日本化學雜誌
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90 巻, 12 号
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  • 入江 遠
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1179-1195
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    紅藻(フジマツモ科)から7種の新しい含臭素化合物を単離し,それらの化学構造を明らかにした。すなわち,2種のプロムフェノール:2,3-ジブロム-4,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド〔2〕および3,4-ジブロム-5-(メトキシメチル)カテコール〔3〕;2種の含臭素セスキテルペノイド:ローリンテロール〔14〕,C15H19OBr,およびローレニソール〔17〕,C15H19OBr;および3種の含臭素環状エーテル:ローレンシン〔18〕,C17H28O3Br,ローレアチン〔19〕,C15H20O2Br2,およびイソローレアチン〔20〕,C15H20O2Br2,である。また,これらの含臭素化合物に関連のある新物質,たとえばローレン〔9〕,C15H20,およびデブロムローリンテロール〔15〕,C16H20O,などを海藻から単離した。さらにアプリシン〔11〕,アプリシノール〔12〕,およびデブロムアプリシン〔13〕が海藻の成分として見いだされた。なお,これら含臭素化合物の生合成についての試案を提出した。
  • 米沢 貞次郎, 清水 瀞, 森本 晴夫, 加藤 博史
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1196-1205
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    新しいパラメーターを採用した拡張Hükel法で,三~五員環の環状オキシド類,環状スルフィド類および環状イミン類の物理的化学的性質の検討を行なった。新しいパラメーターを用いると,すべての複素環式化合物の最高被占準位軌道は,ヘテロ原子に局在した孤立電子対軌道になり,イオン化ポテンシャルの計算値は実測の傾向を説明することができる。
    複素三員環のC-C結合距離は,シクロプロパンのC-C結合距離に比して短いが,この結合間には二重結合性は少なく,複素三員環の木飽和な性質は,C-X結合間に存在することが明らかとなった。
    つぎに,ビニル置換複素三員環化合物とプロピレンのπ軌道エネルギー,π-π励起エネルギーおよび二重結合性を比較することによって,複素三員環はメチル基よりもかなり共役能が大きいと考えられるにいたった。
    さらに,複素三員環化合物と求電子試薬による反応およびプロトン化複素三員環化合物と求電子試薬による反応について,最低空準位軌道の鷺子分布に基づき検討した。また,複素三員環化合物のプロトンー付加体の全電子エネルギーを計算し,もっとも安定な付加体の,分子構造を検討した。
    最後に,複素環式化合物のヘテロ原子上の形式荷電QXと水素結合能について考察し,QXが実測の塩基度と並行関係にあることを確かめうることができた。
  • 清水 瀞, 宮道 一夫, 加藤 博史, 米沢 貞次郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1206-1211
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アダマンタン〔1〕,アダマンテルカチオン〔2〕,ピシクロ[3.3.1]ノナン〔3〕およびピシクロ[3.1.1]ヘプタン〔4〕の電子状態を拡張Hückel法で検討した。
    多縮合環化合物のHOおよびLV軌道エネルギー,C-CおよびC-H結合の性質,およびフロンティア電子密度を検討することによって,アダマンタン環骨格はかなり安定であること,また,アダマンタン〔1〕の電子分布および反応性は,非環状炭化水素と類似することが確かめられた。
    さらに,1-アダマンチルカチオン〔2a〕とt-ブチルカチオンの電荷分布を比較することによって,1-アダマンチルカチオンの陽電荷中心炭素の2pz空軌道は,Cγ 炭素原子に属する2pz軌道と相互作用することが明らかになった。
  • 加藤 昭夫, 後藤 頼信, 川添 早苗, 和田 信二, 清山 哲郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1212-1218
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸化バナジウム系触媒によるSO2酸化機構を明確にする目的で7純V2O5によるSO2酸化速度の測定とともに,反応条件下での触媒の表面構造をV2O5蒸着膜の電導度測定と電子線回折によって調べた。
    V2O5膜の電導度測定と電子線回折から,温度450~550℃,二酸化イオウ-空気混合ガス中でのV2O5触媒の表面はV2O5とV6O13との間の組成の還元状態にあり,表面で触媒の酸化と還元が定常的に生起していることがわかった。そしてV2O5触媒による394~554℃でのSO2酸化の初速度は,触媒の酸化還元過程に定常状態法を適用してえられる速度式(a)によく一致した。
    これらの結果から,V2O5によるSO2酸化の機構はV2O5とV6O13との間の組成域での触媒の定常的な微少酸化還元サイクルであると結論した。
    なお,触媒の酸化(k1)および還元(k2)に対する活性化エネルギーとして,それぞれ26kcal/molおよび18kcal/molがえられた。
  • 野村 浩康, 加藤 重男, 宮原 豊
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1218-1222
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ボリスチレン-トルエン溶液の超音波吸収を3MHzから60MHzの周波数領城で測定したポ。測定温度は-10~50℃,試料リスチレンの分子量は30000であった。
    Δα/f2の周灘に対するプロットは単一緩和過程の曲線を示し,その緩和周波数frは溶質高分子の濃度に無関係であり,温度の上昇につれて高周波側に移動した。また一波長あたりの吸収極大μmaxは温度の上昇とともに減少した。単一緩和過程の式のB項の値は全測で一定であった。
    これらの結果から,この緩和が熱緩和であると考え,二状態モデルを仮定し,そのエネルギー差と活性化エネルギーの値をfrとμmaxの温度変化の実験値から計算し,エネルギー差ΔH0=0.41kcal/mol,活性化エネルギーΔH21=1.12kcal/molをえた。これらの値はCrank-Shaftモデルを用いた簡単な理論的計算の結果と非常によく一致した。
  • 野村 浩康, 安藤 汀, 宮原 豊
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1222-1225
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    非水溶媒中のハロゲン化アルカリの挙動を知るために,蒸気圧浸透圧法を用いて溶液の蒸気圧降下を測定した。測定温度は40℃,濃度範囲は10-3mol~5×10-2molであった。
    各種溶媒中でハロゲン化アルカリの浸透挙動は異常であった。すなわち,ベンジルやD-グルコースはいずれの溶媒中でもh/mの値は理想溶液の場合のように一定であったが,ハロゲン化アルカリの場合はいずれの溶媒中でも無限希釈で発散した。このような異常な挙動は溶媒中で溶質ハロゲン化アルカリが会合あるいは解離していることによると考え,実験値から各種溶媒中のハロゲン化アルキルの会合あるいは解離定数と活量係数を求めた。
  • 佐々木 宗夫, 大杉 治郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1226-1230
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    テトラバロゲノ-p-ベンゾキノン,なわちフルオルアニル(F4BQ),クロルアニル(Cl4BQ),プロムアニル(Br4BQ),ヨードアニル(I4BQ)とヨウ化アルカリ(ヨウ化ナトリウム,ヨウ化カリウム)との電子移動反応によってベンゾセミキノンイオンラジカルの生成する反応をアセトン溶液中で20~35℃の範囲で吸光度法により速度論的に検討し,反応速度はベンゾキノンについて一次,ヨウ化アルカリについて二次であった。温度依存性から求めた活性化エネルギー(ΔE),活性化エントロピー(ΔS)は,Cl4BQNaI: ΔE=6.8kcal/mol, ΔS=-19.4 e.u., Cl4BQ-KI: ΔE=7.6kcal/mol, ΔS=-18.6 e.u., Br4BQ-NaI: ΔE=9.7kcal/mol, ΔS=-16.6 e.u.,Br4BQ-KI; ΔE=9.8kcal/mol, ΔS=-16.3 e.u.であった。さらに,電子供与体となるのは解離イオンとしてよりもイオン対であること,電子移動反応の過程で電荷移動型錯体が中間体として生成すると考えられること,反応速度は置換ハロゲンについて,F>Cl>Br>Iの順であるが電子受容体の電子親和力と直接関連ずけることは困難であることなどについて考察した。
  • 佐々木 宗夫, 大杉 治郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1231-1239
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルコール溶液中でアルコキシイオン(RO-)とp-ペンゾキノン(BQ),2-メチル-p-ベンゾキノン(MeBQ),2-クロル-p-ベンゾキノン(ClBQ),2-プロム-p-ベンゾキノン(BrBQ)との電子移動反応によるセミキノシイオンラジカルの生成反応を10~50℃でストップド-フロウ法による吸光度の測定とESRスペクトルから速度論的に検討した。
    BQ,MeB,ClBQ,とMeO-,EtO-,n-PrO-,n-BuO-との反応では,まずそれぞれ対応するセミキノンイオンラジカルが生成しOBQ,ClBQ,とMeO-,EtO-との反応系ではアルコキシイオンの置換反応が後続または併発する。BrBQではBrSQ-の生成がいちじるしくはやく,その生成は確認できなかった。BQ,ClBQとRO-の反応速度はそれぞれについて一次であるが,MeBQとRO-ではMeBQについては一次,RO-については一次と二次の中間の次数であり,C-T錯体の中間体を仮定して反応機構を検討した。またそれぞれの反応系について活性化量を求め,反応速度とベンゾキノン類の電子親和力,溶媒のZ値の効果などの観点から考察した。
  • 平岡 賢三, 鎌田 仁, 花井 荘輔
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1239-1242
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼンを約1mmHgの圧力のもとで2450,27MHzの周波数で放電させその生成物を分析した。気体生成物としてはアセチレンがとくに多く生成するほか,エチレン,メチルアセチレン,アレン,ジアセチレン,ビニルアセチレンが主生成物であった。液体生成物としては,トルエン,スチレン,フェニルアセチレン,エチルペンゼン,エチニルトルエンがあり,固体生成物としてはナフタリン,ビフェニルのほかに多くの高分子量物質が放電管壁に生じる。これは種々の化合物の混合物であると考えられるが核磁気共鳴吸収,質量分析およびケイ光スペクトルによる分析結果から縮合多環式炭化水素化合物を多く含むことがわかった。2450,27MHzの両周波数による生成物への影響は本質的なものとは考えられずむしろ管径の違いによる影響の方が大きいことがわかった。
  • 平岡 賢三, 鎌田 仁
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1242-1245
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0.8mmHgの圧力のもとで放電しているベンゼンにヨウ素を導いた場合にいかに生成物の生成量が変化するかを検討し,さらに生成するヨウ化物を分析することによりベンゼンの放電プラズマ中における反応機構を検討した。ヨウ素の流量とともにアセチレンおよびエチレンの生成量が増加することにより,この2成分は分子過程によって生成することがわかる。C3成分である。プロビレンはベンゼンから直接分子過程で生成するのではなくアセチレンとメチルラジカルとの反応で二次的に生成する機構で説明される。アレンおよびメチルアセチレン生成の前駆体としてはベンゼンの分解によって生成するC3H3ラジカルが考えられる。この両成分の生成量はヨウ素の流量変化とともに極大値を示すが,これはヨウ化水素が生成反応へ寄与しているためと思われる。トルエンはメチルラジカルとフェニルラジカルとの再結合反応によって生成すると考えられる。ビフェニルはヨウ素の流量の増加に対してその生成量の減少が緩慢であることから,フェニルラジカル同志の再結合反応以外にペンゼンイオンあるいは励起ベンゼンの反応への寄与もあわせて考慮する必要があることがわかった。
  • 木村 優
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1246-1250
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マンガン(II)-trans-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸錯体(Mn(II)-CyDTA)と銅(II)イオンおよびコバルト(II)イオンの金属イオン置換反応速度を銅(II)イオンおよびコバルト(II)イオンのボーラログラフ限界拡散電流を用いて測定した。測定は0.04mol/lの酢酸イオンを含む酢酸塩緩衝溶液を用い,pH4.8~5.7,イオン強度0.2,温度25℃で行なった。反応は以下に示すように,錯体と金属イオンとの直接反応は起こらず,Mn(II)-CyDTA錯体の解離反応を経て進行することが判明した。
    MnCy2- + H+〓Mn2+ + HCy3- (1)
    M2+ + HCy3-〓MCy2- + H+ (2)
    ここで,Cy4-はCyDTAの4価の陰イオンを表わし,M2+はコバルト(II)イオン(Co2+)および銅(II)イオン(Cu2+)を表わす。
    Mn(II)-CyDTA錯体と銅(II)イオンの反応の場合,〓[Mn2+]<<〓[Cu2+]の関係を満足させることができた。このとき(1)式のマンガン錯体の解離反応が律速過程である。他方,コバルト(II)イオンとの反応では,〓[Mn2+]<<〓[Co2+]の関係を満足する実験条件をえることができた。この場合には(2)式の錯形成反応が律速過程である。えられた速度定数は,〓=220 l mol-1 sec-1および〓=2.8×107 l mol-1 sec-1である。
  • 後藤 正志, 石井 大道
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1250-1254
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    強リン酸(P2O577.8wt%)を溶媒および支持電解質として,白金電極を用い60~120℃の温度範囲における銀(I)の酸化および還元過程の電気化学的挙動について,クロノポテンシオメトリーによって研究した。その結果,銀(I)は100℃でそれぞれ-0.14V vs. Hg|Hg2SO4, 1.45Vの四分波電位をもつ還元波と酸化波を示した。この還元波の四分波電位は再酸化過程で生ずる波(再酸化波)のそれとほとんど差がなく,また両波の遷移時間は等しかった。このことから還元過程の電極反応は可逆的で銀(I)は金属銀にまで還元され電極上に析出するものと考えられる。同様にして酸化過程についてはその電極反応は可逆的で一電子酸化であることがわかった。60℃では銀(I)による接触酸素波であろうと考えられる第二の酸化波が現われ,この波の遷移時間は銀(I)の濃度に依存した。還元波について遷移時間の濃度および電流密度依存性を検討し,60~120℃の温度範囲において本溶媒中でもSand式が成立することを確認した。Sand式を用いて求めた銀(I)の拡散係数の対数値と絶対温度の逆数の間には直線関係がえられた。Arrhenius式から求めた拡散過程の活性化エネルギーは9.3kcal/mol,100℃での拡散係数は4.9×10-7cm2/secであった。
  • 吉川 彰一, 大前 巌, 八木 直己
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1255-1259
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,4-シクロヘキサジエンとジフェニルケテンとの反応を行ない,反応生成物とその誘導体の構造について考察した。1,4-シクロヘキサジエンとジフェニルケテンをオートクレープ中で反応させ,1 ,4-シクロヘキサジエンに対するジフェニルケテンの1mol付加物(8,8-ジフェニルピシクロ[4.2.0]オクト-3-エン-7-オン〔1〕),および2mol付加物(5,5,9,9-テトラフェニルトリシクロ[6.2.0.03,6]デカン-4,10-ジオン〔2〕,または5,5,10,10-テトラフェニルトリシクロ[6.2.0.03,6]デカン-4,9-ジオン〔3〕と考えられる)をえた。〔1〕をエタノール性水酸化カリウム溶液と反応させるとシクロブタノン環が開裂されて,2-ジフェニルメチル-4-シクロヘキセン-1-カルボン酸の2種の異性体(シス形〔4A〕とトランス形〔4B〕)がえられた。また,〔1〕を過マンガン酸カリウムのアセトン溶液と反応させると二重結合のみが酸化開裂され,4,4-ジフェニル-1-シクロブタノン-2,3-二酢酸〔5〕がえられた。
  • 庄野 達哉, 戸田 俊材, 小田 良平
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1260-1262
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,3-ジフニニル-2-シクロプロペン-1-カルボン酸塩の陽極酸化によって,非ベンゼン系芳香族化合物として安定なシクロプロペニウムカチオンの生成と,このイオンの同条件下における反応を試みた。
    まず無水アセトニトリル中,過塩素酸リチウムを支持電解質として室温で陽極酸化を行なう(流した電気量は1F/mol)と,予想どおりシクロプロペニウムカチオンめ過塩素酸塩が収率30%で単離された。メタノール中では,いったん生成したこのカチオン系中に存在する水とただちに反応して,初期生成物としてビス(2,3-ジフェニル-2-シクロプロペニル)エーテル〔3〕が75%の収がまま率でえられる。さらに大過剰の電気量を流した場合には,〔3〕がさらに酸化され,不均一化反応によってシクロプロペノン〔4〕,スチルベン-α-カルボン酸〔6〕,ジフェニルアセチレンおよびその他6種の高次生成物をつぎつぎに生成していく反応径路を明らかにした。〔3〕,〔4〕および〔6〕を別途に合成し,同条件下に陽極酸化して,上に推定した反応径路の正しいことを確認した。
  • 柘植 乙彦, 鳥井 昭美, 富田 哲郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1263-1267
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリジンカルバルデヒドとメチレンホスホランのWittig反応は進まないが,アクリジン-9-カルバルデヒドと臭化メチルトリフェニルホスホニウムのジオキサン混合液に室温で水素化ナトリウムを作用させる方法(このような方法を変法Wittig反応と呼ぶ)により,9-ビニルアクリジンが66%収率でえられた。しかし,変法Wittig反応の適用によってもペンゾ[c]アクリジン-7-カルバルデヒドからは対応するビニル体はえられなかった。一方,9-メチルアクリジンおよび7-メチルベンゾ[c]アクリジンのMannich塩基のメチオジドのHofmann減成反応は,それぞれ対応するビニル体を好収率で与えた。
    また,数種の方法による1-(9-アクリジニル)-2-アルキルエチレンの合成法を検討した。アクリジン-9-カルバルデヒドとアルキリデンボスホランの反応は進まないが,対応するボスホニウム塩を用いる変法Wittig反応では,cis-およびtrans-エチレンの混合物を与え,アルキル基がパルキーになるにつれてシス体の生成割合が多くなり,イソプロピル基ではシス体のみが生成した。一方,ジエチル-9-アクリジニルメチルポスホナートと脂肪族アルデヒドのWadsworth反応では対応するtrans-エチレン体のみが生成した。しかし,9-アクリジニルメチレンボスホランと脂肪族アルデヒドとの反応,アクリジン-9-カルバルデヒドとジエチルアルキルボスホナートとの反応はともに進まなかった。
  • 佐藤 泰夫, 高橋 知義, 戸田 晴彦, 萩谷 彬
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1267
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2β-アセトキシ-5β-コレスタン-3-オンから5β-コレスト-2-エンの新合成法を報告する。すなわち,このアセトキシケトンを水素化ホウ素ナトリウムで還元(主生成物2β-アセトキシ-3α-ヒドロキシ-5β-コレスラン),加水分解して5β-コレスタン-2β,3-ジオールにかえ,ついでジメシラートに導いた。このものをシクロヘキサノン中,ヨウ化ナトリウムと大気圧中で115~125℃,6時間処理すると,容易にメシルオキシ基は脱離を起こして,2-エン誘導体を生成することがわかった。この経路で合成すると,2β-アセトキシ-5β-コレスタン-3-オンより純粋な5β-コレスト-2-エンが55%の好収率でえられる。シクロヘキサノンのかわりに,メチルイソブチルケトン,エチレングリコール,あるいはトリエチレングリコールを用い,大気圧中でこの脱離反応を行なっても,5β-コレスト-2-エンがえられる。ただし後二者の溶媒中では少量の3-エン誘導体が副生することが判明した。
  • 福井 憲二, 中山 充, 松井 隆尚, 増村 光雄, 堀江 徳愛
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1270-1274
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Baker-Venkataraman転位反応で,3,6-ジヒドロキシ-2,4-ジメトキシアセトフェノン〔3〕の3-ベンジルエーテル〔4〕と3,4-二置換安息香酸の塩化物から,二置換安息香酸エステル〔5〕を経て,3-ベンジルオキシ-2,4-ジメトキシ-6-ヒドロキシ-ω-ペンゾイルアセトフェノン〔6〕をえた。〔6〕を無水酢酸ナトリウムで閉環して6-ペンジルオキシ-5,7-ジメトキシフラボン〔7〕に導いた。〔7〕を水素化分解して5,7-ジメトキシ-6-ヒドロキシフラボン〔8〕とし,ついで〔8〕を酢酸中塩酸を用いて部分脱メチル化反応を行なって,7-メトキシ-5,6,3',4',-テトラヒドロキシ-,5,6-ジヒドロキシ-7,3',4'-トリメトキシ-,7,4'-メトキシ-5,6,3'-トリヒドロキシ-および7,3'-ジメトキシ-5,6,4'-トリヒドロキシブラボン〔2a,2b,2c,および2d〕をえた。
    ゴマから単離した天然ペダリチンは7-メトキシ-5,6,3',4'-テトラヒドロキシフラボン〔2a〕と完全に一致した。
  • 橋本 二郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1275-1278
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フルクトースなどフラノース環を含む糖類の酸分解によって生成される緑色ケイ光物質(以下GFSと略す)は,410mμ付近に極大値をもつ光を吸収して510mμ付近に主波長をもつ緑色のケイ光を発することが明らかになった。
    1) この410mμの吸収帯および緑色のケイ光はカルボニル試薬との反応で短波長に移動する。2) GFSを分離した薄層板に2,4-ジニトロフェニルヒドラジン溶液を噴霧するとGFS帯は赤褐色に着色する。3) フルクトースなどが酸分解によってカルボニル基を生成することは困難でない。以上のことから,GFSはカルボニル基を含むものと推定される。
    また410mμの吸収帯は,GFSを溶解する溶媒の極性が大きくなるにつれて短波長側に移動する。この吸収帯はGFS水溶液の液性が中性,またはpH10までのアルカリ性では変化が見られないが,酸性が強くなるにつれて漸次減少し,ついには消滅する。そして新たに390mμに極大吸収が生じる。水素添加によっても吸収は消滅する。
  • 松本 昭, 大岩 正芳
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1278-1282
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イソフタル酸ジアリル(DAI)およびテレフタル酸ジアリル(DAT)の重合を,過酸化ペンゾイルを開始剤,ベンゼンを溶媒として60℃で行ない,環化重合の観点から検討した。生成ポリマーの不飽和度はモノマー濃度の減少とともに低下し,その傾向はDAIの方がDATの場合よりもいちじるしい。これは分子内環化反応に由来するものである。ところで,分子模型からはDATの場合には同一ユニット内では分子内環化反応の可能性は考えられない。それにもかかわらず,その重合において分子内環化反応の生起が推察され,したがって反応したアリル基を2個以上隔てて存在する未反応アリル基との反応による環化反応が生じているものと考えられる。重食速度および重合度もまたモノマー濃度の減少とともに低下した。モノマー固有の環化能を示すところの未環化ラジカルの環化反応と生長反応の速度定数の比KcはDAIでは1.6mol/l,DATでは0.6mol/lと求められた。
  • 川垣 恭三, 門木 宏道, 大野 正明
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1282-1283
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 表 美守, 深田 直昭, 杉山 登
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1283-1285
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
  • 野村 浩康, 加藤 重男, 宮原 豊
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1285-1286
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 安達 和郎
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1287-1288
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 小坂 丈予, 岩井 津一, 笠井 光博, 白井 俊明, 浜田 修一
    1969 年 90 巻 12 号 p. 1288-1289
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 12 号 p. 1290a
    発行日: 1969年
    公開日: 2011/05/30
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    日化, Vol.90, No.10 (1969) 表紙, 著者名, (誤)朝倉祐治 (正)朝倉祐次
  • 1969 年 90 巻 12 号 p. 1290b
    発行日: 1969年
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 12 号 p. 1290c
    発行日: 1969年
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 12 号 p. 1290d
    発行日: 1969年
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 12 号 p. 1290e
    発行日: 1969年
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 12 号 p. A65-A70
    発行日: 1969/12/10
    公開日: 2011/05/30
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