日本化學雜誌
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  • 田中 郁三
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1027-1038
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    電子的励起状態の分子を得ようとするとき,著者らは主として光,電子,励起種(励起原子,励起分子)を用いる。また分解あるいはイオン化についても同様な方法を用いることが多い。ところがこの三つの方法によって励起あるいはイオン化した場合の類似点,相違点についてあまり明確にされていない。そこで励起に関しては励起のさいのスピン関係について主として論ずる。すなわち光と電子については多重項変化に関してまた励起種についてはスピン相関法則に関して論ずる。分解においてはH2Oを例としてOHの回転異常分布が光・電子・励起種で異なるところからその分解過程の相違について述べる。またイオン化過程について光,電子によるThreshold Lawおよび励起種によって起こる化学イオン化と増感イオン化についてセシウム,アセチレンを例として述べる。
  • 高橋 武美, 棚橋 善昭, 森山 祥彦, 露木 孝彦, 平尾 登紀子
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1039-1052
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シオノン〔40〕の化学構造の研究について述べる。シオノンからA-ノルケトン〔23〕およびジエンジオン〔24〕を導き,一方その側鎖に減成反応を行なってへプタノルケトン〔51〕を得,ついでこれからオクタノルケトン〔55〕を得た。フリーデリン〔5〕を変換してテトラノルシオナン酸メチルエステル〔33'〕(R=CH3)を得た。以上により,シオノンの構造が〔40〕と決定された。
    シオナン系化合物の核磁気共鳴スペクトルについて,メチル基の帰属を行なった(表5)。その結果は, Eu(dpm)3による常磁性シフトの実験結果によって支持される。シオナン系化合物の質量スペクトルを検討した(表6)。
    3β-ヒドロキシシオナノン亜硝酸エステル〔86〕にBarton反応を行ない,ついでこれを酸化してγ-ラクトン〔85〕を得た。また,シオノンに光反応を行なって4-エピシオノン〔40b〕を得た。
  • 久保田 尚志, 野老山 喬, 神川 忠雄, 西川 隆也, 中谷 宗弘, 前田 四郎, 安藤 和夫
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1053-1064
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    後で述べるように,スクレリンは大阪市立大学理学部の里村幸男教授により発見された特異の生物成長調節作用をもつ物質であるが,著者らはこの物質の化学構造の解明を分担することになり, 1964, 5年頃からこの仕事に参加,爾来10年近くこれに関連した仕事をほそぼそとつづけてきた。この度日本化学雑誌の刊行停止にともない総合論文がなくなるということなので,この最後の機会に,この関係の仕事をまとめ貴重な紙面を汚させていただくこととした。
    この研究は,まことにささやかなものであり,誇るような結果も得られていないが,「生物活性主成分の単離→構造決定→合成→副成分の単離,構造決定,合成→系列化合物の合成→生合成過程→生理作用→研究中に発見された反応および物質の研究」という一セットの研究が包含されており,これは1960年代の天然有機化各物研究の典型的なパターンを示すものとして,小さな記念塔的な意味はもっているように思う。
  • 坂井 紘司, 田中 昭, 古賀 元, J.-P. Anselme
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1065-1075
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    N-ニトレンを反応中間体とする反応に関する研究は,この10年間に急速に進歩し, N-ニトレンを生成させる方法としては,すでにいくつかの方法が確立されているが,著者らは, N-ニトレンが関与するものと理解されている諸反応についてもっと深い知見を得るために,適当な化合物を原料として,なるべく余計な試薬を使わないでなるべくおだやかな条件でN-ニトレンを生成させる方法について研究を進めた。この目的のために, 1, 1-ジベンジルヒドラジンおよびそのアニオンと窒化トシルとの反応を詳細に検討し,この反応がN-アジドを経由してN-ニトレンを生成し,既知のN-ニトレンを中間体とする反応を容易に起こすことを確かめた。またN-ニトロソジベンジルアミンおよびN-スルフィニルヒドラジンがベンタカルボニル鉄と反応して容易にN-ニトレンを生成することを明らかにし,これらのN-ニトレンが関与する反応の機構について考察を加えた。
    ニトレン窒素が複素芳香環窒素に結合したN-ニトレンを加熱すると,窒素ガスを放出して分解するが,ある種の複素芳香環N-ニレンは窒素の脱離による第一次の分解と同時に,複素環内の室素原子の向う側にある“背骨結合”(backbone bond)が開裂して,もっと小さい断片への分断反応(fragmentation)が起こることがある。この種の分断反応がどんな複素環についてどんな条件のもとに起こるかを検討し,分断反応が起こる原因を,開裂に関与する化学結合の本質に基づいて考察した。
  • 山口 力, 小林 龍朗, 田部 浩三
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1076-1080
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルミナ,シリカアルミナを触媒とする一級ブタノール(1-BuOH)および二級ブタノール(2-BuOH)の脱水反応を脱離法を用いて,吸着量および脱離温度のブテン異性体組成,ブテン脱離量に与える影響を検討した。その結果,以下の実験結果を得た。1) ブテン脱離量極大を与える温度領域は1-BuOH/Al2O3系では160~250°Cに,2-BuOH⁄Al2O3系では80~110°Cに,また2-BuOH/SiO2・Al2O3系では80°C以下に現われる。2) 2-BuO/Al2O3系ではブテン異性体組成はアルコール吸着量に大きく依存する。3) ブテン異性体の組成は脱離温度によって変化し,低温では平衡組成から大きくはずれる。
    これらの結果からアルコール脱水反応は触媒表面の酸強度,酸の種類および塩基点の寄与によって支配される三つの径路を経て起こり,生成オレフィンの異性体組成はいずれの径路を通るかによって定まることを明らかにした。
  • 平山 鋭, 大杉 治郎
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1081-1086
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アントラセン,ピレンのカルボニル誘導体で,最低三重項状態がππ状態である9-CH3CO-A, 9-CHO-A, 1-CH3CO-A, 1-CHO-A, 2-CH3CO-A, 3-CH3CO-P, 3-CHO-Pの光還元,光付加反応を研究した結果,光反応は9-CHO-A, 1-CHO-A, 3-CH3CO-P, 3-CHO-Pについて見られ,その他の化合物はいずれの光反応もまったく受けないことがわかった。光反応の認められた化合物についてはその量子収率を測定したが, 3-CHO-Pについては9-CHO-Aより大きい量子収率の値が得られた。さらに光還元反応の場合には種々の溶媒中での相対速度も求めた。大部分の化合物は無極性溶媒中で無ケイ光性であるが,極性溶媒中では強いケイ光が見られ,顕著な溶媒効果を示す。しかもこの現象と光化学反応性との関連はまったく見られなかった。その典型的な例は1-CH3CO-Aと1-CHO-Aでケイ光スペクトルに対する溶媒効果はまったく同じであるのに,1-CH3CO-Aはまったく光反応を行なわない。セン光光分解法を用いた測定結果についても報告する。
  • 村木 秀昭, 小林 純一, 樋口 泉
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1086-1090
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    800°C,二酸化炭素流により順次64%まで賦活燃焼した活性炭試料数種について,収着法と水銀圧入法の両法を用いてミクロ孔,遷移孔およびマクロ孔の容積変化を測定した。外部燃焼ならびに燃焼部分が細孔を形成する内部燃焼の概念を定義し,内部燃焼率, ωinと実測可能な量との間につぎの理論式を導びいた。ωin=(φs0)(1-ω)/(1/ρs0)ここでφ0とφsは原試料および賦活後の活性炭1gあたりの細孔容積, ρsは活性炭の真密度,ωは全燃焼率である。ω-ωin/ωの実験的関係を検討し,粗炭を賦活燃焼すると,主としてミクロ孔が生成し,マクロ孔は変化しないことを見いだした。
    これらの賦活過程の実験結果から,粒状活性炭の細孔構造に関して,つぎのような模型を提唱した。マクロ孔は粒状粗炭製造のさい,用いられる原微粒炭の粒間々隙であり,それは賦活によって変化せず,ただ気体移動の通路となる。ミクロ孔は原微粒炭の内部に形成されるもので,その入口はマクロ孔の壁に開いているような構造であろう。
  • 小西 義昭, 羽田 宏, 田村 幹雄
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1091-1095
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルギン酸,カルボキシメチルセルロースおよびボリアクリル酸の銀塩の紫外線による光分解過程をESR吸収法によって研究した。77°Kで得られたスペクトルは,3種の銀塩についてそれぞれ独特の超微細構造を示し,それらの温度変化から2種以上のラジカルの共存していることが結論され,光分解の機構との関連からラジカルの同定が試みられた。同定されたラジカルは,いずれも光分解初期過程において光によるカルボキシラートから銀イオンヘの電荷移動によって生じたアシロキシルラジカルの脱二酸化炭素によって生成したラジカルである。アルギン酸銀の場合については,スペクトルは分離幅18gaussの四重線からなり,このラジカルはピラノース環の第5炭素上に不対電子をもっている。この光分解の他の生成物である銀原子およびコロイド銀粒子による吸収の可能性についても検討を加え,さらに上記3種の化合物のナトリウム塩の光分解のさいに観察されるスペクトルについても考察した。
  • 稲田 悦子, 清水 澄, 大杉 治郎
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1096-1101
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2-2型電解質である硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの水溶液について,圧力1200kg/cm2まで,温度15, 25, 40°C,濃度1×10-4~10×10-4mol/lの条件で電気伝導度を測定した。各圧力下での当量伝導度Λは√Cに対して,Kohlrauschの直線関係を満足した。この直線を外挿して得られた無限希釈での当量伝導度Λ0は,圧力に対して極大値をもった。このときの圧力は,水の粘度が極小値を示すときの圧力よりも,やや高圧側に位置していることがわかった。Robinson-Stokesの方法によって求められたCa2+, Mg2+, SO42-イオンの水和数は,圧力および温度によってほとんど変化を示さなかった。イオン対, Ca2+・SO42-, Mg2+・ SO42-の解離は圧力によって促進され,温度によっては妨げられた。これらの関係から,イオン対の解離にともなうΔ〓0, Δ〓0, Δ〓0, Δ〓0を求めた。さらに伝導度によって決められた平衡定数KをFuossの理論式に代入して,イオン対最近接距離aを求めた。イオン対の最近接距離が結晶半径の和より大きいことと,得られたΔ〓の値が小さいことから,イオン対は水分子がイオンの間に介在しているものと考えられた。aは温度の上昇とともに減少したので,イオン対は熱運動が高まるにつれ,次第にイオンの間に水分子をもたないイオン対に近づくという結論を得た。
  • 竹村 富久男, 松山 礼子, 森 克恵, 永井 丸子
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1102-1107
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アコペンタアンミンコバルト(III)錯塩を開始・増感剤として,アクリロニトリル水溶液の熱重合(60°C)とアクリルアミド水溶液の光重合(30°C)を行ない,その重合開始機構を検討した。アクリロニトリルの熱重合速度は酸性領域でpHとともに増大し,錯塩濃度のほぽ0.5次に,単量体濃度の一次に比例する。また重合速度はイオン強度の増大とともに減少し,いわゆる塩効果を受ける。これは重合開始ラジカルの生成が異符号のイオン間の反応によって起こっていることを示す。錯塩の対アニオンの影響も認められ,重合開始にはイオン対よりも遊離の錯イオンの方が役割の大きいことがわかる。つぎにアクリルアミド水溶液の光重合では,470nm以上のd-d吸収帯に相当する可視光によっても重合は開始され, Delzenneの報告と異なることがわかった。重合速度は光源強度および錯塩濃度の変化にともなう吸収光量に関してほぼ0.5次,単量体濃度に関して1.7次であるが,イオン強度の影響はほとんど受けない。したがって重合開始は励起錯イオンと中性分子のアクリルアミドとの反応であり,これによってできる単量体ラジカルが生長を開始するものと考えられる。なお錯イオンによる生長ラジカルの停止反応は認められない。
  • 竹村 富久男, 森田 えり子
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1107-1112
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アシドペンタアンミンコバルト(III)錯塩[CoL(NH3)5]2+の重合開始能とその酸基配位子の種類との関係をアクリロニトリルの熱重合と光重合について水溶液系で調べた。熱重合(60°C)においてはこれらの錯塩による重合速度は配位子の種類によって相当の開きがあり,つぎの順に小さくなる。N3->NO3->Cl->OH2>Br->NO2->I-, NCS-ヨード錯塩とチオシアナト錯塩では重合はまったく起こらない。この順序はこれらの錯塩の鉄(II)イオンによる還元反応の速度定数の大きさの順と一致している。光重合(30°C)ではこれらの錯塩の増感能はつぎの順である。N3->NCS->Br->NO2->Cl->OH2>I-, NO3-ヨード錯塩とニトラト錯塩では光重合は起こらない。この順序はアンミンコバルト(III)錯塩の光酸化還元反応の量子収率の大きさと必ずしも平行関係はない。しかし,ヨウ素の重合禁止作用やニトロラジカルによる一次ラジカル停止反応を考慮すると,錯塩の増感能と光還元の容易さとの関係を理解できる。これらの錯塩による重合に対してチオシアン酸カリウムは抑制作用を示すことがわかったが,クロロ錯塩による熱重合に対してはその少量の添加がむしろ重合速度を増大させる。これは錯塩の分解によってできた塩素ラジカルが電子親和力の小さいチオシアン酸イオンとのラジカル交換でチオシアン酸ラジカルを生じ,これが重合開始に寄与するためであろう。
  • 窪田 衛二
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1112-1115
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    オキサラトビス(エチレンジアミン)コバルト (III)錯塩の塩化物,臭化物,ョウ化物および過塩素酸塩の水溶液について,電気伝導度および溶解度を25°Cで測定した。伝導度の測定結果は,1965年のFuoss-Onsager, Skinnerの拡張理論により解析し, 0,イオン間隔aL0およびイオン会合定数KAを求めた。解析の結果から,オキサラトビス(エチレンジアミン)コバルト (III)錯イオンの極限当量伝導度λ0+=22.2を得た。KAは20以下であった。また,さきのλ0+=22.2と比伝導度の測定値から,伝導度の理論式を用いて各錯塩の溶解度s(mol/l)を求め,塩化物は8.16×10-2,臭化物は3.58×10-2,ヨウ化物は2.72×10-3および過塩素酸塩は7.77×10-3mol⁄lの値を得た。
  • 柳沢 正圀, 斎藤 信房
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1116-1119
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    加熱にともなうオルトリン酸二水素セシウムの熱化学的性質を検討するために,示差熱分析を行なった。得られた四つのピーク(いずれも吸熱で低温側より,ピークI, II, III, IVとする)を考察するために,示差熱分析した試料について,示差熱分析,X線回折,化学分析を行なった。その結果,ピークIは,オルトリン酸二水素セシウム固相の相転移(232°C),ピークIIは,オルトリン酸二水素セシウムを主成分とする固相の融解(270°C),に対応し,ビークIII, IVはそれぞれ,低重合ポリリン酸塩の縮重合反応,高重合ボリリン酸塩固相の生成反応を主とする反応過程に対応することを知った。
  • 林 幸雄, 井上 喜博, 塗師 幸夫, 日比野 泰三
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1119-1126
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シリカ(SiO2)とジルコニア(ZrO2)からジルコン(ZrSiO4)を生成する過程におよぼすフッ化マグネシウムの影響を研究した。粉末あるいは錠剤の試料を加熱し,X線回折,高温におけるX線回折,赤外吸収スペクトル法などによって生成物の変化を調べた。また,錠剤を用いて拡散状態をも調べた。その結果つぎのような結論を得た。
    1) フッ化マグネシウムは,シリカとジルコニアからジルコンを生成する反応を促進する。
    2) フッ化マグネシウムはシリカに作用し,ケイ素の移動を促進する。
    3) シリカ側から拡散してきたケイ素はジルコニア表面でフッ化マグネシウムおよびジルコニアと反応して無定形の化合物を生成する。ケイ素およびジルコニウムイオンはこの無定形相を通して拡散して反応しジルコンを生成する。このさいシリカおよびジルコニアの転移にともなうHedvall効果が認められた。
  • 井桁 正己, 東 慶次郎, 塗師 幸夫, 日比野 泰三
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1126-1131
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シリカとジルコニアからのジルコン合成において,フッ化ナトリウムの添加は反応促進効果を示す。この反応促進機構を究明するために,鉱化剤添加時のジルコン合成反応過程を,常温および高温でのX線回折,DTA,赤外吸収スペクトル分析などによって解明し,その結果まずシリカ,ジルコニアおよびフッ化ナトリウムの3組成からなる無定形の中間生成物が認められた。
    つぎにこの中間生成物の作用機構を解明するために,錠剤法によって,それがシリカおよびジルコニアにおよぼす作用およびジルコンの生成する過程を調べた結果をまとめるとつぎのようになる。
    まずフッ化ナトリウムとジルコニア,シリカのおのおのの一部が約700°Cで反応して,3組成からなる溶融状態の中間生成物を生成し,それより高温になるにつれてジルコニアとシリカの転移がおき,さらにそれらは溶融状態の中間生成物中に拡散し,それを媒体としてジルコンが生成しはじめる。
  • 津波古 充朝, 本岡 達, 小林 正光
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1131-1135
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    リン酸と各種アルミニウム化合物との反応において,用いるアルミニウム原料によってその反応性はおおいに異なる。したがって同一のモル比R(Al2O3/P2O5)および加熱温度で反応させても,生成する各種リン酸アルミニウムの生成物の混合割合はやや異なる。ただし,一般的な傾向としてモル比Rが大で低温では,AlPO4ができやすく,またRが小で高温では,四メタリン酸アルミニウムAl4(P4O12)3ができやすいことが認められる。したがって,その酸性質はアルミニウム原料が異なれば,同じモル比R,同じ加熱温度でつくっても異なる。これは生成するリン酸アルミニウムによるものであるが,酸性度は主として未知物質K(20=11.2°に強いX線回折ピークを有する物質)に依存しているので,物質Kに着目するならば,両者は比例関係にある。いいかえれば,本法で得られるリン酸アルミニウムの酸性度が大きいのは未知物質Kによるものである。
    また各種アルミニウムとリン酸との反応により作製したリン酸アルミニウムの酸性度は酸強度pKaが+1.5付近に集中している。
  • 津波古 充朝, 本岡 達, 小林 正光
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1136-1141
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    リン酸二水素アンモニウムと各種アルミニウム化合物との反応は固相反応であるため,同一条件下(モル比R,加熱温度および加熱時間など)で作製しても,その反応生成物であるリン酸アルミニウムはリン酸系の場合とまったく異なり,1) とくに, 300°Cで加熱した場合は,アルミニウム原料によらず2θ=15.4, 22.8, 30.5°に強いX線回折ピークを有する物質(物質Jとする)が生成する。この物質Jは約7.5wt%のアンモニアを含んでいる。2) またα-アルミナおよびγ-アルミナ-リン酸二水素アンモニウム系で,R=1/3とし500°Cで20時間加熱すると,四メタリン酸アルミニウムAl4(P4O12)3のB型だけを単独につくることができる。3) またAl4(P4O12)3のC型が,α-アルミナおよび金属アルミニウム-リン酸二水素アンモニウム系で, R=1/2~1/4, 700°Cで加熱すると容易に生成する。C型はリン酸系においてはまったくその生成が認められなかった。4) リン酸二水素アンモニウム系において,K物質やAlPO4(Berlinite型)はまったく生成しなかった。
    これらのリン酸アルミニウムの酸性度は,酸強度(pKa)が+1.5~+6.8に散在し,その中でもpKaが+3.3~+6.8の範囲で比較的大きい。またリン酸系にくらべて,これらのリン酸アルミニウムの酸性度は非常に小さい。そして,酸性度と四メタリン酸アルミニウムAl4(P4O12)3のA型, B型, C型および物質Jとの間にはなんらの相関関係もなかった。生成温度が低いほど,酸性度が増加すること,モル比Rが小さいほど,吸湿性が大きいこと,またこれらのリン酸アルミニウムを水洗すると酸性度がきわめて小さくなることから,これらのリン酸アルミニウムの酸性発現の主なる要因は,遊離のリン酸によるBrφnsted酸であると考えられる。
  • 本岡 達, 橋詰 源蔵, 小林 正光
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1141-1144
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    摩砕によって縮合リン酸塩の構造が変化し,活性化されることを利用して,メタクリル酸メチルの重合を試み,ポリマー(PMMA)が生成することがわかった。PMMAの生成量は摩砕処理時間によって変わり,また縮合リン酸塩の種類によっても異なるが, P-O-P鎖の切断量にはほぼ比例している。したがってP-O-P鎖の切断がおもな因子であると思われ,この重合はP-O-P鎖の切断による新しいサイトが開始点となって進むものと考えられる。
  • 本岡 達, 橋詰 源蔵, 小林 正光
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1144-1147
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    縮合リン酸塩の摩砕による構造の変化いわゆるメカノケミカル効果を利用して得られたポリメタクリル酸メチル(PMMA)はポリマー中にリン原子を含んでおり,そしてその鎖長は摩砕の効果によって比較的短く,しかも分布範囲のせまいアタクティクポリマーである。また,その重合機構は縮合リン酸塩のP-O-P鎖の切断箇所を開始点とするラジカル重合であろうと思われる。
  • 藤永 太一郎, 村上 光博, 井上 竹子
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1148-1152
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ジメチルホルムアミド(DMF)中における銅(II)-2-メチル-8-キノリノール(化学式中ではMQOHと略記する)錯体の電子反応と,電極反応におよぼす陽イオンの影響について検討した。過塩素酸テトラエチルアンモニワム支持塩中では, Cu(MQO)2は滴下水銀電極のもとで, -0.647Vおよび-2.38Vvs. SCEに拡散支配のポーラログラフ波を与える。第1波は可逆的1電子還元波の性質を示し,錯体中の中心金属イオンのCu2+からCu+への遠元に対応し,第2波は錯体中の配位子の非可逆な還元波である。定電位電解の結果などから,電極反応は次式のように進み,銅(I)錯体から金属銅への還元は生じないことがわかった。
    Cu(MQO)2+e〓Cu(MQO)2-
    溶液のにリチウムイオンや,弱酸が存在すると,ポーラログラフ波は変化し,錯体は金属銅にまで還元されるようになる。これは,電解還元によって生じたCu(MQO)2-と陽イオンの間に配位子交換反応が起こり, 1価の錯体が不安定になるためと考えられる。
  • 田中 昌也, 坂尾 嘉彦, 清水 直樹
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1152-1155
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    クレゾールの3異性体の陰イオン交換樹脂に対する挙動を調べ,そのイオン交換分離の可能性を検討した。酢酸形のAmberliteCG-400にクレゾールを負荷し,塩化ナトリウム溶液で溶離を行なったところ,濃度が1×10-2mol/lまでは濃度低下とともに溶離がはやくなるが,それ以下濃度では逆に溶離がおそくなることを認めた。分配係数Kdにおよぼす有機溶媒の影響として,水-エタノール系ではエタノール量の増加とともにKd値は小さくなり,50%ではほとんど0に近づく。Britton-Robinson緩衝溶液-エタノール系でも同様の傾向がみられたが,pHが4以上ではエタノール量の増加にともない各異性体のKd値の順序に変化が起こる。またKd値はpH上昇にともないゆるやかに増大し,11~12で急激に大きくなるが,pHがそれを超えると逆に急激に低下する。各異性体のKd値は相対的に差が小さく,そのイオン交換分離にはかなりの困難があることが認められた。
  • 赤岩 英夫, 川本 博, 斉藤 隆
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1156-1159
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    8-キノリノール(HQ)によるコバルト(II)の抽出反応はCo2+3HQorg'〓CoQ2(HQ)org+2H+で表われる。この抽出系にピリジン塩基あるいはTOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)などの中性配位子(B)を加えると付加錯体CoQ2Bの生成に基づく協同効果が起こる。一般的な傾向として中性配位子の塩基性が高いほど協同効果は大きいが,オルト位に置換基をもつピリジン塩基による協同効果は立体障害のために小さいことなどを見いだした。
  • 上田 一正
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1160-1163
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    α-ベンジルモノオキシム(以下BMOと略紀する)は,コバルトと鋭敏に反応して,水に難溶な黄色の錯体を生成する。この錯体は種々の有機溶媒に抽出され,抽出種は長時間安定である。抽出溶媒としてクロロホルムを用いると波長307mμと390mμにおいて吸収極大を示し,390mμの波長を利用して微量のコバルトを感度よく光度定量できる。コバルト錯体の熟成および抽出に最適なPH範囲は9.0~9.3で,コバルト約30μgまでよい直線性を示しBeerの法則が成立する。モル吸光係数は2.25×104,感度は吸光度0.001に対し0.0026μg/cm2で,代表的コバルトの比色試薬であるα-ニトロソ-β-ナフトールとほぼ同程度の感度を有する。鉛(II),マンガン(II),カドミウム(II),水銀(II),ガリウム(III),モリブデン(VI)など16種の金属イオンは,コバルト20μgに対しそれぞれ1mg以上共存しても5%以内の誤差でユバルトの定量が可能である。
  • 宮田 晴夫
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1163-1165
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1, 1'-ジヒドロキシ-2, 2'-アゾナフタリン-4, 4'-ジスルホン酸-マグネシウム錯体のpH10における条件安定度定数はEBTの値より高い。マグネシウムのEDTA滴定の指示薬または比色試薬としてこの試薬の利用について検討した。指示薬としては試薬は非常に鋭敏な終点を示した。また試薬の吸収極大波長625nmの吸光度が錯体が錯体生成にともなって低下することを利用してマグネシウムの定量を行なった。5.0×10-6mol/l以下のマグネシウムの定量が可能である。マグネシウム濃度4×10-6mol/lに対して2×10-6mol/l程度のカルシウムの共存は測定に影響を与えない。
  • 森田 弥左衛門, 小暮 幸全
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1166-1169
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Kjeldahl法がすべてのニトロ化合物に適用されるような分解条件を明らかにするため,さきに報告した各種の方法でその反応を検討した。
    その結果,初めから高温で分解すると,ニトロ化合物はアミノ化合物より一般に親和性が低く,しかもこの場合は酸化反応に対する還元反応の割合がきわめて小さいから一般に窒素分析値は理論値より低い。これは窒素分子や窒素酸化物を生成する反応に起因するのではなく,試料の揮発または昇華による消失であることを既報の式x⁄w=K・αによって確かめた。また分解初期に炭素-窒素結合の切断によるアンモニアの生成をともなう縮合反応が起こることを明らかにした。
    結論として,分解の初期温度は可及的低温でなければならず,しかもそれがショ糖のような還元剤の存在で行なわれるならば, Kjeldahl法はN-N結合の基をもたないすべての芳香族ニトロ化合物に適用できる。
  • 山本 忠弘, 小林 新, 山本 統平
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1169-1173
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    著者らはビニルモノマーのラジカル重合の開始速度におよぼす溶液効果の研究で,つぎの溶媒中,60°C(一部の溶媒は50, 55, 60°C)におけるα,α'-アゾビスイソブチロニトリルの熱分解速度定数を必要とした。溶媒は一置換ベンゼン誘導体を主とする15種である。ベンゼン,トルエン,エチルベンゼン,クメン,アニソール,フルオルベンゼン,クロルベンゼン,ブロムベンゼン,アセトフェノン,ベンゾニトリル,ニトロベンゼン,ベンジルアルコール, 1, 2-ジクロルエタン,ο-ジクロルベンゼンおよび1, 1, 2, 2-テトラクロルエタン,分解速度は発生窒素がス量の測定から求めた。分解速度は,これら溶媒中において明らかに変化し,溶媒の極性の増加につれて増加する傾向がある。分解速度と溶媒の誘電率とのプロットは,一連の一置換ベンゼン誘導体について正の直線関係がある。ニトロベンゼン,クロルベンゼン,アセトフェノン,ブロムベンゼンおよびアニソール中の分解の活性化エネルギーはほとくど等しいが,ο-ジクロルベンゼン中のそれはやや大きい。またこれらの溶媒の粘度と分解速度との間には相関関係はない。
  • 坂下 雅雄, 竹下 常一, 大西 隆一郎
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1173-1176
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    著者らはOppenaer酸化反応の反応機構を明らかにするため,カリウムt-ブトキシドを触媒とする2-ボルナノールのショウノウヘの反応をとりあげ速度論的に検討した。その結果,この反応の律速段階は同位体効果(kH/kD=5.7)から,ヒドリド移動の段階であることが明らかになった。また酸化反応の途中ボルネオールとイソボルネオールの間でエビ化が起こらないことから, 2種の2-ボルナノールは,違う活性錯体を通ってショウノウに酸化されると結論した。
  • 土屋 正臣
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1177-1181
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    10種類の2, 6-置換-4, 5-ジアミノピリミジン誘導体とL-ラムノースの縮合を酢酸ナトリウム存在下で行なった。この結果,2, 4, 5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと2, 4, 5, 6-テトラアミノピリミジンのみ相当するボリヒドロキシアルキルプテリジンを与えた。また2, 6-置換-4, 5-ジアミノピリミジン誘導体とL-ラムノソン,メチルグリオキサールおよびフェニルグリオキサールの同様の条件下における縮合反応では相当するプテリジンの7-置換体が得られた。しかしこの実験ではオソンは一般のα-ケトアルデヒド誘導体とは異なることを示した。
  • 赤羽 徹, 勝浦 嘉久次
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1181-1185
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    紅藻類粘質物とアクリジン系塩基との相互作用について検討し,つぎのような結果を得た。まず,アクリジン系塩基は寒天成分アガロース(AG),アガロペクチン(AP)とそれぞれゲルを形成するが,その性状は前者が熱可逆性透明ゲルを,後者は緻密で不透明な熱不可逆性ゲルを形成する点で異なっている。
    上記の結果を利用し,つぎのような条件で寒天からAG, AP両成分を単離することに成功した。すなわち,寒天濃度1~1.5wt%,アクリジン系塩基濃度1~5×10-2mol/lを使用する方法で,この分離法は,ヨワ化ナトリワム法など従来のものにくらべ分離物の純度が高く,しかも操作が簡単なため多量に単離精製することが可能である。
    寒天のほかキリンサイ,フノリ粘質物についても同様の実験を試み,それぞれ2成分が分離され,アクリジン系塩基が寒天以外の紅藻類粘質物の成分分離剤として有効なことを確認した。拡散実験によるとアクリジン系塩基の寒天の尿素溶液中でAPに作用し,その挙動に異常性を与えることを認めた。
  • 花屋 馨, 小野寺 信治, 三井 生喜雄
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1186-1189
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    五員環および六員環で二重結合をendo-あるいはexo-位に有するアリルアルコール誘導体について,赤外部のOH伸縮振動スペクトル(vOH)を四塩化炭素の希薄溶液で測定した。その結果, i) 5五員環アリルアルコール誘導体では,二重結合をendo-位に有するときは3620~3621cm-1と3601~3604cm-1の2本の吸収,一方,二重結合をexo-位に有するときは3614cm-1付近の1本の吸収あるいは3598~3606cm-1に肩をもつ3614~3618cm-1の吸収を示し, ii)六員環アリルアルコール誘導体では二重結合をendo-あるいはexo-位に有する場合,それぞれ水酸基が擬エクァトリアルあるいはエクァトリアル配座にあるときは3622と3605cm-1の2本の吸収,一方,擬アキシアルあるいはアキシアル配座にあるときは3616~3618cm-1に1本の吸収を示すことがわかった。これらのvOHについて,水酸基のC-O軸のまわりの回転異性体と吸収位置および水酸基とπ電子の重なりを考慮し,水酸基の立体配座との関連を考察した。
  • 安原 富士子, 新井 万之助, 山口 真守
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1189-1193
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    (一)-メントン〔1〕に2molの塩素ガスまたは塩化スルホニルを作用させて, mp93.5~94°Cの〔2〕, mp71~72°Cの〔3〕, mp55~56°Cの〔4〕およびmp51~52°Cの〔5〕の4種の2, 4-ジクロルメントンを得た。これら異性体のIRスペクトル, NMRスペクトルおよびORDを測定し,それぞれ対応する立体配置を決め,その立体配座についてもそれぞれ解析した。
    塩素化剤として塩化スルホニルを使用した場合には,生成物は主として塩素がトランスに置換した異性体〔4〕および〔5〕であった。また塩素ガスを使用すると,低温(40°C以下)では主としてシス異性体〔2〕および〔3〕が,高温(80°C)では主としてトランス異性体が生成する。臭素による臭素化の場合には低温でも1種のトランス異性体が得られたのみであった。
  • 曾根 澄, 安部 行太, 及川 卓慈
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1193-1198
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    チオフェンポリカルボン酸を,おもに比較的簡単なチオフェン誘導体のクロルメチル化物の酸化によって得る方法について検討した。すなわち, 2, 5-ジメチルチオフェン, 2-チオフェンカルボン酸メチルのビスクロルメチル化物,および3-チオフェンカルボン酸メチルの5-位クロルメチル化物の直接酸化によって,それぞれ2, 3, 4, 5-チオフェンテトラカルボン酸, 2, 3, 5-チオフェントリカルボン酸, 2, 4-チオフェンジカルボン酸を合成した。2, 3-,および3, 4-チオフェンジカルボン酸は, 2, 5-ジクロルチオフェンから,それぞれ, 5-クロル-2, 3-チオフェンジカルボン酸, 2, 5-ジクロル-3, 4-チオフェンジカルボン酸を経て,これらの脱塩素化によって得た。これらのチオフェンポリカルボン酸を得る過程において,チオフェン核の反応性に関連して二三の興味ある結果を得た。また,アセチレンジカルボン酸ジメチル,マレイン酸ジメチル,アクリル酸メチルとイオウの加熱閉環によるチオフェンジカルボン酸およびテトラカルボン酸の生成反応についても再検討を加えた。
  • 松浦 輝男, 堀中 章男
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1199-1201
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    モノテルペンの(+)-プレゴン〔1〕を出発物質として,〔1〕→〔2〕→〔4〕→〔5〕→〔6〕→〔7〕→〔9〕+〔10〕の径路を経て,最終生成物としてジヒドロカジノールに相当するセスキテルペンアルコールの2種の立体異性体〔9〕と〔10〕を得た。立体構造は5-メチル-8-イソプロピル-2-デカロン〔7〕が負のCotton効果を示すことおよび途中の反応過程を考慮して推定した。
  • 岡本 正義, 高橋 不二雄
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1202-1205
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イシダゾール-各種キノン-アセトニトリル系の吸収スペクトルおよび導電率を測定し,電荷移動錯体が生成していることを確かめた。各系の吸収スペクトルは時間の経過とともに変化し,導電率は増加する。さらに長時間放置すると沈殿が生成することを認めた。各系の電荷移動錯体による吸収極大波長は,p-ベンゾキノン:370mμ, 2,6-ジクロル-p-ベンゾキノン:455mμ,クロルアニルとプロムアニル:450mμ,2,3-ジクロル-5,6-ジシアン-ρ-ベンゾキノン:590mμである。組成モル比はイミだぞール:各種キノン=2:1である。
  • 初井 敏英, 的野 真弓, 柳 澄
    1971 年 92 巻 12 号 p. 1206-1210
    発行日: 1971/12/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    21種の2-(置換フェニル)フランを合成して,そのNMRスペクトルを比較した。2-(2-クロルおよびプロムフェニル)フラン〔1fおよび1h〕の3-位の水素の化学シフトは, 2.93τおよび2.90τであり,そのバラ異性体(3.42τおよび3.40τ)や他の2-(-置換フェニル)フランにくらべて異常に低磁場シフトしていることが認められた。また2-位に塩素をもち6-位に置換基をもたない2-(ジ-およびトリクロルフェニル)フランについても同様の低磁場シフトが認められたが, 2-(6-置換-2-クロルフェニル)フランの場合にはこのような低磁場シフトは認められなかった。また〔1f〕のNMRは温度依存性を示し,これらからフラン環の3-位の水素とハロゲン原子の間の分子内水素結合の存在が示唆された。
  • 1971 年 92 巻 12 号 p. 1228
    発行日: 1971年
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
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