ポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)濃厚水溶液は異常粘性を示すが,この水溶液にドデシル硫酸ナトリウム(以下SDSと略記する)を添加するとさらに異常粘性はいちじるしくなる。これらの溶液の異常粘性はPhilippoffの式で表現することができ,速度勾配gを0に外挿した粘度ηo,gを無限大に外挿した粘度η∞および降伏値に相当するパラメーターγの値が求められる。このようにして得られたηoとη∞の比,η o/η∞はSDS濃度とともに大きくなり,これはSDSとPVAの結合のために高分子の体積増加と静電的反発が起こり,流体力学的な寄与が大きくなったためと結論された。またγの値はSDS濃度,PVA濃度とともに増し,とくにPVA濃度の寄与のいちじるしいことがわかった。またPVAの一定濃度における粘度はSDSの添加によって上昇し,SDS濃度が大となればほぼ一定になることがわかった。つぎに高分子濃度の広範囲な領域にわたって粘度を測定するために,希薄溶液の場合には毛管型粘度計,濃厚溶液の場合には回転粘度計を用いて測定を行なった。その結果速度勾配を一定にすれば,(lnηrθl)/Cpと高分子濃度Cpとの関係はSDS無添加の場合には毛管型粘度計領域から回転粘度計領域にわたって一つの直線関係であらわされることがわかった。しかしSDSを添加すると,PVAの高濃度の領域では(inηrθl)/CpとCpの間に直線関係がみられるが,PVAの低濃度ではCpの低下にともなって(lnηrθl)/Cpは急激に増加する。 高濃度から外挿して求めた固有粘度[η]cと低濃度から求めた[η]Dを比較すると,後者はSDS18.5mmol/lにおいて極大となったが前者には極大点は認められなかった。Buecheの理論に基づいて緩和時聞τを求めると速度勾配gの増加につれてτは低下した。これは高速度勾配のために高分子間のからみ合いがはずれ,見かけ上,高分子間会合体の分子量が低下したのと同様の結果を与えると結論された。
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