メタシクロファン化合物の構造と反応性の研究のモデル化合物として,各種の環の大きさをもつ[m.n]メタシクロファンの誘導体,類似休の合成を行なった。高希釈条件を用いる環化縮合反応の結果,10員環化合物として[2.2]メタシクロファソ(MCP)と誘導体,11員環化合物として2-チア[3.2]メタシクロファンと誘導休,12員環化合物として2, 11-ジチア[3.3]-および2, 3-ジチア[4.2]メタシクロファンと誘導体,13員環化合物としてアセタール結合をもつ[5.2]メタシロファンおよび[2.1.1]メタシクロファン,14員環化合物として2, 3, 12, 13-テトラチア[4.4]メタシクロファンの各化合物を得た。
NMRスペクトル,とくに種々の温度でのスペクトル測定から,環状構造の立体配座と立体配座変化を調べた。MCPは階段状構造に固定化されていて,環反転に要するエネルギー障壁はきわめて高い(ΔG〓〉27kcal/mol)のに反し,11員環および12員環モデル化合物ではそれぞれΔG〓=13および9kcal/molとなり,環の拡大とともに反転は容易になる。環反転におよぼす置換基効果を検討した結果,12員環化合物について平面ないし平面に近い中間状態を経由する反転機構を提出した。
NMRスペクトルの帰属のため,環状スルホキシドの塩基接触水素交換反応調べられた。二重共鳴、核Overhauser効果(NOE)も用いられた。
MCPの各種置換体のUVスペクトルが対応するベンゼン化合物と比較された。テトラシアンエチレン(TCNS)との電荷移動錯体について諸熱力学的パラメーターが算出された。
MCPと誘導体に対する各種の反応を行なった結果,渡環反応が起こりピレソ骨格をもつ化合物が生成することを認めた。反応機構は大別して3種類に分類される。すなわち求電子試剤,ラジカルによる付加-脱離反応,光環化脱水素反応,ならびに環化異性化反応である。
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