エナミンがベンジリデンアセナフテノン誘導体に対して,どのような付加反応形式をとるかについて検討した。ベンゼン中べンジリデンアセナフテノン類と
N-(1-シクロヘキセニル)ピロリジンーあるいはーピペリジンとの反応では, 1, 4-環化付加体のジヒドロピラン体が生成することを見いだし,その立体構造を明らかにした。IRおよびNMRスペクトルの研究からジヒドロピラン体はベンゼン,THF溶液中では2種の鎖状アルキル化体と平衡混合物として存在することが明からであり,塩酸による加水分解ついでアルコール処理によって1, 5-ジケトンおよびアルコキシジヒドロピラン体とを与えた。さらに重塩酸による加水分解反応の検討から,加水分解反応径路について考察し 1, 5- ジケトンおよびアルコキシジヒドロビラン体は,それぞれ異なるエナミン(モノアルキル化体)を経由して生成したものと推定した。
一方,反応性の弱いN-(1-シクロヘキセニル)モルホリンおよびβー位に水素をもたない
N-(2-メチル-1-プロぺニル)ピペリジンはベンジリデンアセナフテノン類とは反応しなかったが,エトキシカルボニルメチレンアセナフテノンとは反応し,異なる型の1:1付加体を与えた。すなわち,前者との反応では1, 4-環化付加によるジヒドロピラン体を与えるのに対し,後者との反応では1, 2-環化付加によるスピロシクロブタン体(過塩素酸塩として単離)が生成した。
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