m,
p-置換フェニル系の反応速度に対する置換基極性効果についてHammett関係を親電子共鳴のある反応に拡張し,相対反応速度の対数はHammettの σと基準にとった親電子反応のσ
+と σ差ΔσR
+の直線結合式で示されることを見いだした。さらに置換基と反応中心との直接共役のない反応の基準として置換フェニル酢酸エチルエステルの加水分解反応速度から σ
0を求めると, σ
+-σ
0であるΔ〓R
+とσ
0との直線結合式も成立する。これらの関係式によって従来Hammett関係からいちじるしく片寄った傾向を示す反応についても直線自由エネルギー関係が成立し,有機反応機構に重要な知見をあたえる二,三の例を示した。また置換基の極性効果をミグマ誘導効果とπ電子効果(共嗚効果)にわけ,前者を σ',後者をΔ〓R
+に比例するとして直線結合式で取り扱うと,
p-置換基いついてミグマ誘導効果による置換基定数σ
i0.74σ'と一定になり,π電子効果による定数σ
πの寄与は反応により変化する。
m-置換基についてはミグマ誘導効果による置換基定数は0.87σ',すなわち1.17σ
i, π電子置換基定数は0.50σ
πとなり,この両者とも反応に関せず一定である。これは従来
m-と
p-の誘導効果定数が等しいと仮定されていたのが誤りであることを示すとともに,誘導効果定数σ
Iと共嗚効果定数σ
Rによる従来の評価では共嗚の程度の異なる反応についてそれぞれ異なるσ
Rの設定を必要としていたのに対し,一般的に適用できる一つの直線自由エネルギー関係式で統一できることを明らかにした。またこの取り扱いは分子軌道法による取り扱いの仮定とも一致しており,これらの直線自由エネルギー関係式に基づく経験的評価によつて置換基極性効果のより理論的な解析の可能性がある。
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