クロマズロールSは微酸性溶液中でトリウム(IV)と反応し,赤紫色の錯体を生成するので,これをトリウム(IV)の吸光光度定量に適用した。一定量のトリウム(IV)溶液について, pH,試薬濃度,加熱などの呈色条件を検討し,最適条件において検量線を作成し,さらに錯体の組成,生成定数も求めた。また共存イオンの影響についても調べた。トリウム(IV)-クマズロールS錯体は試薬対照で,波辰554mμに吸收極大を示し,水対照では試楽量に応じて,約485mμに等吸収点を有する。錯体の呈色は時間とともに安定に推移し,最適pHは約5.6であった。検量線は原点を通る直線となり(Beerの法則),トリウム(IV)定量の最適濃度範囲は0.8~7.0μg/mlであることがわかった。波長554mμにおいて,モル吸收光係数32000を得た。連続変化法,モル比法により錯体は実験の条件下で,トリウム(IV):クロマズロールS=1:2の組成を有し,生成定数K=2.0×10
11(25°C)を得た。共存イオンについて検討した結果,陰イオンではリン酸イオン, EDTAなどがとくに大きく発色を妨害し,陽イオンではアルミニウム(III),鉄(II, III),ベリリウム(II)などが影響を示した。
抄録全体を表示