日本化學雜誌
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86 巻, 1 号
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  • 長倉 三郎, 木村 克美
    1965 年 86 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アニリン,フェノール,チオフェノール,フルオルベンゼン,ニトロベンゼン,スチレン,ベンズアルデヒドなど18種のベンゼンー置換体について近紫外ならびに1500Åまでの真空紫外スペクトルを気体状態で測定した。このような電子スペクトルに対する置換基効果の測定結果によれば,これらのベンゼンー置換体は“強い相互作用”の置換基をもったグループと“弱い相互作用”の置換基をもったグループにわけられる。アニリン類,チオフェノール,ニトロベンゼン,スチレン,ベンズアルデヒドなどは前者に属し,フェノール,フルオルベンゼンなどは後者に属する。弱い置換基をもった分子の電子スペクトルはベンゼン自身の電子スペクトルが単にずれたものとして解釈できる。一方“強い相互作用”の置換基をもった分子ではいちじるしい特徴としてベンゼンにも置換基にも認められない新しい吸収帯が現われる。したがって,“強い相互作用”をもつベンゼンー置換体の電子スペクトルは,これまで多くの研究者によって考えられていた立場,すなわち単にベンゼンの吸収帯のずれたものと考える立場では理解できないことが明らかになった。この新しい吸収帯は,著者らがニトロベンゼンなどについて初めてその存在を主張した分子内電荷移動吸収帯であって,光吸収の際にベンぜン核と置換基の間にπ電子の移動をともなうものである。
    今回得られた広い波長範囲の電子スペクトルの測定結果,とくに分子内電荷移動スペクトルの出現に注目して従来の種々な理論的研究を再検討し,改めてできるだけ総合的にベンゼンー置換体のπ電子構造を理論的に研究することを試みた。すなわち基底電子配置,局在励起電子配置,電荷移動電子配置などの電子配置間相互作用を考慮して,アニリン類,フェノール類,ベンゼンのハロゲン置換体,ニトロベンゼン,スチレン,ベンズアルデヒドなどのπ電子構造を計算した。その結果,実測の遷移エネルギー,振動子強度をきわめて満足に説明することができたばかりでなく,各分子の電子スペクトルにおける吸収帯の性格を明確に規定することができた。またこの種の理論的研究によって“強い相互作用”の置換基と“弱い相互作用”の置換基とが電荷移動電子配置のエネルギー値に基づいて区別できることが明らかになった。きらに電子スペクトルの測定結果を解析することによって,ベンゼンの電子親和力を決めることを試みた。この方法は従来正確な値の得られにくかった電子親和力の値を決める方法の一つとして役立つ可能性がある。
  • 白井 道雄
    1965 年 86 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    高分子の分子表面および内部の電気伝導は種々の性質と関係しているので興味ある問題である。しかし実験結果の定量的取り扱いは行なわれていないので,まずモデル物質についての測定値を用いて理論を検討し,他の高分子の実験結果を考察した。
    モントモリロナイト粒子はケイ酸アルミニウムの層からなり,表面電導のほか内部電導として各層の間の電気伝導があるので,モデル物質として定量的考察の対象に適している。そこでよく分別されたモントモリロナイトの分散系につき電気伝導度と誘電率の分散を測定したが,理論値とよい一致を示した。
    分子の電気伝導にはイオン,プロトン,電子によるものがあり,種々のイオン型の固体モントモリロナイトを用いることによりおのおのの特性が示される。電気伝導度の周波数依存性から,モントモリロナイトのナトリウム型,水素型,メチレンプルー錯合体はそれぞれイオン電導,プロトン電導,電子電導をもつことが結論された。
    つぎにデオキシリボ核酸(DNA)のナトリウム塩の水溶液に対して電気複屈折と誘電分散の測定を行なった。その結果はナトリウムイオンに基づく分子表面電導により誘電分散が起り,またこの表面電導に基づく誘起分極と永久双極子により分子の配向が起って電気複屈折を生ずるものとして説明され,その分子の形や電気的の定数が計算された。
    固体DNAに半導体の性質があることが報告されているが,この種の電気伝導も分子間の高抵抗の部分によってへだてられているので周波数分散が予想される。種々の含水量の固体NaDNAの電気伝導度を広い周波数範囲にわたって測定した結果,含水量の多い場合はイオン伝導が主であるが,乾燥試料ではイオン電導が小さくなり,電子電導が測定される。この電子電導は周波数が高くなるにつれて大となり,分子内の電気伝導度は直流電導度から予想されるより高い。この性質は生化学的反応と関連して興味がある。
  • 林 宗市
    1965 年 86 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    コハク酸イミドの配向結晶をつくり,その偏光赤外スペクトルを測定した。平面対称性を有する分子の遷移モーメントの方向を求める新しい方法を見いだし,これをコハク酸イミドに適用した。求められた遷移モーメントの方向を参照して吸収の帰属を検討した結果,この分子についてさきになされた町田らの帰属と, CH2横ゆれ振動と骨格振動の帰属が逆になったのをのぞいてよく一致した。また,遷移モーメントの方向を求める場合,分子間の相互作用は十分小さいとして取り扱ってもよいことがわかった。
  • 久田 晴彦, 高椋 節夫, 桜井 洸
    1965 年 86 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シクロヘキシルアミン(CHA)およびN, N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DM-CHA)の放射線分解における初期過程,とくに水素生成機構に関する知見を得る目的で研究を行なった。CHAおよびDM-CHAの水素生成のG値は,それぞれ5.9および4.5で照射線量および温度にはほとんど影響をうけない。DM-CHAでは, CHAには認められなかったメタンの生成が起り,そのG値は0.6であった。また,メチルメタクリレート(MMA)やテトラクロルェチレン(TCE)などのラジカルスカベンジャー共存下に照射した結果よりCHAおよびDM-CHAから生成する水素のそれぞれ78%および73%は,ラジカル機構によるものと推定された。さらに,ベンゼンとの共存下に照射した結果では,これら水素生成にあずかる前駆物質とベンゼンとの間に相互作用(おもにエネルギー移動)のあることが認められた。
  • 樋口 泉, 真壁 強
    1965 年 86 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    四塩化ケイ素を収着させた活性炭を水中に投入して加水分解させ, 2種の活性炭の毛管内に種々の量のシリカを沈積させた試料をつくる。この各試料につき0°Cにおける水蒸気およびベンゼンの収着等温線を測定し,沈積したシリカの量が飽和収着量,毛管分布およびBET容量におよぼす影響を検討する新実験法を述べた。上記の量をすべて原活性炭1gあたりに換算すると,飽和収着液容と沈積したシリカの容積Øsとの和はØsに関係なく一定値になる。この結果からシリカの沈積によって数%以内で暗孔は生じないこと,したがってシリカは均一に分布していることを結論した。またØsが変化しても半径20Å以上の毛管分布はほとんど変化しないこと, BET容量Ømは減少するがØmとØsの和は一定になることを見いだし,活性炭のBET容量はBET理論で与えられる物理的意味を与えることは適当でなく,毛管凝縮理論で与えられる半径15Å以下の毛管に凝縮した量と見なすことが妥当であることを論じた。
  • 安盛 岩雄, 加部 利明
    1965 年 86 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    前報1)に引きつづき,アセチレンの接触水素化反応にあらわれる触媒作用の選択性の原因を明らかにする目的で,分散状態の異なるα-アルミナ付パラジウム触媒,および種々の粒径のパラジウム黒により,温度30°C,全圧50mmHgの条件のもとに,生成エチレン/エタン比としての選択率,および単位表面積あたりの活性を求めたα-アルミナ付パラジウム触媒では分散度(パラジウム単位重量あたりの担体量)を大きくすると,パラジウムの単位重量あたりの表面積は増加するが,活性,選択性ともにほとんど変化しない。パラジウム黒では熱処理により粒径が増大するにつれて,初期エチレン生成速度は減少するが,初期エタン生成速度はほぼー定であり,したがって選択性は減少することが見いだされた。また,見かけの活性化エネルギーは,シンタリングの進行につれて高くなる傾向が認められた。以上の結果を前報において提出した反応機構から考察し,触媒表面にそれぞれエチレンおよびエタンへの水素化に有効な2種の活性部分が存在し,その比率が熱処理によって変化するか,あるいはこの方が重要と思われるが,シンタリングが進行するにつれ,水素の吸着熱の減少により活性化エネルギーが変化し,選択率を低下させると結論した。
  • 下田 信男, 遠藤 信也
    1965 年 86 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ペグマタイトならびにその周縁の花コウ岩の形態とそこに晶出する雲母の化学成分の含有量の変化を研究した。
    南比良の晶洞ペグマタイトは,前報までに扱わなかった形態のものである。晶洞の両側の花コウ岩中の黒雲毋を取りだして化学分析を行ない,つぎの事実を明らかにした。
    1)前報告1)~11)のペグマタイトの周縁花コウ岩中の黒雲母の化学組成について得られた結果と逆の場合が示された。すなわち,前報告の産地ではすべて晶洞に近くなるにしたがい,黒雲母のマンガン含有量は増加していたが,南比良の場合には減少している。2)晶洞を中心として非対称な周縁花コウ岩の形態は,花コウ岩中の黒雲母の化学成分の変化図にも非対称な形で示された。
    毛呂窪ペグマタイトは形態が八幡8),深沢10)の晶洞ペグマタイトと異なり,晶洞ではあるが脈状に似た点もあるので,南比良ペグマタイトと同様,前報と異なった結果が示れると考えたが,分析の結果,八幡の晶洞ペグマタイトならびに周縁花コウ岩中の黒雲毋の化学組成についての研究結果と同じような元素の増加,減少の傾向を示した。南比良ペグマタイトの場合のような特異的な傾向は認められなかった。
  • 中川 良三
    1965 年 86 巻 1 号 p. 46-48
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    秋田県玉川温泉の湯川川床には90%内外のイオウを含む多量の沈殿物が析出している。この沈殿物には,赤色のもの,黄色のもの,灰白色のものと3種類ある。この沈殿物中のヒ素,アンチモン,鉛,テルルはボィラーキャップ方式,バリウム,アルミニウム,鉄,ケイ素はセンターポスト方式を採用して発光分光分析を行なった。
    分析の結果,玉川温泉の沈殿物にはヒ素0.01~8%,アンチモン0.001~0.2%,鉛0.05~8%,テルル0.0001%以下,バリウムは0.01~4.3%含まれ,樋の湯花においては,鉛/バリウムの比が0.04~0.3を示し,北投石の成分に近似した値を示した。アルミニウムは0.01~0.15%,鉄0.4~1.5%,ケイ素0.5~7%であった。赤色沈殿物は黄白色沈殿物より約100倍のヒ素を含み,アンチモン,鉛の含有量も多い。また樋の湯花は湯川川床の沈澱物よりヒ素,アンチモン,鉛の含有量が少ない。ヒ素とアンチモン,ヒ素と鉛の間には正の相関が認められた。
  • 山本 俊夫, 藤田 哲雄, 石橋 雅義
    1965 年 86 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    広く海藻全般を対象としてその含有する各種無機成分を定量分析する場合,分析方法の精度に影響を与えるような共存元素の有無,ならびにその存在量をあらかじめ概括的に知り得ることが望ましい。そのための参考資料として,著者らが現在までに取り扱った通算60種133試料に関する分析結果から最高,最低,平均値,標準偏差および変異係数を総括して示した。
    これに基づき各元素について適当な濃度の保存用原液をつくり,これを混合希釈して,海藻灰溶解液に類似の溶液(人工海藻灰溶液)を調製しその使用法を述べた。
    これを用いて, 1-ニトロソ-2-ナフトール・コバルト錯体をクロロホルムで抽出後,ニトロソR塩で発色させる分析操作を検討して,海藻中のコバルトの定量に適する方法を得た。
  • 山本 俊夫, 藤田 哲雄, 石橋 雅義
    1965 年 86 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    38種78個の海藻試料および2種2固の淡水藻試料について,その含有すろコバルトおよびニッケルを比色定量した。コバルトについては,海藻乾燥体中最低0.11(アラメ),平均0.78,最高4.54ppm(ウミトラノオ)を,ニッケルについては,最低0.23(ツルツル),平均2.78,最高10.90ppm(ヒラアオノリ)の値を得た。
    一般的特徴として両元素も褐藻類では種類より,含有量のとくに多いものと少ないものとがあった。緑藻類はいずれも比較的多く含まれている。これに対し紅藻類は比較的含有量が少ない。琵琶湖産淡水藻では,コバルト,ニッケルとも比較的多く含まれていた。
    コバルト含有量の多い海藻はニッケルも多く,コバルトの少ない海藻はニッケルも少ない傾向が一般に顕著であった。試料数の約70%のものが1~5のニッケル対コバルトの原子比を示した。
  • 大沢 久男, 梅津 雅彦
    1965 年 86 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    高純度黒鉛中の微量ガドリニウムの定量のための操作法を確立した。標準試料は,高純度塩化ガ卜リニウムに内部標準元素として高純度酸化ゲルマニウム粉末を,基体黒鉛粉末と100000:0.6の割合で混合し,担体としてフッ化ナトリウム2%を加えて調製した。発光条件はつぎのとおりである。アルゴン気流中で, DC20A, 280V,電極間隙8mmとし,そのうち陽極側から6mmを入射,露光60秒,分析線対Gd 3100.50Å/Ge 3039.06Å,Gd3362.24Å/Ge3039.06Åを用いて定量を行なった。この方法による定量範囲は0.03~0.26ppmであり,誤差は10%である。
  • 萩原 一芳, 村瀬 郁雄, 原 重雄
    1965 年 86 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルカリ性の支持電解質である炭酸水素塩溶液中において,ビスマスは溶液として存在し, -0.43V (vs. SCE)に半波電位を〓つ還元波を生ずることを認めた。これについて若干の基礎的な検討を行ない,さらにビスマスの定量に適用するための可能性に〓いて検討を行なった。
    この波のlogプロットの傾斜は45mVであり,ビスマスが3電子還元であるとすると,この反応は不可逆であると考えられるしかし, il/h1/2の値が一定値を示し,また温度係数が1.35%であることから,限界電流は拡散律速であることがわかった。
    溶液のpHを上昇させていくと,約12.7でビスマスがいったん沈殿し,さらにpHが14付近になるとふたたび溶解する。〓のことおよび各pHにおけるビスマスー炭酸水素塩錯体の紫外吸収曲線の測定結果から, pHの変化につれて種々の錯体が生成するものと思われる。
    pH 8.3における検量線はビスマスの1×10-4~1×10-3moi/lの範囲において良好な直線性を示し,ビスマスの定量が可能〓ある。この場合,銅,アンチモン(III),ヒ素(III),亜鉛,ニッケル,コバルト,スズ,マンガン,カドミウムなどは妨害しないが鉄(III),セレン,テルル,鉛は妨害する。
  • 藤永 太一郎, 高木 修
    1965 年 86 巻 1 号 p. 67-69
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    塩素量測定の国際方式は標準海水を用いるMohr法銀滴定であるが,これまでそれについての詳しし滴定誤差の検討が行なわれていなかった。著者らは塩化ナトリウムと硝酸銀の濃度を種々に変えて滴定誤差を求め, Cl-の濃度が大きくなるにつれて誤差は大きくなるが,硝酸銀の濃度には関係しないことを見いだした。この誤差が塩素量決定にいかなる影響を与えるかを見るために標準海水を標準とする場合の誤差を理論的に求めたが,それらの滴定誤差が許容誤差±O.01‰の範囲内におさまることがわかった
  • 亀本 雄一郎, 関 公子
    1965 年 86 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    焦点クロマトグラフ法を希土類元素相互の分離に適用し,分離におよぼす諸条件を検討した。なるべく多量の希土類元素を本法で分離するために,厚手ロ紙を使用したところ,つぎのような条件のときにもっとも満足のいく結果を得た。(1)陽極液: pH 3.3に調製した0.01N塩酸,(2)陰極液:pH 4.4に調製した0.1mol/lクエン酸, (3)ロ紙:東洋〓紙No.527, (4)加電圧: 100V/30cm, (5)通電時間: 20分。
    本法により約1mg程度の希土類元素の数種の混合物を放射化学的に純に分離することができた。
  • 亀本 雄一郎, 山岸 滋
    1965 年 86 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    再放射化分析法をマグネシウム,水銀の定量に適用した。マグネシウムの定量にはつぎのような操作を行なった。試料を6分間中性子照射し,化学分離を行なって27Mgを放射化学的に純にとりだし,照射終了7分後にγ線スペクトルを200秒間計測する。測定後27Mgの壊変しつくすのを待ち, 3分間再度中性子照射し, 1分間冷却,第2回の測定を2分間行なった。この第1回,第2回の27Mgの光電ピークの高さから収率を補正した定量値を計算した。水銀の定量もほぼ同様な操作で行なった。このときの条件としては,第1回照射4分間,化学分離4分間,第1回測定2分間,第2回照射20分間,冷却4日間,第2回測定100秒間であり,第1回測定の205Hgの0.203MeVの光電ピーク,第2回測定の197Hgの0.07MeVの光電ピークの高さから収率を補正した定量値を計算した。
  • 出森 雅子, 野崎 亨
    1965 年 86 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水溶液中の銅(II)のシクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA),ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA),オキシエチルエチレンジアミン三酢酸(EDTA-OH)およびグリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)錯体の安定なpH領域,組成,見かけの安定度定数およびモル吸光係数を紫外分光光度法により求めた。銅(II)とアミノポリカルボン酸(HnX)とのモル比はCyDTA, EDTA-OHの錯体では1:1のみで, DTPA, GEDTAの錯体では2:1, 1:1の2種が存在する。またあるpH領域ではプロトン錯体が生成すると推定された。イオン強度0.10,20°CにおけるDTPA, EDTA-OHおよびGEDTA錯体(CuX)の見かけの安定度定数log kCuXは19.71, 16.47および18.38の値を得た。
    定量にはDTPAがもっともよく, GEDTAがこれにつぐ,これら錯体の290~320mμにおける吸収を利用すれば0.3~8.8ppmの銅が定量可能である。鉄(III),ウラン(VI),バナジウム(V)は妨害する。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1965 年 86 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フェニレンジアミン異性体の簡単な微量定量法を案出する目的で吸光光度法について研究し,つぎのような新定量法を提案した。酢酸酸性溶液中でフェノールあるいはα-ナフトールの存在において,フェリシアン化カリウムを加えて酸化するとα-異性体はキノンジイミンあるいはジアミノフェナジンとなり,またp-異性体は共存するフェノールあるいはα-ナフトール縮合してインドフェノール型の色素を生成してそれぞれ発色する。しかも後者はクロロホルムまたは四塩化炭素によって抽出できるので両異性体が分離定量できる。しかし3異性体の混合物を分析する場合はフェノールよりα-ナフトールがよい。
    また試料をアルコール類その他の有機溶媒中で,テトラクロル-p-ベンゾキノンによって酸化するとα-異性体は水溶液中の場合と同一であるが, m-異性体はp-異性体と縮合してインダミン型色素となって呈色する。そしてm-異性体よりp-異性体が多ければその吸光度は前者の濃度に比例し,これからm-異性体が定量できる。なおこの方法でその吸収スペクトルの相違から各異性体を定性することもできる。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1965 年 86 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アミノ基を酸性溶液中の酸化分解によってアンモニアにし,これを著者らの考案した既報6)の方法で測定する微量アミノ基の簡易定量法を提案した。
    一般に脂肪族アミノ化合物は過硫酸塩によっても容易に脱アミノ化されるが,芳香族アミノ化台物ではクロム酸のような強酸化剤がよい。また酸化分解によればほとんどすべてのアミノ化合物は脱アミノ化して定量的にアンモニアを生成する。ただし他の置換基としてニトロ基をもつ化合物,たとえばニトロアニリンは酸化分解する前に無水酢酸で処理し,アミノ基をアセチル化する必要がある。
    本法は操作が簡単で,たとえばクロム酸酸化分解では数mgの試料を試験管またはミクロケルダールフラスコにとり,これを無水酢酸1.0mlで加熱溶解しこれに1.0Nのクロム酸水溶液1.5mlと濃硫酸1~2mlを加えて数分間加熱する。過剰のクロム酸を亜硫酸水素ナトリウム溶液で還元したのち冷却し,水酸化ナトリウム溶液で中和する。これを水で所定量としてからロ過し,ロ液中のアンモニアを既報の方法で測定する。本法によって数十種類のアミノ化合物を分析し,約5%以下の相対誤差で分析できることを確認した。
  • 武藤 雅之
    1965 年 86 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    沈殿ペーパークロマトグラフィーでは,沈殿帯域の面積は試料溶液中のイオンの含量に比例する1)ことに着目し,この方法を薄層沈殿クロマトグラフィー2)に応用して良好な結果が得られた。
    沈殿剤として硝酸銀を用い,一定の幅の細い帯状の薄層を用いてクロマトグラムを形成させ,沈殿帯域の長さを測ることによって近似的定量を行なった。
    Cl-が存在する水溶液にPO43-の濃度を変えて加えた試料では, PO43-の帯域の長きは, Cl-の含量に影響されることなくその濃度に近似的に比例する。
    また, I-, Br-およびCl- 3種のイオンを含む試料について,各イオンの含量を変えて実験を行なったが,それぞれのイオンの帯域の長さは,それらのイオンの濃度に近似的に比例することがわかった。
  • 梶原 定治
    1965 年 86 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イソキノリン-2-オキシド(III)と2-ブロムピリジン(IV), 2-ブロムキノリン(V)および1-ブロムイソキノリン(VI)との反応を試み, 1-(1'-イソキノリル)-2-ピリドン(VIII), 1-(1'-イソキノリル)-カルボスチリル(XII)および2-(1'-イソキノリル)-イソカルボスチリル(XIV)がそれぞれ得られたが,興味あるにとにはいずれの反応においても, 4-ブロムイソキノリン(IX)が必ず副生した。IIIと1-クロルイソキノリン(XVII)との反応においても,XIVのほかに4-クロルイソキノリン(XVII)が得られた。IIIとトシルクロリド(XVI)との反応では,XIVのほかにXVIIIおよび4-トシルオキシイソキノリン(XIX)が生成した。一方VIとピリジン-1-オキシド(I)およびキノリン-1-オキシド(II)との反応において, 2-(2'-ピリジル)-イソカルボスチリル(XX)および2-(2'-キノリル)-イソカルボスチリル(XXI)を得たが, 4-置換イソキノリンは生成しなかった。しかしVIとIIとの反応では, 3-キノリル-1'-イソキノリルエーテル(XXII)が副生した。
  • 松木 保夫, 神田 達男
    1965 年 86 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    モノメチルチアナフテン(6種類)のアセチル化とアセチル化物のWillgerodt反応を研究した。
    アセチル化において,メチル基が2-, 5-, 7-位にある試料(第1群)と3-, 4-, 6-位にある試料(第2群)では置換位置が異なり,前者では主として3-位に後者では2-位に置換が行なわれるが,いずれの場合にもベンゼン核側のアセチル化は認められない。
    Willgerodt反応において,メチル基の存在は第1群アセチル化物においては反応を抑制し,第2群においては助長する傾向を示した。
  • 松木 保夫, 李 総熾
    1965 年 86 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    7-メチルチアナフテン(7-MTN)はn-ブチルリチウムとの反応で好収量で7-MTN-2-リチウムを生成することを確かめたので, 7-MTN-2-X型(X=CO2H,CO2CH3,CHO,CH2OH, ……)の誘導体を合成した。また7-MTN-2-CHOについてホルミル基の配向性を検討する目的で臭素化を試みたところ, 3-, 4-,および6位に置換された3種類のモノプロム置換体を生成することを認めた。
  • 倉林 由美子, 久保田 喜美恵, 表 美守, 杉山 登
    1965 年 86 巻 1 号 p. 106-107
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    メチルβ-クロルビニルケトンとアニリン, p-アミノフェノール,ベンジルアミンの各アミンを出発物質として,対応する3種のN-置換-3,5-ジアセチル-1,4-ジヒドロヒリジン誘導体を合成した。これらは適当な物質にあうとそれを還元する。これらの還元作用の強さにN-置換基(フェニル, p-オキシフェニル,ベンジル)がどのように影響するかについて検討した。
  • 遠藤 彰, 斎藤 真澄, 岡田 嘉之, 伏崎 弥三郎
    1965 年 86 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    メチレン(I),エチリデン(II),イソプロピリデン-シクロブタン(III)を,過酢酸,および,過安息香酸で酸化し,これまでに報告した5員環(IV),双環(V)のメチレン化合物の場合と比較した。反応生成物は, IとIIの場合,過酢酸酸化ではグリコールのモノ酢酸エステル,過安息香酸酸化ではエポキシドであった。 IIIの生成物は複雑であるが,過酢酸酸化でグリコールのモノ酢酸エステル,過安息香酸酸化では5員環ケトンの生成が認められた。動力学的に反応を調べた結果,反応速度はオレフィンと過酸のおのおのの1次に比例する2次式として示されることがわかった。反応性は, I<II<IIIの順に大きくなる。これは過酸の求電子的な反応を考えると理解される。
    メチレン化合物について比較すると, IはIVより反応性が小さく, Vと同程度の反応性を示した。この結果から,二重結合の反応性が環の大きさによって影響をうけ,その環のヒズミが大きいほど反応性が小さくなることが結論された。
  • 村松 一郎, 早福 昭介, 辻 優, 萩谷 彬
    1965 年 86 巻 1 号 p. 113
    発行日: 1965/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
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