過酸化ニッケルと種々のフェノール類との反応性を研究してきたが,本報では,さらにクロル置換のフェノール類についての検討結果を報告する。
P-クロルフェノールを過酸化ニッケルで酸化すると,ベンゼン溶媒中の反応ではポリマー(1)を,水酸化ナトリウム水溶液中での反応ではポリマー(J)を与える。これらは黄色の粉末で,それぞれ5000および2000の分子量をもち,フィルムの形成能をもっていない。また,寡量体として微量の2,6-ジ-(P-クロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(III),およびさらに側鎖が生長したものと考えられる物質(I),(II)を単離した。ポリマー(I)および(J)はこれらがさらに生長したものと判断した。
2,4,6-トリクロルフェノールの場合は,反応溶媒により生成物が異なる。ベンゼン溶媒中の反応では,2,6-ジクロル-1,4-ベンゾキノン(IV),2-クロル-6-(2'.4',6',-トリクロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(V),および2,6-ジ-(2',4',6'-トリクロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(VI)を得た。一方,水酸化ナトリウム水溶液の場合の生成物はポリマー(K)であった。このポリマー(K)はポリマー(I)および(J)と同じようにベンゾキノンの2,6位にポリ-2,6-ジクロルフェニレンエーテルが生長した構造(X)と推定した。
これら生成物の構造と反応機構について検討を加えた。
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