寒天ゲルがpHに対してどのように影響されるかを調べることを目的として,鎖式応力緩和計を用いて応力緩和実験を行なった。寒天濃度は2.46±0.03wt%で,温度50℃で測定したpH2.4~9.8の範囲の試料ゲルについて,約25.0~6.5℃の温度範囲にわたり応力緩和曲線を求めた。これらの緩和曲線を3個のMaxwell模型を並列にした力学模型で解析した。
その結果,寒天ゲルの主要三次元構造に対応する弾性定数E
1および緩和時間τ
1は,pHが3.8から9.8までほとんど一定値を示した。しかし7pHが3.2になるとE
1の滅少が表われ,pH2.4で急激に低下した。τ
1はE1にくらべてその滅少は緩慢である。
一方,アルカリ側ではpH9.8までほとんど一定値を示した。
寒天ゲルのゲル形成能力は,寒天分子鎖の溶媒和性と結晶性の一定の均衡関係に依拠するとされているが,以上の結果によれば上記pH範囲ではそれがほとんど変化せず,すなわち架橋点の数密度がpH4~10までの範囲ではほとんど変化ないと考えられる。
また,pH3.2~9.8までの寒天ゲルから求めた見かけの活性化エネルギーの平均は約5.4kcal/molであった。この値は既報の寒天水溶液ゲルの広範囲の濃度から求めた見かけの活性化エネルギーとほぼ同じ値である。
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