日本化學雜誌
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87 巻, 7 号
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  • 田部 浩三
    1966 年 87 巻 7 号 p. 629-640,A35
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液における塩素化メタン(CCl4・CHCl3,CH2Cl2)および側鎖塩素化トルエン(C6H5CCl3,C6H5CHCl2,C6H5CH2Cl)の分解ならびに塩素交換に対する酸,塩基,中性塩,塩素イオンおよび親核性試薬の影響を動力学的に研究し,それぞれの反応機構を明らかにしたので,ここにそれら既報の結果を総合して論ずる。
  • 野崎 一, 野依 良治, 宍戸 圭一
    1966 年 87 巻 7 号 p. 641-651,A35
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機材料としてのポリ-p-キシリレンの重要性,ならびにその単量体p-キシリレンの不安定分子としての学術的興味から本研究に着手した。
    金属細粉の水懸濁液を用いて,臭化p-キシリレンを脱臭素することにより,ポリ-p-キシリレンを得ることに成功した。金属細粉としては還元鉄,漆原ニッケル,コバルトなどが有効である。本反応を臭化o-キシリレンに拡張し,単量体o-キシリレンの生成を証明した。
    o-キシリレン-アントラセン付加体の立体化学を検討し,原子価角のヒズミがより大きい立体配座がかえって共鳴による安定化を受ける結果,ヒズミの小さい配座よりも優越する事例のあることを示した。これと関連してベンゾシクロプタジエン-アントラセン付加体など,二,三の新しい炭素環化合物を合成した。
    アクリロニトリルのような求ジエン体,あるいはアントラセン,アクリジンなどを反応相手として,o-キシリレンの反応を検討し,この不安定分子がその発生方法に応じて異なる挙動を呈することを観察,その原因がo-キシリレンの電子状態の相違に帰せられることを推論した。
  • 荻野 一善, 妹尾 学
    1966 年 87 巻 7 号 p. 652-654,A35
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1次反応における反応の原因(刺戟)を,線型刺戟応答理論の立場から考察し,反応原系(または生成系)の濃度を結果(応答)と考えたとき,反応の原因(刺戟)は,活性分子の濃度であるとの結論を得た。
    またこの結果から1次反応における活性分子について模型的推論を試み,あわせて並発1次反応の場合についても一般化された模型を組み立てることができた。
  • 宮田 謙一
    1966 年 87 巻 7 号 p. 655-658,A35
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    粉体の表面特性の粒度依存性について研究する目的で,比表面積が0.05~150m2/gの範囲にある石英粉末試料を作製し,各試料について水蒸気吸着等温線を測定して,水蒸気吸着特性と粒度との関連性について検討した。また同時に,石英のα-β転移熱およびX線回折強度を測定し,石英含量と石英表面に存在する無定形層の平均の厚さ(D)を比表面積の関数として求めた。
    その結果,石英粉末表面のシラノール基濃度と比表面積との間には関連性がないこと,およびシラノール基濃度は試料の粉砕時間が同じ場合にはほぼ同じ値をとる傾向にあるが,シラノール基濃度と粉砕時間との間には明瞭な対応関係が存在しないことが明らかにされた。また石英含量は比表面積の増大とともに増加するが,球形粒子を仮定して石英含量から求めたDは減少することが見いだされた。
  • 植野 禎夫, 大辻 吉男, 井本 英二
    1966 年 87 巻 7 号 p. 659-665,A35
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    置換複素芳香環化合物における最高被占軌道のエネルギーおよびπ結合次数の値を環内ヘテロ原子および置換基のCoulomb積分,共鳴積分の値の関数としてHuckel法により計算した。
    最高被占軌道のエネルギーは一般にヘテロ原子および置換基のCoulomb積分の絶対値が大きくなるにつれて小さくなる。最高被占軌道のエネルギーは置換基のCoulomb積分により大きな影響を受け,他の3者の効果は小さい。環内の各位置のπ結合次数は置換基のCoulomb積分,ヘテロ原子の共鳴積分の値により大きな影響を受げる。
  • 植野 禎夫, 大辻 吉男, 井本 英二
    1966 年 87 巻 7 号 p. 665-676,A36
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    置換複素芳香環化合物において,Superdelocalizabilityの値を環内ヘテロ原子および置換基のCoulomb積分,共鳴積分としてHuckel法により計算した。
    置換基の電気陰性度がSuperdelocalizabilityの値に与える影響の大きさはSrE<SrR<SrR<SrNの順に小さくなる。
    ヘテロ原子がSuperdelocalizabilityの値に与える影響の大きさはSrN<SrR<SrEの順に小さくなる。モノ置換複素環化合物の化学反応性はSuperdelocalizabilityの値によってほぼ説明できる。
  • 植野 禎夫, 大辻 吉男, 井本 英二
    1966 年 87 巻 7 号 p. 676-681,A36
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    置換複素芳香環化合物におけるπ電子密度の値を8π電子系として環内ヘテロ原子および置換基のCoulomb積分,共鳴積分の値の関数としてHuckel法により計算した。
    5員環化合物の場合,求電子的反応を受ける位置はα-置換体ではヘテロ原子および置換基のCoulomb積分により変化するが,β-置換体ではヘテロ原子および置換基に与える積分値によってほとんど変化せず2位である。
    6員環化合物の場合,求電子的反応を受ける位置はα-置換体では主として置換基のCoulomb積分により,β-置換体ではヘテロ原子および置換基に与える積分値により変化するが,γ-置換体では各積分値によらず3位である。
  • 藤田 孟
    1966 年 87 巻 7 号 p. 681-685,A36
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来イオン交換樹脂はゾルの精製にのみ用いられてぎたが,これをゾルの調製に利用することにより,濃厚でしかも精製された酸化鉄ゾルを直接得ることができた。塩化鉄(III)水溶液をかきまぜながら,これに塩基性イオン交換樹脂を逐次加えていくと,酸化鉄ゾルが生成し,pH6.5付近で凝析を起す。しかしこれにあらかじめデキストラン(重量平均分子量5400以上)を加えておくと,凝析することなく従来知られているものよりも濃厚な(鉄濃度15~20g/l)酸化鉄ゾルが好収率で得られた。しかもこの酸化鉄ゾルはすでに十分精製された状態のもの(比電導度10-4mho・cm-1のorder)であり,あらためて透析などの精製を行なう必要はない。しかしこの酸化鉄ゾルは室温で長期間保存するか,あるいは加熱するとゼリー化を起す。グルコース,ショ糖,低分子デキストラン(重量平均分子量3300以下)の共存下で鉄塩水溶液を陰イオン交換すると,生成された酸化鉄ゾルはpH6.0~6.5においてゼリー化した。これらの事実からデキストランは本質的には酸化鉄ゾルのゼリー化を阻止する作用をもたないことが考えられる。
  • 藤田 孟
    1966 年 87 巻 7 号 p. 686-688,A36
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鉄(III)塩水溶液の陰イオン交換により調製された酸化鉄ゾルは,従来知られている方法で調製されたゾルと比較すると種々な点で異なった性質を示した。(i)電子顕微鏡写真の観察結果によると従来の沸騰法で調製されたゾル粒子は直径30~89mμ程度の球形であるが,これに対しイオン交換法で調製されたゾル粒子はよりいっそう細かく,また先端の尖った棒状をしており,幅3~5mμ,長さ10~15mμの比較的均一な大きさを有する。この酸化鉄ゾル粒子の形は,イオン交換樹脂の塩基性の強さの差異,ゾル生成時に共存する多糖類の種類には影響されない。(ii)デキストランを加えた塩化鉄(III)水溶液を陰イオン交換することにより調製した酸化鉄ゾルは,pH5.0~5.5の間に等電点を有し,それより酸性域では正,アルカリ域では負の荷電をもっており,しかもpH6.4~8.0の間ではゾルの電気泳動速度はほぼ一定であった。
  • 赤城 元男, 尼子 義人, 安積 宏
    1966 年 87 巻 7 号 p. 689-694,A36
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連のカルボニル化合物についてリン光スペクトルおよびリン光の平均寿命の測定を液体空気温度で行ない,リン光状態に関する考察を行なった。脂肪族化合物:メチルエチルケトン,クロトンアルデヒド,尿素;芳香族化合物のうちベンゼン誘導体;ペンズアルデヒド,オキシベンズアルデヒド(o-,m-,p-),ペンゾフェノン;などはn-π三重項状態から,ナフタリン誘導体:ナフトアルデヒド(a-およびβ-)はπ-π三重項状態からリン光を発することを,Δ;ES'-Tの大きさ,置換基の影響,溶媒効果などから結論した。リン光状態の立体構造についてペンゾフェノン,ベンズアルデヒドの場合について振動構造の検討から考察した。ベンゾフェノンの場合について溶媒効果,濃度効果を検討し,溶媒により,濃度効果はかなり異なることを見いだした。低濃度の場合,極性溶媒中では非極性溶媒中にくらべ,スペクトルは青方移動していた。寿命については,ΔES'-Tが小さいものは寿命も短いという傾向がある。また寿命の濃度効果についても検討した。
  • 古沢 邦夫, 蓮 精
    1966 年 87 巻 7 号 p. 695-700,A37
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    タングステン酸ゾル粒子(H2WO4)は粒子間の相互作用ポテンシャル曲線の第二極小に基づくゆるやかな可逆凝集を形成する。この凝集の形成限界イオン濃度を異なったイオン価の種々な電解質で調べるとイオン価の二乗に逆比例し,Schulze-Hardyの逆六乗則から大きくずれることがわかった。
    電解質に塩化ランタンまたは塩酸を用いた場合には異状な凝集が起った。すなわち粒子の先端と先端が付着して線状に延びた凝集,粒子の緑と縁が着いて平面状に広がった凝集が得られ,これらの現象はVerwey-Overbeekの理論で説明され,解析された。
  • 長谷部 英雄, 井上 英一
    1966 年 87 巻 7 号 p. 700-703,A37
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素および水を異なった状態で吸着させた微結晶酸化亜鉛に暗所で色素(RoseBengale)を共吸着させて量的な関係を調べ,また染色した酸化亜鉛の光導電物性を検討した。色素の吸着量は表面吸着水の存在によって増加するが,吸着酸素によっては大きく作用されないことがわかった。吸着水は表面酸素の光脱離効果をもつが,色素の存在によってその効果は抑制される。これらのことから,色素は酸化亜鉛表面で正に帯電している一部の吸着水と対をなして吸着しているものと考えた。色素によって光導電感度は増加するが,同時に酸素の光吸着が観測されたので,吸着水が光増感における電子供給源として働いているものと結論した。
  • 三木 瑛一, 石森 達二郎, 山寺 秀雄, 奥野 久輝
    1966 年 87 巻 7 号 p. 703-706,A37
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペンタハロゲノニトロシルルテニウム(III)酸ニカリウム,K2[Ru(NO)X5](X=ClまたはBr)とその重窒素置換体,K2[Ru15N.OX5]の固体試料の赤外吸収スペクトルを400~4000cm-1にわたって測定した。15N置換による移動を,Ru-N-OあるいはRu-O-Nの直線三体模型,Valence Force Field法によって計算した値と実測値とを比較した結果,ニトロシル基はルテニウムに窒素で配位していることが判明した。この結果は,従来の慣習的記述に合致し,これに実験的根拠を与えた。また550~610cm-1領域における二つの吸収帯で,高波数の方がRuN伸縮振動,低波数の方がRuNO変角振動と帰属された。試料のうちK2[Ru15N.OX5]はセミミクロ的に合成した。真空ラインを用いて,ハロゲン化ルテニウムのハロゲン化水素酸溶液(ルテニウム(III)とルテニウム(IV)が混在していると思われる)にK15NO3(15N%=92または97)から発生させた15NOを接触させて2,3日放置すると,効率よくニトロシルルテニウム(III)溶液が合成される。この溶液に小過剰のハロゲン化カリウムを加えて蒸発乾固するとK2[Ru.15NOX5]が合成される。
  • 吉野 光子, 牧 正文
    1966 年 87 巻 7 号 p. 706-709,A37
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミノ酸の金属キレート化合物について,そのキレート種の自動温度制御式ロ紙電気泳動法による分離を行なった。Toyo No.51Aを用い泳動条件は1200V,20分である。
    グリシン-銅キレート化合物の場合には,グリシンの等電点よりアルカリ側で生成するキレートは[Cu gly2]だけである。しかしながらpHが11.52では[Cu gly2]は消失して,[Cu gly(OH)2]-と考えられるスポットがみられる。酸性側のpH5.4ではグリシン-銅(II)間にキレートは生成しない。
    ヒスチジン-銅キレートの場合には,ヒスチジンの等電点よりアルカリ側では[Cu(hist)2]と[Cu(hist)(OH)2]-が共存する。また等電点では[Cu(hist)(OH)]が生成しているように推定される。pH6.43では[Cu(hist)2]の一部が解離してしまう。
  • 阿部 重喜
    1966 年 87 巻 7 号 p. 710-714,A37
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光核反応を利用してチタンおよび鉄の放射化を試み,その結果をもとにして鉄中のチタンを非破壊定量する方法を確立した。
    日本原子力研究所に設置された電子線型加速器で得られる20MeVの制動輻射を用いて,チタンおよび鉄の酸化物試料を1時間照射した。照射したチタンのγ線スペクトルでは0.16および0.51MeVに顕著な光電ピークが観測され,壊変曲線からこれらはそれぞれ(γ,p)および(γ,n)反応によって生成した47Sc(T1/2=3.43日)および45Ti(T1/2=3.07時間)に基づく光電ピークであることを確認した。照射した鉄では0.85,1.81および2.13MeVに56Mnの光電ピークが顕著に観測され,いずれも2.58時間の半減期にしたがって減衰した。
    鉄中のチタンの定量に際しては,56Mnを照射したγ線の線束強度の内部モニターとして用い各光電ピークにおける放射能計数率比(47Sc,0.16MeV/56Mn,0.85MeV)と試料中の混合重量比(Ti/Fe)との関係を求めた。両者の間にはよい直線関係が存在し,酸化鉄中のチタンを0.1%程度まで非破壊定量することができた。
  • 阿部 重喜
    1966 年 87 巻 7 号 p. 714-717,A38
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    光核反応を利用してバナジウムの放射化を試み,51V(γ,α)47Scの核反応収率について検討を行なった。
    日本原子力研究所に設置された電子線型加速器で得られる20MeVの制動幅射を用いて酸化バナジウム試料を1時間照射した。照射したバナジウムのγ線スペクトルでは0.16MeVに顕著な光電ピークが観測され,この光電ピークは壊変曲線から51V(γ,α)・47Scで生成した47Sc(T1/2=3.43日)に基づくγ線と同定された。核反応収率は鉄から(γ,p)反応によって生成する56MRの放射能強度を照射したγ線の線束強度の較正に用い,48Ti(γ,p)47Sc/51V(γ,α)47Scの相対的収率を求めた結果,35.6±O.6(20MeVのγ線の場合)の値が得られた。また47Scの0.16MeVにおける光電ピーク強度を利用するバナジウム中のチタンの定量法について56Mnを内部モニターとする方法を検討し,酸化バナジウム-酸化チタンの混合物中の数10~数%までのチタンを非破壊定量できることを知った。
  • 加藤 清, 市川 俊子, 垣花 秀武
    1966 年 87 巻 7 号 p. 718-720,A38
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    陰イオン交換樹脂粒Dowex 1-Xlを呈色の担体とし,キシリジルブル-II(以下XB-IIと略記する)を呈色試薬として樹脂点滴法によりマグネシウムの微量検出法を検討し好結果を得た。
    操作法:滴板上にマグネシウム試料液(0.1N塩酸酸性)1滴をとり,これに0.5N水酸化ナトリウム溶液,飽和ブドウ糖溶液,50%トリエタン-ルアミン溶液を順次1滴ずつ加えpH10~12となるように液性をととのえる。これにXB-IIを吸着した低架橋度強塩基性陰イオン交換樹脂粒Dowex 1-Xl[OH]形粒を数粒投入する。
    マグネシウムが存在すれば,樹脂粒はこい赤紫色~にぶ紫色となる。空試験は明るい青紫~にぶ青紫色にとどまる。本法により検出限界量0.007μg,限界濃度1:5×106を得た。ベリリウム,カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムの共存は妨害しない。アルミニウムおよび鉄(III)の妨害は隠蔽できる。
  • 村瀬 武男, 垣花 秀武
    1966 年 87 巻 7 号 p. 721-724,A38
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セシウムの微量検出法の一つに,テトラヨードビスマス酸(III)カリウム(KBiI4)により生成するセシウム複塩を鏡検分析する方法がある。著者らはこの反応をイオン交換樹脂粒と液相との界面で生ぜしめて,簡単にセシウムを検出する方法を検討した。
    試料液にまず[OH]形低架橋度強塩基性陰イオン交換樹脂粒2~3粒を加えて弱い塩基性にし,つぎに[H]形中程度の架橋度の強酸性陽イオン交換樹脂粒1粒を投入し,この樹脂粒にセシウムを交換捕捉させる。セシウムを捕捉した樹脂粒を,無色透明のガラス板上においた1滴のテトラヨードビスマス酸(III)カリウム溶液中に浸漬し,10~20倍のルーペで観察する。セシウムが存在すれば樹脂粒の表面にハン点状に美しい赤色の結晶性沈殿が生成するのを認めることができる。共存イオンがない場合,限界濃度20μg/ml(1:5×104),またナトリウムあるいはカリウムが共存する場合,限界濃度100μg/ml(1:104),限界比1:20であった。
  • 村瀬 武男, 垣花 秀武, 加藤 清
    1966 年 87 巻 7 号 p. 724-727,A38
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メチレンブルーを含んだ陽イオン交換樹脂粒を用いてモリブデンの微量検出法を検討した。
    小試験管内に試料溶液1滴をとり,これに塩酸ヒドラジン10%水溶液1滴とメチレンブルーを含んだ陽イオン交換樹脂2粒を加える。空試験として試料溶液1滴のかわりに水1滴を用いて同様に調製したものを準備する。この両試験管を沸騰水中にたもつと試料液中の樹脂粒はモリブデンの存在量に比例して急速に脱色されるが,空試験液中の樹脂粒は徐々に脱色される。
    本法において,低架橋度強酸性陽イオン交換樹脂粒(Dowex 50W-Xl[Na])がもっともよい結果をもたらした。検出限界量0.0007μg,限界濃度1:5×107を得た。また,樹脂粒の脱色される時間をはかることによって半定量が可能である。銅(II)およびクロム(III)イオンの共存は本検出法を妨害する。
  • 加治 有恒, 宮崎 幸信
    1966 年 87 巻 7 号 p. 727-734,A38
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムとクロルホルムイミド酸のアリールエステル類とから(CH3)2N-C(=S)-S-C(=N-Ar')-O-Ar(II)で示される28種のチオールイミド炭酸エステル類を合成した。IIは170℃に加熱すると容易に転位することがわかり,転位生成物(IV)のIRスペクトルではIIで認められたC=Nが消失していることや,IVが(CH3)2N-C(=S)NH-Ar'とCl-C(=S)-O-Arとからの別途合成物と同一物質であったことから,IIは熱転位により(CH3)2N-C(=S)-N(-Ar')-C(=S)-O-Arのようなチオ尿素型の構造になったものと考えられる。その転位はIIの
    が配位する機構によるのではないかと考えた。IIおよびIVはいずれも新物質である。
  • 稲村 裕
    1966 年 87 巻 7 号 p. 734-736,A39
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,2-ジベンゾイルエチレンや1,2-ジベンゾイルエタン,さらに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールの還元はすでに行なわれているが,その生成物の一つとして得られる1,4-ジフェニルブタン-1,4-ジオールには一対の立体異性体,aおよびbがあり,いずれがメソ型,いずれがラセミ型であるかが明確でなかった。著者は1,2-ジベンゾイルエタンと3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのラネーニッケル触媒による接触還元を行ない,後者からは上記異性体のジオールaおよびbを得,前者からはジオールa,bのほかに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールを得た。また水素化ホウ素ナトリウムによる還元では1,2-ジベンゾイルエタン,3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのどちらからも上記ジオールa,bのみを得た。これらの還元においては生成物の収率のうちジオールbのそれが圧倒的に高かった。またtrans-1,4-ジフェニル-2-ブテン-1,4-ジオールのラネーニッケル触媒による接触還元ではその生成物としてジオールaのみが得られた。以上の還元の結果とすでに行なわれている上記被還元物質のアルミニウムイソプロポキシドによる還元の結果からこれらの還元の機構について考察し,そこから上記2種の異性体の立体構造について推論した。
  • 杉山 登, 山田 和俊, 亘理 良子, 小山 剛司
    1966 年 87 巻 7 号 p. 737-740,A39
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    trans-ベンジリデンアセトンに紫外線を照射して得られる物質から,つぎのような物質が単離された。(1)固体状態に照射したとき,cis-trans-cis-1,2-ジアセチル-3,4-ジフェニルシクロブタン(I)47.0%;(2)液体状態に照射したとき,10.5%,all-trans-1,3-ジアセチル-2.4-ジフェニルシクロブタン(II)18.5%,cis-ベンジリデンアセトン(III)2.0%;(3)エタノール溶液に照射したとき,II5.0%,III11.0%,ジオキサン溶液に照射したとき,II 4.5%,III10.0%,増感剤としてベンゾフェノンを加えたジオキサン溶液に照射したとき,II 5.5%,III 15.0%。
    これらの結果からtrans-ベンジリデンアセトンは一重項状態に励起され,基底状態にある分子とラジカル的に反応し,幾種類かのシクロブタン誘導体を生成し,溶液状態ではこの誘導体分子のうちの1種類が解離して,cis-ペンジリデンアセトンとなるので,trans-cis異性化反応が起るものと考えられる。原料物質の反応時の状態と光化学反応による生成物の間の立体化学的関係についても考察した。
  • 杉田 実男
    1966 年 87 巻 7 号 p. 741-744,A39
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    過酸化ニッケルと種々のフェノール類との反応性を研究してきたが,本報では,さらにクロル置換のフェノール類についての検討結果を報告する。
    P-クロルフェノールを過酸化ニッケルで酸化すると,ベンゼン溶媒中の反応ではポリマー(1)を,水酸化ナトリウム水溶液中での反応ではポリマー(J)を与える。これらは黄色の粉末で,それぞれ5000および2000の分子量をもち,フィルムの形成能をもっていない。また,寡量体として微量の2,6-ジ-(P-クロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(III),およびさらに側鎖が生長したものと考えられる物質(I),(II)を単離した。ポリマー(I)および(J)はこれらがさらに生長したものと判断した。
    2,4,6-トリクロルフェノールの場合は,反応溶媒により生成物が異なる。ベンゼン溶媒中の反応では,2,6-ジクロル-1,4-ベンゾキノン(IV),2-クロル-6-(2'.4',6',-トリクロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(V),および2,6-ジ-(2',4',6'-トリクロルフェノキシ)-1,4-ベンゾキノン(VI)を得た。一方,水酸化ナトリウム水溶液の場合の生成物はポリマー(K)であった。このポリマー(K)はポリマー(I)および(J)と同じようにベンゾキノンの2,6位にポリ-2,6-ジクロルフェニレンエーテルが生長した構造(X)と推定した。
    これら生成物の構造と反応機構について検討を加えた。
  • 花屋 馨
    1966 年 87 巻 7 号 p. 745-748,A39
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-フェニル-1-テトラロン(I)は,接触還元および水素化ホウ素ナトリウムで還元するとほとんど定量的にmp66°~68℃のテトラロール(II)を生成し,水素化アルミニウムリチウムで還元したときは,IIのほかに少量のmp80°~81℃のテトラロール(III)を生成した。また,Meetwein-Ponndorfの還元ではIIIをおもに生成した。
    IIおよびIIIの赤外吸収によるOH伸縮振動スペクトル,およびII,IIIのアセチル誘導体の核磁気吸収スペクトルの検討ならびに2-フェニル-3,4-ジヒドロナフタリン(IV)のハイドロボレーション-酸化によりIIIを得たことから,IIをcis体,IIIをtrans体と決定し,Iの還元の立体化学を考察した。つまり,接触還元ではフェニル基が触媒に吸着する際の立体障害になるため,また水素化ホウ素ナトリウム,水素化アルミニウムリチウムによる還元では,フェニル基が試薬の接近に際して立体障害になるためおもにIIを生成し,Meerwein-Ponndorfの還元では生成するアルコールのエピマーが比較的容易に平衡状態に達するため,安定系のIIIをおもに生成したものと推定した。
  • 大竹 俊樹
    1966 年 87 巻 7 号 p. 748-751,A39
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    メレチトースをSnell法エステル交換反応によりエステル化して,モノ,ジ,およびトリ以上のポリパルミチン酸エステル混合物とし,メタノール-水-トリクロルエチレン系溶媒による向流分配でメレチトースモノパルミテート(MMP)を分離した。MMPは希酸による加水分解で,ツラノースモノパルミテート(TMP)とグルコースモノパルミテート(GMP)を生じることを認め,シリカゲルカラムクロマトグラフィーで両者を分離した。GMPとTMPのモル比は47:53であった。GMPは薄層クロマトグラフィーで2個のスポットにわかれ,GMPの4/5をしめるものが結晶化され6-モノパルミトイルグルコースに同定された。それゆえ,MMPの約2/5はツラノースに結合するグルコース上の第一アルコールに置換し,1/10は同じグルコースの第ニアルコールにおいて置換している。他はツラノース部分において置換しているものである。
  • 石戸 良治, 細野 彰, 藤井 清久, 菊地 靖彦, 佐藤 徹雄
    1966 年 87 巻 7 号 p. 752-756,A40
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のプロトン酸およびナプロトン酸を触媒として2,6-ジクロルプリンあるいはテオフィリンを1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノースと溶融縮合させで相当するプリンリボヌクレオシドを合成し,それらの収率から触媒能をそれぞれについて検討した。その結果,スルファミン酸,スルファニル酸,p-ニトロベンゼンスルホン酸,p-ヨードベンゼンスルホン酸,硫酸鉄(III),ピロ硫酸カリウムなどが良好な触媒であることが判明した。また,反応副生成物として系外に除かれる気体が酢酸のみからなり,その他のものとしてはD-リボフラノシルの-リボフラノシドが生成していることを明らかにした。これまでの結果から,反応機構としては二つの経路,すなわち,A)アシル糖に触媒が作用してC-1カルボニウムカチオンを生じ,これがプリン誘導体あるいはフェノール誘導体と反応する場合と,B)プリン誘導体に触媒が作用してプリン誘導体が活性化され,無触媒反応の場合と同様にアシル糖に反応していく場合とが可能であることを推論した。
  • 小田 良平, 藤田 佳平衛, 田伏 岩夫
    1966 年 87 巻 7 号 p. 756-759,A40
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチレンと数種の二置換メタンとのフッ化ホウ素・エーテル錯体または塩化亜鉛による酸触媒テロメル化を研究した。若干の場合に新しい異常付加体がかなりの収率で得られた。メトキシメチルアセタートとスチレンからは予期の1対1付加体,α-アセトキシ-γ-メトキシ-n-プロピルベンゼンが得られた。しかしながらクロルメチルアセタートは混合物を与え,その一つはγ-アセトキシ-n-プロピルベンゼンであることがわかった。ジエチルアミノメチル-n-ブチルエーテルとスチレンからは,γ-エチルアミノ-n-プロピルベンゼンが得られたが,これは最初に生成する正常付加体から熱分解でできたものである。Lewis酸による二置換メタンの開裂の方向について,カルボニウムイオンと錯アニオンとを安定化する置換基効果から論議した。
  • 表 美守, 藤沼 好守, 郭 坤土, 杉山 登
    1966 年 87 巻 7 号 p. 760-762,A40
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    インドリン-2-カルボン酸の合成法としてマロン酸合成による閉環反応またはインドール類の部分還元を検討した結果,前者の方法では目的を達することができなかったが,後者の方法によりN-アセチルィンドール-2-カルボン酸からN-アセチルインドリン-2-カルボン酸を,またN-アセチル-5,6-ジアセトキシインドール-2-カルボン酸メチルからN-アセチル-5,6-ジアセトキシインドリン-2-カルボン酸メチルが合成できた。
  • 佐々木 和弘
    1966 年 87 巻 7 号 p. 763-764,A40
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 安東 忠直, 片岡 清一
    1966 年 87 巻 7 号 p. 764-766,A40
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 古田 光夫, 原 純三, 直川 準, 英 一太, 佐藤 栄男, 上中 三男二, 小田 良平
    1966 年 87 巻 7 号 p. 767-768,A41
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 森 和亮, 木下 達彦, 久保 昌二
    1966 年 87 巻 7 号 p. 768-769,A41
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 1966 年 87 巻 7 号 p. A35-A41
    発行日: 1966/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
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