日本化學雜誌
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85 巻, 11 号
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  • 中村 哲朗
    1964 年 85 巻 11 号 p. 711-722,A57
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    輸送現象一般の立場から,定常流束Jを媒介にm相混合系の伝導率を,成分相の伝導率と分布様式とを用いて表示し論じた。
    まずm相混合系を通過するJの通路を“伝導路”と定義し,各相の重畳性を考慮すると,可能な伝導路はq(m)=2m-1種類である。これら伝導路の組み合わせから卿相混合系は,
    種の分布型に類別される。
    つぎに伝導度の結合則*2を仮定し,各種伝導路の伝導度をCPa1Pa2…Parとするとき,m相の一般型分布系,すなわちすべての伝導路q(m)種を備える系の伝導率は,
    となり,ζ(P1,P2,…,Pm)はm相のあらゆる分布型に対する伝導率を含む。一般に分布型を指定するとその伝導率の表示形式が決まり,逆もまた成立する。この関係を用いて着目する相の連続,不連続を判別する定理,分散系であるための必要,かつ十分な条件などの諸定理を導いた。また伝導率の示強変量に対する変化率1/ζ(∂ζ/∂f)の性質を用いて,分布型の成分相に関する情報について論じた。
    最後に,従来の2相混合系に対する伝導率の表示式6例について諸定理を適用し,これらの表示式が所属している分布型を吟味した。
  • 白崎 高保, 岡田 正秀, 水鳥 武彦, 早川 啓, 端 昭二
    1964 年 85 巻 11 号 p. 722-724,A57
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    バイ焼シリカアルミナ(HSA)の赤外吸収スペクトルを測定し,表面構造と周体プロトン酸性との関係を研究した。市販nalcatを300メッシュ以下に粉砕し,大気中で500℃,2時間焼成したHSAを臭化カリウム錠剤法およびペースト法で赤外吸収にかけた。その結果,臭化カリウム錠剤では3400cm-1に結合OH伸縮の大きなブロード吸収を示した。シクロヘキサンやNujolなどの無陽子溶媒に分散したペーストではこの吸収がペースト調製直後に大きく,放置すると減少した。すなわちHSAの表面水素結合は無陽子溶媒中で切れた。このことは無陽子溶媒を用いる固体酸測定法と関連があろう。なおNujol Pasteではとくに放置により3600cm-1に遊離OH伸縮の吸収が認められた。つぎに固体酸性のHSAとそのHをM+で交換中和した中性のMSAについて,Nujol法スペクトル(放置後)を比較すると,遊離OH伸縮吸収はMSAの方が弱い。したがって用いたHSAの水中での固体酸は・OHと考えられた。また上記水素結合はこの・OHが中和されてもあまり変化しない。なお上述のHSA以外の焼成シリカアルミナについては上と同様の結果が確認されなかった。
  • 斎藤 肇
    1964 年 85 巻 11 号 p. 724-730,A57
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサノンオキシム-塩酸塩,二塩酸塩について,赤外吸収スペクトル,紫外吸収スペクトル,NMRスペクトルを用いてその構造を検討した。その結果,一塩酸塩はプロトンが窒素原子の孤立電子対に付加したものであり,二塩酸塩はさらに酸素原子の孤立電子対に付加したのであることがわかった。
  • 渡辺 昌, 松本 陸郎, 後藤 廉平
    1964 年 85 巻 11 号 p. 730-735,A58
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    乳化剤によるエマルジョンの安定化機構の研究に関するモデル実験として,一対の滴下水銀電極を用いて,界面活性物質を含む水溶液中での2個の水銀滴の合一におよぼす滴表面の電位の効果を調べた。ドデシル硫酸ナトリウム,セチルピリジニウム・クロリド,ポリビニル・アルコールやエパン(ポリプロピレン・グリコールとポリエチレン・グリコールからなる非イオン性高分子界面活性剤)などは完全な保護作用を示し,ある濃度(臨界安定化濃度)を越えると水銀滴の電位が0でも合一が起らない。エパンでは分子の親水性が増すと安定化濃度が低下する。同時に行なった二重層微分容量の測定による各種エパンの水銀面への吸着の研究から,この安定化が主として界面活性物質の界面膜形成によるものであることが示された。
  • 市川 隆久
    1964 年 85 巻 11 号 p. 736-740,A58
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紫外線照射したガラス状エチレングリコール-過酸化水素系のESRを測定した。照射初期の幅広い吸収線(ΔHmsl~50gauss)は照射時間の増加とともに幅の狭い非対称な吸収線に変化し,同時にformylラジカルが生成した。
    加温により等方的な超微細分離定数,α1=13gaussおよびα1=5.5gaussの4本線に変化した。HO・ラジカルの水素引き抜きにより生成する・CH(OH)CH2(OH)ラジカルは,この4本線に対応しないことが推論された。
    そこで,初期に生成した・CH(OH)CH2(OH)ラジカルの光分解により,水酸基がアルデヒド基へ酸化されて生成した・CαH-(OH)CβHOラジカルを仮定し,この4本線の超微細構造を説明した。このラジカルの不対電子密度をHMO法で計算して,ρcα=0.579,ρcβ-0.118ρo=0.312を得た。一方半経験的な関係式(α=Qρ)と実測の超微細分離定数を使って,ρcα螂0.58,ρcβ=0.24,ρo-0.18を得た。
    いくつかの部分的に重水素化した試料が選ばれ,同様な実験が行なわれたが,同位体効果を仮定してそれらの結果を説明できた。
  • 松本 幸雄
    1964 年 85 巻 11 号 p. 741-745,A58
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の飽和炭化水素,芳香族炭化水素,高級アルコール類をそれぞれ分散相成分とし,ドデシル硫酸ナトリウムを乳化剤とするエマルジョンを一定の条件で調製し,その粘度および分散粒子径に対する分散相成分の影響を,分散相濃度や乳化剤濃度を変えて調べた。
    一般にどの分散相濃度や乳化剤濃度においても,エマルジョンの粘度は飽和炭化水素系,芳香族炭化水素系,アルコール系の順に高くなり,分散粒子径はこの順に微細となる傾向を示す。さらにアルコール系では炭素数の増加とともに粘度はいちじるしく増し,分散粒子も微細となるが,飽和および芳香族各炭化水素系では同族物質間にこのような差異は認められない。
    各系の粒度分布,相対粘度の分散相濃度依存性,あるいはそれらに対する乳化剤濃度の影響などの比較から,各系の粘度差は,分散粒子の凝集状態が分散相の種類により異なることに主たる原因があると推定された。
  • 山辺 武郎, 斎藤田 鶴子, 妹尾 学
    1964 年 85 巻 11 号 p. 745-748,A58
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陽イオン交換樹脂Amberlite IR-120について,塩化ナトリウム,臭化ナトリウム,およびヨウ化ナトリウムを用い,水とメタノール,エクノールあるいはアセトンとの混合溶媒系での水素イオンとナトリウムイオンとの交換平衡を検討した。イオン交換平衡の選択係数K の対数と溶液誘配率の逆数との間には,有機溶媒含量の比較的小さい範囲では直線関係がなり立ち,有機溶媒含量80~90%付近で選択係数は極大値を示す。K の極大値は水-メタノール系で25,水-エタノール,水-アセトン系では500の程度となる。有機溶媒含量がさらに高くなるとK は急激に減少する。H+-Na+交換で非対立イオンCl-,Br-,I-の影響は顕著でない。また選択係数と樹脂膨潤度との間には一定の関係があり,有機溶媒含量が大きくなると,ナトリウム形樹脂の膨潤度は水素形樹脂の膨潤度にくらべていちじるしく減少し,ナトリウムイオンが強く捕捉されることが明らかにされた。
  • 織方 郁映, 御園生 晃
    1964 年 85 巻 11 号 p. 748-752,A58
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    π-C18-共役ジエン酸メチル鉄トリカルボニル錯体を触媒とする不飽和脂肪酸エステルの水添反応速度は,1~25atmの間では水素圧に無関係であり,水添の見かけの活姓化エネルギーは一般の固体触媒で認められるよりもいちじるしく大きく,180°~200℃の反応温度内では約40~50kcal/molであった。遊離脂肪酸はいちじるしく水添反応を阻害した。高度不飽和体に対する水添の選択性は銅-クロム-マンガン酸化物触媒よりもやや劣った。窒素気申190℃において,鉄ペンタカルボニルとまったく同様の異性化触媒作用をオレフィンに対して示した。不飽和脂肪酸エステルに添加して減圧下に約225℃で3時間たもつと,添加した錯体の約2~4倍量の高沸点物が生成した。以上の結果の考察にあたって,触媒種は錯体の熱分解によって生成するFe(CO)3であろうと推定された。
  • 織方 郁映, 御園生 晃
    1964 年 85 巻 11 号 p. 753-756,A59
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    π-C18-共役ジエン酸メチル鉄トリカルボニル錯休の熱分解を不活性ガスおよび水素中で行ない,錯休の熱分解によって生成するFe(CO)3が水素に対してきわめて強い親和力を有し,H2Fe(CO)3となり,また水素の存在しない系では,脱水素-水添をも行ない,二重結合を不均斉化させることを認めた。またこの際生成する油の組成分析の結果,H2Fe(CO)3の中心金属の空の軌道が二重結合のπ-霞子の配位を受け,同時に水素-金属結合が近傍の二電結合に付加し,π-アリル錯体を形成する過程と,この配位結合の熱的再解裂によって生ずる鉄の空執道が分子状水素を取り入れてこれを活性化し,金属-炭素問結合間に挿入する水素化分解過程を考えることにより,鉄カルボニル類による水添が,モノエン体よりもジエン体に対してきわめて選択的であることを説明した。
    また,約210°~230℃における錯体の熱分解の活性化エネルギーは約40~50kcal/molであり,錯体による水添の活性化エネルギーの値とほぼ等しいことを認めたが,詳細についてはさらに検討中である。
  • 青木 正, 山崎 太郎
    1964 年 85 巻 11 号 p. 757-763,A59
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    キサントゲナト錯体(ニッケル(II)および鉄(III))の数種のn-アルキル同属体およびそれらのピリジン付加物の赤外吸収スペクトルを測定し,吸収帯の帰属および付加物の構造について検討した。
    ニッケル(II)および鉄(III)錯体はそれぞれ2および3分子のピリジン付加により,ともに1200cm-1領域の吸収帯はいちじるしく低波数に移行し,-CH2変角と考えられる吸収帯は認められなくなる,などの変化が見られた。ピリジン付加により,キレート環は開いて単座配位子に変わるとともにM-S間のπ結合性は減少し,イオン結合性が強まっていると考えられる。1200cm-1領域の吸収帯はジチオカルバマト錯体のC-N伸縮吸収帯に類似しており,極性をもったC-O伸縮と推定される。
    ジエチルジチオホスファトニッケル(II)とそのピリジン付加物についても検討した。
  • 石橋 雅義, 藤永 太一郎, 桑本 融, 沢本 博道
    1964 年 85 巻 11 号 p. 763-766,A59
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,かねて共沈を左右する因子の一つはpHであることに着目,各種金属についてpHと共沈率の関係を基礎的に検討してきたが,今回はバナジウム(IV)の水酸化鉄(III)沈殿に対する共沈を検討し,すでに公表したバナジウム(V)の共沈と比較考察した。
    バナジウム(IV)300~1500μgを含むpH4.0~10.5の供試溶液に新しく調製した水酸化鉄(III)沈殿を添加し放置熟成する。沈殿を塩酸に溶解し,過酸化水素水でV4+をV5+に酸化したのち,水酸化ナトリウムを用いて鉄を沈殿分離する。分離したV5+は,リンタングステン酸塩法を用いて比色定量する。
    以上の操作によって得られた結果では,pH5.9で水酸化鉄(III)沈殿(Fe5mg)に対するバナジウム(IV)は400μgまで98%共沈し,500μg以上になると減少し,たとえば1000μgにおいては約73%程度共沈する。バナジウム(IV)500μgに対する水酸化鉄(III)量を変化させた場合,鉄5mg以下での共沈率は低いが,5mg以上になるとほぼ一定値をとり約96%程度である。これらの基礎検討から,鉄5mg,バナジウム(IV)300μgを用いpHによる共沈率の変化を検討した結果,pH4~6ではpHの上昇とともに共沈率は増加し,6~8の間でほぼ100%近く,8以上になると急激に減少する。バナジウム(V)のpH-共沈率曲線と比較するとバナジウム(IV)の水酸化鉄(III)沈殿への共沈限界は,よりアルカリ側へ移動していることが明らかになった。
  • 柴田 村治, 稲田 雅洋, 満田 裕, 児玉 睦夫
    1964 年 85 巻 11 号 p. 767-771,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カドミウムのグルタミン酸,およびアスパラギン酸錯イオンの水銀電極面における還元反応についてポーラログラフ法を用い解明を行ない,直流ポーラログラム半波電位のpH,グルタミン酸,またはアスパラギン酸の濃度に対する依存性から,これらの錯イオンの組成,および安定度定数を決定した。カドミウムは,pH>7.0の領域でこれらの配位子と錯形成するが,アスパラギン酸とは本実験の行なわれた条件のもとではCdX3-3なる1:3の組成をもつ錯イオンを形成せず,1:1,および1:2の組成をもつ錯イオンのみ形成する。しかし,グルタミン酸の場合は高いpH領域では1:1,1:2のグルタミン酸錯イオンのほかに,1:3なる組成をもつ錯イオンをつくることが明らかになった。一定pHにおける半波電位のアミノ酸の濃度による変化からDe-Ford-Humeの方法にしたがって解析した結果,錯イオンの安定度定数としては,それぞれグルタミン酸系については5.8×104,3.7×107,2.6×1010,アスパラギン酸系については,それぞれ7.0×105,1.2×108なる値が得られた。
  • 藤原 鎮男, 中村 忠晴, 村上 正弘
    1964 年 85 巻 11 号 p. 772-776,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    X線マイクロアナライザーの分析化学的応用における標準試料として,圧縮成形した粉末試料を使用する場合の問題点を検討した。標準試料は,硝酸鉛と硝酸ビスマスの任意の割合の混合溶液に,硫化水素をすみやかに通じ,硫化物の混合物を沈殿させ,この沈殿を常温において真空乾燥し,得られた粉末を加圧(400kg/cm2)し,板状に成形したものである。試料は炭素蒸着(約500A)した。各試料につき,点分析の手法で,ミクロン程度の試料表面の数点について分析を行ない,試料の均一性を検討した。その各点間の組成のばらつきは2%以内であった。試料の電子線に対する耐性は,分析の目的には十分であった。組成類似の鉱物と本実験による人工試料とのX線強度を比較すると,後者が約1%減少する。この人工標準試料の利点は,任意の濃度の試料が得やすく,そのためX線吸収効果および励起効果などの補正が不必要である。
  • 高嶋 四郎, 安積 敬嗣, 前田 嘉道
    1964 年 85 巻 11 号 p. 776-779,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    微量の有機化合物の融解を再現性よく示差熱分析を行なうために,試料の充テン法について検討を行なった。その結果,白金製試料セルの底に直接試料を入れ上部を中性物質でおおう充テン法を用いると,鋭い示差熱ピークが再現性よく得られることがわかった。本充テン法による場合,融解温度は昇温速度が増すにつれ上昇するが,昇温速度が一定であれば試料量に関係なく一定値が得られた。また,ピーク面積は昇温速度が6°~16℃minの範囲でほぼ一定の値が得られ,試料量が100mg以下では試料量を増すにつれピークの比面積は増加の傾向を示すが,40mg以下ではこの増加は比較的少なく試料量とピーク面積との間にほぼ比例関係が認められた。
  • 岡 好良, 山本 勝巳
    1964 年 85 巻 11 号 p. 779-781,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    既報に引きつづき,5-シアノトロポロン-鉄(III)キレート(1:1)について検討した。温度を25.0°±0.1℃,イオン強度を2.00としたとき,5-シアノトロポロンの酸解離定数としては1.9×10-4を,1:1鉄(III)キレートの安定度定数としては3.7×107を得た。これらの値は前に報告したトロポロン-5置換体について得られたlogk1対pKαの直線にのる。
  • 武藤 雅之
    1964 年 85 巻 11 号 p. 782-784,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    沈殿ペーパークロマトグラフィーの原理を薄層クロマトグラフィーに応用し,薄層を用いる沈殿クロマトグラフィーについて研究した。
    シリカゲルに沈殿剤溶液を加えて懸濁したものをガラス板上に薄くのばし,幅2.5mmの帯状の薄層をつくる。この帯状の薄層の一端を削り取って,その部分から試料溶液をしみこませ,この端に接するように小ロ紙片を展開剤ではりつける。ロ紙片の他の端を展開剤の中に浸して展開を行なえば,原点より難溶性の順に沈殿帯域が形成される。
    沈殿剤として硝酸銀を用い,I-,Br-,Cl-およびPO43-の分離を行なった
    。iso-ブタノール飽和水:酢酸アンモニウム(40%水溶液)4:1の組成の溶液を展開剤として用いると,もっとも分離度が高く,また再現性あるクロマトグラムが得られた。
  • 岡 好良, 加藤 豊明
    1964 年 85 巻 11 号 p. 784-787,A60
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    熱中性子照射した三酸化モリブデンターゲットから無担体分離して得た99mTc(VII)を用いて,トリ-n-オクチルアミン(TNOA)-チオシアン酸塩水溶液系のテクネチウムの分配の挙動を調べ,この系に生じるテクネチウム(IV)-チオシアン酸錯体の化学形について検討した。テクネチウムの分配比に対する水溶液相の酸性度,チオシアン酸イオンの濃度およびシクロヘキサン溶液中のTNOAの濃度の依存度をそれぞれ求めた結果,99mTc(VII)は過剰のチオシアン酸イオンによって99mTc(IV)に還元され,水溶液相では主としてTc(NCS)62-として存在し,抽出平衡は次式で示されることが明らかとなった。
    また,TNOA-チオシアン酸-チオシアン酸ナトリウム-過塩素酸ナトリウム系の次式の交換平衡定数を求め,K=0.45(イオン強度3.67,22℃)を得た。
  • 河淵 計明
    1964 年 85 巻 11 号 p. 787-789,A61
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陰イオン交換法によるレニウムとタングステンの分離法を検討した。チオシアン酸形陰イオン交換樹脂にレニウム(VII)とタングステン(VI)を捕捉させ,0.5mol/lチオシアン酸アンモニウム-0.5mol/l塩酸溶液を通ずるとレニウムのみが流出する。樹脂に残留したタングステンは0.5mol/l塩化ナトリウム-0.5mol/l水酸化ナトリウム溶液で溶離できる。この方法によれば,W/Reが1000:1から1:300の範囲で両元素を分離でき,それぞれの元素の回収率も良好である。
    タングステン-レニウム合金をフッ化水素酸-硝酸で分解処理したのち,この方法を適用して約10mgの試料から両元素を分離し,それぞれを定量した。
  • 福井 憲二, 中山 充
    1964 年 85 巻 11 号 p. 790-793,A61
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4-ジヒドロオキシフェニル2,4,5-トリメトキシベンジルケトン(IV)とそのモノメチルエーテル(V),モノベンジルエーテル(VI)から7-オキシ-,7-メトキシ-,7-ベンジルオキシ-4-オキシ-3-(2',4',5'-トリメトキシフェニル)クマリン(VII,VIII,IX)を誘導し,ついでアニリン塩酸塩,ピリジン塩酸塩,臭化水素酸,ヨウ化水素酸などで閉環して7,5',6'-トリメトキシ-ならびに7,5',6'-トリアセトキシベンゾフラノ(3',2';3,4)クマリン(II,XII)を合成した。
    同様にしてIIの異性体7,6',7'-トリメトキシベンゾフラノ(3',2';3,4)クマリン(III)も合成した。
  • 福井 憲二, 松本 高志
    1964 年 85 巻 11 号 p. 793-797,A61
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セザモール(IV)とベンジルシアニド誘導体とのHoesch反応,およびケトン(XVIII)のメチレン硫酸でのメチレン化によりベンジルケトン誘導体(V,VIII,XIVおよびXIX)を合成した。これらケトン誘導体をピリジン中ピペリジン存在下にo-ギ酸エチル,または無水酢酸ナトリウム存在下に無水酢酸で処理して6,7-メチレンジオキシイソフラボン誘導体(VI,IX,XV,XX,XII,XIIIおよびXXI)を合成した。VIは4'-ニトロイソフラボン誘導体(IX)をパラジウム-炭素で水素化,ついでジアゾ化後分解しても得られた。またXVIおよびXXIはそれぞれ対応する6,7-ジオキシイソフラボン誘導体(XVIIとXXII)をアセトン中,無水炭酸カリウム存在下にヨウ化メチレンでメチレン化しても得られた。さらに上記イソフラボン類の紫外吸収スペクトルについても二,三検討した。
  • 遠藤 彰, 斎藤 真澄, 和田 保郎, 伏崎 弥三郎
    1964 年 85 巻 11 号 p. 797-801,A61
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチレンシクロペンタン,メチレンシクロヘキサンの過酢酸,および過安息香酸による酸化反応を調べ,双環テルペンであるカンフェンの場合と比較した。反応生成物としてエポキシドのほかにアルデヒドが得られたが,二,三のアルキリデンシクロアルカンに見られた環拡大反応は起らなかった。動力学的に反応を調べた結果,反応速度は反応の初期にはオレフィンと過酸のおのおのの1次に比例する2次式として示されることがわかった。5員環と6員環では前者の方が反応性が大きく,反応性についてI型ヒズミ効果が考察された。カンフェンと比較すると,表題のオレフィンはいずれもカンフェンより反応性があることがわかり,カンフェンの双環構造はそのヒズミのために環外メチレン基の反応性を低下させることが結論された。溶媒の影響については,カンフェンの場合と同様な傾向が見られた。
  • 鈴木 邁, 須山 和泰, 鈴木 貞雄
    1964 年 85 巻 11 号 p. 802-805,A61
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無触媒および酸触媒使用下におけるモノクロル過酢酸の生成反応の速度論的考察を行なった結果,ガス発生反応は生成モノクロル過酢酸の分解による典型的な逐次反応形式をとることが判明した。また過酢酸生成反応の場合のように無機酸触媒を添加しなくても反応が進行することを確認した。発生ガス量も過酢酸の場合に比較して大であり,この反生機作を明瞭にするため速度論的検討を行なった。
  • 工藤 洌, 鈴木 信男
    1964 年 85 巻 11 号 p. 806-807,A62
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはすでに過剰の有機試薬を捕集剤に用いる微量金属の分離について検討してきたが,金および銀の比色試薬としてすぐれているp-ジメチルアミノベンジリデンローダニンを捕集剤に用いたときの金の分離について検討し,応用として通信材料用デヒドロセラミック中の金の放射化分析を試みたので報告する。
  • 織方 郁映, 御園生 晃
    1964 年 85 巻 11 号 p. 808-809,A62
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    共役ジエン-鉄トリカルボニル結合に対するハロゲンの反応性については,前に過剰の塩化ヨウ素の存在下に約5原子のハロゲンを消費することを報告したが,さらに詳細に検討した結果,配位結合の開裂は鉄トリカルボニル基の中心金属に対する1分子のハロゲンの付加によって起るものであり,炭素-炭素二重結合に対するハロゲンの付加は同時に起らないことを確かめた。したがって,鉄カルボニル類による水添反応において,まず錯体が生成し,その結含が水素化解裂を受けると同時に,水添された配位子が放出されるとする過程は,水素とハロゲンの結合解離エネルギーの比較から,否定できることがわかった。また,ハロゲン化鉄カルボニルの生成過程についても若干の知見を得たので報告する。
  • 1964 年 85 巻 11 号 p. A57-A62
    発行日: 1964/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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