日本化學雜誌
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83 巻, 9 号
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  • 吉本 敏雄
    1962 年 83 巻 9 号 p. 961-966,A63
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭化水素のいかなる構造をもつポリハロゲン誘導体が広義の酸としての性質を示すか,またそれらの塩基に対する相互作用の強さはどうであるかをしらべるためにメタン,エタンおよびエチレンの種々のポリハロゲン誘導体のガスクロマトグラムを3種の型の異なるルイス塩基の固定相液体を用いて測定した。酸塩基相互作用の強さは四塩化炭素を内部標準とし1スクワランを標準の固定相液体とした相対保持量比により比較され,その大きさの順序はCHCl2CHCl2>CH2CICHCl2>CHCl2CCl3>CHCl3>CH2ClCH2Cl>cis=CHCl=CHCl>CH3CHCl2>trans-CHCl=CHCl>CHCl=CCl2>CH3CCl3>n-BuCl>CCl4>CCl2=CCl2であった。相対保持量比の温度変化の測定結果はこの種の酸塩基系における会合エネルギーと会合エントロピロが同付号であり,しかも前者が後者より大きいことを示した。またこの種の酸塩基系の共沸現象も同様な分子間相互作用によって支配されていることが考察された。
  • 吉本 敏雄
    1962 年 83 巻 9 号 p. 966-971,A63
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    45個の代表的な溶質の6種の固定相液体(溶媒)を使用した場合のガスクロマトグラムが100℃において測定され,それらの四塩化炭素を内部標準物質としスクワラン(SQ)を標準の固定相液体とした相対保持量比が比較された。相対保持量比の付号と大ききを無限希釈状態において溶質を溶媒に混合する際の部分モル過剰自由エネルギ一 Giox(i: 溶質, X: 溶媒)によって考察し,溶質分子と溶媒分子間の相互作用の観点から分類した。同族体のメンバーiのGioxはiの沸点が高くなるにしたがい直線的に減少する。この勾配は飽和炭化水素伺族体ではほとんど0であり,極性が大きくなるにしたがい大きくなる。使用した溶質の極性の固定相液体を使用した場合の100℃における相対保持量比は,通常パラフィン<ナフテン<n-エーテル<四塩化炭素<芳香族炭化水素<エステル<ケトン<n-アルコール<n-ニトリルの順序になっている。
  • 田村 千尋, 桑野 晴光
    1962 年 83 巻 9 号 p. 971-976,A63
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピラジンカルボン酸アミドは1952年,Kushnerらによって合成された抗結核剤である。この化合物は四つの結晶変態をとることを確認した(1)。これらはすでに結晶構造解析がおこなわれたので(2)~(5)結晶構造と赤外吸収スペクトルとの関連について考察することは興味あることと考える。X線解析によれば,四つの結晶のうち一つは極性結晶であって側鎖の酸アミドは一方向にならんでいるの他の三つの結晶変態は二分子で二量体をつくり,二量体同志の水素結合による配列の相違によって結晶多形を示すのである。これらの水素結合の差が赤外吸収スペクトルにいかなる影響をあたえるかを考察した。このために試料をすべておのおのの結晶形に対して重水素化を行なって観察を行なった。重水素化体の各結晶変態は格子の変化は小さく,とくに新しい結晶変態を示すことなく四つの変態とも軽水素の場合と同様の条件で調製することができた。この結果,α-ピラジンカルボン酸アミドのカルボニルが高波数に移動しているのは結晶の分子配列に二又水素結合が形成しているためと推定した。また,四つの結晶変態とその重水素化体の赤外吸収スペクトルから水素結合の強度,分子配列の相違について構造解析の結果との関連を考察した。
  • 高橋 博彰
    1962 年 83 巻 9 号 p. 976-978,A63
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Modified Urey-Bradley Field(Urey-BradleyField+trans interaction)を用いてエタンおよびエタン-d8の基準振動を計算した。力の定数は最小二乗法により,基準振動の実測値と計算値との平均偏差が最小になるように定めた。すなわちこの力の定数を用いたときの計算結果は,平均偏差1,17%,最大偏差2.97%である。この最大偏差をさらに小さくするためには,guacheinteractionの補正項が必要である。
  • 高橋 博彰
    1962 年 83 巻 9 号 p. 978-980,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プロパンの基準振動をModifiedUrey.BradleyField(Urey-BradleyField+trans interaction)を用いて計算した。力の定数にはエタンで定められ縮を用いたカの定数にはエタンで定められた値を用いたが,Urey-Bradley Fieldでは精度の悪かったCH3横ゆれ振動を満足に説明することができた(最大偏差3%)。したがって,このModified Urey-Bradley Fieldはプロパンではきわめて真実に近い分子内ポテンシャルであること,またその力の定数がパラフィンの間で転用性をもつことを結論した。
  • 高橋 博彰
    1962 年 83 巻 9 号 p. 980-981,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソプタンの基準振動をModified Urey-BradleyField(Urey-BradleyField+transinteraction)を用いて計算した。計算値と実測値との最大偏差は2.7%であり,Urey-BradleyFieldとくらべて精度はよくなったQ用いた力の定数はエタンにおいて最小二乗法により定められたたものであるから,この力の場では,力の定数がよい転用性を示すものと考えられる。
  • 真島 光雄
    1962 年 83 巻 9 号 p. 981-982,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マレイン酸ヒドラジド,同重水素化物およびマレイン酸ヒドラジドナトリウム塩・一水化物,同重水素化物の赤外吸収(岩盛領域)を測定した。吸収帯の経験的な帰属をこころみた結果,CO,NH,COH基に帰することのできる吸収帯をもつことから,マレイン酸ヒドラジド分子は結晶中において二つのカルボニル基が,一つはケト形,もう一つはオキシ形の構造をもつことを結論した。
  • 松井 芳樹, 窪田 種一
    1962 年 83 巻 9 号 p. 985-989,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリジン-N-オキシド塩酸塩の赤外吸収スベクトルは臭化カリウム錠剤法で測定したものはNujol Mull法で測定したものとは異なり,とくに4μおよび13~15μにいちじるしく異なるスペクトルを得た。この研究は上述の原因を解明しようとして始めたものであるが,n-オキシドのハロゲン化水素酸塩およびオキシムの水酸基の吸収帯について検討しつぎのような知見を得た。(1)N-オキシドの塩酸塩は臭化カリウム錠剤では臭化水素酸塩に,また塩酸塩および臭化水素酸塩はヨウ化カリウム錠剤ではヨウ化水素酸塩となる。しかし逆の変換は行なわれない。(2)n-オキシドのハロゲン化水素酸塩について水酸基に関する3個の吸収帯,すなわち伸縮振動voh,面内変角振動δOHおよび面外変角振動γOHの帰属を行なった。この帰属によりこれらの塩はN±OH…X-(X-はハロゲンィオン)の構造をとっていることが明らかとなった。(3)塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化水素酸塩の順にVOHは高波数へ,逆にSOHおよびγOHは低波数へ規則的な変移を示した。(4)上記の規則的な変移をオキシムについても検討しほぼ類似の関係を得た。またオキシムについては水素結合の型式とγOHとの関係についても考察し,折線型水素結合のfoxは直線型のそれより低波数に観測されることを推定した。
  • 松井 芳樹
    1962 年 83 巻 9 号 p. 990-996,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シン-およびアンチ-ρ-クロルベンズアルドキシムの赤外およびラマンスペクトルを結晶状態で,400~4000cm-1の範囲を測定した。これらのスペクトルを主として重水素化化合物や溶液の赤外スペクトルと比較し,アルドキシム基に関する振動スペクトルのうちVOH,δOH,γc-n,vc-n,vn-c,vCHおよびNCHの帰属を行なった。両異性体のスペクトルを比較し,「シン」のVc-nは結晶状態では赤外に観測されず,ラマン効果として1638cm-1に強く観測されることおよび「アンチ」の方は赤外およびラマンの双方に1650-1に観測されることをたしかめた。また両異性体ともδORとδCHとはカップルしているが,「シン」の方がきわめて強く,これが1500~1200cm-1で両異性体のスペクトルの相異する大きな原因であることを明らかにした。
  • 竹中 亨, 後藤 廉平
    1962 年 83 巻 9 号 p. 997-1001,A64
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (CH3),nXHm-n型メチル化合物とその重水素化物のCH3およびCD3横ゆれ振動数,γcH3,および7cD2,を周期律表のIV族から~VII族までのX原子について検討した。ここにmはX原子の原子価,πは1から勉までの整数である。これらの振動数変化は原子価角HCXに関する力の定数の相違によるものと考えられ,この振動が他の振動と混合しているとみられる場合を除いて,それぞれ
    rcx3=582log(κx/rcx2)+1045, γcd3=416log(xx/γcH2)+778
    であらわされる。ここにxxはX原子の電気陰性度,γcxはC-X結合の原子間隔である。上記二つの式の間の関係はメチル基の重水素化にともなう運動エネルギー行列の変化を考慮して理論的に説明される。上式ならびに竹申がさきに示した対称変角振動数についての関係式が,CH3NO2やCH3CCI3など上記以外のメチル化合物についても成立すると考えて,それらの分子について観測された振動数からメチル基と直接結合する原子団の電気陰性度を求め,結果を種々の方法によって得られた文献値と比較した。
  • 臼井 進之助
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1003-1007,A65
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セン亜鉛鉱懸濁液の凝結・分散あるいは浮遊性におよぼすドデシルキサントゲン酸カリウム(KDX)の影響を,KDXの吸着量,セン亜鉛鉱のζ電位測定などによって検討した。懸濁液の凝結は,KDXがセン亜鉛鉱表面で最密単分子層吸着される付近でもっとも強く,この点でセン亜鉛鉱の浮遊性も最大となる。この場合における懸濁液の強い凝結は,鉱粒のζ電位の低下にもとつく電気的反擁力の減少によって説明することはできず,KDXの配向吸着による鉱粒の疎水化によるものと考えられる。セン亜鉛鉱に対するKDXの吸着が単分子層を越すと懸濁液の凝結は弱まり,二分子吸着の完結する付近において懸濁液の分散は強く,浮遊性も失なわれる。分散の起るKDX濃度はほぼKDXのcmcに対応する。この場合の分散は,.極性基を溶液側に向けたKDXの配向吸着にもとつく鉱粒の親水化と,鉱粒のζ電位の増加とによって説明される。これらに関連して懸濁質の疎水性・親水性と凝結との関係を,Hamaker-Vold理論によって考察した。
  • 兼島 清
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1007-1011,A65
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    琉球諸島に産するリン鉱で,とくにリン酸カルシウムを主成分としたものは亜鉛を0.004%より0.68%の範囲で平均0.4%を含む,これは南洋群島および他地区産のリン鉱に比較して大きな相異である。リン鉱申の成分間ではある範囲では亜鉛と鉄,アルミニウムとの間また亜鉛とケイ酸との問には正の相関がある。この亜鉛は原石灰岩に由来するものではなく,リン酸の源であるグァノに由来するものである。石灰洞に産するバットグアノ堆積層では,亜鉛は表層より下層にうつるにつれて濃縮され,それはリン酸の濃縮とよく一致し,最下層の石灰岩がリン酸カルシウムに変化するときこれに捕捉濃縮される。南洋群島および他地区産リン鉱に亜鉛が少ない原因を検討するため,亜鉛を多く含むリン鉱を二酸化炭素飽和水,水,海水,1.5%石灰水,および1.5%水酸化ナトリウム液などとふりまぜ,溶解してくる亜鉛とオルトリン酸イオンを定量した。その結果,海水や石灰水などで亜鉛が抽出されることを確かめた。このことから風化,とくに海水あるいはカルシウムを含む雨水などによる長期の風化の結果,リン鉱から亜鉛が流出したことがその少ない原因となったものと考えられる。
  • 兼島 清
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1012-1015,A65
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    琉球諸島に産するリン鉱のナトリウムは平均0.14%で他地区産のものと比較して大きな相違はない。カリウムの含有量は平均0.45%で他地区産リン鉱と比較して割合に多い。カリウムは鉄,アルミニウムやケイ酸と明瞭な正の相関があり,カリウムはケイ酸アルミニウム,カリウムとして混入していることが考えられる。琉球諸島に産するリン鉱は平均0.18%におよぶ多量のマンガンを含有し,他地区産のものと比較して高濃度である。マンガンと亜鉛の間には正の相関があり,亜鉛とマンガンのリン鉱への濃縮には相互に関連があるものと考えられる。銅およびニッケルの含有量は,銅の平均・0.026%,ニッケルの平均0.004%で,他地区産に比較して高濃度である。バットグアノ堆積層ではナトリウムは表層も下層もその含量に変化なく,その量も少ない。カリウムは異常に高濃度で表層から下層に移るにつれて濃縮され,鉄,アルミニウムの変化とよく一致している。マンガンは亜鉛と同様にリン酸カルシウムの多い下層に濃縮される。銅は宮古島産バットグアノに銅として0.48%の異常に高濃度のものがある。銅とニッケルの堆積層における挙動は,表層から下層に移るにつれ有機物の分解減少と平行して次第に減少し,リン鉱には亜鉛やマンガンのようには濃縮されない。
  • 兼島 清
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1015-1017,A66
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    琉球諸島に産するリン鉱のフッ素含量は平均0.3%で,リン酸との比F/P206は平均0.011であり,他地区産に比較して非常に小さい値である。塩素の含量も平均0.007%で他地区産に比較して低い値である。琉球諸島産リン鉱のウラン含量は平均6.5ppmで南洋群島や他地区産に比較してきわめて少ない。また南洋群島産のものは平均31.8ppmで大陸産より少ない。琉球諸島および南洋群島産リン鉱のウランとフッ素の比U/Fの値は平均値3.4×1r3~1.4×10轍3で海水のU/Fの比に近い値である。そしてウランとフッ素との間には正の相関がある。このことから南洋群島産リン鉱のフッ素とウランは海水からの濃縮が考えられ,琉球諸島産のリン鉱より長期の風化,とくに海水などによる風化を受けていることが推定されるのバットグアノ堆積層のフッ素はリン酸と行動をともにし,リン酸の濃縮されている下・いてフッ素も濃縮される。塩素は新しいグアノに多く表層から下層に移るにつμて減少し,リン鉱には濃縮されない。ウランは表層には少ないがフッ素と同様に下層のリン酸の多い層に濃縮される。
  • 吉村 拘, 立田 清朗
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1018-1022,A66
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然水からの諸元素の沈積の問題を解明する基礎資料をうる目的で,スカンジウムが石英,長石,方解石などの鉱物や,鉄あるいはマンガンの水酸化物や酸化物にpH 6~9の領域で酢酸アンモニウム緩衝液と人工海水とから吸着される状態を調べ,両者を比較検討した。スカンジウムは放射性の46Sc(半減期86日)を用い・その放射能から吸着率を測定した。結果はアルカリのρH領域で80%あるいはそれ以上の吸着率を示すことと,人工海水中の方が酢酸アンモニウム緩衝液中よりも,その吸着ρH範囲が広まり,吸着率も増大することがわかった。さらに,用いられた吸着剤にたいして,多くの場合にスカンジウムは等温吸着であることも確かめられた。また,海水中に含まれている種々の塩類の影響もしらべ,各塩によってかなりの影響を受けることも判明した。
  • 鈴木 進, 斎藤 節, 井上 泰
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1023-1026,A66
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    75As(n,γ)76As反応のホットアトム効果を用いて76Asの濃縮を行なった。ターゲットとしてぺンゼンアルソン酸のジルコニウム塩を用いJ RR-1原子炉(熱中性子束密度1011n/cm2-sec)で2時聞照射し,ターゲットを1.ON-HCl 20mlでふりまぜ抽出したのちロ過する。ロ液中に濃縮係数約1.2×104で76Asが濃縮される。放射化学的純度はβ線で計数して99.88~99.98%,おもな不純物は97Zrと考えられる。得られた76Asは化学的には純粋でジルコニウムは検出されなかった。こうして得られた76Asは55~70%が3価の状態にあり使用目的に応じて溶存状態を揃える必要があるが,操作は迅速,簡単でこのような短寿命の放射性同位元素の製造に適していると思われる。なお,HBr-HC1系による蒸留法による76Asの分離も試みたが臭化水素による試薬の分解のため濃縮係数は低く,12程度であり76Asの濃縮には不適当である。
  • 鈴木 進, 井上 泰, 岸本 睦義
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1027-1029,A66
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報ではベンゼンアルソン酸のジルコニウム塩をターゲットとして用いたが,今回はターゲットとしてベンゼンアルソン酸を使用して75As(n,γ)?76As反応のホットアトム効果による76Asの濃縮を試みた。不純物として含まれるおそれのある亜ヒ酸を除去したベンゼンアルソン酸をJRR-1原子炉(熱中性子束密度は約1011n/cm2・sec)によって2時間照射する。これを11N塩酸10mlに溶解し,1Omlのベンゼンで抽出し76Asをベンゼン層中に移したのち,水で逆抽出して76Asを水溶液中に得る。以上の方法により収率62%,濃縮係数2.6×10376Asを濃縮することに成功した。とくに高濃縮きれたとはいい難いが,放射化学的,化学的に純粋に簡単な操作で迅速に分離し得ること,および3価に原子価が揃った状態で水溶液中に得られることなどに特長があると考えられる。さらに反跳片のリテンション値,酸化状態についても検討した結果,リテンション値は15~20%であり,80%前後が3価の状態であることを確かめた。
  • 宮川 吉隆, 亀本 雄一郎
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1029-1032,A66
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高純度のシリコン製造用トリクロルシラン中の不純物を分析する方法を確立する目的で,γ線スペクトロメトリーおよび陰イオン交換分離を主体とする放射化分析法を検討した。
    予想される不純物のうちから高純度シリコンの諸性質のおよぼす影響が大きく,また放射化分析的の感度の高い,ナトリウム,ヒ素,カリウム,銅,アンチモンおよびマンガンを対象として,JRR-1原子炉で照射した。
    本法によるトリクロルシラン中の不純物の検出限界値は,ナトリウム,ヒ素,カリウム,銅,アンチモンおよびマンガンについておのおの約0.0009,0.0002,0.0004,0.0007,0.0008および0.0005ppmであった。
    検出定量できた不純物は,ナトリウム,銅,マンガンのみで,おのおの約0.004,0.005,0.005ppmであった。
  • 藤永 太一郎, 森井 ふじ, 寒竹 嘉彦
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1033-1035,A67
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    海草申の亜鉛,銅,鉛のジチゾンー四塩化炭素抽出による選択的分離,濃縮とポーラログラフ法による同時定量を試みた・上記元素以外にも三ッヶル,カドミウム,ビスマスについて同じ方法による定量の条件を検討した。これらの元素の定量的なジチゾンによる抽出とポーラログラフによる同時定量の可能な条件をあらかじめ検討したのち,それを実試料に適用した。その結果はρH9.0~9.2において上記6元素にジチゾンにより同時に95~100%抽出され0・1mo1〃酒石酸・0.5mo1〃酢酸アンモニウム溶液,またはQ.Q25mal〃ロダンカリウム,0.1醜01〃酢酸アンモニウム溶液の二つの支持軍解質を併用すればポーラログラフによる同時定量が可能であることがわかった0実試料については,アラメ(Eゴ3ε擁αbicyclis)の乾燥体19につき亜鉛109~127γ,銅11~24γ,鉛7~16γという値が得られた。ニッケル,カドミウム・ビスマスについてはより以上の濃縮と定量条件の検討が必要である。
  • 鈴木 陽一
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1035-1038,A67
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガス状のジアゾメタンを用いて低位カルボン酸をメチルエステル化し,過剰のジアゾメタンをイオン交換樹脂AmberliteIRC-50を加えることによって消却し,その反応液を直接二段ガスクロマトグラフィーにかける方法を詳細に検討して,少量の低位カルボン酸混合物の定牲定壁を行なった。対象とした有機酸はC1~C6の11種類の脂肪族モノカルボン酸および2一フランカルボン酸,安息香酸,フェニル酢酸の計14種類である。用いたカラムは(A)1段目;PEG1500180℃,2段目;DDP120℃またはPEG150060℃,(B):1段目;ジエチレングリコールコハク酸ポリエステル,180℃,2段目;ポリプロピレングリコール,120℃(長さいずれも2m)であって,低位カルボン酸定量の相対誤差は大体圭2.5%であったが,ただギ酸およびクロトン酸については誤差が大きかった。
  • 加藤 整治, 木村 圭子, 都築 洋次郎
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1039-1041,A67
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機ホウ素化合物を4種の異なる酸化方法,すなわち,(I)Na2O2を用いる方法,(II)アルカリ性H2O2(III)CF3OOOH(IV)アルカリ性K2S2O8,で酸化してホウ酸を生成させ,マンニットの存在のもとでρHメーターを用いて分析を行なう場合の簡易な方法を見いだした。その結果Iの方法で酸化し,滴定溶液に水酸化ナトリウムを用いた場合は精度が0.2~1%,IまたはIIの方法で酸化し,滴定溶液に水酸化バリウムを用いた場合は精度が0.1%内外で行なえることがわかった。
  • 高橋 大, 山口 宗明
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1042-1044,A67
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロドデカトリエンー(1,5,9)は3個の二重結合を有するが,Wijs法によるとつねに小さい2・5の値が得られた0この原因として環の変形および重合などが考えられるのでハロゲン化しその生成物について検討した。モノブロム・ジクロル,テトラブロムと2個のヘキサブロム化合物を単離し,さらにシクαドデカトリエンに誘導して環の変形していないこζを確認した・過剰の臭素を用いた場合主生成物は粘稠な液体であり,その分子壁,臭素含有率からシク◎ドデカトリエンが重合していることが明らかになった。またヘキサブロム化合物はいずれもアルカリ処理によって環の形が変わり,ビニル基をもつジブロム化合物になることを示した。
  • 浦田 能清
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1045-1049,A67
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-プロム-2-クロルエタンに塩素,臭素およびフッ素形陰イオン交換樹脂AmberliteIRA-400をそれぞれ反応させ,種々のハロゲン原子2個の組み合わぜからなるジハロゲンエタンの生成を試みた。すなわち1-プロム-2-クロルエタン2mlと塩素および臭素形陰イオン交換樹脂2gとを封管中で50°~140℃で種々の時間のもとで反応させた。たとえば140℃,3時間では塩素形陰イオン交換樹脂を使用した場合,1,2-ジクロルエタン13.8×10-3molと1,2-ジブロムエタン2.4×10-3molを得た。臭素形陰イオン交換樹脂の場合は1,2-ジクロルエタン7.5×10-3molと1,2-ジブロムエタン5.1×10-3molを得た。これらの反応は反応前の陰イオン交換樹脂のもつハロゲンの置換によるのみならず,使用した陰イオン交換樹脂(ハロゲン形)の触媒的な働きによるものと考えられる。つぎにフッ素形陰イオン交換樹脂の場合は1-プロム-2-クロルエタン20mlとフッ素形陰イオン交換樹脂20gとを反応させた。その結果,140℃,3時間では3種のフッ素化合物,1,2-ジフルオルエタン16.2,1-クロル-2-フルオルエタン13.3および1-プロム-2-フルオルエタン5.4×10-3mo1を得た。なおフッ素化合物のほかに1,2-ジクロルエタンと1,2-ジブロムエタンを90.0,41.2×10-8得た。このように1,2-ジクロルエタンや1,2-ジブロムエタンが生成されるのはフッ素形陰イオン交換樹脂が塩素または臭素形に一部置換された陰イオン交換樹脂が未反応の1-プロム-2-クロルエタンと反応するためと考えられる。
  • 藤原 一吉
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1050-1052,A68
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    π-プチルアルデヒド,π-ヘプタアルデヒド,およびρ-ニトロベンズァルデヒドをメチルマロン酸とピリジンまたはトリェチルアミンの存在で反応させた。反応は脱炭酸のみをともない,α-メチル-β-オキシカルボン酸が生成された。このオキセ酸を85%硫酸中でラクトン化させてα-メチル-γ-カプロラクトンおよび-γ-η-ノナラクトンが得られた。
  • 井上 博夫, 井本 英二
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1052-1057,A68
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-(またはβ-)ナフチルアミン・1,5-ジアミノナフタリンのそれぞれのニトロベンゼン,無水塩化アルミニウムによる酸化縮合反応を種々の条件で検討した。生成物はいずれの場合も有機溶媒に不溶,濃硫酸のみに可溶の黒紫色または黒色の不融性粉末であった・ジメチルホルムアミド可溶成分の紫外,可視吸収スペクトルでは約300,550mμ付近に吸収を認めた。また,赤外吸収スペクトルから隣接2H,4H面外吸収を認め,生成物の構造式としてサフラニン型骨格を推定した。また,ESRスペクトルから遊離電子の存在を認めた。20℃における固有抵抗値は約f~1010~1010ohm-cm,活性化エネルギーは0.9~1.4eVであり,ハロゲンを含む塩型の高分子化合物はアルカリ処理したものにくらべて,良好な電導性を示した。
  • 須山 正, 金尾 清造
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1058-1060,A68
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ω-プロムカプロン酸エチルエステル, モノクロルアセトンに金属アルカリを作用すると8-ケトペラルゴン酸エチルエステルが得られる。このエステルの7位を臭素化し, フタルイミドカリウムを作用し, 加水分解して塩酸7-アミノ-8-ケトペラルゴン酸を得た。Swainはmp123℃~124℃を記載したが, 著者らの得たものはmp133℃を示している・ついで7-アミノ-8-オキシイミノペラルゴン酸に誘導し, 酸化白金触媒をもって高圧で接触還元を試み,7,8-ジアミノペラルゴン酸を合成した。
  • 梅原 正次, 金井 克至, 北野 尚男, 福井 謙一
    1962 年 83 巻 9 号 p. 1060-1064,A68
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラヒドロチオフェンとハロゲン化アルキル,ハロゲン化アリルおよびω-ハロゲン脂肪酸とから各種のハロゲン化S-アルキルテトラメチレンスルホニウム化合物を合成した。これらの化合物とホウフッ化銀との反応を水溶液中で室温において行ない,ホウフッ化S-アルキルテトラメチレンスルホニウム化合物を合成した。得られたホウフッ化物は吸湿性の少ない,室温で安定な自色結晶である。ホウフッ化物を各種の無機カリウム塩で処理し,相当する陰イオンを有するスルポニウム塩を得た。
  • 1962 年 83 巻 9 号 p. A63-A68
    発行日: 1962/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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