日本化學雜誌
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83 巻, 4 号
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  • 藤本 武彦, 新宮 春男
    1962 年 83 巻 4 号 p. 359-363,A25
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    気体パラフィン炭化水素の分子エネルギーを共有連結,不安定化および運動の3エネルギー項に分類して取り扱い,後の2項の異性化変分に基づいて分子エネルギーの構造配分を検討して,実用上10個のパラメーターを含むつぎの一般温度加成則をえた。ΔHaf(ToK気体パラフィン)=Σ(Ho+EC-Hkinetie)+Σ(Co+EC-Ckinetie)+ΣEchain+ΣECH3-C-C+ΣEendkinetie+ΣRn(n≧1)+1/2ΣRn(n≦2,C-H)+4RT-(5/2)jRTkcal/molただし,Ho=-120.265およびCo=-123.564kca1/molはC-HおよびC-C結合の共有連結エネルギー項。Echain=2.60kcal,molはメタン以外の(炭素数2個以上の)鎖状炭化水素に固有の配労エネルギー項。jは炭化水素1分子中の原子数である。本加成則によるオクタンまでの全異性体40個の分子エネルギー計算値の平均誤差(ToK)は±0.21(0),±0.20(298.16)±0.20(400),±0.22(500),±0.26(600),±0.32(800)および±0.35(1000)kca1/molである。なお,本加成則適用の一例としてダイヤモンドの分子エネルギーについて考察した。
  • 藤本 武彦, 新宮 春男
    1962 年 83 巻 4 号 p. 364-368,A25
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オレフィン炭化水素の分子エネルギーを不安定化,運動,および共有連結の3エネルギー項からなるとしてそれぞれをパラフィン炭化水素の分子エネルギー加成則に準じて構造要素に配分し,0°K気体オレフィン炭化水素の分子エネルギー加成則を導びいた。この際C=C結合と他の一重結合との間の不安定化エネルギー項に関してC=C結合をC-C結合2個に等価であるとみなして取り扱うことにより良好な近似式がえられる。
    Δ(0°K気体オレフィン)
    =Σ(H0+EC-Hzero)+Σ(C0+EC-Czero)+(CF0+EC-Czero+Echain)+ΣRn(n≧1)+(1/2)ΣRn(n≦2,C-H)
    +ΣECH3-C-C+ΣEendzerokcal/mol
    ただし,CF0=-176.532kcal/molはC=C結合の共有連結エネルギー項である。ヘキセン以下の全異性体29個に対する実際運用上10個のパラメーターによる分子エネルギー計算値の平均誤差は±0.21kca1/mo1である。すなわち,C=C結合に関する追加パラメーター2個を除き,パラフィンと同一の経験則がオレフィンに対して成立する。この経験則により上記29化合物の水素添加熱も±0.28kcal/molの平均誤差で計算される。これらの結果を総合して,少なくともモノオレフィンの分子エネルギーについてはいわゆる超共役などの特別な取り扱いを考慮する必要がないことが結論された。
  • 佐々木 和夫
    1962 年 83 巻 4 号 p. 368-375,A25
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銀|塩化銀|塩酸の系について熱電池起電力の非定常変化(Soret効果にともなう起電力の経時変化)を測定した。起電力の変化の模様は,拡散方程式の解から予測されるように,拡散の初期では起電力が時間の平方根に比例し,後期においてはlog(E∞=-E)が時間に比例する。その他定性的事実の傍証からも,観測する起電力変化が熱拡散に原因するものであることは疑いない。しかし,拡散速度を定めるパラメーターである緩和時間については計算値と実測値とにいちじるしい相違がみられ,その理由はあきらかでない。各時刻の起電力を√tに対してプロットした直線を時間0に外挿して得られる値は,初期起電力の測定値ときわめてよく一致する。この事実を逆に利用すれば電極間の温度差を決定できる。この値もまた熱電対による直接の温度測定とよく一致している。熱拡散が定常状態に達したときの起電力と初期起電力との差をとれば電解質の輸送熱を計算することができる。0.0025Nから0.1Nの範囲について塩酸の輸送熱を求めてみると,この濃度域では濃度の減少とともに輸送熱は増大する。また,0.01Nでのこの値は約3000cal/molと見積られるが,妥当な数値であることがわかる。これと別に,さきに報告した塩酸のSoret係数の測定値をもととして計算した輸送熱をも比較した。二つの測定法から得られる輸送熱の濃度依存性は傾向としてはよく一致している。しかし,数値的には,熱電池から求めた値の方が,Soret係数からのそれにくらべて例外なく小さい。この原因として,二つの測定の行なわれた平均温度の相違も考えられるが,熱電池の測定では,対流による混合を避けることができず,したがって真の定常状態が達せられる以前に,対流と熱拡散とのつり合いが成立するためと考えられる。
  • 久保山 昭
    1962 年 83 巻 4 号 p. 375-379,A26
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一般に相互作用の弱いπ-π型の分子化合物の電荷移動吸収帯は簡単な分子軌道法の立場からみれば, 近似的には電子供与体の高エネルギー準位の被占軌道から電子受容体の低エネルギー準位の空軌道への電子遷移によるとみることができる。この観点から, クロラニルを電子受容体とし, 電子供与体となるナフタリン, フェナントレン, アントラセンに電子供与性置換基を導入した場合の電荷移動吸収帯の位置の移動と相当する電子供与体の分子軌道のエネルギー準位の変化との対応を調べた。得たおもな結果は, 1)共鳴効果の大きい置換基では両者の対応は良好であった。2)共鳴効果にくらべ誘起効果が大きいとみられる置換基では誘起効果は置換基の位置に近似的に無関係でほぼ一定とみなせば, 実測結果が説明される。3)フェナントレンの誘導体で理論的予想と一致して二つの電荷移動吸収帯の存在が認められた。
  • 前田 史朗
    1962 年 83 巻 4 号 p. 379-382,A26
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    振動スペクトルの吸収強度は,振動によって分子内に生ずる双極モーメントの大きさにより定まる。このモーメントに関して,従来は,通常の永久双極モーメントに対する結合モーメントの概念をそのまま振動状態に延長した模型的解釈がもっともしばしばなされているが,それには含まれていない電子分布のヒズミによる寄与も,当然吸収強度に影響するものと考えねばならない。この寄与を考慮に入れるためには,電子波動関数の振動にともなう変化を求めることが必要で,これはハミルトニヤンの微小変化を摂動と見なした摂動計算により可能である。本報では,MO型の波動関数にこの方法を適用して,振動による電子波動関数ならびに双極モーメントの変化を求める方法について考察した。
  • 前田 史朗
    1962 年 83 巻 4 号 p. 382-386,A26
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報で述べた振動スペクトル強度のMO摂動理論をメタン(ν4),エチレン(ν7),およびアセチレン(ν5)の各変角振動に適用し,これらの吸収強度を各分子のCH結合極牲の関数として求めた。その結果を実測値と比較することにより,吸収強度にもとつく半経験的なCH極性ないしは結合モーメントが得られたが,それらは従来種々の理由から推定されていたものともよく一致するはなはだ妥当な値であった。
  • 坂元 隆一
    1962 年 83 巻 4 号 p. 386-388,A26
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4種のポリアクリル酸試料, すなわち紫外線照射で重合した未分別試料および熱重合試料を分別した3種のフラクションについて, 光散乱測定から得られた重量平均分子量Mωおよび数平均分子量Mηと文献記載の粘度式を用いて得られた粘度平均分子量Mνを比較し, Mω>Mμ>Mηの関係が成り立つことを確認した。測定した極限粘度数[η]の対数をMω, Mηの対数に対してプロットして, つぎの粘度式を得た。NaPA-1mo1/l NaCl[η]=3.75×10-4×Mω0.64 (100ml/g, 25℃)[η]=4.57×10-4×Mη0.87 (100ml/g, 25℃)0NaPA-2N NaOH[η]=1.05×10-3×Mω0.54 (100ml/g, 25℃)また光散乱測定から得られた盟甜と翌館の比から各試料の分子量分布についても考察した。
  • 坂元 隆一, 今堀 和友
    1962 年 83 巻 4 号 p. 389-395,A26
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子量のポリアクリル酸の水溶液について,その中和度に対する粘度,光散乱,流動複屈折の変化を測定し,分子の広がりや分子間の相互作用との関係について研究した。水溶液中でのポリアクリル酸分子の広がりは,中和度40%までは中和度の増加とともに大きくなるが,それ以上の中和度ではかえって小さくなる。 粘度,光散乱,流動複屈折の測定結果は一致してこの傾向を示した。この現象は中和度の小さいところでは中和度の増加とともに電離基密度が高くなり,その反ばつ力で分子の広がりが大きくなるが,中和度の大きいところでは対イオンの固定により電離基間の反ばつ力の遮蔽が起るためと考えられる。ηsp/C~C曲線は申和度に対していちじるしい変化を示すことが明らかになった。これは中和度の小さいところでは分子の広がりの濃度に対する変化の影響が大きいが,中和度の大きいところでは分子間の相互作用の影響が大きいためと考えられる。光散乱測定でも中和度60%以上では分子間の相互作用の影響が強いことが示された。
  • 丸田 巌
    1962 年 83 巻 4 号 p. 395-397,A27
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ドデシル硫酸ナトリウムとこれにより水溶牲化されたポリビニルアセテートのような水に不溶性の高分子との溶液について, イエローOBに対する可溶化能および粘度的挙動を検討した。また, 水溶性高分子としてポリビニルピロリドンなどを選び, これとドデシル硫酸ナトリウムとの溶液の性質と比較した。高分子が共存する溶液はドデシル硫酸ナトリウムのみの溶液よりも可溶化能が大きく, かつその臨界ミセル濃度以下においても可溶化現象が見られた。水に不溶性の高分子と水溶性の高分子とでは可溶化に対する挙動に差異が認められた。水に不溶性の高分子の可溶化能を増大させる効果はポリビニルアセテート>ポリビニルホルマール>ポリビニルプチラールの順であった。 高分子/ドデシル硫酸ナトリウム-比を一定にした溶液の還元粘度(ηsp/Cp)は良溶媒中でのηsp/Cpよりかなり大きい。しかし, 高分子濃度の低下にともない急激にηsp/Cp も減少し, 良溶媒中でのηsp/Cpに近づく傾向がみられた。水に不溶性の高分子と水溶性の高分子が同じ実験結果を示すことがあっても, その機構は必ずしも同じでないことを推定した。
  • 田仲 智津子
    1962 年 83 巻 4 号 p. 398-405,A27
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (CH3)3COH,(CH3)3COD,(CD)3COH,(CD3)3CODの4種の分子種についてUrey-Bradleyの力の場を用いて,基準振動の計算を行なった。まず(CD3)3COHについて高振動数部分,メチル基のねじれ振動,水酸基の面外変角振動を除外して,At15個,Att10個の基準振動数と各基準振動について,各対称座標へのポテンシァルエネルギー分布を求めた。この結果に基づき,同分子についてさらにAtの基準振動の中から,他の振動とほとんど結合しない4個の振動を除外して近似計算を行ない満足すべき結果を得た。したがって他の3種の分子種については,Atの振動は,この近似計算により,基準振動数ならびに各対称座標へのポテンシァルエネルギー分布を算出した。以上の結果,前報の帰属に対し計算による定量的な裏づけを与えることができた。
  • 柴田 長夫
    1962 年 83 巻 4 号 p. 406-412,A27
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類金属酸化物に電子を衝撃するさいアルカリ土類金属原子が飛散されてくることを放射性追跡子を用いて確認した。ここに行なった実験は,ストロンチウムとバリウムに関するものであって,その一部はすでに著者らによって報告されている。本報は主としてその基礎的実験である放射化学的方法による測定について報告する。
    酸化ストロンチウムまたはバリウムを90~150eVの電子で衝撃すると,ストロンチウム,バリウムは飛散され,その1電子あたりの飛散量は0.5cm3の表面積の酸化物に対して表3.1,表3.2に示される量であった。またその活性化エネルギーはストロンチウム,バリウムでそれぞれ約0.8eV,0.7eVであった。各種の条件における飛散量は表1.1および表2.1で示され,その実験誤差は√(15)2+(計数誤差%)2%であり,そのほとんどはコレクターの捕集係数の偏差と管球ごとの偏差に由来している。140Ba-140La中の89Sr,また140Ba中の放射性娘核種140Laなどの放射性不純物の影響を検討した。解析の結果140Laは飛散されていないことがわかった。以上の結果に基づいて飛散現象はつぎのように説明された。飛散現象は単なる電子衝突による運動量の交換,または表面層の加熱のみによるのではなく,酸化物は電子衝撃によって酸素とアルカリ金属とに分解され,後者はその基体の温度によって表面から昇華されるものである。アルカリ土類金属の酸化物に電子衝撃を行なうと,酸化物は分解され酸素が放出されることが多くの研究者によって報告されている。しかし,アルカリ土類金属原子の挙動に関してはほとんど知られていない。放射性追跡子をもちいて電子衝撃によりバリウム,ストロンチウムの行動を追跡し,これらの原子が飛散されてくることを確認することができた。この結果の一部についてはすでに著者らによって報告されているが,同論文中に指摘したようにその基礎的部分である放射化学的実験は報告されてないのでここに報告する。
  • 曾田 敦彦, 香川 〓美
    1962 年 83 巻 4 号 p. 412-417,A27
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高分子電解質の中性塩水溶液で,熱力学的性質から見いだされたθ温度での摩擦的性質を明らかにするために,ポリアクリル酸ナトリウムの1.25N NaSCN水溶液と1.5N NaBr水溶液について,それらのθ温度(それぞれ30℃と15℃)での拡散および沈降測定を行なった。得られた拡散定数Doまたは沈降定数Soと分子量MWとの間には,θ温度における非電解質高分子と同様の関係:Do=KD・MW-1/2,So=KSMW1/2(KD,KSは定数)を得た。またMandelkern-Floryの普辺定数φ1/3P-1は,非電解質高分子におけるよりも小さい値の2.2×106を与え,これから得られたφは,光散乱および粘度測定から得られたφの値1.5×1021に一致した。したがって,θ状態でも高分子電解質の方が,非電解質の母体高分子よりもひろがっているという光散乱測定結果を確認した。また,このような3成分系でも,Svedbergの式を用いて計算される分子量は,重量平均分子量に近い適正な値を与えることがわかった。
  • 明石 武和
    1962 年 83 巻 4 号 p. 417-421,A27
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    グルタミン酸およびその塩類について活性体とラセミ体の溶解度を測定し,ラセミ体の構成に関する知見をうると同時に,接種法による分割の可能性について実験を行ない,つぎの結論を得た。DL-グルタミン酸塩酸塩,DL-グルタミン酸,DL-グルタミン酸一水和物,DL-グルタミン酸モノアンモニウム塩一水和物はいずれもラセミ混合物であり,その接種法による分割は可能であった。DL-グルタミン酸モノナトリウム塩二水和物についてはその接種法による分割は不可能であった。グルタミン酸の硫酸塩を結晶として得たが,この飽和溶液はグルタミン酸を晶析する性質を持つ。このためラセミ体の構成および分割の可否は不明である。
  • 明石 武和
    1962 年 83 巻 4 号 p. 421-425,A28
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DL-グルタミン酸に対して塩酸または水酸化ナトリウムが1当量以下存在するDL-グルタミン酸の飽和溶液にDL-グルタミン酸一水和物と活性グルタミン酸を液底体として共存させた状態で30℃でかきまぜると,液底体のDL-グルタミン酸は分割される,すなわち液底体としてのDL-グルタミン酸一水和物は溶解し減少するが,かわって活性グルタミン酸が結晶として晶析し,またその対掌体は溶質の1成分として液相中に溶存することを確認した。この分割の程度はかきまぜ時間と速度,液底体として存在する活性グルタミン酸およびDL-グルタミン酸一水和物の粒度および量などによって異なるが,液相中の全溶質グルタミン酸濃度に比例した。温度については24.5℃では30℃の場合と同様な結果がえられたが,45,60および10℃ではいずれもほとんど分割は行なわれなかった。また液底体としてDL-グルタミン酸一水和物を用いるかわりにDL-グルタミン酸を使用した場合はこれらどの温度においても分割は行なわれなかった。これらの結果についてDL-グルタミン酸,DL-グルタミン酸一水和物,活性グルタミン酸の溶解度とその温度係数,すなわちその溶解熱にもとついて考察を加えた。
  • 船越 英雄
    1962 年 83 巻 4 号 p. 425-430,A28
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オイレン酸コバルトのベンゼン,四塩化炭素,ピリジン,クロロホルム溶液の粘度を種々の老化時間,濃度および温度において測定した。無極性溶媒に溶かしたオレイン酸コバルトの溶液の粘度はきわめて希薄な場合を除き,溶液の老化時間とともにいちじるしく大きな値を示し,長日時老化すると粘性は極大を経てふたたび降下する。これは時間とともに長鎖高分子構造が成長してゆくことによって説明される。還元粘度の濃度に対する関係は直線とならず,比較的短かい老化時間において0.2~0.4g/100ccの領域に平坦部が現われる。これは2次的なミセルの形成に帰せられる。15°~45℃の範囲において,温度が上昇するほど溶液の粘性は大きくなる。これらの現象はピリジンやクロロホルム溶液にはまったく見られない。これは溶媒分子がコバルトに配位することによって,オレイン酸コバルトの高分子構造の形成を妨げるためと考えられる。
  • 川口 浩
    1962 年 83 巻 4 号 p. 430-432,A28
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    沖積層である愛知県濃尾平野地下水のホウ素含有量を測定し,その測定結果によってホウ素の起源およびホウ素と他の元素の関係を調べた。その結果はつぎのとおりである。ホウ素の起源は海水を除けば植物質であり,深い地下水のホウ素含有量は必ず小であるが浅い地下水のホウ素含有量は小さいものも大きいものもある。ホウ素とナトリウムは比例関係にあり,ホウ素はナトリウムに随伴している。そして愛知県濃尾平野地下水のホウ素含有量の算術平均は57.2γ/lである。
  • 松浦 二郎, 栗村 芳実
    1962 年 83 巻 4 号 p. 433-438,A28
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン強度0.1の塩化カリウム-塩酸緩衝液でpHを1~4の間で51CrCl3のロ紙電気泳動を行なった。4種の泳動帯を見いだしそれぞれ+3,+2,+1のイオン種および非泳動性の分子種に相当することを確かめた。51CrCl3溶液をあらかじめpHの異なる電解液で熟成させた試料をもちい,pHの異なる電解液でロ紙電気泳動を実施したところ,4種の泳動帯に量的な変化があることを,51Crの放射能により定量的に観察した。+3イオン種はpH2以下で多量に存在するが,pHが高くなるといちじるしく減少する。これと対称的に非泳動性の無電荷種が増加する。+2イオン種は,イオン交換樹脂クロマトグラフィーの結果と対照して,ジクロル-テトラアコクロム(II)錯イオンではないと推定され,+2,+1電荷のイオン種はHammらが与えたオキソ錯イオン種[Cr(H20)5(OH)]2+,[Cr(H20)4(OH)・Cl]+,[Cr(H20)4(OH)2]+に帰せられる。すなわちpHによる異なるイオン種の間の平衡移動が,これらのイオン種の酸電離定数により説明することができる。
  • 大内 昭, 松本 洋, 吉野 諭吉
    1962 年 83 巻 4 号 p. 438-443,A29
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    タングストマンガン(IV)酸塩は, 従来5-タングストマンガン(IV)酸塩である3Na20・5WO3・MnO2・18H20のみが知られていたが, 6-タングストマンガン(IV)酸塩である4K2O・6WO3・MnO2・15H20を新らたに合成した。この両者を比較検討したところ非常によく似た物質であるが異なっており, ナトリウム塩がNa6[W5MnO20]・18H20の多量体と思われるのに対して, カリウム塩はK8[W6MnO24]・15H2Oという単量体構造をもつものと考えられる。また両者とも水素形イオン交換樹脂によって遊離酸の水溶液にかえる場合はWO6八面体間にさらに縮合反応が起り, 固体塩の場合と異なったイオンとなることが認められた。このほか, 赤外吸収スペクトルを他のモリブドマンガン(IV)酸塩と比較して, 一般にヘテロポリマンガン(IV)酸塩は950~800cm-1に二つの大きな吸収があり, その極大波数は大体マンガン1原子に対するタングステンまたはモリブデン原子数の増加にしたがって波数の大きい方に偏椅する傾向が認められた。
  • 重松 恒信, 西川 泰治, 平木 敬三
    1962 年 83 巻 4 号 p. 444-446,A29
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづき主として本邦産の岩石,鉱物および煙灰試料92個につきガリウム量を求め,岩石,鉱物のガリウム含量について検討した。岩石のガリウム量は火成岩,水成岩,変成岩では大差なく平均15~16g/tonであった。鉱物試料として福島県の各種鉱物試料,同地産のバーミクライト試料,広島県産のミョウバン石試料,長碕察産のロウ石,および各地産のボーキサイト試料について実験した。その結果,同一鉱床に産出した試料のガリウム量は鉱物種により濃縮度に差があり,また産地の異なる同一鉱物種におけるガリウム量には大きな差がないことを認めた。
  • 飯盛 喜代春
    1962 年 83 巻 4 号 p. 447-450,A29
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづいて,サリチルアルデヒド誘導体の一つとして,N-サリチリデン-1-(アミノメチル)-2-ナフトールと銅(II)イオンとの反応を検討した結果,本試薬も銅(II)イオンに対して特異的に反応することがわかった。本試薬と銅との錯化合物は,難溶性であるので,これをロ別し,2N塩酸で分解して溶解し,分解生成物の1-アミノメチル-2-ナフトールの吸光度を276mμで測定してその量を求め,これから反応した銅を間接的に定量した。妨害イオンは少なく,ニッケル-コバルトなどは銅の量の2倍共存しても影響しない。銅の定量範囲は0.05~1.00mgである。さらに錯塩を分解したのち,銅をEDTA試薬によるキレート滴定によっても定量できるし,満足すべき結果を得た。
  • 飯盛 喜代春
    1962 年 83 巻 4 号 p. 450-455,A29
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづき,サリチルアルデヒド誘導体の一つ,N-サリチリデン-1-アミノ-2-ナフトールと銅(II)イオンとの反応を検討した結果,本試薬も銅(II)イオンと特異的に反応することがわかった。本試薬と銅との錯化合物は,難溶性の沈殿となるので,これをロ別し,沈殿は2Nの熱硫酸で分解して溶かし,煮沸してサリチルアルデヒドを除去する。この操作中に錯化合物の分解生成物である1-アミノ-2-ナフトールは酸化されやすいので,1,2-ナフトキノンに完全に変化する。生成した1,2-ナフトキノンの量を282mμの波長における吸光度を測定して求め,これから反応した銅イオンを定量する。このようにして銅の0.05~0.50mgの範囲で満足な結果を得た。妨害イオンとしてはニッケル,コバルトなど多量(銅の3倍以上)共存する場合は妨害する。他金属はほとんど妨害しない。
  • 友成 明久
    1962 年 83 巻 4 号 p. 455-458,A29
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    試料溶液のpHを適当な値に調整し,硝酸水銀(II)溶液を加える。そこへジフェニルカルバゾンのエタノール溶液を加え,過剰の水銀イオンを水銀-ジフェニルヵルバゾン錯塩にし,これをベンゼンで抽出する。ベンゼン相の赤紫色はシアンイオンの濃度が大きくなるにしたがって薄くなるので,間接的にシアンイオンを比色定量することができる。本法で,0.005~0.06,0.05~0.6ppmのシアンイオンが迅速正確に定量できる。
  • 友成 明久
    1962 年 83 巻 4 号 p. 459-463,A30
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヨウ素イオンまたは臭素イオンを含む試料溶液のpHを適当な値に調整し,硝酸水銀(II)とヨウ化カリウムのほぼ等モルの混合溶液を加える。そこヘジフェニルカルバゾンのエタノール溶液を加えて発色させ,着色物質をベンゼンで抽出する。ベンゼン相の赤紫色は,ヨウ素イオンまたは臭素イオンの濃度が大きくなるにしたがって薄くなるので,間接的にこれらを比色定量することができる。本法で0.02~1.2PPmのヨウ素イオン,0.01~0.8ppmの臭素イオンが迅速正確に定量できる。
  • 亀本 雄一郎, 山岸 滋
    1962 年 83 巻 4 号 p. 463-465,A30
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ビスマス金属申に不純物として含まれている塩素,マンガンを中性子放射化分析により定量した。まず非破壊法による定量を検討したところ,塩素は共存するナトリウムによる妨害をうけ定量できず,またマンガンは試料により定量できるものとできないものとがあった。そこで塩素は塩化銀として,マンガンは二酸化マンガンとして放射化学的に純に分離し,その放射能を標準と比較して定量した。放射能の測定は1 3/4インチ×2インチの井戸型NaIクリスタルを用いてγ線を測定した。中性子源はJRR-1原子炉を用いた。中性子束は約3×1011n/cm2/secである。非破壊法による定量に際し妨害となる元素の量を検討した。5×5インチ井戸型NaIシンチレーターをRCL-256チャネル波高分析器につないで使用した場合(分解能C1の1.16MeVのピークに対して~10%,Mnの0.845MeVのピークに対して~11.8%)0.02μ9のマンガンの定量に際して銅3.6μg,ヒ素4.8μg,アンチモン13μg,金14μg以上存在すると妨害する。また1.1mgの塩素の定量に際して,ナトリウム200μg以上存在すると妨害することがわかった。
  • 堀江 徳愛, 増村 光雄, 奥村 重雄
    1962 年 83 巻 4 号 p. 465-468,A30
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スダチ果皮から新フラボン(スダチチン)を分離し,その誘導体を合成し,またそのトリエチエーテルのアルカリ分解について検討した。その結果スダチチンの構造は3t,4t,5,6,7,8-トリオキシートリメトキシフラボンであって,三つの水酸基のうち,二つは4および5の位置にあり,一つは6,7または8のいずれかの位置にある。
  • 堀江 徳愛, 増村 光雄, 奥村 重雄
    1962 年 83 巻 4 号 p. 468-472,A30
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4t,5,7-トリエトキシ-3t,6,-トリメトキシフラボン(スダチチンートリエチルエーテル),5-オキシ-4,7-ジエトキシ-3t,6,8-トリメトキシフラボンおよび4t,7-ジエトキシ-3t,5,6,8-テトラメトキシフラボンを合成し,これらをそれぞれ天然スダチチン-トリエチルエーテル,-ジエチルエーテルおよび-ジエチル-メチルエーテルと比較することにより,スダチチンの構造が4t,5,7-トリオキシ-3t,6,8-トリメトキシフラボンであることを決定した。
  • 衣笠 俊男, 渡会 節夫
    1962 年 83 巻 4 号 p. 472-475,A30
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチル,イソプロピル,およびtert-ブチル基などのアルキル基を含む各種置換型のアルキルニトロベンゼン類を合成し,1660~1250cm-1領域の赤外吸収スペクトルを測定した。ニトロ基のN-0伸縮振動における逆対称伸縮と対称伸縮との相対吸収強度が構造変化とよく対応することを確認した。さらに1600cm-1付近に現われる芳香環面内骨格振動の吸収強度が,p-アルキル置換体ではとくに強いこととともに,これらアルキルニトロベンゼン類の構造推定上有用であることが明らかとなった。なお,強く立体障害をうけているニトロジュレン型化合物のN-O伸縮振動の相対吸収強度はニトロアルカンのようすとよく類似していることがわかった。
  • 衣笠 俊男, 渡会 節夫
    1962 年 83 巻 4 号 p. 476-480,A31
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきに述べたアルキルニトロベンゼン類の赤外吸収スペクトルにおけるN-0逆対称伸縮(VN-Onaym), と対称伸縮(VM-Osum)との相対吸収強度が, それぞれの波数変化とよく対応することを確認した。さらに両振動に対するアルキル基の極性効果, あるいは立体効果の影響についてしらべた。そして, Wepsterらが無視しているVN-Onaymは極性効果の影響を強く受け, とくにニトロ基の受ける立体障害の増加とともにp-置換基から受ける極性効果の影響が減少することを確認した。一方, VN-Osymは置換基による立体効果をよく示すことがわかった。さらに, C-H面外変角振動は, 立体障害の増加とともにニトロ基による波数増加の寄与が減少することを確認した。
  • 芳賀 竹芳
    1962 年 83 巻 4 号 p. 481-485,A31
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1)γ-オキシ吉草酸とグリコール酸の脱水縮合:γ-バレロラクトンを過剰の水酸化カリウムと処理して, カリウム塩とし, これとグリコール酸のカリウム塩とを200℃付近に加熱反応きせた。グリコール酸はまずCH3基に縮合して, γ-オキシピメリン酸が生成し, つぎにβ-カルボキシメチル-γ-オキシピメリン酸, β, δ-ジカルボキシメチル-γ-オキシピメリン酸が生成することがわかった。2)イソプロピルアルコールとグリコール酸との縮合:γ-バレロラクトンおよびγ-オキシ吉草酸とグリコール酸との縮合物は, イソプロピルアルコールとグリコール酸との縮合物と考えられる。実験の結果, この反応でγ-バレロラクトン, γ-オキシピメリン酸が得られた。3)γ-オキシ吉草酸の縮合:過剰の水酸化カリウムの存在下で加熱すると, 自己縮合をして2分子, 3分子などの縮合物が生成することがわかった。4)γ-オキシ吉草酸とペンジルアルコールとの縮合:この縮合もまずCH3基におこる。つぎに2, 3molのベンジルアルコールが縮合する。こうしてδ-ベンジル-γ-バレロラクトン;β, δ-ジベンジル-γ-バレロラクトン;β, δ, δ-トリベンジル-γ-バレロラクトンが得られた。
  • 寺田 晃, 高橋 省二
    1962 年 83 巻 4 号 p. 485-489,A31
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-オキシイミノアセト酢酸エチルエステルを水素化アルミニウムリチウムで還元して2-アミノ-1,3-ブタンジオール(II)をつくり,IIとフタル酸とを加熱縮合きせてDL-erythro-2-フタルイミド-1,3-ブタンジオール(VI)とする。これを無水酢酸でアセチル化して1,3-ジアセトキシ-2-フタルイミドーブタン(VIII)を得た。別にD-トレオニンからD-トレオニンエチルエステルを経て同様の操作でD-threo-2-フタルイミド-1,3-ブタンジオール,D-threo-1,3-ジアセトキシ-2-フタルイミドーブタン(IX)を得た。VIIIおよびIXを600℃で熱分解的に脱酢酸させて2-フタルイミド-1,3-ブタジエン(X)に誘導した
    さらにコハク酸を用いて同様の経路で2-スクシンィミド-1,3-ブタジエン(XIII)をつくることもできた。
  • 寺田 晃, 村田 健一
    1962 年 83 巻 4 号 p. 490-492,A31
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ブタジエンから誘導される1-アミノ-3-ブテン-2-オールをフタル酸,コハク酸でイミド化し,それぞれ1-フタルイミド-3-ブテン-2-オール(I),1-スクシンィミド-3-ブテン-2-オール(VI)をつくり,これらのO-アセチル化物(IV),(VII)をそれぞれ550℃で熱分解して新しい高分子単量体1-フタルイミド-1,3-ブタジエン,1-スクシンイミド-1,3-ブタジエンを合成した。またこん跡の水酸化アルカリを触媒として1,2-エポキシ-3-ブテンとフタルイミドあるいはスクシンイミドとを付加させる別法でII,VIを合成した。
  • 乾 利成
    1962 年 83 巻 4 号 p. 493-496,A31
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報において,アロトレオニンのトレオニンへのオキサゾリドン誘導体を経由する転換反応にっいてのべたが,もう一つのオキシァミノ酸であるかフェニルセリンについてこの転換反応を検討した。DL-アロ-β-フェニルセリンから合成したDL-シス-4-エトキシカルボニル-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジンがまったく同一の条件でDL-トランス-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジン-4-カルボン酸に反転した。こうして得たDL-トランス酸は1N塩酸で加水分解されDL-β-フェニルセリンを与えた。この反転反応もトレオニンの場合と同じく農位炭素原子で反転を起していることは明らかである。ところで,トレオニンの場合にはトランス形とシス形の平衡が6.1:1であったが,β-フェニルセリンの場合には反転が完全におきており,このような差異はおそらく隣接したカルボキシル基とフェニル基の立体障害がメチル基の場合よりも大きいことによると考えられる。
  • 曾根 澄, 松木 保夫
    1962 年 83 巻 4 号 p. 496-499,A32
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-ニトロ-4-チオフェンアルデヒド(1,mp82゜~83℃),5-ニトロ-2-チオフェンアルデヒド(II,mp74.5゜~75℃)および3-ニトロ-2-チオフェンアルデヒド(III,mp52゜~53℃)を作成した。1は3-チオフェンアルデヒドの直接ニトロ化によって得られ,IIは2-テニルクロリドのニトロ化によって得られる 5-ニトロ-2-テニルクロリドを,硝酸銅水溶液,または二酸化セレンで酸化して得た。また,2-メチルチオフェンのスルホン化,ついでニトロ化によって2-メチル-3-ニトロ-5-チオフェンスルホクロリドを得,その脱スルホン生成物,2-メチル-3-ニトロチオフェンからIIのジアセタートを経てIIIを得ることができた。
  • 広岡 脩二
    1962 年 83 巻 4 号 p. 500-501,A32
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 加藤 清, 和田 四郎
    1962 年 83 巻 4 号 p. 501-502,A32
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-バビニルイミド系化合物の重合体は一般にその軟化点が高いので,他のビニル化合物との共重合により重合生成物の軟化点を高めるのに利用される。同時にその一部をケン化するとナメシ剤,タンパク凝固剤,繊維の染色性をよくする助剤などに使用されるなど実用的な用途がいろいろ知られている。
    著者らはショウノウから導かれる無水ショウノウ酸(I)をもちい,また耐熱性の高分子化合物を得る目的でテトラクロル無水フタル酸(V)のN-ビニル誘導体の合成を試みた。1またはVを等モルのエタノールアミンと加熱すると縮合反応により,それぞれオキシ化合物(II),(VI)になり,IIおよびVIを無水酢酸と加熱還流するとアセチル誘導体(II),(VII)が得られた。IIはアセトン溶液とし,VIIはベンゼン溶液としそれぞれ550℃,600℃で熱分解すると脱酢酸をともない,それぞれ赤外吸収スペクトルからN-ビニル化合物(VI),(VII)であることが確認された。IVをベンゾイルペルオキシドの存在下で重合すると,光学活性な興味ある重合体が得られた。一方o-ベンゾイルスルホンイミドのカリウム塩とエチレンクロルヒドリンからオキシ化合物(IX)を合成し,さらに前述したと同様な方法でそのアセチル誘導体(X)を460℃~470℃で熱分解すると,N-ビニル-o-スルファモィルフタリミド(XI)が得られた。
  • 広田 鋼蔵, 桑田 敬治, 松浦 恂一
    1962 年 83 巻 4 号 p. 503-504,A32
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1962 年 83 巻 4 号 p. A25-A32
    発行日: 1962/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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