日本化學雜誌
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92 巻, 7 号
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  • 渡辺 昌
    1971 年 92 巻 7 号 p. 575-591
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    イオン性界面活性剤を含む有機溶媒(油相)と電解質水溶液(水相)の界面に外部より直流電圧(+5ないし-5V程度)を加えると,カチオン性界面活性剤では負の分極,またアニオン性界面活性剤では正の分極で界面張力の低下が認められる。これは広い意味での電気毛管現象と考えられ,電場による吸着物質の界面濃度の変化を,Gibbsの吸着等温式中の電気化学ボテンシャルを検討することによって論じることができる。さらに,この電気毛管曲線の形から吸着自由エネルギーや無機電解質のビルダー効果を論じて理論と実験の一致が得られた。油水界面で界面活性剤イオンはその極性基を水相内に突き込んだ形で配向吸着しているものと考えられるが,このモデルは水相中の対イオンとの結合や,両性界面活性剤のイオン解離状態におよぼす水相のpHの影響からも証明された。また,両性界面活性剤としてリン脂質を用いると,その界面における等電点,およびこれにおよぼす他のイオン,とくに抗生物質の影響がわかり,さらに,これらの対イオンと水素イオンの競争結合,あるいはStern電位の変化にともなう界面のpHの変化をも論じることができた。油水界面に電圧を加えて界面張力を低下させる効果は,さらに,電気乳化にも用いることができる。この場合,界面の両側に形成される二つの拡散二重層の厚さの比がエマルションの型を支配するようである。
  • 井上 嘉亀, 金治 幸雄, 中野 和彦
    1971 年 92 巻 7 号 p. 592-598
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    バテライトからカルサイトヘの転移を通じて炭酸カルシウムに生じる格子欠陥と数種のラジカルをESRを用いて追跡し,ϒ線やX線照射で報告されているESRのデータをもとに同定した。
    NO3-イオンを含む炭酸カルシウムに,紫外線を照射したり, 250°C以上に熱処理したりすると, NO32-ラジカルイオンが安定に得られた。とくに, NO3-イオンを含むバテライトでは,そのカルサイトヘの転移温度(約400°C)以上に熱処理すると, NO32-ラジカルイオンに加えて, NO3, CO3-, CO33-などのラジカルイオンも生成した。一方, NO3-イオンを含まないバテライトを空気雰囲気で250°C以上に熱処理すると, CO2-ラジカルイオンによると思われるESRスペクトルが得られ,さらに転移温度以上の処理では,酸素に依存するESRスペクトルが得られた。このスペクトルは500°Cから550°Cの熱処理で消え,かわってg=2.0026に鋭い一重線の吸収を得た。カルサイトでは, 500°Cの熱処理でg=2.0026に弱い吸収を得たのみであった。よって,バテライトがカルサイトヘ転移するとき,結晶構造の変化にともなって格子欠陥が生成し,そして結晶内の不純物の拡散を容易にして,多くの不純物中心が生成されると考えられる。
  • 大杉 治郎, 奥島 勝雄
    1971 年 92 巻 7 号 p. 598-601
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    フルオレノンの三重項状態のアミン類による失活過程についての直接的な知見を得るために閃光法により, n-ヘキサン溶液中で研究した。アミン類を含まないフルオレノン溶液に閃光を照射して得られる中間体の吸収は,フルオレノン三重項によるものと結論された。つぎにアミン類を加えた溶液では三重項の減衰が速く,アミン類による三重項の失活が確認された。その減衰速度のアミン類濃度への依存性から失活速度定数kqが求められた。この値は107~109l・mol-1・sec-1程度で,とくに芳香族アミンに関するそれは拡散律速に近い。一方, n-ブチルアミンは失活に効果的でない。また,これらの結果から,アミンのイオン化電位が低くなるにしたがい, kqが大きくなることが明らかにされた。これはアミン類によるフルオレノンー重項の失活に関してすでに知られている傾向と一致する。さらに失活速度定数と光還元反応の量子収率との比較から反応機構について論ずる。
  • 大杉 治郎, 原 公彦
    1971 年 92 巻 7 号 p. 601-607
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    50kbarまでの超高圧および450°Cまでの融点以下の高温の固相領域で,マロノニトリル,スクシノニトリルはいずれもシアン基の位置で重合して,〓という炭素と窒素の共役構造をもつ直鎖状重合体を生成する。
    重合には高圧力と同時に高温度が必要で,重合開始の最低条件はマロノニトリルでは23kbar, 170°C,スクシノニトリルでは25kbar, 200°Cである。高圧になるにしたがって,また融点以下の高温になるにつれて反応速度は増大する。
    生成物はいずれも熱的に安定で,普通の有機溶媒には不溶で, N, N-ジメチルホルムアミドだけには溶ける。いずれも半導体的な性質を有する。ポリアクリロニトリルの加熱によるシアン基の重合と比較して,これらジニトリル類のシアン基の重合機構および反応速度の検討を行なった。
    さらにまたイソフタロニトリル,テレフタロニトリルは無触媒ではきわめて重合し難く, 40kbar, 450°Cで開始剤HPO3の存在下で始めて重合することがわかった。
    圧力発生は正六面体型アンビル装置を用い,生成物および速度の解析は赤外吸収スペクトルのKBr錠剤法によって行なった。
  • 大杉 治郎, 原 公彦
    1971 年 92 巻 7 号 p. 608-612
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    高圧,高温の固相状態で,ポリアクリロニトリルおよびポリメタクリロニトリルの熱固相反応についての検討を行なった。ポリアクリロニトリルでは高圧下で得られた生成物は常圧下でのものより高い密度をもつ。これは高圧下では橋かけ構造(crosslinking)の生成物となっていることによるものと考えられる。ポリアクリロニトリルの低温側のシアン基の重合反応の機構についてとくに詳しく検討した。
    ポリメタクリロニトリルでは30 kbar, 300°Cでも無触媒ではポリアクリロニトリルと類似の環化反応はほとんど起こらない。
    一方,両物質ともに水の存在下では高圧下で容易に加水分解を受けてそれぞれ対応したアミドを生成することを見いだした。
  • 野々山 喜代子, 尾嶋 平次郎
    1971 年 92 巻 7 号 p. 612-617
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ビス{2-(メチルアミノアセトアミド)-1-プロパノラト}二銅(II),略記号:[Cu(MA pro)]2;ビス{2-(ジメチルアミノアセトアミド)-プロパノラト}二銅(II),略記号:[Cu(M2A pro)]2;ビス{2-(3-アミノプロビルアミノ)-2-オキソエタノラト}二銅(II),略記号:[Cu(AP oet)]2;ビス{2-[3-アミノプロビルアミノ]-2-オキソ-1-メチルエタノラト}二銅(II),略記号:[Cu(AP omet)]2;ビス{2-[3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ]-2-オキソエタノラト}二銅(II),略記号:[Cu(MAPoet)]2を単離し,それらの構造,性質を電子スペクトル,赤外吸収スペクトル,磁化率測定,および電気伝導度測定などの結果により明らかにした。また,これらオール化構造に特有の電荷移動吸収帯を指摘し,そのpH変化からオール化形成の条件を検討した。
  • 河合 恵, 早川 忠男, 北条 舒正
    1971 年 92 巻 7 号 p. 617-620
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    水溶性の(Sar)m-(Gly)n-(Sar)m型のブロックコポリマーをα-アミノ酸-N-カルボン酸無水物法で合成した。このコポリマー水溶液の各pHにおける銅(II)キレート生成反応をpH滴定曲線で観察し,ポリグリシ-銅(II)キレートの構造を可視吸収スペクトル,還元粘度,重水中の赤外吸収スペクトルにより調べ,キレート化した銅の含量は原子吸光スペクトルによって求めた。これらの測定の結果,pH7付近からポリグリシンのペプチド結合の窒素原子に銅(II)イオンがキレート結合し始め,pHの増加にともないキレート結合する銅の量も増加する。pH 13.70でグリシン6残基に対し1個の銅(II)イオンと結合する。キレート化すると還元粘度は急激に減少する。このキレート化したポリマーの重水中の赤外吸収スペクトルは1603cm-1にCu (II)-N-C構造に基づく吸収を示した。
  • 中川 良三, 大八木 義彦
    1971 年 92 巻 7 号 p. 620-625
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    5cmの予混合形スロットバーナーを備えた島津マルチチャンネル原子吸光フレーム光度計MAF-1形装置を用い,共存物質が多種類で量的にも多い水質汚濁試料への応用を目的としてその基礎的条件を調べるため,空気-アセチレン炎中にマンガンを含む水溶液を噴霧してマンガンの原子吸光を測定した。測定条件,酸の影響,共存元素の影響について検討した結果,測定条件は波長2795Å,中空陰極ランプの電流値8mA,スリット幅0.05mm(分散16.6Å/mm),空気圧1.4kg/cm2(空気流量6.7l/min),アセチレン圧0.4kg/cm2(アセチレン流量1.8l/min)とするのが最適であった。酸の影響は2.0N以下の範囲では酸の濃度変化による影響は見られなかった。共存元素の影響としては,銅,チタン,ケイ酸,コバルト,ニッケルが多量に共存する場合影響するが,塩化カルシウムを添加することにより抑制されることがわかった。
    以上の検討に基づいて,共存物質の種類も量も多い水質汚濁試料中のマンガンの定量法として,迅速性,簡易性の点でも,また精度,正確さの点でもほぼ満足すべき有効な手段である。
  • 鄭 玉瑕, 西野 徳三, 戸田 敬
    1971 年 92 巻 7 号 p. 626-629
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    ベニヒ(Chamaecyparis formosensis Matsum.)の材および根の精油成分のうち,とくに中性油分について精査した。この精油中から約30種類の化合物を確認したが,このうち22種類はベニヒから新たに見いだされた成分である。これらにはカメシノンやイソカメシノンをはじめ側鎖にエチニル基を有する7種類のノルセスキテルペン類の存在が確認された。その他4, 11-セリナジエンやT-ムロロールなど4種類の新化合物のほか,(+)δ-カジネンなども見いだされた。また小枝の成分についても述べる。
  • 的場 隆一, 八代 純江, 上田 寿一, 鈴木 周一
    1971 年 92 巻 7 号 p. 630-634
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    枯草菌α-アミラーゼ(Bacillus subtilis, EC. 3. 2. 1. 1)は,乾燥ベンゼンに懸濁して, 25°Cにおいて12時間放置しても安定に存在することが示された。
    乾燥ベンゼン中でジシクロヘキシルカルボジイミド共存下において,α-アミラーゼにn-ブチルアミンを作用させてn-ブチルアミド化α-アミラーゼを収得した。α-アミラーゼのカルボキシル基のうち7%をn-ブチルアミド化した場合, 4.1×10-3mol/lアミロース溶液においてSomogyi-Nelson法によって測定したアミド化α-アミラーゼの活性は,未処理α-アミラーゼに比較して170%に増大した。
    活性増大の内容を速度論的に検討した結果,アミド化による酵素作用の増大はMichaelis定数の減少によることが明らかにされた。
    一方,塩化ベンゼンジアゾニウムおよび塩化p-スルホベンゼンジアゾニウムをα-アミラーゼに導入すると酵素活性は顕著に減少したが,塩化p-カルボキシベンゼンジアゾニウム修飾α-アミラーゼは未処理酵素に比較して活性は増加する傾向を示し,熱安定性も増すことが示された。
  • 八木 直己, 吉川 彰一, 大前 巌
    1971 年 92 巻 7 号 p. 634-638
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1, 4-シクロヘキサジエン(1, 4-CHD)と塩化銅(I),塩化銅(II),臭化銅(III),硝酸銀または過塩素酸銀とをそれぞれ反応させると, C6H8(CuCl)2〔1〕, C6H8(CuBr)2〔2〕, C6H8(AgNO3)2〔3〕, C6H8AgClO4〔4〕の組成をもつπ錯体が得られた。1, 4-CHD, 1-メチル-1, 4-CHD, 1, 4-ジメチル-1, 4-CHDと塩化白金(IV)を室温で反応させると1:1構造をもつπ錯体C6H8PtCl2〔5〕, C7H10PtCl2〔6〕, C8H12PtCl2〔7〕が得られたが, 1, 4-GHDと塩化白金(IV)を60~70°Cの加熱条件下で反応させた場合にはポリマー構造をもつと考えられる1:2錯体〔8〕が得られた。
    また, 1, 4-CHD類とビス(ベンゾニトリル)パラジウム二塩化物との反応では〔5〕,〔6〕,〔7〕のような1:1構造の錯体は主生成物としては得られなかった。
    それぞれのπ錯体の構造および1, 4-CHD類の性状をノルボルナジエン, 1, 5-シクロオクタジエンなどの他の脂環式ジエンの場合と比較検討した。
  • 池田 仁, 宮本 皓之, 平野 孝夫, 石丸 寿保
    1971 年 92 巻 7 号 p. 639-643
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    いくつかのDL-2-(イソオキサゾリル)グリシン類を2種の方法で合成した。第一の方法は4-アセチルインオキサゾール類〔4〕の二酸化セレン酸化で得られる(4-イソオキサゾリル)グリオキシル酸〔7〕を,オキシム〔10〕にして還元する方法であり,第二の方法はインオキサゾリルアセトニトリル〔15〕からBaumgartenらの方法でDL-2-(イソオキサゾリル)グリシンメチルエステル〔16〕を得て、これを加水分解する方法である。
  • 小林 進二郎, 新屋 万寿雄, 中野 哲夫, 谷口 宏
    1971 年 92 巻 7 号 p. 644-651
    発行日: 1971/07/10
    公開日: 2009/02/05
    ジャーナル フリー
    1, 6-位にo-メトキシフェニル基の置換した2, 4-ヘキサジイン-1, 6-ジオール〔1〕とハロゲン化水素酸との反応で分子内環化した1-ベンゾフラニル-1-ハロブタトリエン〔3〕あるいは〔5〕が生成した。〔3〕および〔5〕はアルミナやシリカゲルに吸着されると容易に第二の分子内環化が起こり, 1, 2-ビス(ベンゾフラニル)アセチレン〔4〕となった。アリール基上の置換基による反応性の差異からこれら二つの分子内環化反応はいずれもメトキシル基酸素の非共有電子対が不飽和炭素上に生成するカチオンへ求核的に攻撃することによって進むと考察した。また吸着による第二段の環化反応は〔3〕および〔5〕の炭素-ハロゲン結合が吸着剤の極性によって分極されて加速されるという考察を加溶媒分解反応との関連によって行なった。
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