日本化學雜誌
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92 巻, 1 号
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  • 井上 元道
    1971 年 92 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    一次元格子や二次元格子の磁性を調べ,スピン相互作用の機構を明らかにするために, CuX2L型の錯塩(X:ハロゲン化物イオン, L:複素環化合物),トリハロゲノ銅(II)酸塩,ギ酸銅(II)無水物,ペンタフルオロマンガン(III)酸塩およびNi(NCS)2L2型錯塩(L:チオ尿素とその誘導体)について,磁化率を4.2~300°Kの温度で測定した。磁化率の温度変化から, CuX2L,ぺンタフルオロマンガン(III)酸塩, Ni(NCS)2L2の一次元鎖内の相互作用エネルギーを決定した。トリハロゲノ銅(II)酸塩の磁化率の温度変化を解析するために,変形一次元格子についての磁化率の理論式を誘導した。ペンタフルオロマンガン(III)酸アンモニウム, Ni(NCS)2L2,ギ酸銅(II)無水物の青色変態では,鎖間や層間のスピン相互作用に基づく長距離秩序状態への転移が見いだされた。 CuX2L,ギ酸銅(II)の陽子磁気共鳴には,等方的Fermi接触項シフトが観測された。その超微細結合定数から配位子の原子上のスピン密度を決定して,超交換相互作用の機構を明らかにした。
  • 小高 正敬, 窪田 衛二, 森 芳弘, 横井 政時
    1971 年 92 巻 1 号 p. 18-20
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1-プロパノール-水混合溶媒中におけるアンモニア,水酸化ナトリウム,塩化アンモニウムの電気伝導度を25°Cで測定した。水酸化ナトリウムと塩化アンモニウムの測定結果はFuoss-Onsagerの拡張理論(1959)によって解析し, 0,最近接イオン間隔aJを算出した。また両電解質ともに80wt%1-プロパノール混合溶媒中においては会合が認められ,KAの値は水酸化ナトリウム~7,塩化アンモニウムで33である。アンモニアの解離定数Kbは, Onsagerの極限理論から解離度を求めて算出した。Kbは20, 40, 60, 80wt%の各1-プロパノール混合溶媒中で,それぞれ3.73×10‐6, 1.33×10-6, 4.46×10-7, 1.29×10-7である。その結果は,エタノール-水混合溶媒中の酢酸の解離におけるlogKb-1/Dのプロットとよく一致している。
  • 合田 譲, 樋口 精一郎, 田中 誠之, 鎌田 仁
    1971 年 92 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    PhnX型分子の場合,個々のベンゼン環の特性振動は,分子全体の対称性によって決まる一定の振幅・位相関係のもとで相互に振動し,異なる対称種に属するいくつかの基準振動を構成する。本研究は,一連のPhnX型分子について,そのCH面外変角および環面外変形振動の強度を,このような観点から解析したものである。すなわち,観測される個々の吸収帯の強度の大きさを決定づけている要因を検討した結果,同一の対称種に属するCH面外変角および環面外変形振動の強度の和をとると,異なる対称種に対応するこの強度和の相対的な大きさは,ベンゼン環の内部回転角θのみの関数になることが示された。この考察に基づいて,個々の基準振動の強度を測定できるPh2S, Ph2SO, Ph3CH, Ph3CNH2について,その強度からθを求めたところ,他の方法による文献値のあるPh2S, Ph3CHについてその文献値とよい一致が見られた。これは,本研究の強度の扱い方の妥当性を示すばかりでなく,強度から分子構造に関する知見を得る可能性を示唆している。最後に,ベンゼン環一つあたりの特性強度を評価し,それに対する置換基効果を, PhX型分子の場合と比較,考察した。
  • 金城 徳幸, 小松 剛, 中川 鶴太郎
    1971 年 92 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    高分子に対する可塑剤添加の効果を調べるため,リン酸トリクレシル(TCP),フタル酸ブチルベンジル(BBP),フタル酸ジオクチル(DOP),セバシン酸ジブチル(DBS),セバシン酸ジオクチル(DOS)で可塑化したポリ塩化ビニルについて,比容の測定,応力緩和測定ならびに減衰振動法による粘弾性測定を行なった。可塑剤濃度は4.5-16.0%で,測定温度は-20-100°Cである。
    貯蔵弾性率,損失弾性率の温度分散曲線は可塑剤濃度の増加とともに低温側に移行し,転移領域は広がる。この作用の強さの順序はDOS>DBS>DOP>BBP>TCPのとおりであった。
    基準温度82°Cにおける緩和弾性率のマスターカーブは可塑剤添加により短時間側に移り緩和スペクトルは広がる。この作用の強さの順序も前と同様である。
    シフトファクターaTの温度依存性は一応WLF型になるがそのC10, C20パラメーター値は通常の普遍値と一致しない。可塑剤濃度の増加はC10, C20パラメーターの増大をもたらす。また,少量可塑化PVCのガラス状態において逆可塑化現象も観測された。
  • 尿素を添加した濃厚アガロースゲルの応力緩和
    渡瀬 峰男, 荒川 泓
    1971 年 92 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    四国産テングサ原藻から抽出した寒天をアクリノールを添加して寒天二成分アガロース(AG),アガロペクチン(AP)に分離した。熱可逆性ゲルである寒天ゲルの力学的挙動の大部分をしめるAGのゲル化機構を調べるために,タンパク質変性剤である尿素を添加したAGゲルについて応力緩和実験を行なった。AGの3.48~6.3wt%の濃厚水溶液に,8 mol/lの濃度まで尿素を添加した試料ゲルについて25~55°Cの範囲の温度で4時間までの応力緩和曲線を求めた。緩和曲線は3個のMaxwell模型を並列にした力学模型で解析し,その結果について考察を行なった。
    ゲルの主要三次元構造に対応するとみられる最長緩和時間を有するMaxwell模型に属する弾性定数E1は,AGゲルに尿素を添加するにつれて減少し,添加尿素濃度6 mol/lまでは緩慢であるがほぼ直線的に減少し,6 mol/lでゲル弾性率は尿素無添加濃度の同濃度AGゲルのゲル弾性率の約80%程度まで減少した。
    添加尿素濃度7 mol/lでゲル弾性率は急激に減少し8 mol/lで事実上外見的には0に近づいた。減少する割合はAG濃度と尿素濃度の相対的比率に依存することが少なく,水溶液中の尿素濃度それ自身の値によって主として支配される。同じく主要構造に対応する最長緩和時間τ1は尿素添加量に依存せずに約6 mol/lまで一定値を示し,7 mol/l以上になると減少する傾向を示す。τ1の温度変化から求めた見かけの活性化エネルギーは,AG濃度,尿素濃度に依存することなく全試料ゲルの平均値は約5.0 kcal/molの一定値を示した。
    以上の結果,濃度AGゲルに尿素を添加するとゲル形成能の受ける影響は,既報1)の寒天に尿素を添加した場合と類似した傾向を示した。しかしその低下の傾向は6 mol/l以下ではより少ない。
  • 武藤 宣彦, 小松 剛, 中川 鶴太郎
    1971 年 92 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ポリアクロレインオキシム(PAO)と2価遷移金属イオン(マンガン(II),コバルト(II),ニッケル(II),銅(II),亜鉛(II))との水溶液中における錯体生成反応を25°C,イオン強度0.1においてpH滴定法によって研究した。 PAOの酸解離定数は変型Henderson-Hasselbalch式の適用によりpKa=11.6,定数n=2.36と決定された。 PAOの2価金属錯体の安定度定数はGregorらの変型Bjerrum法によって計算した。各錯体の生成曲線によれば,高いpH値の相当広い領域にわたって,多くの場合に各金属原子は2個のオキシム基を含む錯体を形成する。各金属キレートの安定度の順序はMn(II)<Zn(II)<Co(II)<Ni(II)<Cu(II)となり, Mellor-Maleyの序列と一致した。求めた安定度定数logβ2を低分子analogueであるジメチルグリオキシム錯体のデータと比較してみると,どのPAO錯体もかなり高い安定度をもつことがわかる。
  • 松田 俊介, 小門 宏, 井上 英一
    1971 年 92 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素は紫外光(主としてで2537Å)で励起すると,塩素原子とトリクロルメチルラジカルとに解離する。このとき,これらの生成物と水素を含んだ物質(水素供与体)とを共存させると,反応生成物の一つとして塩化水素が生成する。したがって,水素供与体と四塩化炭素との混合液を励起すると,塩化水素の解離による光電流が得られる。8種の水素供与体が用いられた。
    実験の結果は,塩素原子による「見かけの水素引き抜きの効率」を見積るのに用いられた。この評価にさいし,解離定数と誘電率との間にFuossの関係,粘度と移動度にStokesの法則を仮定している。
    もっとも効率のよい水素供与体は, 2-プロパノールであり,もっとも効率の悪いものはベンゼンであった。
    「見かけの水素引き抜きの効率」は, Porterらによるベンゾフェノン三重項の水素引き抜き反応と比較すると,溶媒ごとの差が大きい。これは本報の系においては,連鎖反応の可能性があるためと考えられる。この観点から連鎖反応の鎖長の相対値が求められた。
  • 大橋 弘三郎, 大沼 諄, 山本 勝巳, 栗村 芳実
    1971 年 92 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酸性溶液中におけるクロム(VI)によるいくつかのコバルト(II)-ニトリロポリ酢酸錯体(Co(II)Y)の酸化反応を25±0.2°C,イオン強度0.1で分光光度法により研究した。
    クロム(VI)酸化の全反応は次式であらわされる。
    3Co(II)Y+Cr(VI)=3Co(III)Y+Cr(III)
    Co(II)-EDTA,Co(II)-CyDTAおよびCo(II)-DTPA錯体のクロム(VI)酸化反応は,酸性錯体(Co11HY)および通常錯体(Co11Y)を含む二つの反応径路を径て進行すると考えられ,速度式は次式のようにあらわされることがわかった。
    d[Co(III)Y]/dt=kp[Co11HY][HCrO4-][H+]+kn[Co11Y][HCrO4-][H+]
    Co(II)-EDTA,Co(II)-CyDTAおよびCo(II)-DTPA系の速度定数knとしてそれぞれ1.5×103, 2.4×102, 2.3×103(l•mol-2•sec-1), kpとしてそれぞれ2.6×103, 1.0×103, 6.5×103(l2•mol-2•sec-1)が得られた。一方, Co(II)-HEDTAおよびCo(II)-EDDA錯体のクロム(VI)酸化は,水素イオンに関して一次ならびに0次の二つの反応径路が推定された。これらの系の速度式は,
    d[Co(II)Y]/dt=kn[Co11Y][HCrO4-][H+]+kn'[Co11Y][HCrO4-]
    で表わされる。Co(II)-HEDTAおよびCo(II)-EDDAに対するknの値としてそれぞれ5.0×103, 6.0×104(l2•mol-2•sec-1), kn'の値としてそれぞれ3.3×10-1, 6.5×10-1(l•mol-1•sec-1)が得られた。
    コバルト(II)錯体の性質と反応性の関係を検討した結果,Co(II)-DTPA錯体を除いて配位子の立体障害が小さく,また錯体の負電荷が小さいほど反応性に富んでいること, Co(II)-EDTA, Co(II)-CyDTAおよびCo(II)-DTPA錯体では酸性錯体の反応性は通常錯体のそれより大きいことかわかった。Co(II)-DTPA錯体が比較的大きな反応性を有していることから,配位している配位子中の遊離のカルボキシル基が,クロム(VI)酸化を促進する役割を果たしているものと考えた。
  • 守口 良毅, 細川 巌
    1971 年 92 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水溶液中におけるフッ化ナトリウムとホウ酸との反応をガラス電極とフッ化物イオン選択性電極を用いて電位差測定法により研究し,できてくるBF(OH)3-, BF2(OH)2-の生成定数K1=[BF(OH)3-]/[B(OH)3][F-], K2=[BF2(OH)2-][OH-]/[BF-(OH)3-][F-]を求めた結果,イオン強度(NaCl) 0.1のときK1=101.38, K2=10-6.4, 0.7のときK1=101.71, K2=10-7.2を得た。この結果に基づいてすでにWamserがHBF3OH, HBF4について得ている生成定数を参考にしてフッ素が段階的に1個ずつホウ素に結合していくときの生成定数の変化とそのときの構造の変化の間の関連を考察するとともに,海水中におけるフッ素の溶存状態についても考察し,海水中のフッ素はその大部分が遊離のフッ化物イオンとMgF+の形で存在し,フッ素とホウ素の錯体としてはBF(OH)3-の形で遊離フッ化物イオンの約1/120の濃度でその存在が予想されるが, BF2(OH)2-, BF3OH-, BF4-,などの形では存在しないと推論した。
  • 蔡 恵沢
    1971 年 92 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    18-75 MeV制動輻射でセシウムおよびバリウムターゲットを照射し,このエネルギー領域で起こる光核反応の種類,生成量とそのエネルギー依存性を残留核法で検討した。また,得られた結果からバリウムを内基準元素とするセシウムの放射化分析法を明らかにした。照射エネルギーを18 MeVとし,バリウムより137Ba(γ, p)反応によって生じる136Csを内基準核種として利用し,セシウムから(γ, n)反応によって生成する132Csとともに化学分離した。測定には36cm3Ge(Li)半導体検出器を用い,前者の0.818 MeVの光電ピーク面積を基準として,後者の0.668 MeVの光電ピーク面積比(RA0)を求め,これと両者の重量比(Rw)との関係として
    Rw=(4.88Ba±0.14)×10-5RA0
    を得た。セシウムの定量下限は約0.8μgで,正確に定量する方法となる。
  • 山本 勇麓, 熊丸 尚宏, 林 康久, 三浦 進, 木村 繁和
    1971 年 92 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水溶液中に存在する微量のニッケルはシアン化物イオンが共存すればシアノ錯陰イオンとなり,適量のトリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンとともに選択的にニトロベンゼンに抽出され,この有機相の呈色の強度は水相中のニッケル濃度に比例することを見いだした。この原理に基づくニッケルの新しい抽出吸光光度定量法を研究した。
    抽出の諸条件を検討した結果,シアン化物イオンおよびトリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)キレート陽イオンの濃度をそれぞれ1.6×10-4mol/lおよび8.0×10-4mol/l以上にたもち, pH6~8で抽出すればよいことがわかった。水相中のニッケルの濃度が23.5μg/25ml以下の範囲で抽出有機相の吸収極大波長(516mμ)における吸光度とニッケル濃度との間には直線関係が成立した。本法の感度は0.0027μgNi/cm2でありジメチルグリオキシム法(0.0042μgNi/cm2)より高く呈色も安定であり,精度は平均吸光度0.349に対して0.40%であった。本法を鉄鋼中のニッケルの定量に応用して良好な結果を得た。
  • 的場 隆一, 鈴木 周一
    1971 年 92 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    著者らは,酵母菌体成分の水可溶性成分中に酵母インベルターゼの活性を増大させる賦活物質を見いだした。すなわち酵母菌体の水可溶性成分をSephadex G-100,コロジオン膜透析およびDEAE-セルロースカラムクロマトグラフで分画し, 2種のインベルターゼとインベルターゼ賦活物質を収得した`。
    この賦活物質を2種のインペルターゼに添加した場合の見かけの酵素-基質複合体の解離定数は,賦活物質を添加しない場合の解離定数に比較して減少することが示された。一方,最大反応速度は賦活物質の添加によって変化を受けないことがわかった。また見かけのMichaelis定数の減少度合は賦活物質の濃度に依存することが示された。インベルターゼ活性について賦活物質濃度依存性の速度論的検討から,活性の増大は,賦活物質-酵素複合体に基質が結合して賦活物質-酵素-基質の複合体を生成し,この複合体の解離定数が酵素-基質複合体の解離定数に比較して小さな値を示すことから裏づけられた。
  • 柘植 乙彦, 田代 昌士, 西原 洋子
    1971 年 92 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    エナミン類とニトロン〔2〕との1,3-双極性環化付加反応について検討した。エナミン〔1〕と〔2〕との反応ではそれぞれ対応する2,3,5,5-四置換イソオキサゾリジンのシス,トランス異性体混合物が得られたが,エナミン〔4〕,〔5〕は異常生成物を与えた。すなわち,〔2a〕との反応では正常付加体のアミン基がフェニルヒドロキシルアミンで置換された5-(N-ヒドロキシアニリノ)イソオキサゾリジン体が,〔4〕と〔2b〕との反応では,低収率で正常付加体とα,α-ジモルホリノトルエン体が生成した。他方,反応性の高いエナミン〔10〕と〔2〕との反応では正常付加体イソオキサゾリジンがかなり好収率で生成し,〔2a〕,〔2b〕の反応では2種の立体異性体〔11〕,〔12〕が単離された。NMRスベクトルをもとにして〔11〕と〔12〕と構造を推定した。
    つぎに,種々の条件下における〔11〕と〔12〕の加水分解反応を検討し,〔11〕と〔12〕とは異なる挙動を示すことを明らかにした。シリカゲル-90%酢酸,室温下で〔11b〕はイソオキサゾリジン-5-オル体を与えるが,〔12b〕は加水分解をうけない。90%酢酸,90°Cの加水分解では〔11b〕からは〔16〕,〔12b〕からは〔2b〕が生成した。一方,ハロゲン化水素酸による加水分解において,〔11〕は主生成物としてハロゲン化生成物2-[α-(ハロアニリノ)ベンジル]シクロヘキサノン体を与えるに対し,〔12b〕は〔15〕を与えた。これら加水分解の径路についても若干の考察を行なった。
  • 松森 国彦, 井手 明雄, 渡辺 博恭
    1971 年 92 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    3-キノリンカルボニトリルおよび4-イソキノリンカルボニトリルに臭化エチルマグネシウムを作用させGrignard反応を行なうと,前者ではキノリン核の4-位に,後者ではイソキノリン核の1-位にエチル基が導入されシアン基とは反応しない。そうしてこの場合の生成物はそれぞれ, 4-エチル-1, 4-ジヒドロキノリン-3-カルボニトリルおよび1-エチル-1, 2-ジヒドロイソキノリン-4-カルボニトリルであることを, IR, NMRおよび化学的方法によって確認した。
  • 井手 明雄, 松森 国彦, 石津 和彦, 渡辺 博恭
    1971 年 92 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2-あるいは4-キノリンカルボニトリルおよび1-あるいは3-イソキノリンカルボニトリルとは異なり, 3-キノリンカルボニトリルおよび4-イソキノリンカルボニトリルは, Grignard試薬などの求核試薬との反応でシアン基の炭素よりもむしろ縮合複素環上の炭素に対して優先的に反応する事実を説明するためにHMOの計算を行ない,また,最適パラメーターも検討した。パラメーターとしてCoulomb積分には縮合複素環中の窒素原子に対しα+0.5β,シアン基の窒素原子に対しα+1.1β, 共鳴積分にはシアン基の炭素-窒素原子間を1.4βにとった場合に反応性指数と化合物の反応実験結果との間によい対応を見いだすことができ,また, IR吸収ならびにプロトンのNMRの化学シフトもよく説明し得ることが判明した。
  • 速水 醇一, 小野 昇, 加治 有恒
    1971 年 92 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1971/01/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フッ化テトラエチルアンモニウム(Et4NF)を臭化テトラエチルアンモニウムと,フッ化銀との反応により合成し,その無水塩を得た。Et4NFはアセトニトリルやジメチルスルホキシド(DMSO)によく溶けるが,やや温度をあげるとDMSOとは徐々に反応した。Et4NFはクロロホルム,ブロモホルムと容易に反応し,α-脱離反応を起こした。この反応をシクロヘキセン存在下に行なうと,ジハロノルカランが約10%の収率で得られた。Et4NFはN-(p-ニトロフェニルスルホニルオキシ)カルバミン酸エチルからもα-脱離反応を起こし,ニトレン挿入反応による種々の生成物が得られた。またEt4NFはアセトニトリル中で,臭化フェネチルと室温で容易に反応し,反応生成物として高収率(約96%)のスチレンが得られた。
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