α-MS) の重合の開始剤として働らくことを見いだした。脱水後,真空封入した試料について,ヨウ素触媒による α-MS の重合の初期速度はヨウ素濃度 0.2% のときの方が 0.1% のときより大きい。しかし,長時間反応後の全重合率はヨウ素濃度 0.2% のときの約 25% に対してヨウ素濃度 0.1% のとき 50% にも達する。等容量の α-MS とメタアクリル酸メチルの混合物を翼ウ素触媒で重合させて得た重合物は,同じ混合物をカチオン重合触媒である四塩化スズで重合させて得た重合物とよく似た赤外線吸収スベクトルを与える。したがってヨウ素触媒による α-MS の軍合はカチオン機作で進行するものと結論される。
  • 梅崎 芳美
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1105-1107
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報では PO4/SiO2 の存在比約 300 までのケイ酸イオンをケイモリブデン酸法で定量する諸条件を明らかにしたが,存在比がさらに高い場合,ケイ酸イオンが微量の場合などは定量困難である。また,シュウ酸,酒石酸などでリンモリブデン酸を分解後ケイモリブデン酸を還元するヘテロポリ青法があるが,これもリン酸イオンが 50mg/l 以下に限られ,より高濃度の存在では抽出法などが用いられている。本研究ではヘテロポリ青法を適用するときの発色条件,分解剤,還元剤,還元条件を十分に検討した結果,最高 3000 倍のリン酸イオンの共存でケイ酸イオンの比色定量が可能なことを認めた。
  • 細原 匡一
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1107-1108
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    海水中の水銀含量については二,三の報告のがみられるが,いずれも表面海水についての値であり,深海水についての分析値は出されていない。著者はさきに海水中の微量水銀の分離定量法を報告し,本邦近海および日本海溝ラマポ海淵の表面海水の水銀含量を測定した。引きつづいて同海淵について,深度別の分析結果を得たので報告する。
  • 宮原 昭二郎
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1108a-1110
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフイーによるメチルアミン類の分離については,いままでに固定相液体としてウンデカノール,流動パラフィン,グリセリン,ウンデカノール・オクタデカン混合物やトリエタノールアミンのなどのが用いられたが,これらの方法はアミン類をガス体に変えてカラムの中へ送入する方法であり操作が比較的はん雑である。そこでトリエタノールヒアミンのカラムを用い,温度を少し高くし,アミン類を希薄水溶液のままカラムの中へ注入することを試みたところ,よく分離され,しかもクロマトグラムのピークの高さが試料濃度によく比例することを見いだした。またエタノールアミンやジエタノールアミンを使うときは試料のアミン類を完全には分離し得ないことがわかった。
  • 根岸 良吉
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1108
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    花コウ岩 G-1 および輝緑岩 W-1 の 2 種の岩石は,国際的な岩石標準試料として,その主成分,微量成分について世界各国において多岐にわたる方法で多数の分析値が報告されている。
    従来の値は 1960 年に刊行された U. S. Geol.Survey Bull. 1113 にほぼ網羅されているが,現在でもつぎつぎと新しい分析値が提示されつつある。とくに微量成分に関しては,放射化分析等の新しい分析技術の進歩・発展もあって,その報告数も多いが,その分析値は報告者によって変動が大きく,確実な分析値が確定されたとはいい難い情況であるから,独立の方法により多くの元素についての分析値を付加することがのぞましい著者はすでに W-1 中のバナジウム,クロム,コバルト,ニッケル,ガリウム(スカンジウム)について分光分析法による値を報告した。ここでは引きつづいて G-1 について,上記元素のほか,鉛の定量値をえたので報告する。
  • 藤瀬 新一郎, 小島 英幸
    1961 年 82 巻 8 号 p. 1110
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきにあおき配糖体アウクビンに対して 1 の構造をあたえ,Grimshaw らおよび Schmid らにより一応支持されたが, Schmid らは II 式のほかに皿式の可能性のあることを指摘した。
    すでに報告したように,.テトラヒドロアンヒドロアウクピゲノンを過安息香酸で酸化し,得られたラクトンをさらに酸性で過マンガン酸カリウムにより酸化してパラコン酸(III)を得準が,このパラコン酸の生成は II 式では説明するととができない。またアセチルアウクビン(VI) の赤外吸収スペクトルを,フッ化カルシウムプリズムを使用して測定すると,図1のようになる。すなわち含酸素環二重結合の二つの C-H 伸縮振動が 3108-1 および 3068cm-1 にあらわれ,炭素 5 員環二重結合の一つの C-H 伸縮振動が 3018cm-1 にみとめられる。酸素が直結した炭素二重結合の C-H 伸縮振動は,通常値より高波数域にずれることはよく知られているが,念のため含酸素環に二重結合のないプロムメトキシヘキサアセチルアウクビン(V)の赤外吸収スペクトルを同じ条件でとると,前 2 者の吸収が消え,第 3 番の炭素 5 員環二重精命の一つの C-H 伸縮振動に和当する吸収のみが残る。以上の現象は炭素 5 員環に 4 置換二重結合の在在する II 式では説明することができない。したがってアウクビンの化学構造はさきに報告した I 式が正しいものと考える。
    終りに赤外吸収スペクトル測定に際し,いろいろ御協力下さった東大学非水溶液化学研究所網巻研究室に感謝致します。
  • 1961 年 82 巻 8 号 p. A61-A70
    発行日: 1961/08/10
    公開日: 2011/05/30
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