日本化學雜誌
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86 巻, 12 号
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  • 成田 耕造
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1205-1222
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ほ乳類型チトクロームcはほ乳動物から酵母にいたるまで広く分布し,生成内における電子伝達系として重要な働き営なんでいる。著者らはほ乳類型チトクロームcの構造と機能との相関関係を究明するために本研究を行なった。いわゆるほ乳動物のチトクロームcの化学構造の決定は主としてアメリカで開始されていたので,著者らはもっとも種属のかけ離れた酵毋チトクロームcの構造決定を行ない,この構造を明らかにしてこれとほ乳動物のチトクロームcの化学構造とを比較して,機能発現に必須な構造単位を知ろうとした。そのためにパン酵母(Saccharomyces oviformis)およびCandida Kruseiのチトクロームcの化学構造の決定を行なった。構造決定の経路を記述し,用いた諸方法について検討を加えるとともに,得られた結果に基づいて活性保持に必要と考えられるアミノ酸残基,あるいはペプチドセグメントについて議論する。
  • 稲本 直樹
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1223-1235
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ジシクロヘキシル水銀は不安定であるが,この原因は酸素に基因することを見いだした。この際,過酸化物,水銀(I)塩も不安定化に寄与することを,安定なジベンジル水銀の分解がこれらにより促進されることで確かめた。有機水銀クロリドはほとんど分解しないが,少量の塩化水銀(I)を生成した。有機水銀化合物の再分配反応を種々の添加物存在下で試み,水銀(I)塩-水銀,とくに硝酸水銀(I)がいちじるしい触媒能力をもつことを見いだした。いままで知られている触媒もすぺて,反応中に水銀(I)塩-水銀を生ずるため触媒となると考えられる。水銀(I)塩-水銀を触媒として有機水銀化合物間の平衡を研究し,これらの再分配反応で統計的分配が起るというのは一般的でないことを知った。これと関連して,有機水銀化合物とグリニャール試薬との間の交換反応を研究し,通常では交換反応が起らない系で,添加物を用いて交換を起させることはできなかった。この交換反応では,カルバニオンとして安定な基が水銀からマグネシウムへ移動しやすいことがわかり,この交換を塩化コバルト(II)が促進することを見いだした。有機水銀化合物の接触再分配反応の機構と関連して, RHgXと水銀(II)塩との間に熱反応が起ることを見いだした。X=Clの場合,すべての場合に塩化水銀(I)を生じ, Rがアリール基以外ではRClを生ずるが, Rがアリール基のときは相当する芳香族炭化水素を生ずる。X=CNでは,シアン化水銀(I)が不安定なため,相当するニトリル,水銀,シアン化水銀(II)を生ずるが, Rがフェニル基以外ではニトリルの収率は低い。
  • 砂盛 敬
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1236-1241
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酢酸-ピリジン2成分系の示す異常性については興味ある問題である。この異常性の原因を明らかにするため, 25°Cにおける酢酸-ピリジン2成分系の混合熱,および30°Cにおける酢酸-キノリンおよび酢酸-イソキノリン2成分系の混合熱を測定した。
    混合熱の極大はいずれの系でも酢酸モル分率で0.5~0.6付近にあって,極大値は酢酸-ピリジン2成分系では1.32 kcal/mol,酢酸-キノリン2成分系では1.13 kcal/mol,酢酸-イソキノリン2成分系では1.17 kcal/molの発熱量をそれぞれ示している。各成分の無限希釈濃度における混合熱の知見から,酢酸の希薄な組成では酢酸とピリジン,キノリンおよびイソキノリンとは1:1の相互作用を有することがわかった。その水素結合エネルギーとして, 7.6 kcal/molなる値を得た。また酢酸の濃い組成では1:1の水素結合を形成する相互作用とは異なったイオン形成をともなう相互作用があり,その相互作用はピリジン,キノリンおよびイソキノリンの塩基性に大きく依存することが暗示された。
  • 宮田 謙一
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1241-1244
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    種々の温度で熱処理を行なった湿式法微粉末シリカ,乾式法微粉末シリカ,および石英粉末について水蒸気吸着等温線と,それら試料の脱水曲線とを測定し,シリカ表面のシラノール基が脱水する際の挙動およびその分布状態につき検討した。その結果,シリカ表面の物理吸着水は200°C以下で完全に離脱されること,および400°C以下で縮合脱水されたシラノール基対が形成するSi-O-Si基は,非常に不安定であり,水分子と接触することによって容易に再水和されることが明らかになった。
    また,乾式法微粉末シリカ表面に存在するシラノール基は,水和表面(ほぼ理論値に近いシラノール基表面濃度を持っている)と脱水表面とにわかれて存在することが推定された。
  • 佐藤 譲, 桑田 敬治, 広田 鋼蔵
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1244-1249
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ジフェニルアミン重合体を電子供与体とし,テトラシアノエチレン(TCNE),クロラニル,ヨウ素あるいは無水マレイン酸を電子受容体とする半導性分子間化合物を調製した。試料の比抵抗は組成によって変化し,おのおのの最低値は,ヨウ素化合物(1:0.54mol比のとき)で5.7×104ohm-cm, TCNE化合物(1:0.33)で4.7×107,クロラニル化合物(1:0.28)で1.8×109,無水マレイン酸化合物(1:0.32)では2.1×107であった。電気伝導の活性化エネルギーは0.29eVから0.49eVの範囲にわたっている。固体試料のESRは,すべて線幅7~18gaussの1本線であり,ベンゼン溶液では超微細構造が認められた。強度比1:2:3:2:1の5本線からなり,不対電子と2個の等価な窒素核の相互作用によるものと帰属された。 ESR測定により求めたスピン濃度は,組成とともに変化するが, 80°Kから363°Kの温度変化に対しては不変であった。電気伝導度の組成依存性とスピン濃度の組成依存性には差異が認められた。電気伝導度とESRの間に直接的関係が認められなかったので,電導キャリヤーがESRを示す不対スピンそのものではないと推論された。
  • 井手 八恵子, 高木 徳二, 慶伊 富長
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1249-1253
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酸化エチレンは銀触媒によりアセトアルデヒドへの異性化,エチレンと吸着酸素への分解を起すことがTwiggにより報告されている。この反応をより明確にするために,封鎖循環系で銀粉を触媒として用い,温度250°C-330°C,初圧4-11cmHgの範囲でガスクロマトグラフィーにより両反応を追跡した。異性化はLangmuir-Hinshelwood機構で進行し,副反応生成物により被毒を受け,分解の初期速度は酸化エチレン圧に依存しないことがわかった。初期速度から求めた異性化,分解の活性化エネルギーはそれぞれ15,10kcal/molであった。
    酸素添加効果を調べた結果,吸着酸素は異性化には影響を与えず分解を促進することがわかった。さらに低濃度酸素による酸化エチレンの酸化はアルデヒド経由であるという結論を得た。
  • 太田 直一, 寺井 稔, 大森 昌衛
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1254-1258
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    漸新世後期以降の東北日本の地層中から採集したニ枚貝類の貝殻化石中のマグネシウム,カルシウム,リン,ナトリウムおよびカリウム含量を定め,含有量や含有比と地質時代,貝の種類および環境との関係を検討した。
    地質時代との関係では,ナトリウムが地質時代をさかのぼるにしたがって少なくなる傾向を示したが,マグネシウムの場合は,洪積世以前とくに中新世から鮮新世にかけての貝の試料では大きな変動がみられ,貝の棲息環境を左右した地史の特異性との関連が大きいと推論された。
    貝の種類別では,方解石からなるイタヤガイ科の貝殻中に各地質時代を通じてマグネシウムがもっとも多く含まれ,リンはアラレ石からなるタマキガイ科の貝殻にもっとも多く含まれていた。
    イタヤガイ科: Mg: 0.081±0.053%, P: 0.27±0.20mg/g
    タマキガイ科: Mg: 0.033±0.009%, P: 0.61±0.11mg/g
    サラガイ科: Mg: 0.040±0.026%, P: 0.38±0.20mg/g
    鮮新世前期の沢根層から採集したエゾタマキガイの化学成分は,採集場所が海浜か内陸かでかなりの差異があった。これは堆積後の環境の影響も大きいことを示すものであろう。
  • 阿部 光雄, 伊藤 卓爾
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1259-1266
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究はカラム操作が可能なイオン交換体を見いだすことと,各種金属の水酸化物および含水酸化物の吸着性について一般的傾向を知ることを目的として行なったものである。
    本報は4, 5, 6 価金属元素の含水酸化物について,pH値の異なった溶液からカリウムイオンおよび塩素イオンの吸着性を検討した。その結果,チタン(IV),スズ(IV),ジルコニウム,セリウム(IV)およびトリウムなどの4価金属の含水酸化物が両性の吸着性を示し,pHの増加によって塩素イオン吸着量が減少し,カリウムイオン吸着量が増加する。逆にpHの減少によって塩素イオン吸着量が増加し,カリウムイオン吸着量が減少する。ケイ素,マンガン(IV)、ニオブ,タンタル,アンチモン(V),モリブデンおよびタングステンなどの含水酸化物は陽イオン吸着性のみを示し,pHの増加とともにカリウムイオン吸着量が増加する。
    これらの吸着性とイオンポテンシャル(φ)とは密接な関係が認められ,ニオブ,タンタル,アンチモン(V)などその値の小さい含水酸化物が高い陽イオン吸着性を示した。
  • 松本 忠也, 加藤 武, 新良 宏一郎
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1266-1269
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アニリン,およびそのm-ニトロ,p-クロル,m-クロル,p-メチル,p-メトキシ,p-オキシ,置換体をそれぞれ結合したCoIII-ジメチルグリオキシム錯体を合成単離した。これらは[Co(dgH)2A2]Cl(A:アニリンまたはその置換体)の組成に一致した。
    これらの錯体の電子スベクトルには二つの強い電子移動吸収帯がそれぞれ340~380mμおよび300mμ付近に認められる。
    前者の吸収帯の極大位置はアミンの塩基性の強いものほど長波長側に存在する。また配位塩基Aの酸化されやすいものほど長波長側に存在する。これらの吸収帯の極大位置の振動数は結合しているアニリン置換体のイオン化電圧と直線関係にあることが認められた。このような直線関係はこれらの吸収帯がアニリン置換体から中心コバルト原子への電荷移動吸収帯であることを裏づけするものである。
    300mμ付近の吸収帯の位置は塩基Aが相違してもほとんど移動しない。この吸収帯は中心金属から配位子(dgH2)への電子移動に相当するものと考えられる。
  • 石渡 良志, 半谷 高久
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1270-1274
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    有機物の地球化学を進歩させるには,堆積物中の腐植物質の化学構造を明らかにし,その地球化学的変化を研究することが重要である。著者らは赤外吸収スペクトルを測定することによって現世堆積物中の腐植物質の化学構造の諸特徴を明らかにすることを試みた。試料として湾底泥(九州水俣湾),淡水湖底泥(榛名湖),泥炭(北海道)および堆積岩(埼玉県)を用いた。これらの試料からビチューメンとフミン酸を分離し,ビチューメンをさらに液体カラムクロマトグラフィーを使ってn-ヘプタン,ベンゼンおよびメタノールの各フラクションにわけた。これらの各成分の赤外吸収スペクトルを測定してつぎの結果を得た。
    1) 堆積物中の腐植物質の芳香族性の大きさは,
    泥炭>湾底泥>堆積岩>湖底泥の順序で減少した。また湖底泥では事実上ほとんど芳香族性が認められなかった。
    2) 1640cm-1および1530cm-1の吸收帯から,湾底泥および湖底泥からのフミン酸中にペプチド類似の結合が存在すると推定された。泥炭おにび堆積岩ではこれらの吸収帯が認められないことから,フミン酸の化学構造には原料物質と地球化学的環境が関与することが推定された。
  • 菅原 健, 鎌田 栄二郎
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1275-1278
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    〓垂直分布の周年変化について記述した。溶存酸素が過飽和で全炭酸が不飽和である表水層ではもっと〓値が1.26-0.73mg/lである。この表水層の浮遊炭水化合物の垂直分布はクロロフィル含量と同じ傾〓量は約1/2に減少し,年間を通じてあまり変動がない。湖底近くでは,ふたたび炭水化合物含量が増〓炭水化物含量に対する割合は表水層では約1/2,躍層では2/3,そして深水層では1に近くなる。〓し,一方では炭酸ガス含量が非常に増加している。これらの現象は夏の停滞期の間に深水層に多〓れていることによるものである。
  • 鈴木 喬, 妹尾 学, 山辺 武郎
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1278-1281
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂を塩化ナトリウムなどの電解質溶液と平衡にさせたときに, 樹脂相にある電解質濃度が外部溶液相の濃度より低いというイオン排除の現象に着目して,樹脂相にある脱塩された溶液を遠心力によって実際にしぼり出せることを示した。また非対立イオンのイオン価によって脱塩される割合が異なることに注目して,塩相互の分離が可能であることを示した。さらに遠心力による外力場は直接樹脂相に加わる相圧として働くと考え,得られた結果がよく説明できる簡単な理論式を導いた。
  • 小倉 紀雄
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1282-1285
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    著者は天然水の紫外吸収スペクトルのもつ意味を明らかにするために,天然水中に含まれる紫外吸光物質の研究を行なってきた。本報では天然水の紫外吸収スペクトルの概要を述べ,その測定法の検討を行なった。
    吸光度の測定は蒸留水を対照とし1cmセルで210~340mμの波長範囲で行なわれた。
    天然水の紫外吸収スペクトルは,一般に極大極小をもたず,長波長になるにしたがい吸収強度は減少する。しかしその詳細な形は天然水の種類により異なるので,吸収スペクトルは天然水の水質を表わす指標のーつになり得る。220, 250mμの吸光度の比(E250/E220)から天然水を分類できた。天然水はLambert-Beerの法則に必ずしもしたがわない。また保存により,吸収スペクトルの形が多少変化することが認められた。
  • 小倉 紀雄
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1286-1288
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    天然水中に存在する紫外吸光物質の本質を明らかにするために,紫外吸光度と若干の水質因子との関係を検討した。
    220mμの吸光度(E220)は,化学的酸素消費量(COD)と相関があり,天然水中の有機物含量と密接な関係があることがわかった。しかも紫外吸光度は少量の試水で,迅速に測定されるので水中の有機物含量を推定するのに非常に有効であることが明らかにされた。
    その他,E220に関係をもつと考えられる硝酸イオン,懸濁物およびpHの影響を検討した。硝酸イオンは220mμ以下の波長でかなり強い吸収をもつので,多量の硝酸イオンを含む天然水のE220値は,すべて有機物に基づくのではないことが明らかにされた。
  • 中島 理一郎, 原 正
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1289-1294
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シアンイオン(CN-)とアセトアルデヒド(AcH)の反応は,安定なシアノ錯体をつくるような金属イオンの共存によっていちじるしく緩慢となるので,反応速度の低下を測定してシアノ錯体の安定度定数(K),および,反応速度の低下と安定度との関係求めることを目的として本研究を行なった。反応速度の測定は25.0 °C,イオン強度0.1 の塩化アンモニウム-水酸化アンモニウム系でシアノ錯体とAcHを反応させ,反応槽中の一定量を一定時間ごとに採取して,残存するCN-を定量することによってなされた。その結果,シアノ錯体とAcHとの反応の速度は,Kの増加とともに減少することが認められた。なお,CN-の消費が遊離のCN-とAcHとの反応によってのみ起きると仮定してKを求めたところ,その値はカドミウム,亜鉛などについて文献値とよい一致が見られた。
  • 藤永 太一郎, 桑本 融, 小野 祐資
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1294-1299
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    スカンジウムの定量を目的としてスカンジウムのアセチルアセトン塩[Sc(AA)3]およびトリフルオルアセチルアセトン塩[Sc・(TFA)3]を合成してそのガスクロマトグラフ的挙動を検討した。グラスビーズ-0.5%Apiezon-Lの分離管を用いて220°Cで, Sc(AA)31~5mgを±2%以内の誤差で定量し,さらにBe(AA)2, Al(AA)3からの分離を試みたが不完全であった。 Sc(TFA)3についてはChromosorb-W-10% Silicon Oilの分離管を用いて185°Cで定量的に溶出させることができ,検量線を求めるとSc3+4.5~45μgで誤差は4%以内であった。
    また同じ分離管でSc(TFA)3をBe(TFA)2, Al(TFA)3からほぼ完全に分離することができ,分離ピークは定量的である。最後にBe2+, Al3+, Sc3+を水溶液からTFA塩としてペンゼンで抽出後,そのペンゼン層をガスクロマトグラフで分析する可能性を検討し,スカンジウムについては定量的な結果を得た。
  • 笹島 洋一, 志摩 健介, 桜井 洸
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1299-1303
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    メチレンシクロヘキサンとプロピオンアルデヒド,ベンズアルデヒドの光化学反応が研究された。メチレンシクロヘキサンとプロピオンアルデヒドの光反応の場合には,生成物として, 1-シクロヘキシル-2-ブタノン(I),プロピオノイン(II), 1-シクロヘキシル-2-ブタノール(III),および不飽和アルコール(IV)の生成が認められた。これらの生成物は,いずれもn→π∗励起アルデヒドが自己分解,またはアルデヒドあるいはオレフィンから水素を引き抜いて生ずるラジカルをへて起ることが考察された。他方,メチレンシクロヘキサンとベンズアルデヒドの光反応の場合には,上記の型の生成物は全然得られず,オキセタン,すなわち1-フェニル-2-オキサスピロ[3, 5]ノナン(Va)の生成が認められた。オキセタンの生成は,n→π∗励起アルデヒドがオレフィン二重結合を攻撃して生ずる中間ビラジカルの安定性から説明された。
  • 遠藤 彰, 斎藤 真澄, 高橋 幹雄, 長田 健三, 伏崎 弥三郎
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1304-1307
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    5, 6, 7員環のエチリデン-,およびイソプロピリデンシクロアルカンを合成し,過安息香酸との反応を検討した。反応生成物はグリコールのモノエステルとエポキシドであるが,その量比は環の大きさによって異なり, 5, 7員環では前者が, 6員環では後者が比較的多いことがわかった。この相違は中間体の安定化のようすが環の大きさによって違うことに基づくと思われる。環拡大反応や水素陰イオンの転位などから推定されるケトンの生成は認められなかった。エチルエーテル溶媒中での反応を動力学的に調べ,メチレンシクロアルカンと比較した。反応速度はメチレンシクロアルカンと同様に,オレフィンと過酸のおのおのの1次に比例する2次式として示されることがわかった。メチル基を順次導入することにより反応性は大きくなり,これは過酸の求電子的な反応を考えると理解される。しかしその効果の大きさは環によって若干の違いがあり,立体的な因子も同時に考慮されねばならないことが結論された。
  • 中村 司朗, 山田 富義, 後藤 俊夫, 平田 義正
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1308-1310
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    構造未知のトリテルペノイドアルコール,モチオールC30H50Oを含む1)モチツツジの粘液からモチオール以外に4種のトリテルペノイドアルコールを単離した。すなちこの粘液にn-ヘキサンを加え,この溶媒体に溶ける粘稠物をアルミナによりカラムクロマトグラフを行なう。混合溶媒(ベンゼン:エーテル,1:1)により溶離される分画からモチオールとネオモチオールC30H50O2が得られる。混合溶媒(エーテル:メタノール, 200:1)ではゲルマニジオールC30H50O2とモチジオールC30H50O2が得られ,さらに同溶媒(エーテル:メタノール,1:1)で溶離をつづけるとアジアネンジオールC30H50O2が得られた。これらのアルコールはいずれもアセチル誘導体をつくり,アルコールおよびこれら誘導体の物理定数はいずれも構造既知のトリテルペンと一致しないことから新トリテルペノイドである。
  • 中村 司朗, 井上 康男, 後藤 俊夫, 平田 義正
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1310-1315
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    モチツツジの粘液から刈米らはC30H50Oのトリテルペンを単離しモチオールと命名した。著者らはこのものと同時に同じ分子式をもつトリテルペン(ネオモチオール)を単離した。モチオールを無水クロム酸で酸化して得られるケトンをHuang-Minlon法により還元すると炭化水素(IX)が得られた。これはすでに上田らにより報告されているfern-7-eneと一致した。モチオールの水酸基の位置および立体配置はケトンとその異性体の旋光分散曲線,水酸基の五塩化リンによる転移をともなう脱水とオゾン酸化により3β-であることが示された。ネオモチオールの無水クロム酸酸化で得られるケトンは酸で異性体(XIV)を与え,これはHalsallらにより報告されているhopenone-IIと一致した。これから水酸基はC3に存在することが示され,それが3β-であることはモチオールと同様に推定された。二重結合の位置(C12)はβ-アミリンなどと同様なマススペクトルのピーク(m/e 218)を示すことから明らかにされた。したがってモチオールの構造はI,ネオモチオールはXIと推定した。
  • 山田 富義, 中村 司朗, 後藤 俊夫, 平田 義正
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1315-1318
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ゲルマニジオールを塩化p-トルエンスルホニルでエステルにして水素化アルミニウムリチウムで還元するとゲルマニコールとなる。ゲルマニジオールはアセトニドをつくること,四酢酸鉛を1 mol消費することから 1, 2-グリコール基をもつことが示され,核磁気共鳴スぺクトルによりそれがcisであることが明らかにされた。したがってゲルマニジオールの構造は I であらわされる。
    モチジオールもゲルマニジオールと同様にしてモチオールに誘導される。モチジオールが 1, 2-グリコール基をもつことがアセトニドの生成により示され,ゲルマニコールと同様に,それがcisであることが明らかにされた。モチジオールの構造はXIであらわされる。
  • 鈴木 邁
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1318-1321
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづきジクロル過酢酸の生成と分解反応の速度論的考察を行ない,置換塩素の増加にともなって過酸生成速度も大になることを認めた。ジクロル過酸の分解反応もモノクロル酢酸の場合と同様に典型的逐次反応様式で進行し,置換塩素数の増加とともに発生酸素量も大になることがわかった。過酸生成反応は無機触媒酸の添加がなくても進行し,分解ガス中には二酸化炭素ガス・メタノールなどの存在は認められない。
    過酸生成および分解反応の活性化エネルギーはそれぞれ7.7, 11.7kcal/molと他の過酸にくらべて低い値が得られた。
  • 戸井 康雄, 川合 昌路, 去来川 覚三, 丸山 雄士, 伏崎 弥三郎
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1322-1327
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ピリジン環を有するα,β-不飽和ガルボニル化合物(以下カルコンと略す)類とフェニルヒドラジンあるいはp-メチルフェニルヒドラジン塩酸塩との縮合,環化反応を行ない,ピラゾリン環の3の位置にビリジン環を有する種々の1,5-ジアリル-3-(2'-メチル-5'-ピリジル)-2-ビラゾリン類を合成した。2-メチル-5-アセチルピリジンを塩基性解媒の存在下で,芳香族アルデヒドあるいは複素環アルデヒドとの縮合反応を行なって得られるカルコン類と,フェニルヒドラジン類とを氷酢酸溶媒中,あるいは硫酸を含んだエタノール溶媒中で,それぞれ加熱還流しながら反応を行なって,40~96%收率でピラゾリン誘導体を得た。生成物はいずれも黄色結晶である。これらの2-ピラゾリン類の紫外吸收スベクトルおよび赤外吸收スペクトルを測定した。成成したピラゾリン類は有機溶媒中でケイ光を示すので,それらのケイ光スペクトルを測定した。
  • 酒井 孝真, 金子 忠次, 三井 生喜雄
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1328-1331
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水素化触媒の選択性に関する研究の一環として, 2-スチリルピリジン-N-オキシド(I), 2-(p-メトキシ)スチリルピリジン-N-オキシド(II), 2-(p-メチルアミノ)スチリルピリジン-N-オキシド(III),ならびに2-および4-スチリルキノリン-N-オキシド(IVおよびV)のパラジウム-炭およびラネーニッケル触媒による接触水素化を行なった。
    パラジウムー炭触媒によりI~Vはすべてきわめて選択的に二重結合の水素添加がN-オキシド基の水素化分解より優先して起った。一方,ラネーニッケルではIVを除いて逆にN-オキシド基の水素化分解が優先して起ったが,IVではパラジウム-炭触媒の場合と同様に二重結合の水素添加が優先した。
    これらの結果から,被水素化物質の触媒面上での吸着状態を推定し,触媒の選択性について考察した。
  • 曾根 澄
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1331-1334
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素中,塩化亜鉛触媒下,トリオキサン,塩化水素で2-アセチルチオフェン(I),2-チオフェンカルボン酸メチルエステル(II),2-チオフェンアルデヒド(III)のクロルメル化を行なった。I,IIIでは5位クロルメチル化物,4位クロルメチル化物および少量の4,5-ビスクロルメチル化物が生成し,いずれの場合も5位置換が4位置換に優先することがわかった。IIの場合は2種類のモノクロルチル異性体ととてもにビスクロルメチル化物もかなり生成する。
  • 原 昭二
    1965 年 86 巻 12 号 p. 1344-1345
    発行日: 1965/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ステロイドの分子構造の解析にクロマトグラフ法を利用する場合,移動率・保持時間と構造とを数式により関連づけておくことが必要である。すでに分配系ではMartinの理論1)が提出され,ステロイドに関する系統的な研究例2)も知られている。しかし,分離・分析法として口常広く使われる吸着液相クロマトグラフィーにおいては,吸着等温線が非直線性のため,理論的な取り扱いが困難とされてきた。今回,シリカゲルの薄層クロマトグラフィーで得られる移動率から,種々の置換基のパラメーターを算出したところ,特定の展開剤ではほぼ定数てなり,吸着系においてもMartinの式が近似的に適用できることを見いだした。
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