日本化學雜誌
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90 巻, 9 号
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  • 永田 亘
    1969 年 90 巻 9 号 p. 837-856
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,著者らの開発した新しいヒドロシアン化反応の天然物,とくに多環式構造を有するステロイド,ジテルペン,あるいはそれらのアルカロイドの合成に対する有用性について述べている。新ヒドロシアン化法によって,多環式構造を有する共役ケトン体から目的に応じ立体的に有利に核間位にシアン化されたケトン体をえることができる。核間位シアン基は,他の種々の炭素置換基に変換されるし,またそれによって天然物に多く含まれる橋状環系の合成も容易に行なわれうる。したがって新ヒドロシアン化反応は一般に困難と考えられている核間位に炭素置換基を導入したり,また橋頭炭素の一つを核間位に有する橋状環の組み立てめ問題に一つの有力な手段を提供している。新ヒドロシアン化反応は,アルキルアルミニウム (R3Al) とシアン化水素の組み合わせ (A法) ,あるいはシアン化ジアルキルアルミニウム (R2AlCN) (B法) によって行なわれ,そのヒドロシアン化の効率は高い。核間位シアン化の場合の立体経路は用いる共役ケトンの構造に左右されるが,trans-または,cis-シアソケトンのいずれが優先的に生成するかは,多くの例からえられた経験則,あるいは理論的考察からある程度予知することができる。つぎに核間シアソ基の他の炭素置換基,たとえばカルボキシル基,イミノメチル基,アミノメチル基,ホルミル基,メチル基,ヒドロキシメチル基への適切な変換法が確立された。またシアンケトンから他の橋状環,たとえばピロリジン,ピペリジン,ピシクロ [3.2.1] ,あるいは [22.2]オクタン環系の組み立て法も研究された。この結果を応用して種々の天然物,たとえば二三のプレグナン系ステロイド,またはそのアルカロイドであるラチホリン,ジテルペンアルカロイドであるアチシン,ガリン,ビーチンなどが合成された。
  • 小出 力, 蒔崎 忠雄, 福井 康之
    1969 年 90 巻 9 号 p. 857-860
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,3-ジクロル-2β-ジメチルブタン〔1〕と2,2-ジクロル-3,3-ジメチルブタン〔2〕との転移点を示差熱解析ならびに誘電率測定によって再検討した。その結果,著者らが以前に報告した転移点には誤りのあることが明らかになり,正確には〔1〕の転移点は78℃ ならびに3℃,〔2〕のそれは-95℃ であることを確かめた。〔1〕の誘電率は-78℃ の転移点ではほとんど変化を示-さなかったが,3℃ の転移では大きい変化を示し,後者は回転転移であることがわかった。〔2〕の誘電率は転移点で顕著な変化を示し,回転転移の一種であることが結論された。
  • 日野原 忠男
    1969 年 90 巻 9 号 p. 860-864
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジフェニルアミンは光照射により分子内環化をしてカルバゾールを生成する。この反応の起こる状態にういては,励起一重項説と三重項説があるが,この点について酸素効果,三重項一三重項間のエネルギー移動による反応の抑制および閃光法を用いて若干の検討を行なった。
    ジフェニルアミンの反応は酸素により顕著な抑制をうけるが,そのN-メチルやN-フェニル置換体では酸素による抑制は顕著ではない。このような挙動の差はN-置換で起こり,核置換では起こらないことがわかった。消光法により求めた反応状態の寿命はジフェニルアミンはながく6×10-7secで他の二つのアミンは約2×10-8secで短かった。後者はケイ光の消光から求めたケイ光状態の寿命と一致し,反応状態が励起一重項状態である可能性が示された。ジフェニルアミンの反応状態の寿命はこれよりながく三重項状態と考えられた。ピフェニルによる抑制実験でも同様な結果がえられ,ジフェニルアミンについては三重項説がほぼ確定された。N-メチルおよびN-フェニル置換体についても,三重項状態を経由すると考えた方がよいことが閃光法による検討から結論された。
  • 米沢 貞次郎, 清水 瀞, 森本 晴夫, 加藤 博史
    1969 年 90 巻 9 号 p. 865-872
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕,トリシクロ[4.2.0.02,5]オクタン〔2〕,1,5-シクロオクタジエン〔3の〕,トリシクロ[3.3.0.02,6]オクタン〔4〕およびキュパン〔5〕の電子状態と反応性を拡張Hückel法で検討した。
    ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕について,図1の角θを変化させて検討した結果,全電子エネルギーはθ=120°のときもっとも安定となり,この構造は,ピシクロ[1.1.0]ブタンの安定な構造における角θとほぼ一致している。しかしながら,化合物〔1〕のHOエネルギー,LVエネルギー,両軌道における電子分布およびAO bond populationを検討した結果,ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕は,ピシクロ[1.1.0]ブタン環に存在したような不飽和な性質を期待することはできない,という結論に達した。
    つぎに,全電子エネルギー,イオン化ポテンシャルおよび電子親和力の計算値から,化合物〔2〕は,シス体よりもトランス体が安定であり,化合物〔3〕は,シス,シス-イス形がもっとも安定とえられた。
    化合物〔1〕~〔4〕およびその同族体の光分解反応および光塩素化反応について,その電子分布から実験事実を説明することができた。
    最後にキュバン〔5〕について,四員環平面とC-H結合のなす角ηがC-C骨格の安定性に大きく依存することを確かめている。
  • 大杉 治郎, 原 公彦
    1969 年 90 巻 9 号 p. 873-876
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種類の結晶構造の異なるα,α-ジフェニル-β-ピグリルヒドラジル (DPPH) の電気抵抗とその温度依存性を,六面体型アンピル装置による70kbarまでの高圧下で測定した。ベンゼン分子を1:1の割合で含むDPPH-Iは高い抵抗値と小さな伝導の活性化エネルギーを持つ。三斜晶系のDPPH-IIの方が斜方晶系のDPPH-IIIよりも低い抵抗値を示す。これは前者がより密な構造であることに起因する。それぞれの活性化エネルギーの圧力依存性にも差が観測された。これには分極エネルギーが大き数寄与をしているとみなされる。
  • 佐野 〓, 匹田 茂行, 植野 泰夫
    1969 年 90 巻 9 号 p. 876-879
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    食塩 (1%) 水溶液に界面活性剤 (ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル) を添加した噴霧溶液をネビュライザーから霧化し,これを容量約0.23m3のスモークチャソバーに導いたのち,粒度を測定して界面活性剤添加の影響を調べた。粒度の測定にはポリビニルアルコール膜法を用いたが,この方法によって直径0.3μの霧粒子まで測定することができた。霧の粒度は界面活性剤の濃度の増加とともに減少し,臨界ミセル濃度以上でほぼ一定となった。これについて実験式を求めたところ,霧粒子の平均直径は噴霧溶液の表面張力の平方根に比例することがわかった。
  • 渡辺 昌, 藤井 明, 阪森 行雄, 玉井 久子
    1969 年 90 巻 9 号 p. 880-884
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    卵黄から単離したリン脂質ホスファチジルコリン (PC),ホスファチジルエタノールアミン (PE),あるいはスフィンゴミエリン (SM) をメチルイソブチルケトンに溶かし,これと無機電解質水溶液との界面の電気毛管現象から,これらのリン脂質の界面等電点pHiを求めた。まず,水相が10-4mol/l硝酸カリウムの場合,PCのpHiは3.3で,同じ組成のエマルションの電気泳動測定から求めた等電点と一致した。一般に,水相の電解質濃度が低下すると,pHiは電解質の種類に無関係な一定値に近づき,その値はPC,SM,PEでそれぞれ3.1,2.3および1.4であった。一方,電解質濃度が増すと,pHiが変化する。たとえばトリウム塩についていえば,PCやSMではpHiが低下するが,PEの場合には逆に増大した。前者はトリウムイオンの吸着による界面電位の増加に基づく界面のpH変化であり,後者は界面のリン脂質分子のリン酸基における水索イオンと金属イオン結合のせりあいによるものと考えられる。
  • 岩島 聰, 大野 公一, 梶原 峻, 青木 淳治
    1969 年 90 巻 9 号 p. 884-888
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    コロネンをえるには種々な合成法が報告されている。しかし,いずれの合成法でも不純物としてペンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレンが微量混入してくることがさけられない。
    一方,高温タールピッチから抽出分離したコロネン中にも前記不純物を含め多種類の炭化水素が混入してくる。したがって,これらの方法でえたコロネンの光学的性質,とくに不純物の混入に敏感なケイ光の測定は行なうことができない。光学的性質を検討しうる試料をえるためには,不純なコロネンを無水マレイン酸,クロルアニルとともに3時間以上処理し,不純物をカルボン酸無水物として分離除去することによってえられる。
    この方法によって精製したコロネンは淡黄色の針状結晶で青緑色のケイ光をもつが,そのケイ光はきわめて弱い。その蒸着簿膜のケイ光スペクトルは,室温で528mμ付近,窒索温度では440mμ付近に極大位を示す。
    ケイ光スペクトルの測定から試料中の不純物 (ベンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレン) の濃度は少なくとも10-6mol/mol以下におさえることができることが見いだされた。
  • 大杉 治郎, 北村 揚一
    1969 年 90 巻 9 号 p. 889-894
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶液中のイオンと中性分子種の間の化学平衡の移動にともなう体積変化は,溶媒を誘電率Dの一様な媒体と考えて,電荷q,半径rの一つのイオンについて,ΔV=-(q2/2rD2)⋅(dD/dP) で与えられる。これらの値は水溶液中の多くの化学平衡について実測され,その大きさは上式から予測されるのとほぼ同程度である。一方,有機溶媒中での平衡については実測例がほとんどない。本実験では,種々のアルコール溶液中でのつぎの化学平衡に対する圧力効果を光学的に測定し,
    CoCl2X2+(n-2)X〓COXn2++2Cl-
    CoBr2X2+(n-2)X〓CoXn2++2Br-
    (ここで,Xは溶媒分子を示し,n=4または6である)
    ΔVの値を求めた。
    第一アルコール中では,ΔVの値は上式から予測されるのと同じオーダーの大きさ (-200~-400ml/mol) であり,圧力の増大によって増大する。一方,第ニアルコール中では,ΔVの値は比較的大きく (-30~-50ml/mol) 圧力によって変化しない。
    著者らはこれらの現象はCo2+イオンに対するアルコール分子の特異な溶媒和に原因すると解釈している。
  • 北沢 千和, 藍原 有敬
    1969 年 90 巻 9 号 p. 894-897
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    固相ではイス形のコンホメーションをとることが知られている1,4-ビス (ジシアンメチレン) シクロヘキサンのジオキサン溶液について,この分子の極性とコンホメーションとの関連を検討する目的で双極子モーメントの測定を行なった。
    まず,双極子モーメントを求めるにあたって考慮すべき原子分極の大きさを評価する目的で固相の誘電率測定を試みたが,試料を加圧成型することがむずかしく,また溶融によって分解する傾向があるため満足すべき結果がえられなかった。
    そこで,比較的に分子構造の似たテトラシアンエチレンの双極子モーメントの測定値を検討して,原子分極の大きさをPA=17.3mlと見積り,双極子モーメントを算出した。双極子モーメントの値はかなり大きく,かつ温度とともに増大する傾向を示す。μ=2.11,2.16,2.34D (40.2,50.1,59.9℃)。
    この結果から,溶液中の分子がイス形でないことは明らかである。なお双極子モーメントの温度変化より分子がflexibleなねじれ舟形のコンホメーションをとるものとして,1,4-シクロヘキサンジオンの場合と同様に,分子内運動に対するポテンシャル障壁の大きさを検討した。
  • 原田 光, 岡 好良
    1969 年 90 巻 9 号 p. 898-902
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅(II)およびニッケル(II)の4-置換カテコールキレートの安定度定数を,窒素気流中で吸光度法により,25℃,イオン強度0.1でつぎのように求めた。
    logkCuL: -COOH, 13.15; -COOC2H5, 12,86; -CHO, 12.42
    logkNiL: -COOH, 8.19; -COOC2H5, 8.05; -CHO, 7.80
    銅およびニッケルの安定度定数の系列はいずれもHammettのσ値に対してそれぞれ直線性を示した。えられた値を,配位原子として2個の酸素を有する種々の代表的な二座配位キレートとくらべてみた。
    銅およびニッケルキレートの安定度定数の差異について若干の定性的な検討を行なった。
  • 上田 一正, 山本 善一, 上田 俊三
    1969 年 90 巻 9 号 p. 903-907
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシン (以下PARと略記) によるマンガンの吸光光度定量法について検討した。PARはマンガン (II) と鋭敏に反応して榿赤色の水溶性錯体を生成し,この錯体は塩酸ヒドロキシルアミンの添加により増大す感度がる。呈色錯体はpH10.3~11.2の範囲で最大一定の吸光度を示じ,その吸収極大波長は498~500mμ,組成は[マシガン]:[PAR]=1:3である。マンガン30μg/50mlまでBeerの法則にしたがい感度,モル吸光係数は8.5×104,吸光度0.001に対するは0.00064μ9/cm2であり,分析感度はきわめて高い。アルミニウム (III),タリウム (III),水銀(I,II),金(III),オスミウム (VIII),イリジウム (IV),白金 (IV),ランタン (III)など18種はマンガソの50倍量共存しても5%以内の誤差で定量できる。
  • 庄野 達哉, 西口 郁三, 小田 良平
    1969 年 90 巻 9 号 p. 907-913
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    α-アルキルスチレンオキシド〔1a,b〕を加ギ酸分解すると,対応するアルデヒド〔2a,b〕およびモノホルミルオキシ化合物〔3a,b〕がえられた。他方α-シクロプロピルスチレンオキシド〔1c〕を加ギ酸分解すると,対応するアルデヒド〔2c〕,ジホルミルオキシ化合物の2種の異性体〔6,7〕および二量体〔8〕がえられた。おのおのの反応における生成物の分布は,反応溶媒の性格に大きく依存する。光学活性なエポキシ化合物を加ギ酸分解すると,ラセミ化したアルデヒドと一部光学活性なホルミルオキシ化合物がえられた。エポキシド〔1a,b〕を重ギ酸-d2中で加ギ酸分解しても,重水素を含むアルデヒドはえられなかった。これらの実験事実を屯つとにして反応機構を考察した。結論として,α-アルキルスチレンオキシドの加ギ酸分解に比較して,α-シクロブ旨ピルスチレンオキシドの加ギ酸分解の方がよりSN1的な性格をもつことが明らかになった。
  • 石川 延男, 林 誠一
    1969 年 90 巻 9 号 p. 913-916
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アリール-アリールカッブリング反応によって3,3',5,5'-テトラクロル-2,2',4,4',6,6'-ヘキサフルオルビフェニルを合成し,これに対するいくつかの求核置換反応について検討した。
    カップリング反応は3,5-ジクロル-2,4,6-トリフルオルフェニル-銅または-コバルトに,臭素または酸素を作用させるか,あるいは3,5-ジクロル-2,4,6-トリフルオルフェニルチタンを分解させるかして行なった。これらの金属化合物は,sym-トリクロルトリフルオルベンゼンにジエチルエーテル-ヘキサン中でn-ブチルリチウムを作用させてえられる3,5-ジクロル-2,4,6-トリフルオルフェニルリチウムの溶液に相当する金属塩化物を加えて合成した。sym-トリクロルトリフルオルベンゼンからのこのビアリールの収率は,銅またはチタン化合物を経る方法で60~70%,コバルト化合物を経る方法では20~25%であった。
    メタノ-ル性水酸化カリウム,ヒドラジンヒドラートあるいはジメチルアミンのような求核試薬はこのペルクロルフルオルビフニルとたやすく反応し,4,4し位の二つのフッ素原子が置換されて3,3',5,5'-テトラクロル-2,2',6,6'-テトラフルオル-4,4'-ジェメトキシピフェニル,-4,4'-ジヒドラジノビフェニル,あるいは-4,4'-ビス (ジメチルアミノ) ビフェニルを生成した。
  • 石若 工, 尾島 信行, 去来川 覚三, 伏崎 弥三郎
    1969 年 90 巻 9 号 p. 917-920
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-アミノ-5-クロルペンゾフェノン〔1〕と種々のイソシアナート類およびイソチオシアナート類との反応について検討を行なった。〔1〕とイソシアナート類およびイソチオシアナート類との反応かぢ3-置換-6-クロル-3,4-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-4-フェニル-2〔1H〕-キナゾリノン誘導体およびキナゾリンチオン誘導体を合成した。イソシアナート類およびイソチオシアナート類としてはつぎのものを用いた。
    RNCO,RNCS (R=CH3,C2H5,CH2CH=CH2,n-C3H7,i-C3H7,s-C4H9,C6H5,C6H4Cl(p-)および1-ナフチル)
    しかし〔1〕とイソシアン酸シクロヘキシルあるいはイソチオシアン酸シクロヘキシルとの反応から非閉環化合物であるN-(2-ペンゾイル-4-クロルフェニル)-N'-シクロヘキシル尿素〔15〕,あるいはN-(2-ペンゾイル-4-クロルフェニル)-N'-シクロヘキシルチオ尿素〔16〕がえられた。またN-(2-ペンゾイル-4-クロルフェニル)-N'-フェニル尿素〔17〕も〔1〕と当モル量のイソシアン酸フェニルとの反応からえられた。〔17〕はエタノール中で加熱還流することにより,あるいはメタノール中室温で放置することにより3,4-ジヒドロキナゾリノン〔5〕へ異性化することが明らかとなった。しかし〔15〕および〔16〕では同じ条件下でも異性化しなかった。3-置換-3,4-ジヒドロキナゾリノン類の紫外吸収スペクトルは254~255および296~304mμに極大吸収があり,またN'-置換尿素誘導体では243~252および360mμとに極大吸収があり,276~280mμに肩の吸収が存在する。
  • 橋本 二郎
    1969 年 90 巻 9 号 p. 920-925
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    さきにフルクトース,スクロース,ラフィノースなどフラノース環を含む糖類のアルコール-塩酸溶液を加熱すると容易に緑色ケイ光物質 (以下GFSと略す) が生成されることを報じた。このときGFSの生成に応じて溶液は褐色に着色する。生成するGFSの量および褐色の色素量は,糖の種類によっても,アルコール-塩酸溶液を用いたときのアルコールの種類によっても異なり,反応の初期においてはGFSの生成曲線と色素のそれとはよく類似している。またGFS,その他を含む糖の酸分解溶液を活性炭で処理することによって,ある程度色素を除いた液〔1〕をそれぞれ種々のpHに調整したのち,加熱してGFSの量と色素量の経時的変化を見た。アルカリ性,中性,および約pH4以上の比較的弱い酸性溶液中では,GFS量の減少にともない色素量は増加する。しかしpH2以下の比較的強い酸性溶液中ではGFS量の変化はきわめて小であるにもかかわらず,色素量は加熱時間にほぼ比例して増加している。また〔1〕の溶液から薄層クロマトグラフィーでGFSを単離し,それを蒸留水で抽出してえたGFSの水溶液〔2〕について,〔1〕のときと同じ操作を行なった。アルカリ性,中性では〔1〕と同じ結果がえられたが,比較的強い酸性溶液中では〔1〕と異なり,GFS量,色素量ともにほとんど変化がみられなかった。以上のことを総合してつぎのようなことが考えられる。すなわち,GFSの生成と溶液の着色との間には密接な関係がある。GFSも着色の一因子と考えられるが,他にも主要な因子の存在が考えられる。Maillard反応においては生成するケい光物質が色素の先駆体であって,着色の主要因子をなすと推論されているが,糖だけの酸分解の場合はGFSが着色の主要因子と考えるには疑問がある。
  • 上原 巳芳, 中谷 純一
    1969 年 90 巻 9 号 p. 926-929
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-サリチリデンメチルアミン,N,N'-ビス (サリチリデン) エチレンジアミン,N-サリチリデンアニリン,N-サリチリデン-アミノフェノール,N-ベンジリデン-o-アミノフェノールの加水分解速度を緩衝溶液中 (5<pH<12) においてo-,ポーラログラフ法により測定した。アゾメチシ類の加水分解はベンジリデン基のオルト位に導入した水酸基によって抑制されたが,フェニルイミノ基のオルト位に導入した水酸基によっては促進された。しかしサリチリデン基に関する水素結合の効果はアルカリ性溶液中では,解離した水酸基による加水分解促進効果におきかえられた。加水分解に関して安定なpH8~9の条件において,サリチリデンアミン類の活性化エネルギーはベンジリデンアミン類のそれよりも2~8kcal/mol大でありこの差はよく知られた水素結合エネルギーにほぼ等しかった。他方,N,N'-ビス (ベンジリデン) エチレンジアミンの加水分解速度は溶液中に金属イオンが存在してもほとんど影響を受けないが,N,N'-ビス (サリチリデン) エチレンジアミンの場合にはMn2+,Cu2+の存在下でいちじるしく減少した。六員環金属キレートの生成による加水分解抑制効果は,水素結合キレートによる同様の効果よりずっと大であった。
  • 上原 巳芳, 中谷 純一
    1969 年 90 巻 9 号 p. 930-936
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピリドキサール,サリチルアルデヒド,ピリドキサミンなどが関係するアミノ酸-ケト酸間のアミノ基転移反応における種々金属イオンの選択的推進能力を,ポーラログラフ法によって中性溶液 (50%エタノールを含む酢酸塩緩衝溶液),かつ常温 (20℃) という温和な条件下で検討した。ポーラログラフ的特性,すなわちアルジミンとケチミンの各還元電位やそれらイミンの生成速度などからつぎの事実が認められた。ピリドキサールまたはサリチルアルデヒドと各種アミノ酸との反応系はAl3+によって,またピリドキサミンとケト酸のそれはCu2+によってそれぞれ選択的にイミノ基転移反応を引き起こす。このことはさらに各反応系のUVスペクトル挙動の変化,および反応溶液中へのEDTA添加による金属錯体の分解などによっていっそう確かめられた。
  • 古田 孝夫, 石丸 寿保
    1969 年 90 巻 9 号 p. 936-939
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    いくつかの標題化合物を以下に述ぺる2種の方法で合成した。5-アルキル-DL-システイン〔5〕の合成はDL-セリンから導いたアセチル-β-クロル-DL-アラニンエチルエステル〔1〕を原料につぎの方法にしたがった。〔1〕とアルキルメルカプタン〔2〕Nの-縮合によってN-アセチル-S-アルキル-DL-システインエチルエステル〔3〕としたのち,エステルの加水分解によって〔4〕を,つぎに脱アセチル化により目的のアミノ酸〔5〕をえた。一方,α-位にメチルまたはフェニル基を持つ,S-置換-DL-システイン〔9〕は,常法であるヒダントイン法にしたがって合成した。ヒダントイン〔8〕の加水分解にはオートクレープ中でのアルカリによる加圧分解法を用いた。
  • 鈴木 周一, 八森 豊, 香山 英一
    1969 年 90 巻 9 号 p. 940-942
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    この研究では寒天によるトルイジンブルーのメタクロマジー現象と化学構造との関係,および寒天から抽出分取したアガロースおよびアガロペクチソの物性濠どについて比較検討し,寒天のメタクロマジー発現の因子を究明することとした。アガロースのトルイジソブルーに対する結合性は寒天およびアガロペクチンの場合よりもむしろ小さいことが示され,寒天によるメタクロマジーの発現に主としてアガロペクチンが重要な役割を演じていることがわかった。寒天を尿素溶液に溶解するとメタクロマジー発現の度合は尿素濃度の増加にともない滅少し,同時にゼリー強度も減少することが示された。寒天のメタクロマジー現象の発現には寒天に含まれる酸性基の存在にもよるが,寒天分子の立体構造も関与していることがわかった。
  • 高部 圀彦, 片桐 孝夫, 田中 順太郎
    1969 年 90 巻 9 号 p. 943-944
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 小松 寿美雄, 野村 俊明, 望月 文子
    1969 年 90 巻 9 号 p. 944-945
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 林 良之, 植田 茂幸, 小田 良平
    1969 年 90 巻 9 号 p. 946-947
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 古沢 邦夫, 蓮 精
    1969 年 90 巻 9 号 p. 947-948
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
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  • 1969 年 90 巻 9 号 p. A47-A52
    発行日: 1969/09/10
    公開日: 2011/05/30
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