アルミナとモリブデナの組成を種々変えたアルミナ-モリブデナ触媒についてエチレンおよびプロピレンの吸着を行なうとともに, 触媒中の結合モリブデン量およびMo
5+含量をESR測定から求め, これら吸藩質の吸着能との相関性を検討した。
アルミナ-モリブデナ触媒においては森川らや助野らにより, アルミナと化学的に結合したモリブデンが存在することが報告されており, このアルミナとの結合モリブデンが水素の主要な吸着点であると認められ既報に示したが, エチレンおよびプロピレンにおいてもその吸着点はアルミナとの結合モリブデンであると考えられる。
エチレンおよびプロピレンの飽和吸着量はおのおの0. 1~8. 0, 0. 1~12. Occ/g
-1であり, 吸着熱はおのおの5. 0~10. 0, 4. 0~10. 8kca1/mol
-1であり, いずれも20mol%酸化モリブデン(VI)触媒で最大となった。また, 各触媒中のMo
5+含量とこれら吸着質の飽和吸着量の間には直線関係が成立し, 一方, 吸着熱は触媒中の結合モリブデンとMo
5+の比とほぼ直線関係が成立した。
エチレンおよびプロピレンを触媒に吸着させると, Mo
5+によるESRシグナル強度は吸着量が増すにしたがい増大した。 このことから, エチレンおよびプロピレンは触媒中のMo
6+に吸着し, 触媒がこれら吸藩質から電子を奪いMo
5+になるものと推察される。
これらのことから, アルミナ-モリプデナ触媒のエチレンおよびプロピレンの吸着能は, 触媒の結合モリブデン中でMo
5+の占める割合と密接な関係があるものと考えられる。
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