日本化學雜誌
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86 巻, 10 号
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  • 水渡 英二, 植田 夏
    1965 年 86 巻 10 号 p. 969-977
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    安定型への結晶転移をともなう銅フタロシアニン(C32H16N8Cu)の成長過程が種々な有機懸濁液について研究された。安定型結晶の生成速度はその初期の段階を除いて1次反応速度式にしたがうことが判明した。X線回折法の結果,トルエン懸濁液中での安定型生成の活性化エネルギーは14.0 kcal/molと算定された。X線回折像のラインプロフィルの解析ならびに電子顕微鏡法によって,実際の結晶転移にさき立ち,その初期過程において不安定型の予備的成長の起ることが明らかにされた。
    ベンゼン中で処理した場合,真空蒸着された微結晶が有機懸濁液中で普通に処理された場合に得られる安定型結晶と同じ程度の細長い不安定型の結晶を生成をみた。これら細長い結晶によってつくらりたイカダ状集合体から得られた制限視野回折像の解析により,結晶内での分子配列ならびに晶癖は,両型についてたがいに近似していることが明らかにされた。両型の結晶の外型ならびに格子構造の類似性に立脚して,安定型の核生成の機構について考察した。
  • 吉野 諭吉, 竹内 俊夫, 木下 恒
    1965 年 86 巻 10 号 p. 978-996
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    過ヨウ素酸H5IO6およびテルル酸H6TeO6はともに正八面体の酸素酸で,ニッケル(IV),銅(III),銀(III)などの高酸化状態の金属イオンに配位してこれを安定化する性質があることが知られている。著者らはさらにコバルト(III)およびマンガン(IV)について,
    Na5H2Co(IO6)2・10H2O, K3H6Co(TeO6)2・2H2O
    Na7H4Mn(IO6)3・17H2O, K6H8Mn(TeO6)3・5H2O
    などの錯塩を合成することができた。合成法はコバルト(II)またはマンガン(II)の塩と過ヨウ素酸アルカリ,またはテルル酸との混合物をアルカリ性の次亜塩素酸塩で酸化する方法によった。
    過ヨウ素酸は強い酸化剤なので,マンガン(IV)錯塩の場合には,水溶液中で分解してMnO4-を生ずる。そこでこの反応を速度論的に研究した。またその素反応を明らかにするため,MnO42-をNa2H3IO6で酸化する反応もあわせて速度論的に研究した。
    テルル酸錯塩は相当する過ヨウ素酸錯塩よりやや不安で単離しにくいが,カリウム塩としてこれを取りだすことができた。
    最後に今日までに知られているマンガン(IV),鉄(III),コバルト(III),ニッケル(IV),銅(III),銀(III)および金(III)の過ヨウ素酸錯塩十数種を合成し,磁化率および可視・紫外吸収スペクトルを比較検討した。
  • 井上 嘉亀, 大杉 彰, 岸本 陸太
    1965 年 86 巻 10 号 p. 997-1005
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    6N塩化カルシウム-4N炭酸ナトリウム系濃厚水溶液界面反応について常温静止系デシュリーレン・ナイフエッジ法を用いて屈折率勾配を測定した。実験から得る測定値は(dn/dx)-x図(nは屈折率, xは界面からの距離)で表わされるから,これとc-n(cは濃度)を用いてc-x図をつくる。 c-x図のうち塩化カルシウム側は実験上水の移動による自由拡散のみであることがわかるから,炭酸ナトリウム側にも自由拡散を仮定した濃度分布をつくり,実測の濃度分布の差を求める。この差は塩化カルシウム側から炭酸ナトリウム側に入った塩化カルシウムと炭酸ナトリウムの一部が配向(既報に報告)したものである。 c-x図と配向状態にある塩化カルシウムと炭酸ナトリウムの量-x図の関係から物質収支と水収支をとる。 またこの物質収支と水収支を求めるとき接触界面位置の移動量を仮定して物質収支と水収支は矛盾がないようにする。最後に計算した界面移動距離と実測の界面移動距離の一致をみて解析方法の適否を調べる。結果はこの一致は良好であった。解析結果から得られた配向状態にある物質の全量はFickの拡散式と界面反応の組み合わせ式で説明でき,配向状態から結晶の生成する量は1分子分解反応で説明できた。
  • 塩川 孝信, 佐藤 敏郎, 伊沢 郡蔵, 近藤 健次郎, 佐藤 光史
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1006-1009
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    臭化エチル,ブロムベンゼン,ヨウ化メチル,ヨウ化エチル,およびヨウ化-n-ブチルについて,(n,2n)反応における放射性生成物の収率を(n,ϒ)反応の場合と比較検討した。全有機収率は臭素を10-5MF含む臭化物で明らかに(n,ϒ)反応より高く,ヨウ化物では両核反応においてほぼ等しい。スカベンジャー曲線において,0MFに補外して得られる高エネルギー反応収率は例外なく(n,ϒ)反応の結果と一致した。このことは,反跳原子の高エネルギー領域における再結合反応が,核反応の種類によって異なると思われる反跳原子の初期状態には無関係に行なわれることを示すもので,その再結合の機構はEstrap-Wolfgangによって提案され, Milmanにより液相臭化物に拡張された“impact model”によってよく説明される。さらに熱エネルギー領域における有機収率に影響すると考えられる温度,放射線の効果を検討した。
  • 水田 泰一, 管 孝男
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1010-1014
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    CN/Co=6のシアノコバルト(II)錯体水溶液に対する水素吸収の平衡と速度を調べ,吸収熱は12 kcal/molであること,吸収は水素分子の解離をともなうことを知った。 D2を吸収させると気相に軽い分子種が現われる。溶液がこの錯体のみからなるか,あるいは塩化カリウムのような中性塩を共存させた場合にはHDが徐々に現われるにすぎないが,水酸化カリウムを加えるかあるいはCN/Co比をさらに大きくした場合は, H2がいちじるしくすみやかに現われる。錯体に捕捉された水素原子が塩基の共存によって水の水素原子と交換しやすくなることを示すものである。 p-,o-水素転換の速度はH2-D2交換の速度に概ね一致する。したがっていずれも接触解離機作で起っていること,換言すれば水素が常磁性であるシアノコバルト(II)錯体に分子状で捕捉されるような吸収機作は否定される。
  • 岡崎 宏, 中島 精三, 水野 秀夫
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1015-1018
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フッ化ホウ酸マグネシウムの結晶構造をX線回折粉末データを使って検討し,これをチタンで付活して得られたケイ光体の発光機構を結晶構造を基礎として考察した。
    3MgO・B2O3・MgF2はa=9.20±0.0M3, b=9.45±0.03, c=3.13±0.01(Å)の斜方格子をもちwarwickite 3 (Mg, Fe)O・B2O3・TiO2と同型の構造である。3MgO・B2O3・3MgF2はa=8.805±0.003, c=3.100±0.002 (Å)の六方格子をもち,fluoborite3MgO・B2O3・3Mg(F, OH)2と同型の構造である。
    マグネシウムの周囲の陰イオンのつくる八面体の形状はK2TiF6における八面体とほとんど一致する。その頂点には酸素が3個とフッ素が3個配位しており,酸素気圏中で燒成すればTi-O6の配位をつくって青白色のケイ光を示し,フッ素気圏中で燒成すればTi-F6の配位をつくって黄緑色のケイ光を示すことが理解された。
  • 宗田 敏郎, 吉岡 甲子郎
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1019-1025
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Beerの法則にしたがう濃度領域で,クリスタルバイオレットおよびマラカイトグリーン水溶液の吸収スペクトルにおよぼす高分子電解質(ポリスチレンスルホン酸およびその塩,デオキシリボ核酸)の影響を検討した。色素の可視部の吸収帯は,色素と高分子電解質が等量付近では短波長側への移動(メタクロマジー)を示し,高分子電解質過剩のところでは長波長側への移動を示す。
    また色素と結合した高分子電解質を電場で配向させて電気二色性の測定を行なった。この結果から,高分子電解質過剩のところでは,色素分子はその分子面ポリスチレンスルホン酸イオンの分子軸に対しては平行方向に,デオキシリボ核酸の分子軸に対しては垂直方向に向けて結合していることが明らかになった。また,メタクロマジーの起っているところでは色素分子はその分子面をポリスチレンスルホン酸イオンの分子軸に垂直方向に向けて結合している。したがってメタクロマジーは高分子イオン上で色素分子がcard-packの配置をとって会合体を形成するためであるという結論を得,これはexciton理論から予想される吸収帯の移動とも一致する。
  • 杉村 徳子, 北原 文雄
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1025-1028
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    非水溶媒中においてグラファイトおよびカーボンブラックと多環芳香族化合物,含窒素同構体との吸着状態における相互作用を検討した。等温吸着線はいずれもLangmuir型を示した。吸着の温度変化から求めた吸着熱は3-14kcal/molの範囲にわたっている。一方昇華熱,溶解熱の文献値から推算した吸着熱は2-4kcal/molとなり実測値にくらべてかなり小さい。また吸着量,吸着熱はイオン化電位の小さい分子ほど大きいという結果が得られた。これは吸着が電荷移動力によるとするMatsenらの結果と定性によく一致している。これらのことからこれらの系の吸着については分散力のほかに電荷移動相互作用の因子を考えなければならない。
  • 石田 信博, 荻野 一善, 中川 鶴太郎
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1029-1033
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    強解離性陰イオン高分子電解質の典型とみられるポリスチレンスルホン酸につき,粘度測定によりその性質を調べた。
    繊維状ポリスチレンを硫酸銀を触媒として直接スルホン化して試料を得た。スルホン化度は約85%である。粘度測定は変型Ostwald型粘度計を使用し, 30°Cで行なった。
    この物質では測定のくり返しや経日変化による粘度低下は無視できる程度であった。図式による等イオン強度希釈法を行ない,そのとき得られる有効イオン係数は0.20~0.25であった。したがってイオン固定度は約0.75である。この値はこのポリ酸の遊離酸においても,ナトリウム塩においてもほとんど同じであった。Floryの粘度式から求めた拡がりからも中和の影響は見られなかった。塩化ナトリウムを多量に加えた場合の拡がりはほぼ理想配位に近い状態になっているように思われる。
  • 宮崎 栄三, 安盛 岩雄
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1033-1038
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    高温で十分シンターしたニッケル線触媒によるメタノールの吸着を吸着温度-15~120°C,平衡圧0~22mmHgの範囲で試み,あわせて種々の温度で吸着させたメタノールのうち,排気によって脱離しない不可逆吸着分を昇温脱離させ,その成分を質量分析により検討した。
    その結果,少なくとも0°C以上ではヒステリシスをもつ等温線が得られ,これはメタノールの一部が化学吸着により不可逆的に吸着するためと推定された。この等温線から可逆吸着と不可逆吸着の分離を試みた結果,可逆吸着は物理吸着であるが,高温になるにしたがい表面上をある程度移動し得る状態になるものと推定された。また,昇温脱離物の分析結果などから不可逆吸着状態はかなり複雑であるが,約40°C以下の吸着状態と80°C以上のそれとの2種類に大別され,後者の吸着状態がメタノール分解反応中間体と推定された。
  • 高木 貞恵
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1038-1039
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    塩化ジルコニル水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を加えて生ずる沈殿は俗に「炭酸ジルコニウム」といわれているが,その組成についての報告は一致した結果を示していないので,以下に述べる諸法によって検討した。反応によって発生する二酸化炭素量,沈殿の分析結果および熱分解曲線は,この沈殿が二酸化炭素をきわめて容易に失なうものであることを示し,沈殿生成のときのpH値,沈殿の赤外吸収スペクトルおよび熱分解曲線からはこの沈殿は炭酸イオンを含まないことがわかり,また赤外吸収スペクトル,X線回折強度曲線および熱分解曲線からはこの沈殿が水酸化ジルコニウムと同じものであることが考えられる。その結果,「炭酸ジルコニウム」といわれる沈殿は,水酸化ジルコニウムが生成と同時に二酸化炭素を吸着したものであろうとの結論に達した。
  • 甲斐 文朗
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1040-1042
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    昇コウとL-ヒスチジン塩酸塩(以後LHと略称)を1:2のモル比で総濃度約5.2%以上の混合溶液とし,室温で24時間放置すると白色針状結晶が析出する。これはmp205°~210°C(分解)でHg(C6H8N3O2)(I)と推定される。またIをロ別した残液をさらに48時間以上室温で静置すると白色柱状結晶が析出する。これはIと異なりmp195°~200°C(分解)で[Hg(C6H8N3O2)(OH2)2](II)と推定され,I, IIとも従来報告をみない新化合物とみられる。
    別に上記混合溶液に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの1N溶液2~3ccをかきまぜながら摘下すると,酸化水銀の生成にともなう黄変または褐変をみないでただちに白沈を生じる。この現象はLHのかわりにL-アルギニンを用いた際にもみられるが,他のアミノ酸の場合すぐに酸化水銀を生じるため,LHとL-アルギ二ンに特異的な反応のようである。
  • 浜田 修一, 石川 喜章, 白井 俊明
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1042-1046
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    鉄(III)イオンおよび鉄(III)-亜セレン酸錯体の吸收極大はそれぞれ240および300m/μであって,錯体の生成によって60m/μの移動が認められた。連続変化法によって錯体の組成が1:1であることがわかった。さらに0.5~1.0N過塩素酸溶液での錯体の見かけの安定度定数と酸濃度との関係から錯体の生成反応はFe3++H2SeO3=FeHSeO32++H+で示されることが明らかになった。0.5~1.0N過塩素酸溶液では,30.0°±0.1°C,イオン強度1.00で錯体の安定度定数β11は3.67であった。安定度定数β11の温度変化からこの錯体生成反応のエンタルピー変化を求めて4.04kcalを得た。錯体のモル吸光係数εmaxは3.90*103であって温度による変化はきわめて小さい。
  • 諏訪 佳子, 野田 稲吉
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1046-1050
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルミニウムのケイ光X線スペクトルの波長は,アルミニウムの化学結合状態の相異によって若干変化する。長石,Al2SiO5鉱物,雲母,雲母型-,モンモリロナイト型-,ニ層構造型-,の各粘土鉱物についてアルミニウムKα線の波長変化とアルミニウムの配位数との関係について検討した。金属アルミニウムを標準とし,そのKα線スペクトルの回折角と試料中のアルミニウムKα線スペクトルの回折角との差をΔ°2Θとし,これを波長変化の比較の尺度とした。
    実験に際し,室温を一定に保持しても分光結晶EDDTの温度がその室温と平衡にない場合の,分光結晶の熱膨脹による結晶の面間隔の変化がKα線回折角におよぼす影響につて詳細に検討した。
    アルミニウムの配位数は同じであっても,Δ°2Θの値に若干の相異がある場合がある。この原因として結晶構造の違いによる相異,構造不整による相異などが考えられる。また,結晶構造型の等しい鉱物については,アルミニウムの4配位位置の数が減少するにつれて,Δ°2Θの値が増加することが認められた。
  • 比較法による金の定量
    工藤 洌, 鈴木 信男
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1050-1053
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    同位元素希釈定量法を放射化分析に併用するならば,分離操作が簡略化でき,収率補正についても考慮する必要がないなどの利点を有する新しい放射化分析法となる。この放射化分析法には直接法,担体量変化法,通常の放射化分析のように標準試料と比較する比較法の三つの方法があるが,比較法による金属銅中の金の定量について,ローダミンBを用いて検討した。
    標準試料(Ms)と未知試料(Mx)を同一条件で放射化したのち, Ms, Mxよりきわめて大きい一定量の担体を両者に加え,この担体より少ない一定量を分離し,その放射能(as, a)を測定すると, MxMx=Ms・a/asにより容易に算出される。ローダミンBと金との反応について種々の条件で検討し,ローダミンBクロロホルム溶液を用い,金の定量の可能なことを見いだした。応用として,銅中の微量の金の定量を試み,満足すべき結果を得た。
  • 加藤 豊明
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1054-1057
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    すでに報告したルテニウム(IV,-オキシン錯体の生成および抽出に関する検討の結果を利用して,冷却期間約1年の核分裂生成物の中に含まれる103,106Ruの抽出分離を行なった。
    核分裂生成物を6N水酸化ナトリウム溶液とし,過硫酸カリウムを添加,加温して103,106Ruをいったん103,106RuO42-に整え,塩酸-過酸化水素で処理して酸性としてからオキシン-酢酸溶液を加え,pH 4に調節ののち,60°Cで30分間加温して錯体を生成させベンゼンで抽出した。この条件で103,106Ruの約92%が抽出される。抽出液を0.1mol/lシュウ酸で洗浄して95Zr-95Nbを逆抽出し,ついで希酸(pH 1)でオキシンを除去してから濃塩酸で103,106Ruを逆抽出した。ベンゼン抽出液には103,106Ruの一部は103,106RuO4の形で抽出されており,これがオキシン除去の際に水溶液相に移るので収率は最終的に約70%であるが,放射化学的純度の高い103,106Ruを無担体で得ることができる。
  • 黒田 甲子郎, 中川 久子
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1058-1059
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    cis-ビス(トリフルオルアセタト)-ビス(エチレンジアミン)-コバルト(III)錯イオン,cis-[Co(CF3CO2)2(en)2]+,が酢酸イオンと選択的に沈殿反応を行なうことを利用して,陰イオン定性分析において,ての錯イオンの過塩素酸塩を,酢酸イオンの検出試薬として用いるてとについて検討した。その結果,他種陰イオンが共存しない場合には,1.5mg/mlの酢酸イオンの検出が可能であった。他種陰イオンが共存する場合には,沈殿反応が起りにくくなるが,ての場合には,試料は溶液を硫酸酸性にして蒸留を行ない,留出液を濃縮したのち,ての試薬によって酢酸イオンの検出を行なえば,原試料溶液中の酢酸イオンの濃度が1mg/ml程度でも検出可能であることがわかった。これらの結果から,陰イオン定性分析における酢酸イオンの新しい検出法を創案した。
  • 梶原 定治
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1060-1067
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    芳香環N-オキシドと複素環ハロゲン誘導体との転位反応の機構を明らかにするために,芳香環N-オキシドとしてピリジン-1-オキシド(I),キノリン-1-オキシド(II)およびイソキノリン-2-オキシド(III)を使用し,複素環ハロゲン誘導体はまずα-ブロム体として, 2-ブロムピリジン(IV), 2-ブロムキノリン(V)および1-ブロムイソキノリン(VI)を使用し,ジオキサンを溶媒としてそれぞれ反応を試みた。その結果いずれの反応においても主生成物として, N-異節環置換-2-ピリドン型化合物が得られたが,副生成物は興味あることには, IおよびIIの反応ではN-オキシド基のβ位に親核置換した2, 3'-ジピリジルエーテル型の化合物が得られたのに対し, IIIの反応ではこのようなエーテル型化合物は生成せず,つねに4-ブロムイソキノリン(XX V)が得られた。つぎにβ-ブロム体として3-ブロムピリジン(XX VI)および3-ブロムキノリン(XX VII)を用いて,それぞれIおよびIIとの反応を試みたが原料回収に終った。 γ-ブロム体とN-オキシドとの反応はすでに既報6)で報告している。以上の実験結果に基づいて,芳香環N-オキシドと複素環ハロゲン誘導体との転位反応の機構を考察した。
  • 松木 保夫, 庄子 房次
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1067-1072
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    5-ブロムチアナフテン(5-BrTN)誘導体の合成と反応性を研究した。閉環反応によってそれぞれ2-メチル-(mp91°C~92°C), 3-メチル-(mp40°~41°C),および2-フェニル-5-BrTN(mp186°~187°C)を得た。5-BrTNの求電子置換反応では主として3-位に置換され,これから5-BrTN-3-Y型(Y=Br, COCH3, NHCOCOH3, NH2, COOH) を,また求核置換反応では容易に5-Br・TN-2-Liを生成することから,このものと各種試薬との反応によって5-BrTN-2-X型(X=CO2H, Br, CHO, 5-Br-2-チアナフテニル……)をそれぞれ合成した。
  • 藤田 安二, 上田 照夫
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1072-1073
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    形態シソ(perilla nankinensis Decne)とまったく同一であるにかかわらずシソ臭を有せず,エゴマ(P. frutescens Brit.)と同じ臭気を有するものがしばしば存在する。
    このものの精油を検索すると,收油率生草の0.03~0.05%,油分はマツタケアルコール(1-オクテン-3-オ-ル) 6.8~7.1%,リナロール7.9~8.4%,エルショルチアケトン8.8~10.4%,ツワブキ酸1.5~3.0%,ナギナタケトン48.6~50.8%,その他の成分23.0~23.7%からなることがわかった。
    このものはおそらくシソとエゴマとの雑種であろうと考える。
  • 藤田 安二, 上田 照夫, 溝端 広治
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1074-1077
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    大阪府箕面市勝尾寺近くで採集したナギナタコウジュは精油の収率生草の0.12~0.21%,油分はα-ピネン2.4~4.4%,リモネン0.5~3.4%, p-シメン0.1~0.8%, 3-オクタノール0.9~2.1%, 1-オクテン-3-オール1.8~2.6%, 2-アセチル-3-メチルフラン1.8~4.6%,リナロール0.6~1.5%,エルショルチアケトン1.7~7.6%,イソ吉草酸0.6~2.4%,ツワブキ酸エステル3.2~11.6%,ツワブキ酸8.1~19.4%,ナギナタケトン35.3~66.1%,セスキテルペンアルコール3.1~11.3%を含む。
    このものはナギナタケトンを含まないで,エルショルチアケトンだけを主成分とする油分を与える普通のナギナタコウジュElsholtzia ciliata Hylanderとは別種であると思う。
  • 藤田 安二, 田中 洋一郎
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1078-1079
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    大阪府能勢妙見初谷で採集したフトボナギナタコウジュElsholtzia nipponica Ohwiは精油の収率生草の0.18%,その成分をガスクロマトグラフィーにより検索するとα-ピネン3.8%, β-ピネン2.9%,リモネン11.4%, p-シメン28.5%, 3-オクタノール2.9%, 1-オクテン-3-オール5.7%,リナロール2.9%,アセトフェノン1.9%, β-シトラール4.8%, α-シトラール7.6%, n-カプロン酸3.0%,ゲラニオール17.0%,セスキテルペンアルコール7.6%からなることがわかった。
  • 福井 憲ニ, 松本 高志
    1965 年 86 巻 10 号 p. 1079-1084
    発行日: 1965/10/10
    公開日: 2009/02/05
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    4-ベンジルオキシ-2-オキシ-3,6,ω-トリメトキシアセトフェノン(III)を無水ピペロニル酸とA-R反応後,脱ベンジル化して7-オキシ-3,5,8-トリメトキシ-3',4'-メチレンジオキシフラボン(V)を得た。Vはケトン(VI)を同様にA-R反応しても得られた。Vのメチル化,またはVIを部分メチル化(VII)後A-R反応してメリテルニン(I)を得た。またVIIをペンゾイルバニリン酸無水物の存在下でA-R反応(VIII)後,脱メチル化してテルナチン(II)を得た。IIと比較する目的で3,4'-ジオキシ-3',5,7,8-テトラメトキシフラボン(IX)を1,3-ジベンジルオキシ-2,5-`ジメトキシベンゼン(X)から4段階を経て合成した。3-オキシ-5,7-ジメトキシフラボン(XV)をアニリン塩酸塩,またはニトロベンゼン中塩化アルミニウムで脱メチル化してイザルピニン(XIV)を得た。これら合成物の紫外吸収スペクトルについても二,三検討した。
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