窒素の吸光光度定量法について研究し,題示の新定量法を確立した。この反応はまずアンモニアが次亜塩素酸塩によってモノクロラミンとなり,これがα-ナフトールと反応して4-アミノ-1-ナフトールあるいはナフトキノンクロルイミンを経てインドフェノール型の色素を生成して呈色するものであることを明らかにした。したがってモノクロラミンが生成されない条件では呈色しない。
呈色溶液の吸収極大は720mμの波長にある。またこれはアルコール,エステル,ケトン,ハロゲン化脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素類などによって簡単に抽出できる。アルコール類で抽出した場合は,吸収極大は740mμとなるが,それ以外の溶媒の場合は逆に短波長側に移り,溶媒により多少の差はあるがいずれも540~550mμの範囲にある。定量操作は非常に簡単で,たとえば20~25μg以下のアンモニア態窒素を含む中性の試料溶液5mlに,有効塩素濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液1mlと,0.2Nの水酸化ナトリウム溶液3mlおよび5%α-ナフトール溶液1.5mlを順次に加えてふり,水で25mlにし20℃で5~10分後にその吸光度を測定するか,あるいは溶媒抽出してその吸光度を測定して定量する。検量線は方法によって多少の差はあるが,いずれも呈色溶液申の窒素濃度として約1μg/ml以下の範囲でBeerの法則が成立する。Kjeldahl法による分解溶液に直接応用するときは,銅および水銀塩による妨害をEDTAで隠蔽することができる。本法は感度が高く,精度,再現性ともにすぐれ,試薬も約1~2箇月間は安定である。
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