日本化學雜誌
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92 巻, 10 号
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  • 米内 勝雄, 岡崎 進, 福田 安生, 田部 浩三
    1971 年 92 巻 10 号 p. 815-819
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ジアセトンアルコールの分解反応により,まず約30種の物質の固体塩基触媒活性について調べ,活性は焼成温度により大きく変わるが,活性の大小順はほぼつぎの順位になることを認めた。
    MgO, Cao, CsF>Fe(OH)3, K2CO3, CaO・SiO2>MgCO3, KF>Al(OH)3,
    Mg(OH)2, La2(CO3)3, SiO2・Al2O3>Ca(OH)2, Ni(OH)2
    この順位は,固体塩基性度の大小にほぼ対応した。
    ついで活性最大の酸化マグネシウムを触媒とする場合につきやや詳しく検討した結果,酸化マグネシウムの触媒活性および固体塩基性度はともに焼成温度450°Cで最大となり,この触媒を用いるとき活性化エネルギーは11.1kcal/molとなった。反応の速度はジアセトンアルコールおよび触媒濃度の各一乗に比例し,このことから,反応は表面反応律速であると考えた。
  • 石井 康敬, 松浦 郁也
    1971 年 92 巻 10 号 p. 820-824
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シリカ,アルミナおよび酸化モリブデン(VI)の組成比を変えた一連のシリカーアルミナーモリブデナ触媒による1-ブテンの異性化反応を行ない,触媒の酸性点の異性化におよぽす影響および酸化モリブデン(VI)の異性化に果たす役割について検討した。
    シリカーアルミナーモリブデナ触媒の酸性度と異性化速度は触媒中のシリカ含量の増加とともに大きくなる傾向があり,見かけ上酸性度と異性化速度との間に一定の関係が成立したが,触媒の異性化能は単に触媒の酸性質のみに依存しないことがわかった。
    すなわち,異性化の活性点として酸点とアルミナを含むモリブデンの複合酸化物が存在し,シリカ含量の多い触媒では酸性点が支配的となり,低シリカ含量触媒ではモリブデンの複合酸化物が支配的になることが示唆された。
    また,異性化反応は酸素の共存により阻害され,水素の共存により促進され,酸化モリブデン(VI)無添加のシリカーアルミナ触媒の場合とは異なった挙動を示すことを見いだした。
  • 平山 鋭, 大杉 治郎
    1971 年 92 巻 10 号 p. 825-828
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アントラセン(A),ピレン(P)のカルボニル化合物である9-CH3CO-A, 9-CHO-A, 1-CH3CO-A, 1-CHO-A, 2-CH3CO-A, 3-CH3CO-P, 3-CHO-Pの最低三重項状態の寿命を,メタクリル酸メチルのプラスチックマトリックス中で常温と77°Kにおいてセン光光分解法を用いて測定した。 77°Kでの値はそれぞれ28.2, 1.6, 15.3, 9.6,-, 29.9, 20.1(単位はmsec)であった。 9-CH3CO-Aはアントラセン誘導体の中で一番長寿命でアントラセンと余り変わらなかった。ピレン誘導体はともにピレンよりはるかに短い寿命を有する。置換基,置換位置によって寿命は大きく異なり,その傾向から寿命と分子構造とに関連のあることがうかがわれた。 Robinson, El-Sayedの無輻射遷移理論と一次摂動論を用いた考察から,寿命は芳香環とカルボニル基との共役の強さに関係するという結果が得られ,実験事実とよく一致することがわかった。寿命とこれら化合物の光化学反応性との関連,最低三重項状態生成の温度変化などについても簡単に述べる。
  • 小西 義昭, 羽田 宏, 田村 幹雄
    1971 年 92 巻 10 号 p. 829-833
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルギン酸銀薄膜は2537Åの紫外線によって光分解し,多量の銀を析出する。この光分解過程はカルボン酸イオンから銀イオンへの直接の電荷移動として理解されている。このときの光分解生成物の一つである銀の量子収率は,光強度にはあまり依存せず,照射時における湿度と温度とに依存した。すなわち湿度あるいは温度が増加するにつれて,量子収率は増加する傾向を示した。この場合量子収率は0.02~0.06の範囲内で変化した。これらの結果は,光分解初期において,光分解第一次生成物の再結合による逆反応が支配的であることを示している。湿度の影響はこの高分子に対して水が可塑剤的な作用をし,高分子セグメントの熱運動を容易にすることによって,“cage”効果による再結合を抑制するものであるとして説明できる。温度の影響についても高分子の熱運動を考えることによって理解できる。
    なおこの報告では,カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリル酸の銀塩の光分解についても部分的に取り扱っている。
  • 佐藤 三男, 高山 直樹, 栗田 学, 管 孝男
    1971 年 92 巻 10 号 p. 834-838
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    重油の水素化脱硫に使用したコバルト・ モリブデン・アルミナ触媒について,そこへ沈積したバナジウムおよびニッケルの分布状態を調べるため,触媒の粒子に対してX線マイクロアナライザー法を適用した。
    その結果,バナジウムは粒子の表面近傍に片寄って沈積するが,ニッケルは表面も内部もむしろ同等に沈積することが認められた。しかも,このような沈積分布状態は50時間反応の触媒も1000時間反応のものも同様であった。そこで,反応中の金属沈積過程に対して,簡単なモデルを設定しその理由を考察した。定性的な考察によれば,重油中のバナジウム化合物は拡散が遅く反応性に富むが,ニッケル化合物はその逆であるとして実験結果を説明することができる。
  • 野々山 松雄, 北川 章子, 山崎 一雄
    1971 年 92 巻 10 号 p. 839-843
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2-(エチルチオ)アセトアミド(以下egHと略記する)を配位した錯体MX2(egH)2, CuX2(egH)およびPd(eg)2・4H2Oを合成し,その性質を磁化率,赤外吸収および可視吸収スペクトルの測定により研究した。コバルト,ニッケルおよび銅のMX2(egH)2はegHが酸アミド基の酸素とイオウとで配位した八面体構造の高スピン錯体であるが,パラジウムの錯体は,酸アミド基は配位に関与せず, egHはイオウのみで単座として配位した平面形である。また1:1錯体CuX2(egH)はegHが二座で配位し,ハロゲンが橋かけした八面体のポリマーである。アルカリ性溶液で生ずるPd(eg)2・4H2Oは, egHが酸アミド基の水素を失い,その窒素とイオウとで配位した平面形錯体である
  • 市川 裕司, 村瀬 孝彦, 塗師 幸夫, 日比野 泰三
    1971 年 92 巻 10 号 p. 843-848
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    シリカおよびジルコニアからジルコンを生成する反応におよぼすフッ化バリウムの影響を調べた。粉末あるいは錠剤の試料を空気中あるいはフッ化水素雰囲気中で加熱し,測定には, X線回折,化学分析法などを用いた。その結果つぎのような結論を得た。
    (1)フッ化バリウムはシリカとジルコニアからジルコンを生成する反応を促進する。
    (2)フッ化バリウムは,シリカ,ジルコニアに作用し中間生成物Xを生成する。またフッ素の一部は四フッ化ケイ素およびそれ以外の形のものとして存在しており,これらのフッ素イオンの作用により化合物Xを通してジルコンの生成反応が促進される。
    (3)フッ素イオンの作用により,化合物Xはシリカ,ジルコニアと反応してジルコンを生成する。そのさい,フッ素イオンはケイ素をシリカ側からX層を通してジルコニア側へ移動することを促進しており,このケイ素はXおよびジルコニアと反応してジルコンを生成する。また,ジルコニウムをジルコニア側からX層へ移動することを促進しており,ジルコニウムはXと反応してジルコンを生成する。
  • 上田 穣一
    1971 年 92 巻 10 号 p. 849-852
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシン(PAR)はガドリニウムと反応して,水溶性の橙赤色錯体を生成する。この呈色溶液は波長516nmに最大吸収をもち, pH 10.1~10.7において一定の吸収を示す。この反応はきわめて鋭敏で,モル吸光係数は8.89×104に達し,ガドリニウム量1.4μg/mlまでBeerの法則にしたがう。 pH 10.2における錯体の組成を連続変化法で検討した結果,ガドリニウム:PAR=1:3であると推定される。
    妨害イオンは多いが,酢酸ナトリウムの添加により,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムをマスクでき,シアン化カリウムの添加により,銅,マンガン,鉄(III),コバルト,ニッケル,パラジウムを,スルホサリチル酸の添加でベリリウムを,チオグリコール酸の添加でスズ(IV),鉛,ビスマス(III),亜鉛,カドミウム,水銀(II)をマスクできる。インジウム,クロム(III),タングステン(VI),スカンジウム,イットリウムおよび他の希土類元素は妨害が顕著である。
  • 森田 良美, 佐藤 忠夫, 服部 三郎
    1971 年 92 巻 10 号 p. 853-857
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2,7-オクタジエニルアセタート〔1〕とブタジエンのロジウム触媒反応により, C12-トリエン類のアセトキシ置換体が好収率で得られることを見いだした。生成したC12-トリエン類アセトキシ置換体の構造は,2,6,10-ドデカトリエニルアセタート〔2〕,2-(2-プテニル)-3,7-オクタジエニルアセタート〔4〕および 2-(2-プテニル)-2,7-オクタジエニルアセタート〔5〕の3種類であることを,IR,ガスクロマトグラフィー-質量分析, NMR分析によって確認した。本反応は従来知られている機構では説明できない新しい型のロジウム触媒反応であり,1) 末端ビニルの末端炭素にブタジエンが反応する,2) 内部二重結合もブタジエンと反応する,という二つの特徴を有した。反応機構として, 2,7-オクタジエニルアセタート〔1〕のキレート型ロジウム錯体の生成を考えることにより,本反応を説明することができた。
  • 森田 良美, 服部 三郎
    1971 年 92 巻 10 号 p. 858-861
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2,7-オクタジエニルアセタートとブタジエンのロジウム触媒反応についてはすでに報告した。本報では一般に-CH=CH(CH2)nCH=CH-の構造を有する非共役ジエンとブタジエンのロジウム触媒反応についてn=0-4の範囲で検討し,非共役ジエンの二つの二重結合がロジウムに配位するキレート型錯休の形成とその反応性について考察した。その結果n=0, 1, 4の場合にはキレート型錯体は形成されにくく, n=0ではπ-アリル錯体を経由して反応が進行し,またn=1, 4では通常のα-オレフィンの反応が優先すること, n=2, 3の場合にキレート型錯体が形成されるが, n=2では錯体が安定で反応性に乏しく, n=3の場合のみ錯体が適度に不安定でブタジエンとすみやかに反応することができると結論した。
  • 森田 良美, 今木 直, 服部 三郎
    1971 年 92 巻 10 号 p. 861-865
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    2,7-オクタジエニルアセタート〔1〕とブタジエンの反応において,ロジウム触媒の活性を増大させて酢酸ドデカトリエニルをより有利に合成することを目的として種々の検討を行なった。まずロジウム触媒におよぼす塩酸の効果を検討し,Rh1グラム原子あたり少なくともCl2グラム原子が必要であることがわかった。また反応の進行とともに触媒活性が低下していく原因のーつは2,6-オクタジエニルアセタート〔5〕および反応生成物〔2〕,〔3〕(いずれも前報に述べたn=2の非共役ジエン)による被毒であろうと推論した。さらに,反応系に四塩化炭素を存在させると触媒活性がいちじるしく増大することを見いだした(四塩化炭素は他のオレフィンとジエンのロジウム触媒反応にも有効であった)。このほかエチルアルミニウムクロリド類,およびトリメチルクロルシランもいちじるしい添加効果があった。四塩化炭素系で水素を共存させるとさらに好結果が得られた。
  • 藤田 安二, 藤田 真一, 岡林 徹
    1971 年 92 巻 10 号 p. 865-867
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    オイゲノールと塩酸アニリンを油浴の温度200°C以上に加熱すれば容易に脱アリル反応と脱メチル反応とが起こって,グアヤコールとカテコールとができ,このさい少量のフェノールをも生じる。
    脱離したアリル基はアニリンにN-置換し,さらに複雑な転位反応ののち,p-プロピルアニリンを生じ,脱メチルによって生じたメチル基はアニリンおよびp-プロピルアニリンにN-置換を起こす。
    イソオイゲノールもまったく同様の反応を起こすが,オイゲノールよりもはるかに反応性に富む。
    これらの反応は生体内および製造加工中におけるプロピルベンゼン系フェノールエーテル類の分解反応の一つのモデルともなる。
  • 神戸 哲, 林 俊雄, 保田 平之介, 桜井 昭雄
    1971 年 92 巻 10 号 p. 867-873
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    種々の5-置換-ベンジリデン-2-イミノ-4-チアゾリジノン誘導体を,チオシアン酢酸エチル〔1〕,芳香族アルデヒドおよび酢酸アンモニウムまたはアミンから合成した。〔1〕,芳香族アルデヒドおよび酢酸アンモニウムを,酢酸-ベンゼン中で還流すると,5-置換-ベンジリデン-2-イミノ-4-チアゾリジノンを得,同じ条件で第一アミンを用いると,5-置換-ベンジリデン-2-アルキルイミノ-4-チアゾリジノンを得た。同様にして第二アミンの場合は5-置換-ベンジリデン-2-二置換アミノ-4-チアゾリン-4-オンを得た。さらに〔1〕,芳香族アルデヒドおよび第一アミンをエタノール中で反応させると,5-置換-ベンジリデン-3-アルキル-2-イミノ-4-チアゾリジノンを得た。
  • 松原 義治, 岸本 孝夫, 峰松 和作
    1971 年 92 巻 10 号 p. 874-876
    発行日: 1971/10/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1,3-p-メンタジエン〔1〕に対するアクロレイン〔2〕の付加について検討した。生成を予想される4種の付加化合物を単離し,それらの構造がexo-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]-5-オクテン-2-カルボアルデヒド〔3〕,3-exo-ホルミル異性体〔4〕,2-endo-ホルミル異性体〔5〕,3-endo-ホルミル異性体〔6〕であることを構造既知のexo-1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]-5-オクテニルメタノール〔11〕,3-exo-メチロール異性体〔12〕,2-endo-メチロール異性体〔13〕,3-endo-メチロール異性体〔14〕と比較決定した。
    3〕~〔6〕,〔11〕~〔14〕はおだやかな木質ようの匂いを有している。
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