過ヨウ素酸H
5IO
6およびテルル酸H
6TeO
6はともに正八面体の酸素酸で,ニッケル(IV),銅(III),銀(III)などの高酸化状態の金属イオンに配位してこれを安定化する性質があることが知られている。著者らはさらにコバルト(III)およびマンガン(IV)について,
Na
5H
2Co(IO
6)
2・10H
2O, K
3H
6Co(TeO
6)
2・2H
2O
Na
7H
4Mn(IO
6)
3・17H
2O, K
6H
8Mn(TeO
6)
3・5H
2O
などの錯塩を合成することができた。合成法はコバルト(II)またはマンガン(II)の塩と過ヨウ素酸アルカリ,またはテルル酸との混合物をアルカリ性の次亜塩素酸塩で酸化する方法によった。
過ヨウ素酸は強い酸化剤なので,マンガン(IV)錯塩の場合には,水溶液中で分解してMnO
4-を生ずる。そこでこの反応を速度論的に研究した。またその素反応を明らかにするため,MnO
42-をNa
2H
3IO
6で酸化する反応もあわせて速度論的に研究した。
テルル酸錯塩は相当する過ヨウ素酸錯塩よりやや不安で単離しにくいが,カリウム塩としてこれを取りだすことができた。
最後に今日までに知られているマンガン(IV),鉄(III),コバルト(III),ニッケル(IV),銅(III),銀(III)および金(III)の過ヨウ素酸錯塩十数種を合成し,磁化率および可視・紫外吸収スペクトルを比較検討した。
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