日本化學雜誌
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84 巻, 10 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 平田 寛
    1963 年 84 巻 10 号 p. 761-764,A53
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづき,アルコール類一有機溶媒混合溶液の滴下による過マンガン酸カリウム-シュウ酸(二水和物)反応の誘導期変化を測定し,π電子系をプロトン受容体として水素結合を形成する場合にも,誘導期はいちじるしく短縮されることがわかった。ただしこの場合には水溶媒のときと異なり,短縮の程度は高級アルコールになるほど小さく,それは主としてアルコール類の過マンガン酸カリウムに対する反応性によると考えられる。
  • 渡辺 啓, 中川 鶴太郎
    1963 年 84 巻 10 号 p. 765-767,A53
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属粉末およびカーボンブラックー固形パラフィン分散系の熱伝導度の濃度依存性を,ガラス板を標準板とした比較法によって測定した。その結果,理論的類似性から予期されるとおり熱伝導度の測定は電気的諸性質の測定と同様に,分散状態の研究手段となることを認めた。すなわち測定結果によれば熱伝導度は,アルミニウム粉末を分散質とした場合体積濃度10%で純パラフィンの約4.5倍に,銅粉末を分散質とした場合には5%で約4倍になる。このような増大は,分散系の誘電率の理論式との類似的考察から予想される値よりもはるかに大きい。このように分散系の熱伝導度が分散質の濃度の増加とともにいちじるしく増大することから,誘電的測定結果と同様に分散粒子間の2次的構造形成をうかがい知ることができる。
  • 渡辺 啓, 中川 鶴太郎
    1963 年 84 巻 10 号 p. 767-770,A53
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    重合アマニ油を分散媒とした種々のカーボンプラック,酸化チタンおよびアルミニウム粉末の分散系の熱伝導度の濃度依存性を試作した装置により測定した。熱伝導度は,分散質の体積濃度が1~2%となるといちじるしく増大する。この熱伝導度の異常増加は,電気的諸性質,力学的諸性質の測定にあらわれる異常性に相応している。
  • 松隈 昭, 滝川 幸雄
    1963 年 84 巻 10 号 p. 770-774,A53
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    直鎖パラフィンの沸点をその炭素数の100倍に相当するよう目盛り,これを“沸点指標”と定義してその計算式を求め,それを用いて各パラフィンの実際の沸点指標を計算し,C2~C15直鎖パラフィンの場合±0.50以下の誤差範囲内におさまることを認めた。なおC15~C29の範囲については別に補正式を求めた。さらにこれらを用いてC17~C22直鎖パラフィンの沸点を計算するとともにこれらの事実をメチルパラフィンなどに応用してそれらの沸点指標を計算して化学構造との関係について考察した。とくにC2~C172-および3-メチルパラフィンの沸点については精密な値を計算して文献データの正誤を論じた。
  • 松隈 昭
    1963 年 84 巻 10 号 p. 774-779,A54
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィーにおいて固定相の極性,および温度をかえたときにおけるC4~C17モノメチルパラフィンの保持指標を測定した。その結果これらの保持指標は固定相の種類,温度,パラフィンにおけるメチル基の置換位置,炭素数などに多少の影響を認めた。とくにスクワランを用いたときの保持指標はアピエゾングリスやポリプロピレングリコールのそれより平均して大きいこと,温度が上昇すると低級パラフィンの保持指標は減少するが高級パラフィンでは増大すること,さらにパラフィンにおけるメチル基の置換位置が異なるととくに2-および3-メチル同族体において保持指標の傾向の異なることを認めた。なお“沸点指標”と保持指標とを比較し,それらの相異に一定の傾向のあることを認め,このことからC16メチルパラフィンの沸点を計算した。
  • 藤田 斉, 伊沢 正実
    1963 年 84 巻 10 号 p. 779-783,A54
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クエン酸ナトリウム共存下で生成した直径約300Åの粒度のそろった硫酸バリウムゾルを透析したのち,酸素を通気しながら60Coγ線を照射して,凝結現象の観察,易動度の測定および共存しているクエン酸残基の変化量の分析を行なった。照射線量がある値以上になると,ゾルはいちじるしく不安定になって凝結沈降した。この臨界凝結線量は,ゾル中に含まれるクエン酸ナトリウムの濃度に比例することが認められた。このゾルの電位決定イオンはクエン酸イオンであり,クエン酸イオンの放射線分解が凝結の主要な原因であることがわかった。ゾルの場合は水溶液の場合にくらべて,クエン酸イオンの放射線分解速度は小さい。これは粒子表面への吸着による見かけの保護効果と思われる。粒子の易動度は照射線量が増すにつれて徐々に減少した。また同様な照射実験を窒素を通気しながら行なうと,クエン酸イオンの放射線分解速度は小さく,酸素雰囲気では凝結する線量でも凝結しなかった。
  • 垣花 秀武, 栗栖 紀美子, 細江 守一
    1963 年 84 巻 10 号 p. 784-787,A54
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ウランのように異なった酸化状態をもつ同位体の化学的分離係数を考察するために,電子交換反応系に二相分配による分離理論を適用した。その分離係数は,
    であらわされる。ここでS1は4価ウランのみの場合の分離係数,S2は6価ウランのみの場合の分離係数,keは水溶液での電子交換反応の反応係数,ρは6価ウラン濃度と4価ウラン濃度の比の値,-は第2相を示す。この式は二相分配に関する一般式の一例である。
    理想系として,
    (1)ρ→0,ρ→∞のとき,S=S2/ke
    (2)ρ→∞,ρ→0のとき,S=S1ke
    のような極値が得られる。
    第二相としてイオン交換体を用いる場合には,陽イオン交換樹脂では,外部溶液のウラン(IV)の割合が10~20%の場合に分離係数は極値を示し,1.0011(ke=1.001),1.0019(ke=1.002),1.0027(ke=1.OO3)の値が推定され,陰イオン交換樹脂では,外部溶液のウラン(IV)の割合が80~90%のときに極値として,0.9992(ke=LOO1),0.9985(ke=1.002),0.9981(ke=1.003)の値が推定される。
  • 尾嶋 平次郎
    1963 年 84 巻 10 号 p. 787-792,A54
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モノ-,ピス-およびトリス-ビピリジル銅(II)キレート-水酸化ナトリウム系の可視部および近紫外部の吸収スペクトルを測定し,同系の電導度滴定および電気泳動などの結果をあわせて,上記3種類のキレートのアルカリ添加にともなう逐次構造変化を検討した。各キレートとも配位子の増加するほどOH-との反応に対する抵抗を増すが,[Cu(OH)(OH2)bip]+を経過し,最終生成物として[Cu(OH)2bip]oを生ずる。
  • 平田 寛, 雨宮 稔起
    1963 年 84 巻 10 号 p. 792-798,A55
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ク形波ポーラログラフィーにはじめて有機酸基礎液を導入し,オキシ酸を用いて鉛一スズ共存系のポーラログラムを検討した。スズ(II)-鉛共存系では,クエン酸,酒石酸,リンゴ酸いずれのオキシ酸1mol/l溶液を用いても,スズ(II)と鉛がほぼ同等の波高で分離できるが,スズ(IV)-鉛共存系では,オキシ酸の種類によってかなり異なる。クエン酸基礎液ではスズ(IV)が60倍量共存しても鉛(0.02mg/ml)の波高に影響を与えないから,鉛を直接定量することができるが,酒石酸では両波が重畳し,鉛の波高はスズ(IV)量によって増大する。リンゴ酸基礎液では,鉛とスズ(IV)の分離波が得られるから同時定量が可能である。
  • 大槻 晃, 半谷 高久
    1963 年 84 巻 10 号 p. 798-802,A55
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    汚濁水中の低級脂肪酸を迅速に測定する方法を確立するために水素炎イオン化検出型ガスクロマトグラフを使用して検討を行なった。汚濁水中の低級脂肪酸をガスクロマトグラフ用試料に調製する方法として,一定量の試料水に水酸化ナトリウムを加えて蒸発乾固し,ついで希硫酸で溶解して水蒸気蒸留を行なう。その留出液はアルカリ性で1mlにまで濃縮後,強酸性陽イオン交換樹脂を用いて遊離酸にもどしこれを試料とする。
    ガスクロマトグラフの固定相担体としてC-22を,液相はジエチレングリコールセバケイトポリエステルを用いた。この方法によればいままで全低級脂肪酸量としてしか測定できなかったのをおのおのの酸量をも測定でき,さらに汚濁水の採水量は比較的少なくてすみ,短時間で分析することができた。
  • 野崎 亨, 出森 雅子
    1963 年 84 巻 10 号 p. 802-805,A55
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液中の銅(II)のニトリロ三酢酸錯体の安定なpH領域,組成,安定度定数およびモル吸光係数を紫外分光光度法により求めた。pH7以下では組成1:1の一種だけが存在し,安定なpH領域は2.5~7で,イオン強度0.1,pH2.00で生成する錯体のlog K(20℃)は13.40であり,240,270mμにおけるモル吸光係数はそれぞれ2.9×103,1.7×103の値を得た。pHが7を越えると配位子との結合比は1:1であるが,吸収曲線の形が変わり吸収も増大する。これは主としてCuX-の加水分解反応によりCuX=OHが1:1の別種の錯体が生成するためと思われる。pH5で銅(II)のニトリロ三酢酸錯体の240あるいは270mμにおける吸収を利用すれば銅(II)イオン0.6~13ppmの範囲で濃度と吸光度の間に直線関係が見られ,銅の定量が可能である。いちじるしい妨害イオンはチタン(IV),鉄(II),バナジウム(V),水銀(II),ウラニウム(VI),モリブデン(VI)などのイオンである。
  • 森田 弥左衛門
    1963 年 84 巻 10 号 p. 806-812,A56
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジニトロベンゼン異性体の簡単な定量法を案出する目的で吸光光度法について研究した。
    O-とp-異性体はアルカリ性溶液に塩化スズ(II)溶液を加えれば紫色および黄色にそれぞれ呈色するが,m-異性体は呈色しない。さらにこの溶液にn-ブタノールを加えてふりまぜるとO-呈色体のみが抽出されて分離することができる。そしてブタノール相は560mμ付近の波長に,また水溶液相は390mμ付近の波長に,それぞれ吸収極大があって,その吸光度から両異性体が定量できる。またm-異性体はメチルエチルケトン法,ジメチルスルポキシド法,あるいはジメチルホルムアミド法のいずれかにより別に定量した。
    本法を広範囲の混合物の分析に適用し,相対誤差10%以下の精度で簡単に,しかも迅速に各異性体が定量できた。
  • 森田 弥左衛門
    1963 年 84 巻 10 号 p. 812-816,A56
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきにジニトロベンゼン異性体の吸光光度定量法について発表したが,その方法はo-とp-異性体については溶媒抽出により分離定量するものであった。
    本報においては抽出分離せず,呈色溶液の吸収極大波長の吸光度から同時に定量する方法を研究した。
    すなわち,o-およびp-ジニトロベンゼンをアルカリ性で糖類あるいはアスコルビン酸によって還元するとo-異性体は550mμ付近に,またp-異性体は400mμ付近に,それぞれ吸収極大をもつ呈色溶液となるが,m-異性体はほとんど呈色しないので両異性体の定量を妨害しない。しかも呈色溶液の経時変化が少なく,呈色の際の試薬の適量範囲も広いので,これらに基づく定量誤差が少ない。そして混合物中の両異性体が両吸収極大波長の吸光度からただちに同時定量できる。検量線は前報とほぼ同程度の濃度範囲でBeerの法則が成立する。この方法によって広範囲の混合物を5%以下の誤差で簡単迅速に定量できることを明らかにした。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1963 年 84 巻 10 号 p. 816-823,A56
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    窒素の吸光光度定量法について研究し,題示の新定量法を確立した。この反応はまずアンモニアが次亜塩素酸塩によってモノクロラミンとなり,これがα-ナフトールと反応して4-アミノ-1-ナフトールあるいはナフトキノンクロルイミンを経てインドフェノール型の色素を生成して呈色するものであることを明らかにした。したがってモノクロラミンが生成されない条件では呈色しない。
    呈色溶液の吸収極大は720mμの波長にある。またこれはアルコール,エステル,ケトン,ハロゲン化脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素類などによって簡単に抽出できる。アルコール類で抽出した場合は,吸収極大は740mμとなるが,それ以外の溶媒の場合は逆に短波長側に移り,溶媒により多少の差はあるがいずれも540~550mμの範囲にある。定量操作は非常に簡単で,たとえば20~25μg以下のアンモニア態窒素を含む中性の試料溶液5mlに,有効塩素濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液1mlと,0.2Nの水酸化ナトリウム溶液3mlおよび5%α-ナフトール溶液1.5mlを順次に加えてふり,水で25mlにし20℃で5~10分後にその吸光度を測定するか,あるいは溶媒抽出してその吸光度を測定して定量する。検量線は方法によって多少の差はあるが,いずれも呈色溶液申の窒素濃度として約1μg/ml以下の範囲でBeerの法則が成立する。Kjeldahl法による分解溶液に直接応用するときは,銅および水銀塩による妨害をEDTAで隠蔽することができる。本法は感度が高く,精度,再現性ともにすぐれ,試薬も約1~2箇月間は安定である。
  • 亀本 雄一郎, 山岸 滋
    1963 年 84 巻 10 号 p. 823-826,A56
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉛中の微量のナトリウム,アンチモン,ヒ素,および銅を中性子放射化分析法により定量した。約1gの試料を各標準試料と同時にJRR-1(中性子束約3×1011n/cm2/sec)中で2時間または3日間,あるいはJRR-2(中性子束約1012n/cm2/sec)中で20分間または32時間照射した。照射した試料からナトリウム,アンチモン,ヒ素,銅を放射化学的に純にとりだし,24Na,122Sb,76As,64Cuのγ放射能を標準のそれと比較して定量した。24Naのフラクションにはしばしば他の核種の放射能が認められたのでγ線スペクトロメトリーを並用した。本法の結果を既報の非破壊分析の結果と比較し,また本法を鉛の帯域精製に際しての不純物と挙動の研究に適用して検討した。
  • 吉田 正一
    1963 年 84 巻 10 号 p. 826-833,A56
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アセチレンのような重合しやすい物質では,励起状態にある分子が他の分子と重合してイオン化し,イオン化電圧よりも低いエネルギーでイオンが出現することが予想される。また電子衝撃による実験では,多くの希ガスはそのイオン化電圧よりも低いエネルギーで二原子分子イオンを生成することが知られている。このようなイオン化反応を研究するため,クリプトンおよびアルゴン共鳴線によるアセチレンおよびキセノンの光イオン化反応の実験を行なった。その結果アセチレンはその吸収断面積はかなり大きいにもかかわらず,検出されたイオンの量が非常に少なく,イオン化をともなう重合はあまり起っていないことが推論きれた。増感光イオン化反応では,アセチレンの圧力が十分大きい場合には検出されたイオンの量はガスの圧力とともに減少する。またキセノンの光イオン化反応では,イオン化をともなう反応がアセチレンにくらべて多く起っていることが知られた。
  • 佐藤 泰夫
    1963 年 84 巻 10 号 p. 829-838,A57
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    リトコール酸メチルの3-トシレートを液体アンモニアで処理して,3β-アミノコラン酸を合成した。このものと前報で報告した3-ケトコラン酸のオキシムを酸性下で接触還元分解して得た生成物とが同じものであることがわかった。またこのものに亜硝酸を作用させると,3α-エピマーからは立体配置を保持した3α-オキシコラン酸が生成するのに反し,この3β体からは一部脱離をともなって,3-コレン酸と3蘇オキシコラン酸とを生ずることが認められた。
    本報および前報から,3-ケト胆汁酸のオキシムを接触還元分解すると,生成するアミノ基の立体配置は,その母体であるケトン化合物を接触還元して得られる水酸基のそれとまったく同様な結果を与えるということが確認できた。3-ケトコラン酸メチルにLeuckart-Wallachの反応を行なうと,3β-アミノ誘導体を生成することが判明した。
  • 三井 生喜雄, 飯島 和美, 増子 達郎
    1963 年 84 巻 10 号 p. 833-838,A57
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    接触還元反応におけるパラジウムとラネーニッケル触媒の選択性を究明する目的で,触媒の同一面上に立体障害なしに,どのような吸着状態でもとりうる光学活性2-フェニル-2-ブタノール(I)を合成し,これをラネーニッケルで接触還元したところ約90%光学活性をたもち,同一立体配置を有する2-フェニルブタン(II)を得た。これに対しパラジウム-炭触媒では約80%以上光学活性を保持し,Walden反転したIIを生成した。このことから,パラジウムとニッケル触媒とでは水酸基に対する吸着力の差に基づき分子の立体的吸着状態が異なるものと推定した。
    また,触媒面に一面吸着するには立体障害が大きく,二面吸着状態を取りやすいと考えられるIの酸性フタル酸エステル(II)についても検討したところ,触媒の種類に関係なくWalden反転したIIを得た。このことはさきに提出した立体障害の大きい分子の接触水素化分解はWalden反転で進行するという機構をさらに裏づけている
  • 三井 生喜雄, 今泉 真, 高村 功, 高村 仁
    1963 年 84 巻 10 号 p. 838-841,A57
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光学的に活性なα-フェニル-α-オキシ酪酸エチル(Va)およびα-フェニル-α-ベンゾイルオキシ酪酸エチル(VII)を合成し,エタノール中ラネーニッケル触媒により接触還元した。Vaは94%の光学活性をたもち立体配置を保持したα-フェニル酪酸エチル(Wa)の他に,ベンゼン環の還元されたα-シクロヘキシル-α-オキシ酪酸エチルとα-シクロヘキシル酪酸エチルを生成した。VIIは等モルの水酸化ナトリウムを加えて接触還元した結果,10%の光学活性をたもちWalden反転したWaと安息香酸の他に安息香酸エチルおよびVaを生成した。Vaの場合は触媒上のSNi型反応で水素化分解されたことを示し前に提出した機構を支持している。また,VIIの場合は水素化分解と同時に加溶媒分解が起っているため,この結果はあまり正確でない。しかしVIIの構造から考え,この還元条件下では種々の機構で反応しているものと推定される。
  • 三井 生喜雄, 今泉 真, 高橋 裕
    1963 年 84 巻 10 号 p. 842-845,A57
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光学的に活性な2-フェニル-2-アリールオキシ-1-プロパノール類(III)を合成し,エタノール中,ラネーニッケルおよび種々のパラジウム触媒を用い常温常圧下で接触還元した。IIIはいずれの場合もおもにWalden反転した2-フェニル-1-プロパノール(lV)と相当するフェノール類を生成した。このことは,IIのアリールオキシ基と他の二つの基が同一触媒面に吸着するには立体障害があり,また,その吸着状態での不斉炭素のδ+が比較的小さいため,IIIは触媒上のSNi型反応では水素化分解され難く,立体障害なしに吸着して反応する触媒上のSN2型反応でおもに水素化分解されたためと考えられる。
  • 井上 芳郎, 北村 一夫
    1963 年 84 巻 10 号 p. 846-848,A57
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペンタエリトリットを有機溶媒中で水酸化カリウムを用い,加圧アセチレンによってビニル化反応を行なう諸条件を検討した結果,溶媒としてはブタノール,触媒水酸化カリウムの量は溶媒に対して,約1.5%,反応温度は160℃がそれぞれ適当であることを知った。反応生成物中からmp49°~50℃の結晶を単離し,これがペンタエリトリットテトラビニルエーテルであることを確認したが,なお多くの分留困難にして未確認物質の同時に生成していることがわかった。
  • 尾形 強, 後藤 良造
    1963 年 84 巻 10 号 p. 849-852,A58
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々の非対称一塩基酸イミド類とβ-ジエチルァミノエタノールとを加熱反応させ,その両アシル基の反応性を比較検討した。
    その結果,上記酸イミド類はいずれもエステル化型の反応が進行し,それぞれ相当するアミノアルコールのエステルとアミドとを好収率で生成することが明らかになった。
    さらに酸イミドを形成している二つのアシル基のうち,強酸のアシル基によってアミノアルコールは優先的にエステル化され,立体障害が序在するときには,立体障害の少なくないアシル基がエステル化により多く寄与することが立証できた。
  • 村松 一郎, 加藤 岱三, 萩谷 彬
    1963 年 84 巻 10 号 p. 852-855,A58
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドとε-アミノカプロン酸との反応について研究した。両者は加熱反応により,ε-シクロヘキシルカルバミルアミノカプロン酸シクロヘキシルアミドを生成する。この反応の中間生成物としてN-(ε-アミノカプロィル)-N,N'-ジシクロヘキシル尿素およびε-アミノカプロン酸シクロヘキシルアミドを確認しこの反応の機構を明らかにした。
  • 村松 一郎, 平林 徹, 萩谷 彬
    1963 年 84 巻 10 号 p. 855-860,A58
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづきN,N'-ジシノノロヘキシルカルボジイミドとグリシンとの反応について研究した。反応条件により両者から3種類の物質が生じる。すなわち無水溶媒中で100℃付近で反応させると尿素誘導体N-シクロヘキシルカルバミルグリシンシクロヘキシルアミドが得られる。これは前報のε-アミノカプロン酸の場合と同様の生成物であるが収率は低い。同じく無水溶媒申で200℃付近で反応させると別の生成物,すなわち3-シクロヘキシルヒダントインが60%以上の収率で得られる。また含水溶媒中で反応させるとさらに別種のN',N''-ジシクロヘキシルグアニド酢酸が好収率で得られる。以上の結果にもとついてこれらの反応機構について考察した。
  • 田伏 岩夫, 長田 司郎, 小田 良平
    1963 年 84 巻 10 号 p. 860-861,A58
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 村松 伸紀
    1963 年 84 巻 10 号 p. 861-862,A58
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1963 年 84 巻 10 号 p. A53-A59
    発行日: 1963/10/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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