日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
86 巻, 2 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 大木 道則, 広田 穣
    1965 年 86 巻 2 号 p. 115-130
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    各種の水素受容性の置換基をもつ脂肪族および芳香族力ルボン酸のO-H伸縮掻動帯およびC=0伸細振動帯の領域の赤外吸収スペクトル,および紫外吸収スペクトルを測定し,その結果からカルボキシル基のO-Hを水素供与体とした水素結含の存在する範囲を承し,その特徴がカルボキシル基の本性に由来するものであることを指摘した。
  • 脱水,熱分解,開環重合,リン酸化および脱酸素反応
    向山 光昭
    1965 年 86 巻 2 号 p. 131-150
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    著者らの研究室では尿素化合物,ウレタン化合物などの熱解離反応機構の研究に端を発して,ここ数年間にいくつかの新しい有機反応を見いだすことができた。ここではそれらの諸反応(脱水反応,熱分解反応,開環重合,リン酸化,脱酸素反応)を発見するにいたった過程を中心として主要な実験結果をそえてまとめて述べる。
  • 垣花 秀弘, 栗栖 紀美子
    1965 年 86 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    同位体の化学的分離係数の大きなものを得るために理論的考察を行ない,同位体効果の相乗性を見いだした。
    同位体A, Bの分離係数SBAは三つの項からなる。すなわち, ln SBA〓ln(1+εt)+ln(1+Δc)+ln(1+〓c)〓εt+Δc+〓c=εt+εc
    ここで, εtはある特定の化学種が二つの異なった相の間で同位体交換を行なう場合の同位体効果であり, Δcと〓cは第1相と第2相でそれぞれ起す化学反応による同位体効果である。εcは,化学的同位体効果の総和である。それぞれはつぎのように示される。

    ここでQはおのおのの化学種の分配関数であり, Yは第2相にのみ存在する配位子を示す。 sはYの配位数をあらわす。他は既報に用いた記号と同じである。
    化学的同位体効果の総和, Δc+〓cについて数学的取り扱いをし,いかなる場合が分離係数に良好な影響を与えるかについての予測を行なった。得られた結論のうち,つぎのことがもっとも一般的である。すなわち, 2相に存在する化学種の種類が異なるほど,またその濃度の異なるほど,化学的同位体効果への影響は大きくなる。
  • 守谷 一郎, 永井 利一
    1965 年 86 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    9-ジアゾフルオレンの光照射の際,エタノール系では520mμに,シケロヘキーサン系では470mμにそれぞれλmaxを有する幅広いケイ光スペクトルを与える。これは,フルオノンのπ*→n発光に対応するが,フルオレノン単独の場合と異なり,強度は大きく,しかも経時変化をもつ。ベンゼン系ではこのような顕著な発光スペトルを与えない。一方, 9-置換フルオレンが同様のスペクトルを与えること,光照射試料のESRスペクトルでビフェニレンメチルラジカルの信号が得られること,および光分解生成物の単離ならびに生成物の発光スペクトル的挙動,増感作用,分子軌道の計算,過酸化物の影響などの検討から,シクロヘキサン系では,ビフェニレンメチレン(三重項カルベン)の水素引き抜きにより,またエタノール系では, 9-エトキシフルオレンがまず生成し,これがさらに光分解を起して生じるビフェニレンメチルラジカリルが,このケイ光に関係している二とがわか.った。すなわち,ビフェニレンメチルペルオキシラジカルがフルオレノンのπ*→n発光に増感的な働きをしていると解釈された。
  • 森 雄次, 門井 一, 田中 郁三
    1965 年 86 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    NH3およびND3の水銀光増感反応による分解速度を2537および1849Åで試料を循環させながら反応させて測定した。
    2537Åのときに分解速度の比RNH3/RND3は圧が高く5から10mmHgのとき12から13で,圧の低いところでは圧力の低下とともに増大し圧力0mmHgに外挿すると30~40になる。1849Åの場合にはRNH3/RND3は5mmHg以上では1に近い値が得られ,低圧では増大し, 0mmHg付近で約2になる。
    2537Åにおける大きな同位体効果や1849Åの小さな同位体効果は,それぞれの場合の消光反応の過程に対する考察によって説明される。
  • 佐藤 宏, 中村 利喜
    1965 年 86 巻 2 号 p. 168-172
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    蒸気圧降下の測定に用いられるthermoelectric methodにより,ポリエチレングリコールの溶液についての測定を行なったが,得られた浸透圧の第二ビリアル系数A2が,ペンセン溶液およびアセトン溶液では,低分子嵐域(Mn<2000)で負になることを見いだした。
    ベンゼン溶液について37°および65°Cの2温度の測定から希釈熱および希釈エントロピーを求めた。この系は,吸熱系であり, A2への寄与はエントロピー項よりむしろ熱項であり,低分子量域ではことに,末喘OH基の影響が大であることが明らかとなった。
  • 安積 敬嗣, 堂野 礼三
    1965 年 86 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イオン交換膜を隔膜とした電解質の透過におけるイオンの移動現象は複雑であり,膜の両側に異種の電解質が存在するときの相互拡散では一般に,イオン交換により透過する割合が非常に大きい。そこで,陰イオン交換膜に対する塩素イオンと水酸イオンとの交換速度について検討する目的で,陰イオン交換膜の一方の側に水酸化ナトリウム溶液をおき,他方の側に塩化ナトリウム溶液をおいたときの塩素イオンの透過速度を測定した。その結果,塩素イオンの透過速獲は塩化ナトリウム溶液の濃度が増加しても,水酸化ナトリウム溶液の濃度が増加しても増大するが,塩化ナトリウム濃度にも,水酸化ナトリウム濃度にも直線的な比例関係を示さないことを認めた。また,塩化ナトリウム溶液中に水酸化ナトリウムを添加すろと塩素イオンの透過速度は低下すろ。これらの結果から塩素イオンの透過速度は膜中での塩素イオンの濃度と密接な関係があると推察された。
  • 鈴木 貞雄, 鈴木 邁
    1965 年 86 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    前報1)でパラジウムの表面状態を考慮に入れた新しい収着モデルを提出し,理論的に等温式X=SPe+〓を誘導した。等温式の第1項はパラジウム表面に吸着された分子状水素量を表わすが,パラジウム試料の比表面積Sに比例して増減することを示し実測結果ときわめてよい一致をみた。また,同一収着温度でもα, β2相の共存する収着等温線水平部の圧IIはモデル比表面積Sによって変化することを誘導した。しかしこのモデル比表面積Sは実測収着量を基礎に収着モデル機構に導入したもので実測的検証を受けていない。著者はBET法によるパラジウム試料の比表面積測定を行ないモデル表面積SがBET表面積∑と同一であることを認めた。さらに水素収着時におけるパラジウム試料のX線回折を行ない, α溶解度が試料の表面状態に依存することを明らかにした。
  • 渡辺 啓
    1965 年 86 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    単一ク形成パルスによる電気複屈折の方法をポリ-γ-ベンジル-L-クルタメート(PBLG)のベンセン,ジオキサン,クロロホルム,二塩化エチレン(EDC)溶液,およびこれらのジメチルホルムアミド(DMF)あるいはジクロル酢酸(DCA)との混合溶媒の溶液に適用し,比Kerr定数と複屈折消滅の緩和時間の測定からPBLG分子の溶解状態を考察した。
    その結果,ベンゼンおよびジオキサンにおけるPBLG分子のいちじるしい会合はside-by-sideで逆平行,クロロホルムおよびEDCにおけろPBLG分子の分子の会合は線状でhead-to-tailであることが推定された。
    これらの溶液に少量(1~5 vol%)のDMFあるいはDCAを添加するとPBLG分子の会合は解けるが,ベンゼンおよびジオキサン溶液では若干の会合が残り,これらの会合はDMFあるいはDCAを40~60 vol%加えるま完全には解けない。
    また,PBLGのEDGおよびDMF溶液にエチルアルコールを加えて,ついにPBLGが析出するにいたるまでのPBLG分子の溶解状態の変化を考察した。DMF溶液にエチルアルコールを加えていく場合,アルコールが30~36 vol%で比Kerr定数と緩和時間はいずれもアルコールの比率の増大とともに減少していき,分子量の大きいPBLG分子からside-by-sideで逆平行の会合をしていくことが推定された。これとは逆に, EDC溶液にエチルアルコールを加えていく場合,アルコールが34~43 vol%で比Kerr定数と緩和時間はともに急激に増大し,このときはPBLG分子がhead-to-tailの会合で析出することが推定された。
    クロロホルム溶液にDCAを添加したときは,少量(約1 vol%)のDCAの添加でPBLG分子のC末端のペブチド基のプロトン化によると思われる比Kerr定数のいちじるしい低下が見られた。他方,ベンゼンやジオキサン溶液ではDCA 50 vol%付近から比Kerr定数は減少していく。またこれらの混合溶媒系でも溶媒組成および温度によるヘリックスーコイル転移が観測された。
  • 水野 秀夫, 高村 亨, 村山 節子
    1965 年 86 巻 2 号 p. 185-190
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Sr2.56Mg0.3(PO4)2:0.1Snケイ光体は2537Å励起で3900Åの弱い発光および6430Åの強い発光を示す。この赤色発輝帯に対する励起スペクトルには, 2810および3150Åの励起帯が存在する。 83°Kでは2537Å励起で6430Åの発光を示し, 3650Å励起で6160Åの発光を示すが,常温以上では励起波長に関係なく同一の発光を示す。この赤色発光に対する実験的な配位座標モデルを計算した結果,励起状態の振動数νe=10.6×1012sec-1が基底状態の振動数νg=8×1012sec-1より大きくなっており, Stokesシフトが2倍以上となっていることが理解される。Sr2.46Mg0.3(PO4)2:0.1Sn, 0.1Mnケイ光体では,増感剤であるスズの主発光が6430Åであるのに対し,発輝付活剤であるマンガン発光は6150Åに現われ, Stokesの関係を満たしていないように思われる。しかしケイ光特性の測定結果から2537Å励起のときは3900Åの発輝帯が, 3650Å励起のときは4360Åの母体発光がマンガン発光を増感していることが見いだされた。
  • 今井 弘, 笠城 彰夫
    1965 年 86 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ローダミンB-コパルト(III)錯体(以下R-Co(III))のポーラロコグラフ的挙動を調べ,さらに錯休中のローダミンB(以下R. B)ならびにコバルトの還元波の波高から両成分の結合比を決定した。
    この錯体はチオシアン酸アンモニウム溶液中において2段波を示した。第1波は錯体中のコバルトの還元波であって,半波電位は約-1.13V(vs. SCE)に現われ,単イオンにおけるそれよりも20mV約負移行した。第2波は錯体中のR. Bの還元波あって,半波電位は約-1.39V (vs. SCE)に現われ, R. B白身それよりも約630mV負移行した。この錯体の結合体比は1:1であることが認められた。
  • 白井 俊明, 浜田 修一, 高橋 春男, 猿山 一郎
    1965 年 86 巻 2 号 p. 196-200
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    足尾鉱山で採取した黄銅鉱,黄鉄鉱および鉄閃亜鉛鉱中の微量セレンと銅,鉄,鉛,亜鉛およびカドミウムを分析し,セレン量と金属元素との関係を求めた。試料中のセレンは黄銅鉱で98.4~380.6ppm,黄鉄鉱で15.0および31.3ppm,また鉄閃亜鉛鉱では50.3および199.4ppmであった。鉄閃亜鉛鉱では黄銅鉱より早期晶出のより高温生成のものには黄銅鉱より後期晶出のより低温生成のものにくらべてセレン量が多いことがわかった。また足尾鉱山で採取した黄銅鉱には他の鉱山の黄銅鉱と比較してセレン量が多かった。分析値から計算された各試料中の純粋に近い黄銅鉱に含まれるセレンのモル百分率は2.98~13.46×10-2であって一定値を示さず,またセレンモル百分率と鉛,亜鉛およびカドミウム含有量との間にも相関関係は見いだされなかった。これは鉱液の不連続鉱化によるものと思われる。
  • 石渡 良志, 伊藤 昌之助, 半谷 高久
    1965 年 86 巻 2 号 p. 201-205
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    有機物の地球化学の研究の一環として,著者らは天然水および大気中のアミノ酸の定性と定量を行なった,試料としては,榛名湖水,隅田川,多摩川,新河岸川水,東京都地下水,雨水,雪および大気を用いた。これらの試料の加水分解前後のアミノ酸総量を求めるとともに,ペーパークロマトグラフィーと高電圧口紙電気泳動法を使ってアミノ酸の定性を行なった。その結果つぎのことが明らかとなった。
    1) 実験したすべての天然水および大気中にアミノ態の窒素化合物(またはニンヒドリン発色物質)が検出された。
    2) アミノ態窒素化合物の存在量は,海水でn×(0.01~0.1)μmol N/l,その他の天然水でn×(0.1~1)μmol N/lおよび大気では0.1μmol N/m3であった。
    3) 天然水および大気中でしばしば検出されたアミノ酸は,グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,セリンの中性アミノ酸,およびアスパラギン酸,グルタミン酸の酸性アミノ酸であった。
    4) 天然水におけるアミノ態窒素量は有機態窒素量の1-4以下を占めるにすぎないことが明らかとなった。このことは,有機態窒素の大部分はタンパク質であるとの従来の考えと矛盾する。その原因をさらに追求する必要がある。
  • 萩原 一芳, 樋口 嘉明, 村木 勇夫
    1965 年 86 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルカリ性の支持電解質である炭酸水素塩溶液中において,アンチモンは錯体を生成し, -0.81vに半波電位を持つ還元波を生ずることを認めた。これについて若干の基礎的な検討を行ない,きらにアンチモンの定量に適用するための可能性について検討した。この波の対数プロットの傾斜は74.6 mVであり不可逆波であると考えられるが,しかしil/h1/2の値が一定値を示し,また温度係数が1.45%であることから,限界電流は拡散律速であることが判明した。溶液のpHを上げていくと半波電位は負側へ移行する。したがってpHの変化につれて各種の錯体が生成するものと思われる。pH 8.3における検量線はアンチモンのl×10-4~1×10-3mol/lの範囲で良好な直線性を示し,アンチモンの定量が可能である。銅,鉄,ビスマス,鉛,セレン,ヒ素,亜鉛は本定量を妨害しない。
  • 加藤 豊明
    1965 年 86 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    オキシンのベンゼン溶液を用いて95Zrおよび95Nbの抽出挙動について検討し,共存核種の挙動と比較して核分裂生成物より95Zr-95Nbの抽出分離に利用し好結果を得た。
    酢酸塩を含む水溶液から酢酸塩を含む水溶液から0.2mol/lオキシンーベンゼン溶液で抽出し,95ZrはpH 4~10で92~98%が抽出され, 95NbはpH 2~4.5で約95%が抽出される。クエン酸塩,酒石酸塩あろいはシュウ酸塩の共存は両者の抽出に妨害となる。共存核種のうち, 144Ce(IV)はpH 7.5~11で, 90YはpH 9.5~10.5で0.2mol/lオキシン-ベンゼン溶液に定量的に抽出され, 90SrもpH 10付近で30%ほどが抽出されるが, pH 4付近ではこれら核種の抽出量はわずかである。また, 137Csおよび103, 106Ruの抽出量は無視できる。核分裂生成物を硫酸水素カリウムと溶融したのち, pH 4の水溶液として0.2mol/lオキシンーベンゼン溶液で95Zr-95Nbを抽出し,わずかに混入してくる144Ce(IV)をpH 4の水溶液で洗浄除去してから0.1mol/lシュウ酸により逆抽出して水溶液相に放射化学的純度の高い95Zr-95Nbを高収率で得ることができた。
  • 飯盛 喜代春, 高口 克子
    1965 年 86 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    サリチルアルデヒド-2-メルカプトアニルは水に難溶性で,アルコールに溶ける。この試薬は銅(II)イオンと選択的に反応して緑色の難溶性の錯塩を生成し,沈殿となる。本試薬による銅の定量法は,試料に等容のアルコールを加え本試薬のアルコール溶液を計算量の2~3倍加え,約40°Cで約1時間ときどきかきぜながら反応させる。生成した洗殿はロ別し,これを6Nの熱塩酸で分解し,さらに煮沸して分解を完成するとともにサリラチルアルデヒドを追いだし,分解生成物の2-アミノチオフェノールを波長240mμ光度を測定し,これから銅の量を算出する。妨害イオンは少なく,ニッケル,コバルトイオンが多量存在すれば少し影響する。さきに報告したサリチルアルデヒド-2-オキシアニルと同様銅の定量に用いることができる。銅の測定は0.05~0.5mgの間で満足な結果を得た。
  • 酒井 堂兆
    1965 年 86 巻 2 号 p. 217-219
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    過剰のタリウム(III)によるヒドロキノンの酸化とキシレノールオレンジを用いる余剰のタリウム(III)の吸光光度定量法とに基づくヒドキノンの間接定量法を得なった。
    2N酢酸溶液5mlで酸性としたヒドロキノン溶液にヒドロキノンの約2倍量の硝酸タリウム(III)を加える。これを沸騰水浴中で30分間熱し,流水で冷却し25mlメスフラスコに移す。1×10-3mol/lキシレノールオレンジ溶液4mlを加えて標線まで水を加える。この溶液の吸光度を試薬ブランク溶液を対照液として518mμで測定する。
    本法によって5~55μgヒドロキノンが平均誤差±1.5%で定量できろ。反応の感度は0.005μg/cm2である。上記の条件で誤差の原因と思われるヒドロキノンの空気酸化はほとんど無視できる。
  • 三井 生喜雄, 今泉 真
    1965 年 86 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    接触還元におけろ触媒の選択性を究明すろ目的で,触媒面にどのような状態で吸着されても立体障害の起らない光学活性α-メチルスチレンオキシド(IVa)およびα-エチルスチレンオキシド(IVb)を合成し,種々の触媒および種々の添加物を加えた触媒で接触還元した結果,ニッケルわよびコバルト触媒では立体配置を保持した2-フェニル-1-プロパノール(IVa)または2-フェニル-1-ブタノール(IVb)を過剰に生成し,パラジウムおよび酸化白金触媒では反転したVIaまたはIVbを過剩に生成した。このことは触媒金属の酸素に対する吸着力の差により異なる立体的吸着状態で多く反応すうためと考えられ,ニッケルとパラジウムは酸素に対する吸着力が異なるという前の考えを支持している。
    また,ニッケル,コパルト,パラジウム-炭触媒に水酸化ナトリウムまたは塩化セシウ,ヨウ化カリウムなどの中性塩冷添加するといずれも反転生成物を増加する傾向を示した。このことから、これら添加物は触媒上で試料の酸素を触媒に吸着れ難くする作用をしているものと推定した。
  • 三井 生喜雄, 今泉 真, 日戸 悠治
    1965 年 86 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    接触還元における触媒金属の選択性および添加物の影響を調べる目的で,触媒の一面に立体障害なしにどのような吸着状態でもとり得るプロピレンオキシド(1)および1, 2-エポキシデカン(IV)をニッケルおよびパラジウム触媒,きらに添加物を加えた両触媒で接触還元し,生成物の第一アルコールと第二アルコールの割合を調べた。ニッケル触媒によりIは第二アルコールをいくぶん多く生成したが,IVは第一アルコールを過剰に生成した。また,バラジウム触媒ではいずれも第二アルコールを過剰に生成し,両触媒に水酸化ナトリウムまたはハロゲン化アルカリなどを添加した場合はいずれも第二アルコールの生成割合が増加した。以上の結果から, I, IVは触媒金属の差によるのみならず水酸化ナトリヤム,ハロゲン化アルカリなどの添加物によってもその吸着状態が変化し,異なる立体的吸着状態で水素化分解されるものと考えた。
  • 専田 泰久, 三井 生喜雄
    1965 年 86 巻 2 号 p. 229-231
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    光学活性4-フェニルペンタン-1, 4-ジオール(I)およびそれから誘導される2-メチル-2-フェニルテトラヒドロフラン(II)をラネーニッケルおよびパラジウム触媒で接触水素化分解し,その生成物4-フェニル-1-ペンタノール(III)の旋光度から生成物は約70%以上の光学活性を保持し,しかもラネーニッケルで立体配置保持,パラジウム触媒で反転することを確かめた。
    なお,このために(-)-1, (+)-IIおよび(-)-IIIの絶対配置の決定を行ない,それぞれS, S, Rであること決め,さらにこれに関連して(+)-4-キシ-4-フェニルバレリアン酸(IV)および(-)-4-フーニルバレリアン酸(IX)の絶対配置がそれぞれS, Rであることがわかった。
  • 三井 生喜雄, 今泉 真
    1965 年 86 巻 2 号 p. 232-236
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    接触還元におけるパラジウムとニッケル触媒の選択性を調べる目的で,触媒の一面に立体障害なしにどのような吸着状態でもとり得る光学活性アトロラクチン酸エチル(1a), 2-フェニル-2-オキシ酪酸エチル(1b), 2-フェニルプロパンー1, 2-ジォール(IIIa)および2-フェニルブタン-1, 2-ジォール(III)をラネーニッケルおよび種々のパラジウム触媒で接触還元した。アルカリを含むパラジウム触媒ではいずれも非常に水素化分解され難く, lb, IIIbは根当するIa, IIIaよりいずれの触媒でも非常に反応難かった。Iはラーニッケル触媒により立体配置を保持した2-フェニルプロピオン酸エチル(IIIa)または2-フェニル酪酸エチル(IIIb)を生成するが,パラジウム触媒(Pd-C-A, Pd線など)ではIIと未反応物Iのほかにそれぞれのべンぜン環が水素化きれた化合物を生成したので, IIをガスクロマトグラフィーで分取し旋光度を測定した結果,いずれも立体配置の反転したIIを生成した。また,IIIはラネーニッケル触媒により体配置を保持した2-フェニル-1-プロパノール(VIa)または2-フェニル-1-ブタノール(VIb)を生成し,パラジウム触媒(Pd-C-AまたはB,ラネーPd, Pd-線など)では立体配置の反転したVIを生成した。さらに,IIIは中性または酸を含むパラジウム触媒によりVIのほかにIIIの二つの水酸基が水素化分解された炭化水素を同時に生成した。
    以上のニッケルとパラジウム触媒の立体的選択性の差は,両触媒金属の水酸基に対する吸着力の差により異なる立体的吸着状態で水素化分解されたためと推定した。
  • 佐藤 泰夫, 萩谷 彬
    1965 年 86 巻 2 号 p. 237-239
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    マレイン酸半エステルと酢酸とのKolbe交錯反応を検討した結果,つぎのような生成物を与えることが判明した。
    酪酸メチル,クロトン酸メチル,コハク酸ジメチル,アジピン酸ジメチルおよびムコン酸ジメチル。
    従来の報告では,平滑な白金電極での電解還元では,エーレン結合は飽和されないといわれているが,著者らは本研究の結果,このような電極を用いてもα,β-不飽和カルボン酸について, -CH=CH-→-CH2-CH2-の反応が起ることを確認した。
  • 石戸 良治, 菊地 靖彦, 佐藤 徹雄
    1965 年 86 巻 2 号 p. 240-243
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    種々のプリン誘導体と1, 2, 3, 5-テトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノースとの溶融反応を濃硫酸触媒の存在下で行ない,得られるプリンヌクレオシドの収率を比較することにより各プリン誘導体の反応性を検討した。その結果,ハロゲノプサン類は反応性が比較的大であるのに反し,一般にアミノーまたはオキシプリン類は反応性が低いことがわかっtこ。反応の経過からプリン類の反応性を支配する因子としてそれらの反応時における溶融性が置換基の極性効果などよりも重要な役割を演じているとみられる。
  • 森 隆資, 三宅 千枝, 佐野 忠雄
    1965 年 86 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    線量率5.5×103~2.4×106γ/hr,全線量2.28×107~3.01×10_??_γで粉末グルコースおよび0.5mol/lグルコース水溶液をγ線照射した。γ線照射による分解生成物をペーパークロマトグラフィーにより分析した結果,グルクロノラクトン,グルクロン酸,グルコン酸,アラビノース,エリスロース,ジオキシアセトン,グリオキサールなどの生成を確認した。全線量の増加にともなって, Fehling氏溶液に対するいわゆる糖の還元性は減少するのに反し,テトラメチルパラベンゾキノンに対する還元性は増大する。各分解生成物について両還元性を調べた結果,いずれの分解生成物も,両還元性においてグルコースに劣っているが,その中でジオキシアセトンのみがこの種のラジカル反応に対して非常に強い還元性を示すことが見いだされた。
  • 小口 正七
    1965 年 86 巻 2 号 p. 246-249
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    分子内にキレート生成能ある官能基を1対有する表題の誘導体を得るため,キノキザリンジカルボン酸エステル(I)とコハク酸エステル(II)を閉環縮合させる新合成法に適した条件を検討した結果,縮合剤としては金属ナトリウムおよびカリウムが,またモル比はI,II,金属ナトリウムがそれぞれ1:1:2が最適であることがわかった。その結果を用い7, 8-ジアルコキシ-1, 4-ジオキシフェナジンジカルボン酸ジエステルを得,さらに活性メチレン化合物としてスクシニロニトリル,アセトニルアセトンをIと閉環縮合させた。
  • 小口 正七
    1965 年 86 巻 2 号 p. 249-252
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1, 4-ジオキシフェナジン誘導体の金属に対するキレート生成能を調べるため1, 4, 6, 9-テトラオキシフェナジン(I)の合成を, Wohl-Aue反応その他フェナジン合成の一般方法で試みたが成功しなかった。そこで1, 4-ジオキシ-6, 9-ジメトキシフェナジン-2, 3-ジカルボン酸エスチル(IV)を窒素気流中加水分解し,脱炭酸して, 1, 4-ジオキシ-6, 9-ジメトキシフェナジン(VI)を得,これを脱メチルして目的物を得た。同じ方法により, 1, A-ジオキシ-7, 8-ジメトキシフェナジン(IX)および1, 4, 7, 8-テトラオキシフェナジン(II)を得た。これら化合物は,比較的少数の金属イオンと有色キレートをつくった。
  • 佐藤 猛
    1965 年 86 巻 2 号 p. 252-256
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    氷酢酸およびベンゼン中でβ-ピネンの四酢酸鉛による酸化を行なった。その結果,主生成物として氷酢酸中ではミルテニルアセテート,ペリリルアセテート,ノピネングリコールジアセテート, 1-p-メンテン-7, 8-ジオールジアセテートを得,ベンゼン中ではtrans-ピノカルベオールアセテートとピノールヒドラートジアセテートを得た。きらにそれら生成物の生成径路について考察した。
  • 鈴木 房枝, 長谷川 正木
    1965 年 86 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 1965/02/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    カルボン酸フェニルエステルと酸アミドの反応を検討した。この反応は酸アミドの反応性が低いため,比較的高温(200°C以上)でのみ反応が起る。種々の芳香族カルボン酸フェニルエステルと酸アミドの反応を試みた結果,この反応は次式にしたがって反応することが明らかになった。
    RCOOC6H5+R'CONH2→RCOOH+R'CN+R'COOH+RCN+C6H5OH
    この反応では,生成物およびそれらのモル比から,中間体としてジアシル化合物(RCONHCOR')が生成し,これが分解して2種のカルボン酸とニトリルが生成すると考えられる。
    芳香族カルボン酸フェニルエステルの安息香酸部分に置換基を導入することにより,生成物のモル比がどのように変化するかを調べ,それらの結果から,カルボン酸フェニルエステルと酸アミドの反応機構について検討した。
feedback
Top