日本化學雜誌
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87 巻, 11 号
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  • 通 和夫, 近藤 栄二
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1117-1134,A65
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    核磁気共鳴スペクトル法を応用して,微生物による各種Δ4-3-ケトステロイドの水酸化生成物の構造を推定し,構造決定を迅速に行なうため,まず,既知の水酸化ステロイド類の核磁気共鳴スペクトルをクロロホルム-dとピリジン中で測定した結果から,水酸基の導入に起因する核間メチル基および4位陽子のシグナルのシフト値,水酸基をアセチル化した場合の効果を要約した。これらを応用して,Reichstein物質S,アソドロスト-4-エン-3,17-ジオン,プロゲステロン,アンドロスト-4-エン-3,11,17-トリオン,デソキシコルチコステロンの主としてCerynespora属菌による多数の水酸化生成物の構造を推定した。これらの生成物はこの推定に基づき迅速に構造決定された。これらの微生物変換反応のうちとくに重要な新発見として,8β位および18位水酸化が含まれている。さらに,ここで得られた各種水酸化ステロイドのスペクトル測定結果も含めて,Δ4-3-ケトステロイドの水酸化物の構造推定を核磁気共鳴スペクトル法により系統的に行なう方法を提案した。最後にこの方法の価値ある応用例としてコルチコステロンから微生物変換によリアルドステロンを合成する手段について述べ,その際生産する種々の水酸化副生成物の構造を決定した。
  • 黒川 洋一, 油井 敬夫
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1135-1137,A65
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化アルカリおよびフッ化アルカリの1-ブタノール-水二相系における塩の相移動にともなう自由エネルギー変化を求めるために,水和エネルギーについてのBornおよびStokesの考えを導入して計算を行なった。この計算結果と前報の塩化アルカリおよびフッ化アルカリの1-ブタノール-水系における分配率から求めた実測値とを比較検討した。
    塩1molがブタノール相から水相へ移動する際の自由エネルギー変化をBornの式にしたがって求め,さらにイオンの水和半径,誘電率についてはStokesの考えを導入した。すなわち,(1)イオンの水和半径をre+2nrwで表わし,1価陰イオンについてはn-0,陽イオンについてはn=1とする。ただし,reは結晶学的イオン半径,nは水和層数,rwは水分子の半径である。(2)イオン近傍の誘電率を5とし,巨視的な誘電率をεとして有効誘電率εeff.を1/εeff.=1/2(1/5+1/ε)のように定義する。この際イオンの中心からの距離をRとして,R<rc+2nrw内ではεeff.,R>rc+2nrwではεを用いる。
    以上の取り扱いによって自由エネルギー変化を計算すると,塩化リチウム,フッ化リチウムを除いた他の塩では計算値と実測値はほぼ一致することが確かめられた。
  • 油井 敬夫, 黒川 洋一
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1138-1143,A65
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ブタノール-水二相系における塩化リチウム,塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化ルビジウム,塩化セシウムおよび塩化アンモニウムの平衡組成を20℃で測定した。水および1-ブタノールの定量はガスクロマトグラフ法によった。その結果,塩の添加につれてブタノール相から水相への水の移動が測定され,これが塩濃度の増加にともなう分配率Kの増加または滅少のおもな原因と認められた。ただし,分配率Kは(水相の塩の重量モル濃度)/(1-ブタノール相の塩の重量モル濃度)である。ブタノール相における水の減少量および水相におけるブタノールの滅少量は,塩濃度が小の範囲ではSetschenowの塩析式にしたがい水相のブタノールに対する塩析係数kbとして,塩化リチウム0.119,塩化ナトリウム0.178,塩化カリウム0.165,塩化ルビジウム0.154,塩化セシウム0,136,塩化アンモニウム0.109の値を,ブタノール相の水に対する塩析係数隔として塩化リチウム3.5,塩化ナトリウム10.2,塩化カリウム8.73,塩化ルビジウム8.2,塩化セシウム7.9,塩化アンモニウム3.2の値を得た。
  • 油井 敬夫, 黒川 洋一
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1143-1146,A65
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-ブタノール-水二相系にフッ化アルカリ(フッ化リチウム,フッ化ナトリウム,フッ化カリウム,フッ化アンモニウム)を分配させた系について20℃でその平衡組成を調べた。各成分の定量はEDTA法およびガスクロマトグラフ法によった。その結果,各塩について塩濃度の増加とともに1-ブタノール相から水相への水の移動量がふえ,これが分配率K(水相の塩の重量モル濃度/1-ブタノール相の塩の重量モル濃度)の増大の大きな原因となっていることがわかった。塩濃度の増加による下相の1-ブタノールの滅少は,塩濃度が小のとき各塩ともSetschenowの塩析式にしたがう。下相の1-ブタノールに対する塩析係数はフッ化ナトジリウム;0.278,フッ化カリウム;0.253,フッ化アンモニウム;0.167であった。
  • 鈴木 喬, 妹尾 学, 山辺 武郎
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1147-1148,A66
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはPrigogineによる定常状態に対するエソトロピー生成極小の定理を用いて,定常状態の自由度に関する一般則を導いた。すなわちK次の定常状態の自由度の数は次式で示される。
    f=2+(n-r)+K
    ここでn:系の成分の数,r:化学反応の数
    そしてこの一般則を,系が平衡状態になればGibbsの相律,Duhemの法則に還元されること,および簡単な2成分二相系の1次の定常状態に適用したとき,そこになんらの矛盾もなく,完全に系を表現できるということから検証した。
  • 井本 立也, 青谷 清史, 児島 健志, 牧野 〓
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1149-1153,A66
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    150~1000kg/cm2の圧力下,-20°~+10℃の温度において,ナトリウムアマルガマ(Na-Hg)を触媒とするアセトアルデヒド(AcH)の溶液重合を行なった。種々の溶媒による重合の結果ジクロルメタンおよびクロロホルムを溶媒としたとき,分子量が高くなることを認めた。エチルエーテルを溶媒としたときの反応速度式はv-k[AcH]2[Na]で表わされた。活性化エネルギーは9kcal/molで,溶媒の双極子能率が大となると重合速度は増加した。このことから反応はイオン的に進行すると推察した。圧力による重合速度の減少は,何かの拡散過程が影響することによるものと推定した。
  • 井本 立也, 青谷 清史, 児島 健志
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1153-1157,A66
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高圧下におけるナトリウムアマルガム(Na-Hg)を触媒とするアセトアルデヒド(AcH)の重合の反応機構を考え,その動力学的解析を試みた。実験結果と比較検討し,初期反応速度式,および圧力,温度の分子量,反応速度におよぼす影響が理論的に説明できた。
    圧力によって,拡散過程を含む触媒の活性化段階が抑制され生長反応が加速されることを見いだした。かくて両作用により全体としては,圧力により反応速度は抑制されるが,生長反応の加速のため分子量は増加する。
    これらの結果と第三アミンにおける重合反応とを比較し,AcHよりアルドール縮合のくり返しによるPVA合成の問題点を検討した。
  • 大杉 治郎, 水上 哲夫
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1157-1165,A66
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    低温において,アセトアルデヒドに無触媒で圧力を加えると,アセトアルデヒドの非晶性ポリエーテル型ポリマーが得られる。アセトアルデヒドポリマーが生成するためには,各反応温度において重合限界圧力が存在し,重合限界圧力以下の圧力ではポリマーは生成しない。重合限界圧力がアセトアルデヒドの固液相転移圧力であることを確かめ,固液相転移による体積減少量として-50°~-78℃において-3.53~-4.58ml/molなる値を得た。また重合による体積減少量としては,-50°~-78℃において-13.2~-12.1ml/molなる値が得られた。
    一方,速度論的研究を行ない,重合反応の初速度解析により,活性化体積として-60°~-78℃において-11.1~-6.2ml/molを得た。見かけの活性化エネルギーは-3.17~-4.51kcal/molと負の値となり,反応圧力の増加にともない絶対値は減少する。
    生成するポリマーの極限粘度は,反応温度および反応圧力によって一定値となり,最高重合度は32000である。
    低温高圧下のアセトアルデヒドの重合は,固液相転移において生成する結晶核の触媒作用によって進行する。
  • 大杉 治郎, 清水 澄, 滝沢 秀人
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1166-1169,A66
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ヘキサアンミンコバルト(III)硫酸塩,[Co(NH3)6]2・(SO4)3,の希薄水溶液の当量伝導度∧を温度25°~40℃,圧力1~600kg/cm2で測定し,イオン対[Co(NH3)6]・(SO4)+の解離度α,解離定数Kを求めた。∧,αおよびKは圧力とともに増加する。解離にともなうエントロピー変化ΔSは負であり,圧力および温度の上昇とともにその絶体値は滅少する。一方,解離にともなう体積変化ΔVは負であるが,圧力の増加にともなって25℃および30℃ではその絶体笹が増大するが,40℃では圧力の増加とともに減少する。これらの現象は高圧下で溶媒和している水の性質から説明することができる。Δの圧力による増加は25℃および30℃では主としてイオンの易動度の増加に起因するが,40℃では主として解離度の増加に起因する。40℃ではイオンの易動度は圧力の増加につれて減少する。
  • 大杉 治郎, 並河 亮介, 田中 嘉之
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1169-1173,A67
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ケイ素とリンの反応系について,Bridgman型ピストンシリンダーおよび六面体型アンビル超高圧装置を用いて,温度1100°~1800℃,圧力15~50kbの高温高圧下で反応性が検討された。X線解析の結果,これらの反応条件では五種類の高圧相が得られることが明らかになった。この高圧相の中には,黄鉄鉱型構造で格子定数α=5.682AのSiP2とセン亜鉛鉱型構造で格子定数α=5.241AのSiPが含まれている。X線回折により高温高圧下でのケイ素-リン系の主要な反応過程が検討され,主反応過程に対する温度,圧力,反応時間,および反応物中のケイ素とリンの混合比の効果が調べられた。この反応系は温度,圧力によって影響されるだけでなく反応物の組成,反応時間によっても大きく影響される。SiP2は主として1100°~1500℃,20~40kbで生成し,SiPは1800℃,40~50kbの反応条件でSiP2→SiP+Pの反応を経て生成するものと考えられる。
  • 阿部 光雄, 伊藤 卓爾
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1174-1179,A67
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    いわゆるアンチモン酸が希薄硫酸リチウム溶液からリチウムイオンを吸着することは古くから知られており,アンチモン酸塩が生成するらしいと考えられていた。
    五塩化アンチモンの加水分解によってアンチモン酸を調製し,塩素イオンのなくなるまで冷水で洗浄した。この試料を乾燥するとカラム操作に適する塊状物が得られる。
    この塊状物について,吸着の可逆性を検討した。アンチモン酸へのカリウムイオンの吸着は塩化カリウム溶液の濃度の増加とともに増加し,そのときのpHは吸着したカリウムイオンと等しい当量の水素イオンを遊離するために減少する。
    吸着したカリウムイオンは硝酸または硝酸アンモニウム溶液によって脱着される。カリウムイオンの分布係数(Rd)は水素イオン濃度[H+]またはアンモニウムイオン濃度[NH4+]によって変化し,そのlog Kdとlog[NH+]またはlog[NH4+]は(-1)の直線関係を示し,二つの1価陽イオン間でイオン交換平衡が成立することがわかった。
    したがって,このアンチモン酸へのカリウムイオンの吸着-脱着は明らかにイオン交換反応に基づくことがわかった。
  • 川口 浩
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1179-1181,A67
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本邦産のカオリン粘土についてホウ素含有量,および鉱物組成を調べ,若干の検討を試みた。その結果,カオリン粘土中のホウ素含有量は含有するカオリナイトおよびイライトと関係があり,カオリナイトの多いカオリン粘土はホウ素含有量も大きく,イライトの多いカオリン粘土はホウ素含有量も大きいことがわかった。またカオリン粘土のホウ素含有量は相当の地域差があり,ある程度の分布を認めることができる。カオリン粘土のホウ素含有量の平均値は3.7mg/kgで,さきに報告した火山岩および変成岩のホウ素含有量の平均値7.49,6.5mg/kgにくらべておよそ1/2であることは岩石圏におけるホウ素の移動を示すものとして重要な結果である。
  • 太田 直一, 寺井 稔, 大森 昌衛
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1182-1187,A67
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    東北日本の中新世,鮮新世,洪積世の地層および種々の現世環境から採集した二枚貝の貝殻中のマンガンおよび鉄の含量を定めた。
    化石貝殻のマンガンおよび鉄含量,とくに中新世のものの鉄含量は変動が大きい。化石貝殻のマンガンの平均含有量は,洪積世を除けば統計的に現世貝のそれと差異がなかった。
    三つの種属の貝殻の平均のマンガンおよび鉄含量は,つぎのとおりである。
    イタヤガイ科:Mn160±40ppm,Fe400±200ppm
    タマキガイ科:Mn140士30ppm,Fe90±33ppm
    サラガイ科:Mn80±30ppm,Fe70±20ppm
    一枚の化石貝殻中では,マンガンおよび鉄は内部よりも表層部に多く含まれている。化石貝殻を取り囲んでいた母岩中の両元素も定量した。
    マンガン,鉄およびマグネシウムの"fractionation ratio"を算出し,その意義を検討した。
  • 今井 弘, 中山 克己
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1187-1190,A67
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ローダミンBによる金(III)の吸光度定量法を検討し,さらに錯体の組成を決定した。
    その結果,(1)0.75N塩酸酸性溶液中から,(2)ブチルセロソルブを加えた3N塩酸酸性溶液中からそれぞれペソゼンで錯体を抽出すると金(III)を定量することができる。定量感度は(1)よりも(2)の条件の方が高くなった。また妨害金属イオンの影響を両者の方法で比較した結果,相違が認められた。
    (1)の方法を用いて,モル比法,連続変化法,Molland法から錯体組成を調べた結果,1:1錯体であることがわかった。
  • 大久保 正夫
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1191-1195,A68
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    9種類のアリル化合物を用い,四塩化炭素中のモル濃度比1/5の溶液として,γ線照射によりテロメル化反応を行なった。G値は生成テロマーに関して数十のオーダーであり,主として1:1および2:1テロマーが得られ,3:1テロマーよりも重合度の高いものはほとんど得られなかった。
    置換基の構造の相違による反応性の比較は,アリル基の二重結合が消費される反応のはやさと,テロマーの生成比との両面から行なった。全体として電子吸引性の置換基をもつアリル化合物は反応がはやいが,電子吸引性の度合と反応のはやさの順序とはかならずしも一致しない。置換基のかさ高さは反応のはやさとは関係がないが,かさ高いものほど低分子量のテロマーの生成量が増大する傾向がある。
    カルボン酸アリルエステルに関しては,反応のはやさは,安息香酸アリル>酢酸アリル>ギ酸アリルの順序となるが,これは生成するテロマーの安定性の順序と一致した。
  • 大久保 正夫
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1196-1200,A68
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    16種類のカルボン酸アリルエステルを用いて,γ線照射により四塩化炭素とのテロメル化反応を行ない,アリル基二重結合が消費されるはやさを比較した。カルボン酸の構造と反応のはやさとの関係については,1)カルボン酸残基のかさ高さと反応のはやさとの間には有意の関係が見いだされないこと,2)カルボン酸残基の電子供給性および吸引性の効果が,エステル分子の骨格を経由してアリル基のπ電子密度に伝達されるのはきわめてわずかであること,3)P-置換安息香酸類では認められない置換基効果が,P-置換フェニル酢酸類の場合に認められること,および4)α位置に水素原子をもたないカルボン酸のアリルエステルの反応が円滑に進行すること,がわかった。以上の結果から,カルボン酸アリルと四塩化炭素との反応に際して,カルボン酸残基のα位水素原子とアリル基π電子との間に相互作用があることが推論され,このC-H…π相互作用によってトリクロルメチルラジカルのアリル基二重結合への付加を抑制すると結論した。
    また,安息香酸アリルとフェニル酢酸アリルについて線量率を変えて実験を行ない,創位水素原子の効果によると考えられる結果を得た。
  • 久保田 尚志, 長谷 綱男
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1201-1205,A68
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニセアカシヤの心材成分については1931年にSchmidtらはロピネチン(VIII)を見いだし,3,7,3',4',5'-ペンタオキシフラボンの構造を与えた。Freudenbergは1954年に心材成分を再検討し,ロピネチン(VIII)のほかに新たにジヒドロロピネチン(IX)を得てその構造を明かにした。著者らはペーパークロマトグラフによって,これらの二つのフラボノイド成分以外になお数種のフェノール性成分の存在が予想されたので,それらの成分の徹底的な検索を試みて,メタノール抽出成分からβ-レゾルシン酸(I),β-レゾルシン酸メチル(II),4,2,,4'-トリオキシカルコン(III)リクリチゲニン(IV),プテイン(V),ブチン(VI),3,4,5,2'4'-ペンタオキシカルコン(VII),ロピネチン(VIII),ジヒドロロピネチン(IX)の9種の成分物質を単離し,構造を明らかにした。これらの中で4,2',4'-トリオキシカルコンおよび3,4,5,2'4'-ペンタオキシカルコンは天然から今回はじめて得られたものである。
  • 久保田 尚志, 長谷 綱男
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1206-1208,A68
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニセアカシヤの葉のフラボノイド成分には1925年服部の得たアカシイン(I)および1954年にFreudenbergの見いだしたアカセチソートリオシド(III)がある。著者らはニセアカシヤの葉のメタノール抽出液のペーパークロマトグラフから,これらの成分以外になお2種の微量フェノール性成分の存在することが予想されたので,それらの微量成分を単離し,主としてぺーパークロマトグラフによって検索を試み,アピゲニン-ビオシド(II),mp257°~258℃とアピゲニン-トリオシド(IV),mp196°~200℃を得て,その構造を明らかにした。
    さらにこれらのフラギノイド成分のほかに多量のn-ヘキサコシルアルコールを得た。
  • 吉田 弘, 猪川 三郎, 尾形 強
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1209-1211,A69
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    S-アリールキサンゲソ酸エステル(I,ROCS2--R',R=Me,Et,R'=Cl,H,Me)とEt8Nとを室温あるいは90℃以下で反応させると80%以上の収率でスルフィド(II,RS--R')が得られ,同時にCOSガスと極少量のアンモニウム塩が生成した。Iの反応性はRについてはMe>Et,R'についてはCl>H>Meの順であった。2種類のIとEt3Nとの混合物を80℃で反応させると4種類のIIが生成し,その生成傾向はつぎのような順であった。
    II(R=Me,R'=Cl)>III(R=Me,R'=H)>II(R=Me,R'=Me)
    I(R=Me)とMe3Nとを常温で反応させるとアンモニウム塩,Me4-R'(III)とMe4SCOS--R'の混合物が得られたが,後者はアセトニトリルから再結晶するとIIIを与えた。また異なったアリール基をもつIとIIとを反応させると2種類のIIが生じた。
    以上の結果から第三アミンの存在でIがIIに分解する反応は,まずアンモニウム塩が始めに生じ,それがアリール基の交換をともなって分解反応を促進するものと考えられ,この反応形式は著者らがすでに報告した。アルキルキサントゲン酸エステルと第三アミンとの反応に似ていることがわかった。
  • 吉田 弘, 猪川 三郎, 尾形 強
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1212-1217,A69
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはキサントゲン酸エステルと第三アミンとの反応について調べ,常温では第四アンモニウム塩の生成反応,高温ではジチオール炭酸エステルへの転位反応が主反応であることを報告した。本報では第四アンモニウム塩生成速度を研究しその結果を報告する。
    ベンゼン溶液中での反応速度はキサントゲン酸エステル(I,ROCS2R,),アミンについてそれぞれ1次で,全体で2次である。I(R=R'=Me)と第三アミンとの反応(15°~30℃の種々の温度で測定)はハロゲン化アルキルと第三アミンとの反応(Menschutkin反応)と類似しているが,アミンの立体障害が大きく影響していた。30℃でMe3Nと各種の1との反応からつぎのようなHammettのp値が得られた。I(R=Me,R'=C6H4X-p):p=1.65,I(R=Me,R'=CH2C6H4X-p):p=0.82,I(R=CH2C6H4-X-P,R'=Me):p+=-0.60。これらの比較的小さいp値から,アルキル-酸素結合は遷移状態では余り分極していないものと思われる。
    安息香酸や炭酸のエステルにくらべ,第三アミンとの反応でキサントゲン酸エステルが反応性に富むことは-O-C=SからO=C-S-へ転位するためと考えられる。
  • 卯西 昭信
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1217-1220,A69
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無水フタル酸とカルボン酸ヒドラジドとの反応を示差熱分析と熱重量分析で検討した。無水フタル酸と各種のカルボン酸ヒドラジド(RCONHNH2,R:CH3,C2H5,C3H7,C6H5,2-ピリジル)とからN-アシルアミノフタルイミド(II)の合成を試みた。第1段階は無水フタル酸とカルボン酸ヒドラジドとから発熱反応により1-アシル-2-(o-カルボキシベンゾイル)ヒドラジン(I)が生成する。Iは80℃以上にたもたれるとIIが閉環反応により合成される。Iの閉環反応が吸熱反応であることがIの示差熱分析と熱重量分析により明らかとなった。IおよびIIの構造は赤外吸収スペクトルで確認された。Rが脂肪族基の閉環反応はRが芳香族基の場合よりかなり近い温度で開始する。そしてこの反応熱はRが脂肪族基の方がRが芳香族基の場合より大きい。
  • 後藤 良造, 渡辺 明, 北条 剛, 高坂 祐夫
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1220-1225,A69
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    直鎖状化合物の炭素数の増加にともなう物理的性質の相互関係を明らかにする目的で,これまでほとんど合成のなされたことがなかった一連の直鎖状高級第一アミンの合成を行なった。アミンの合成には,偶数炭素数の直鎖状高級脂肪酸を原料として用い,偶数アミンは酸アミドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)によって還元して,また奇数アミンは酸アミドのHofmann分解,Schmidt反応,ニトリルの水素化アルミニウムリチウムによる還元などを並用してそれぞれ得られた。得られたアミンC12~C28は固体であり,塩酸塩として十分精製したのちアセチル化をして確認を行なった。得られたアミンの融点を炭素数に対して記するとき,明らかに交互性のある曲線が見られた。同様にアセチル化したアミンも融点曲線を得た。
  • 立松 晃, 後藤 俊夫, 松浦 貞郎
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1226-1229,A69
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プテリジン,プリン誘導体につづいて,オキシメチルプテリジン誘導体の質量スペクトルについて検討を加え,そのフラグメンテーションが水酸基の位置によってかなり特徴的であることを認めた。また6-オキシ体,7-オキシ体は第1段階で一酸化炭素が脱離するが,M-COのフラグメントイオンは,6-オキシ体からは7H型のプリン骨核が,7-オキシ体からは9H型のプリン骨核が生成すると考えられる。そこで6-オキシ体,7-オキシ体のM-CO以下の質量スペクトルと対応するプリンの質量スペクトルとを比較した結果,7-オキシ体がよい一致を示したことから,プリンの窒素原子に結合している水素原子は,質量分析計の中のガス状の状態でも,9位に結合していると結論した。
  • 今本 捷治, 前野 泰子, 妹尾 四郎, 徳山 孝, 目 武雄
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1230-1235,A70
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    八升豆の発芽体から単離されたアミノ酸,スティゾロビニン酸およびスティゾロビン酸と同定の目的で,DL-β-(6-カルボキシ-α'-ピロン-3-イル)アラニン(I),DL-β-(6-カルボキシ-α'-ピロン4-イル)アラニン(II),およびDL-β-(6-カルボキシ-α'-ピロン-5-イル)アラニン(IIIA)を合成した。また生理的に興味ある誘導体と考えられるβ-(6-カルボキシ-α'-ピロン-3-イル)エチルアミン(IV)およびβ-(6-カルボキシ-α'-ピロン-4-イル)エチルアミン(V)の合成を行なった。I,IIは,3-および4-メチル-α-ピロン-6-カルボン酸エチルをそれぞれN-ブロムコハク酸イミドでプロムメチル誘導体(VI,VIII)とし,つぎにアセトアミドマロン酸エチルとの縮合物(VI,X)を酸性加水分解して得られた。IIIAの合成は,同様の方法では環状ラクタム(IIIB)を与えるので,別法で合成した。5-ブロムメチル-α-ピロン-6-カルボン酸エチル(XIB)を常法でヨウ化物(XIII)に変え,アセト酢酸エチルとの縮合物(XIV)をニトロソ化し,塩化スズで還元,反応混合物をそのまま酸加水分解するとIIIAが得られた。IVおよびVの合成は,それぞれ臭化物(VI)およびVIIIのヨウ化物(XIX)とマロン酸ジ-tgrt-ブチルとの縮合物(XVI,XX)を,部分加水分解および脱炭酸し,ついでSchmidt反応ののち酸加水分解すると目的物が得られた。
  • 小田 良平, 桂川 精一, 伊藤 嘉彦, 岡野 正弥
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1236-1238,A70
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミドクロリドが強力な陽性試薬で,これが解離によって生成したアミドクロリドカチオンに基づくことは,これまでの種々の研究結果から十分明らかである。
    著者らは,これまでにアミドクロリドの付加反応について一連の研究を行なってきたが,本報では置換反応に関する新しい結果について報告する。活性水素化合物による置換反応については,これまでに詳しい研究があるにもかかわらず,同じく典型的な陰性試薬である含金属求核試薬-たとえば,グリニャール試薬,水素化アルミニウムリチウムなどとの反応についてはいまだに報告がない。他の陰性置換反応と同様に考えるならば,これらの反応ではおのおの炭素陰イオンや水素陰イオンが,アミドクロリドの塩素を置換することが予想される。
  • 西江 純
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1239-1240,A70
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 前野 泰子, 妹尾 四郎
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1240-1241,A70
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 守口 良毅, 崎上 文子, 三浦 政治
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1241-1242,A71
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 藤永 太一郎, 小山 睦夫, 寒竹 嘉彦
    1966 年 87 巻 11 号 p. 1243-1244,A71
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テクネチウム(VII)の分光光度定量法としてMillerらによりジフェニルカルバジドによる方法が報告されている。チオシアン酸法などにくらべて還元剤を加える必要がなく感度も高いが,著者らの実験によればこれらの報告でなされている硫酸酸性溶液中での発色は吸収極大を示す波長が変動することと,それにともなう吸光度の経時変化がはなはだしく定量分析の目的には適当とはいえない。
    ジフェニルカルバジドを用いてテクネチウム(VIII)を分光光度法により定量するためのより安定した条件を検討した結果,塩酸酸性溶液を用いることにより満足すべき結果が得られたので報告する。
  • 1966 年 87 巻 11 号 p. A65-A71
    発行日: 1966/11/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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