日本化學雜誌
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92 巻, 4 号
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  • 佐藤 武雄
    1971 年 92 巻 4 号 p. 277-296
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    メタシクロファン化合物の構造と反応性の研究のモデル化合物として,各種の環の大きさをもつ[m.n]メタシクロファンの誘導体,類似休の合成を行なった。高希釈条件を用いる環化縮合反応の結果,10員環化合物として[2.2]メタシクロファソ(MCP)と誘導体,11員環化合物として2-チア[3.2]メタシクロファンと誘導休,12員環化合物として2, 11-ジチア[3.3]-および2, 3-ジチア[4.2]メタシクロファンと誘導体,13員環化合物としてアセタール結合をもつ[5.2]メタシロファンおよび[2.1.1]メタシクロファン,14員環化合物として2, 3, 12, 13-テトラチア[4.4]メタシクロファンの各化合物を得た。
    NMRスペクトル,とくに種々の温度でのスペクトル測定から,環状構造の立体配座と立体配座変化を調べた。MCPは階段状構造に固定化されていて,環反転に要するエネルギー障壁はきわめて高い(ΔG〓⟩27kcal/mol)のに反し,11員環および12員環モデル化合物ではそれぞれΔG〓=13および9kcal/molとなり,環の拡大とともに反転は容易になる。環反転におよぼす置換基効果を検討した結果,12員環化合物について平面ないし平面に近い中間状態を経由する反転機構を提出した。
    NMRスペクトルの帰属のため,環状スルホキシドの塩基接触水素交換反応調べられた。二重共鳴、核Overhauser効果(NOE)も用いられた。
    MCPの各種置換体のUVスペクトルが対応するベンゼン化合物と比較された。テトラシアンエチレン(TCNS)との電荷移動錯体について諸熱力学的パラメーターが算出された。
    MCPと誘導体に対する各種の反応を行なった結果,渡環反応が起こりピレソ骨格をもつ化合物が生成することを認めた。反応機構は大別して3種類に分類される。すなわち求電子試剤,ラジカルによる付加-脱離反応,光環化脱水素反応,ならびに環化異性化反応である。
  • 茂原 禎子, 尾崎 萃
    1971 年 92 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    重水素をトレーサーとしたガスクロマトグラフ法により,酸化クロム上の可逆水素の測定を行なった。酸化クロム(III)上に存在するつぎの4種の“水素”が見いだされた。(1)おもに-195°Cで測定される分子状吸着水素,(2)-75°C以上でH2-D2変換活性な微量の吸着水素,(3)高温で活性化吸着する水素,(4)表面水酸基の水素。
    (3)と(4)の水素は300°C以上で気相水素とはやく交換し,水素気流中の重水素パルスと同位体平衡になり,それらの水素量は保持容量に測定される。酸化物の水素処理中に起こる表面の変化が(4)の水素量の変化に現われ,つぎのように説明される。水素気流中で酸化物カラムの温度を上昇させてゆくと,100°C以上で表面の過剩酸素が水素と反応し,200~500°Cで水素気流により生成した水が除かれる。脱水により露出したクロムイオンは(3)の水素によりおおわれると思われる。(1)の水素量とその同位体効果は,この表面の変化にしたがって同じように増減し,それらの変化は吸着の強さの変化に帰せられる。
  • 石井 康敬, 松浦 郁也
    1971 年 92 巻 4 号 p. 302-304
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    アルミナ-モリブデナ触媒による酸素の吸着実験を行なうとともにこれら吸着酸素のESR測定を行なった。
    アルミナ-モリブデナ触媒上での酸素の吸着等圧線を求めたところ低温域と高温域で特徴ある傾向がみられ,酸素の吸着は低温域で起こる吸着と高温域で起こる吸着が存在することがわかった。
    吸着酸素のESRは-150°C付近よりg=2.04, 2.01, 2.00でO2-イオンと考えられる吸収が, -100°C付近よりg=2.00にO-イオンと考えられる吸収がそれぞれ観測された。また,酸素の吸着による触媒中のMo5+イオンのESR測定から,触媒中のMo5+イオンは低温での酸素の吸着によりいったん増加するが,吸着温度が高くなるにしたがい次第に減少していくことがわかった。
    これらの結果から,アルミナ-モリブデナ触媒上での酸素の吸着は,まず低温域で触媒中の陰イオン空孔上でO2-イオンおよびO-イオンとして吸着し,吸着温度の上昇にともない触媒中のMo5+イオンからさらに電子を奪いO2-イオンとして安定化するものと考えられる。
  • 小沢 俊彦, 桐野 豊, 瀬高 守夫, 管 孝男
    1971 年 92 巻 4 号 p. 304-309
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酸性水溶液(pH≤3)中における硫酸バナジルと過酸化水素の反応の初期過程を,迅速混合流通-ESR法を用いて調べた結果, g=2.0116付近に8本の微細構造を有するスペクトルを見いだし,これをVO2+イオンに配位したヒドロペルオキシルラジカルと同定した。
    ついで,このラジカルの生成あるいは消失の動態を,種々なpHで,かつ有機配位子(または基質)あるいは金属イオンの共存下,それぞれ追跡し,かなり安定なラジカル種であうるとの知見を得た。たとえば, Ti3+-H2O2あるいはFe2+-H2O2系で生成するラジカル種は, VO2+の添加により「スカベンジ」され,基質として加えたアスコルビン酸は,遊離のHOあるいはHO2ラジカルと反応すると考えられる。
  • 完戸 俊助, 増田 芳男
    1971 年 92 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ギ酸ナトリウム,ギ酸マグネシウム,ギ酸カリウム,ギ酸カルシウム,ギ酸マンガン,ギ酸コバルト,ギ酸ニッケル,ギ酸銅,ギ酸亜鉛,ギ酸ストロンチウム,ギ酸カドミウム,ギ酸バリウムおよびギ酸鉛の熱分解反応を熱テンビン, X線回折,ガスクロマトグラフィー分析,化学分析などによって研究した。
    (1)これらギ酸塩の熱分解反応は,分解温度および活性化エネルギーをギ酸塩の金属-酸素(M-O)間結合エネルギーと比較することによってつぎに示す3つの型に分類できた。
    (2)ギ酸コバルト,ギ酸ニッケルおよびギ酸銅の熱分解は分解生成物である金属単体の接触作用によって反応が連鎖的に進み他の塩類とは違った集団を形成した。これら重金属の触媒作用はギ酸ナトリウムおよびギ酸カリウムにギ酸ニッケル,ギ酸コバルト,ギ酸銅などを混合し,この混合物を熱分解したさいにも確認された。
    (3)(1)-(b)の反応では検討したすべてのギ酸塩について,その分解温度はそれぞれの炭酸塩の分解温度より低いにもかかわらず固相生成物として炭酸塩あるいは酸化物を生成する。この二つのうちどちらが有利かはギ酸塩を構成している金属の炭酸塩の熱安定性と深い相関にあり,反応機構と関連づけて考察した。
    (4)ギ酸ナトリウムおよびギ酸カリウムの熱分解における主反応はシュウ酸塩の生成反応(1)-(c)であるが,このシュウ酸塩の生成はコバルト,ニッケル,銅などの重金属によって阻害された。
  • 坂口 雅一, 小黒 暁ニ, 平林 孝圀
    1971 年 92 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    硫化亜鉛結晶内における塩化物イオンの拡散におよぼす焼成雰囲気の影響を解明するために,トレーサー法を適用し,硫化亜鉛-塩化ナトリウム(固-固相間)および硫化亜鉛-塩化水素(固-気相間)反応をヘリウム,硫化水素あるいは酸素の各雰囲気中,500あるいは1050°Cで1時間行ない,そのさい硫化亜鉛結晶内に拡散した塩化物イオンの分布状態を調査した。さらに塩化物イオンの拡散における焼成雰囲気と銅イオンによる電離補償作用との協同作用についても検討した。
    500°C焼成の場合,塩化物イオンの拡散はいずれの雰囲気中でも結晶表面層にかぎられ, 固-固相間反応の場合,固-気相間反応より遅いことが見いだされた。1050°C焼成の場合,塩化物イオンの拡散は固-固相間および固-気相間反応ともに,へリウムおよび硫化水素中ではほとんど進行しないのに対し,酸素中ではそれが容易になり,塩化物イオンの拡散量は0.5atmまでは酸素圧に比例して増大し,それ以上では一定となった。なお銅イオンの配合により塩化物イオンの拡散はいちじるしく促進された。
    これらの結果から,硫化亜鉛結晶内における塩化物イオンの拡散におよぼす焼成雰囲気の作用機構をそれらの結晶表面における化学反応に関連づけて考察した。
  • 津波古 充朝, 本岡 達, 小林 正光
    1971 年 92 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    α-アルミナとリン酸とからのリン酸アルミニウムの製法はその生成条件(モル比 R=Al2O3/P2O5,昇温速度および加熱時間など)により種々の化合物ができるため,たいていの場合,生成物は種々の化合物の混合物として得られる。これらのリン酸アルミニウムの酸性質について種々検討を行なったところ,これらは従来の固体酸にくらべてきわめて大きい酸性度をもつものであり,さらにこれらのリン酸アルミニウムのX線回折図形において2θ=11.2°に回折ピークをもつ物質Kが存在することがわかった。この物質Kの量と酸性度との間には直線関係が見られ,またメタリン酸アルミニウムのA型,B型およびAIPO4のBerlinite型の酸性度が小さいことから,この物質Kがリン酸アルミニウムにおける酸性度のおもな要因と考えられる。
    これらのリン酸アルミニウムはすべて弱酸で,その酸強度(pKa)は+1.5であった。
  • 堀 輝一
    1971 年 92 巻 4 号 p. 322-325
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    メルカプト酢酸のコバルト(III)錯体K3[Co3(SCH2COO)6]〔1〕, H3[Co3(SCH2COO)6]〔2〕, Na3[Co(SCH2COO)3]〔3〕,Co(SCH2COOH)34〕およびCo(SCH2COOC2H5)35〕を合成した。実験結果から推察するとコバルトとメルカプト酢酸の比が1:2である1:2錯体(〔1〕,〔2〕)は三核錯体であり,1:3錯体(〔3〕,〔4〕,〔5〕)は配位子がメルカプト基のみで配位している配位重合体である。得られた1:3錯体や他の同じような錯体の吸収スペクトルから電荷移動吸収帯と推定される約500mμの吸収極大位置は配位子の特性基のI効果に関連していると推察される。
  • 稲積 章生
    1971 年 92 巻 4 号 p. 326-330
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    堆積過程における元素の化学的挙動を研究する目的で,四国地方の各地層の頁岩および粘板岩45個の化学分析を行ない,化学組成の時代および地層による特徴を明らかにし,各成分間の相関関係を調べた。
    化学組成は時代および地層によって差があるのがみられた。古生代,中生代および新生代にわけると,カルシウム,ナトリウムおよびカリウムに時代別の特徴が認められたので,これを三角図に表わした。
    鉄,チタン,マグネシウムおよびカリウムはケイ素が少なく,アルミニウムの多いもの,すなわち, SiO2/Al2O3比の小さいものに多い。細粒岩にこれらの元素が多く含有されているといえる。チタンおよびマグネシウムは鉄と正の相関関係を有している。
  • 稲積 章生
    1971 年 92 巻 4 号 p. 331-334
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    堆積過程における元素の化学的挙動の研究の-環として,四国地方の各地層の頁岩および粘板岩45個中のバナジウム,ニッケルおよびクロムの含有量を測定し,これらの元素の挙動について考察した。
    含有量の時代別および全体の平均値はつぎのようであった。
    V(ppm) Ni(ppm) Cr(ppm)
    古生代 88 24 39
    中生代 83 39 51
    新生代 69 32 51
    全体 80 34 48
    古生代のものは新生代のものにくらべて,バナジウムが多く,ニッケルおよびクロムは少なかった。
    バナジウム,ニッケルおよびクロムはいずれも,鉄,チタンおよびマグネシウムと正の相関関係を有していた。吸着実験と,鉄との相関関係から,バナジウム,ニッケルおよびクロムの堆積岩中への濃縮は,鉄の舎水酸化物への吸着を考慮に入れなければならないことを示した。
  • 三角 省三, 春日 邦宣
    1971 年 92 巻 4 号 p. 335-338
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    Pc2LnH型錯体(Pc:フタロシアニン陰イオン, Ln:ランタン(III),セリウム(III),ネオジム(III),ユーロビウム(III),エルビウム(III),イッテリビウム(III)),およびPcLnX型錯体(X:1価の陰イオン)を合成し,その性質を検討した。
    紫外,可視域の吸収帯はランタニド(III)元素の原子番号の増加にしたがって短波長側へ移行し,また側少量の酸を添加した溶媒中ではPc2LnH型がPcLnX型に変化することが認められた。赤外吸収スペクトルより, 880~890cm-1の吸収帯(中心金属-窒素横ゆれ振動)がランタニド(III)元素の原子番号の増加にしたがって高波数側へ移行することが認められた。また,Pc2LnH型錯体の可能な構造としてフェロセンようのサンドイッチ形構造を推定した。
  • 藤永 太一郎, 桑本 融, 村井 重夫, 木原 壮林, 中山 英一郎
    1971 年 92 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    酸化状態の異なる化学種の溶液内における挙動の相違に注目して,クロム(III)およびクロム(VI)の各種溶液中における水酸化鉄(III)沈殿による共同沈殿現象について比較検討したのち,その知見に基づいてクロムの海水溶存量について考察した。溶液のpHと共沈率の関係について検討した結果によれば,クロム(III)は水溶液,緩衝溶液,人工海水,海水のいずれにおいてもpH 5.5~6以上のアルカリ性領域で100%共沈すること,しかしクロム(VI)は電解質をほとんど含まない水溶液中ではpH 3.5~5.5の酸性領域で約93%以上共沈するが,電解質の共存によって共沈率が小さくなり,人工海水,海水中では,Cl-イオン, SO42-イオンの影響によってpH 5.5 においても約20% (極大共沈率を示す)しか共沈しないことなどがわかった。また種々の塩類についてクロム(VI)の共沈率に与える影響を検討した結果,陰イオンがクロム(VI)の共同沈殿を妨害する度合は,その陰イオンが鉄(III)と形成する錯体の安定度定数の値が大きいほど大であるという事実を見いだした。
  • 山本 勇麓, 熊丸 尚宏, 林 康久, 大谷 譲
    1971 年 92 巻 4 号 p. 345-349
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水溶液中に存在するコン跡量のカドミウムイオンは適量の1, 10-フェナントロリンとキレート錯陽イオンを生成して,過塩素酸イオンとイオン対をつくり選択的にニトロベンゼンに抽出されることを見いだした。この抽出液を原子吸光分析に供試することによって,極微量のカドミウムを定量する方法を研究した。定量のための諸条件を検討した結果,水相と有機相の比が100/5のとき,10ppb(〓9×10-8mol/l)のカドミウムに対して1, 10-フェナントロリンおよび過塩素酸イオンがそれぞれ280倍モル,2200倍モル存在する場合にpH 3.8~10の範囲で最大の抽出(吸光値)が得られた。検量線は12ppbまでの範囲内でカドミウム濃度と吸光値の間に再現性の良好な直線関係が得られた。またこの場合,水相と有機相の容積比に比例して見かけの定量感度が倍増することがわかった。塩素,硝酸,硫酸,リン酸などの陰イオンおよびナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム,アルミニウムなどの陽イオンは妨害しない。1, 10-フェナントロリンとキレートを生成しやすい鉄(II),コバルト(II),ニッケル(II),銅(II),亜鉛などは0.1ppm程度の共存で約20%の負誤差を与える。しかし, 1, 10-フェナントロリンおよび過塩素酸イオンをさらに多量添加すれば,これらの妨害をかなり抑制できることがわかった。本法を河川水,水道水中のカドミウムの定量に応用し, 0.1ppbまで定量することができた。
  • 小島 英幸, 高橋 達夫, 木田 信章, 交告 和郎, 名和 秀彦, 柘植 壮了, 内木 正幸, 木野村 直世
    1971 年 92 巻 4 号 p. 349-351
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    塩酸処理をしたクロマトグラフィー用活性アルミナ層に室温でp-ベンゾキノンとアルコールを通すと黄色物質が生ずる。これは活性アルミナの存在下で, p-ベンゾキノンがアルコールと縮合反応を起こしたものである。生成物はアルコキシ-p-ベンゾキノン, 2, 5-ジアルコキシ-p-ベンゾキノンおよびヒドロキノンからなる。同様の方法により, α-ナフトキノンから黄色および黒紫色の物質を生ずる。しかしこれはアルコキシキノンではない。α-ナフトキノンが活性アルミナの存在下で自己縮合反応を起こしたものである。生成物は2, 2'-ビナフチル-1, 4:1', 4'-ジキノン, 1, 4-ナフタリンジオール, 2, 2'-ビナフチル-1, 1', 4, 4'-テトロール, 2, 4-エポキシ-2, 3-ジヒドロ-1, 4-ナフトキノンおよび未知の黒紫色物質からなる。
  • 杉森 滋
    1971 年 92 巻 4 号 p. 352-356
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    N, N-ジクロル-α-(p-置換フェニル)-p-置換フェネチルアミン〔1a~e〕はクロルベンゼン溶媒中,その沸点で炭素-炭素開裂をして,塩化p-置換ベンジル〔2a~c〕を62.5~64.8%の収率で,p-置換ベンゾニトリル〔3a~c〕を61.4~65.2%の収率で与える。トルエン溶媒中,その沸点で熱分解をすると溶媒が塩素化された生成物,すなわち塩化ベンジルの生成量が増加して,炭素-炭素開裂反応は減少する。N, N-ジクロル-α-(p-置換ベンジル)-p-置換フェネチルアミン〔10a~d〕はクロルベンゼン溶媒中,その沸点で炭素-炭素開裂して,塩化p-置換ベンジル〔2a~c〕とシアン化p-置換ベンジル〔11a~c〕を生成する。〔10a~d〕の置換基が変わっても,置換基の異なる2種の塩化物〔2a~c〕,およびシアン化物〔11a~c〕の収率は変わらない。炭素-炭素開裂反応にはこのように置換基による影響がないことからラジカルを中間体とした反応であると推論される。
  • 古元 貞好
    1971 年 92 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    N, N'-ニ置換チオ尿素と2, 3-ジクロル-5, 6-ジシアン-p-ベンゾキノン(DDQ)およびp-ベンゾキノンとの反応について研究を行なった。無水ニ塩化メチレン中,室温でN, N'-ニ置換チオ尿素とDDQとの反応を行なって黄色の生成物〔A〕を得た。この生成物〔A〕を過剰の2N水酸化ナトリウムで処理すると,対応するN, N'-ニ置換カルボジイミドを約70%の収率で与え,同時に2, 3-ジクロル-5, 6-ジシアンヒドロキノンおよび遊離イオウが得られた。一方, N, N'-ニ置換チオ尿素とp-ベンゾキノンとの反応を上記の条件で試みたが24時間後も反応は認められなかった。しかし2N塩酸の存在ではただちに反応が起こり油状または結晶性物質〔B〕が得られた。生成物〔B〕を2N水酸化ナトリウムとともに15分間還流してN, N'-ニ置換カルボジイミドが約75%の収率で得られ,同時に2-メルカプトヒドロキノンが約80%の収率で得られた。これら反応中間体である〔A〕および〔B〕について若干の考察を行なった。
  • 伊夫伎 英一, 小笹 茂, 北村 博彦
    1971 年 92 巻 4 号 p. 361-364
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ビフェニルの両環にニトロ基各1個が存在する6種のジニトロビフェニルについて,塩化スズ(II)および二硫化ナトリウムを用いて部分還元を行ない,還元剤の種類と被還元ニトロ基の相対位置との関係を検討してつぎの事実を明らかにした。(i)対称形ジニトロビフェニル類(2, 2'-〔1〕, 3, 3'-〔2〕, 4, 4'-ジニトロビフェニル〔3〕)および非対称形ジニトロビフェニル類(2, 3'-〔4〕, 2, 4'-〔5〕, 3, 4'-ジニトロビフェニル〔6〕)はいずれも塩化スズ(II)および二硫化ナトリウムによって部分還元が可能である。 (ii)塩化スズ(II)還元では未反応試料が残ったまま相当多量のジアミンを副生するが,二硫化ナトリウムではこれと対照的にジアミンの生成はほとんど認められない。 (iii)非対称形ジニトロビフェニル類〔4, 5, 6〕は塩化スズ(II)により各2種の部分還元物を与え,かつ2種の収率に大差が認められない。一方,二硫化ナトリウムでは高収率で1種のみを生じ,すぐれた還元位置選択性を示し, ニトロ基は4-位がもっとも還元されやすく,ついで3-位, 2-位の順になる。 (iv)塩化スズ(II)還元では二硫化ナトリウム還元で得られないモノアミンを与える利点がある。
  • 境野 芳子
    1971 年 92 巻 4 号 p. 365-370
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イミダゾール誘導体がクロルアニルと電荷移動錯体を生成することを見いだした。 27種のイミダゾール誘導体の最長波長部吸収極大値およびクロルアニル錯体のCT帯を分光度計を用いて測定し,イミダゾール誘導体の最長波長部吸収極大の位置またはそのモル吸光係数の値をクロルアニル錯体のCT帯の吸収極大値と相関させた。またイミダゾール誘導体の共役の度合のCT帯の位置への依存性に注目した。ねじれた構造を有する供与体のCT帯は平面構造を有する供与体のそれよりも高エネルギー位に存在する。ジクロルメタン中で測定したCT帯の電荷移動エネルギー(hν)と等式hν=0.81 Ip-3.88とからイミダゾール誘導体のイオン化ポテンシャルIpを求めた。 2-(p-メトキシフェニル)-, 2-(p-トリル)フェナントロ[9, 10-d]イミダゾールは四塩化炭素中でクロルアニルと反応し,それらのイミダゾリル遊離基を生成する。
  • 竹野 昇, 松崎 祥一, 森田 睦夫
    1971 年 92 巻 4 号 p. 371-374
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フルベン類の酸化オスミウム(VIII)による酸化反応の反応速度を,フルベン類の分子軌道法による局在化エネルギーを反応性の指標として用い,さらにEyringの絶対反応速度諭を適用して得た理論値と比較した。この場合,フルベン類と酸化オスミウム(VIII)との二分子反応における反応速度はビリジンを含むクロロホルムを溶媒として用い,25°Cで光学的方法により測定した。
    HMOでS=Oを用いて計算した理諭的相対速度はほぼ実験相対速度と一致する。さらに, Suttonの方法による分子軌道計算を用いた結果は実験といっそうよく一致することが明らかとなった。
  • 二川 修治, 中原 理人, 乾 利成, 桂 博二, 金子 武夫
    1971 年 92 巻 4 号 p. 374-376
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    さきに金子らはβ,β-ジメチルグリシド酸ナトリウム塩およびβ-エチル-β-メチルグリシド酸ナトリウム塩の加アンモニア開裂を検討し,α-アミノ-β-ヒドロキシ酸およびβ-アミノ-α-ヒドロキシ酸が生成することを報告した。本報では,グリシド酸同族体であるtrans-β-イソプロピルグリシド酸ナトリウム塩のアンモニア水による付加開裂を精査した。その結果,主生成物はα-アミノ-β-ヒドロキシ酸であるerythro-βヒドロキシロイシンであることが明らかとなった。
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