認知神経科学
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12 巻, 3+4 号
December
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第15回認知神経科学会(平成22年7月17日・18日開催、そのI)
特別講演
  • Ryan T. Canolty, Robert T. Knight
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 133-139
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    The past decade has seen several lines of research converge on the idea that phase-amplitude cross-frequency coupling (CFC)   may play an important functional role in local computation and long-range communication in large-scale brain networks.   The discovery that strong CFC exists in multiple brain areas including the neocortex, hippocampus, and basal ganglia suggests that CFC reflects functional activation of these areas.   The finding that the exact frequencies coupled together vary as a function of area and task imply that independent channels of coupling may coexist simultaneously during task performance.   The dynamic regulation of coupling strength indicates that CFC has the necessary temporal resolution required for the effective modulation of distinct functional networks.   Finally, the discovery that hippocampal CFC strength is correlated with learning task performance suggests that phase-amplitude CFC may help regulate the network of synaptic connections vital for memory and learning.   Together, these findings suggest a framework where phase-amplitude CFC parses neuronal computation into discrete chunks of activity that are ideal for attention, learning, and memory, and that these multi-scale building blocks are entrained to both rhythmic, external sensory and motor activity as well as the internal fronto-limbic activity associated with motivation, decision making, and memory.
教育講演
  • 岡本 泰昌, 岡田 剛, 吉村 晋平, 国里 愛彦, 西山 佳子, 土岐 茂, 小野田 慶一, 山脇 成人
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 140-148
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】 近年、うつ病の病態を捉えるために、種々の画像解析手法を用いて脳機能を直接測定しようとする研究が精力的に行われている。これらの研究結果から、様々な生理的な機能を持つ神経回路やそれらの回路の相互作用がうつ病の症状形成に関与していると考えられる。本稿では、われわれが機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてうつ病の認知に関わる神経生理学的基盤を明らかにするために行っている研究結果を中心に紹介する。まず、ストレスがうつ病の発症や症状持続に様々な作用を及ぼしていることから、ストレスの認知の性差について検討し、前頭前野、扁桃体が重要な働きをしていることを明らかにした。次に、既に妥当性や機能局在が明らかになっている神経心理課題や新たにうつ病の認知的特徴に関連して作成した認知課題を用いて、うつ病の脳活動の変化について明らかにした。さらに、これらの脳機能変化は治療反応性や回復の指標となる可能性について検証した。また、セロトニンのヒトの脳における神経生理学的役割に着目し、セロトニンは線条体-前頭前野回路を介して報酬の見通しを制御することを明らかにした。これらの研究結果を踏まえ、うつ病の認知、病態、治療に関わる神経生理学的基盤について考察した。
  • 福山 秀直
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 149-155
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】脳機能画像の解析において、問題となることを中心に、間違いやすい点や、初期からの進展について、まとめてみた。問題は、いろいろあるが、多くの場合、初期のころと異なり、コンピュータが速くなったため、簡単に結果を得ることができ、その解析のプロセスを理解しない研究が散見される。解析方法、統計学は、統計画像の基礎であり、それらについて概説し、画像解析法の問題点について述べた。最近の話題として、default mode networkについても触れた。
講習会
  • 福井 俊哉
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 156-164
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
     【要旨】遂行(実行)機能とは、「将来の目標達成のために適切な構えを維持する能力」と定義され、具体的には、1) 目標設定、2) 計画立案、3) 計画実行、4) 効果的遂行などの要素から成り立っている。換言すると、1) 意図的に構想を立て、2) 採るべき手順を考案・選択し、3) 目的に方向性を定めた作業を開始・維持しながら必要に応じて修正し、4) 目標まで到達度を推測することにより遂行の効率化を図る、という一連の行為を指す。
     遂行機能の総合検査法には、簡便なものとしてFrontal Assessment Battery (FAB)、詳細なものとしてBehavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome (BADS)などがある。さらに、遂行機能を包括的な機能と捉えた場合、その一部を構成する下位脳機能(とその検査法)として、分割注意、複数課題の処理能力(かなひろいテスト、Trail Making Test)、思考セットの変換(Stroop Test)、思考スピード(語想起)、帰納的推測(Wisconsin Card Sorting Test、Tower of Hanoi)などがある。
    遂行機能障害は前頭葉または線条体前頭葉投射系の障害で生じる。遂行実行機能障害の発現に直接関与する投射系は背外側前頭前野投射系であるが、外側眼窩前頭葉投射系の障害は脱抑制的・無軌道な行動を生じ、また、前部帯状回投射系の障害は無為・無関心を生じ、いずれも遂行機能を間接的に障害する可能性がある。
  • 板東 充秋
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 165-169
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
  • 武田 克彦
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 170-175
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】 視覚失認の患者をみたことのない方は、そのような患者のことを思い浮かべるのは難しい。それは視覚の仕組みをカメラの仕組みと同じに考えるからではないか。そのことを解説した。次に、統覚型視覚失認を示す患者の中に、一般的な常識とは異なり、視覚と行為が解離することがあることを示す例があり、それに触れた。心的イメージについては、いまだ議論が続いている。模写に障害があるものの、記憶を頼りにその物体を描くように言われると、およそ正しくできる例が報告されており、その例の意義について述べた。
ミニシンポジウム
  • 西 勝久
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 176-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】 最近、アルツハイマー型認知症の精神症状に対する抑肝散の効果が解明されはじめている。漢方では、老化を腎の衰えととらえ、心身相関を表にした五臓の色体表を用いると精神症状と身体症状、臓腑との関係を理解でき、病態をつかみやすくなり、さらに治療効果もあがる。桂枝加龍骨牡蠣湯や柴胡桂枝乾姜湯は、日常臨床において高齢者の精神症状に有効と思われ、今後のさらなる研究と解明を期待できる処方である。研究のためには病名治療も許容範囲であるとは思うが、漢方のよさは、病名にとらわれないところで発揮される。
  • 宮岡 剛
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 180-185
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】 抑肝散は古くから小児の癇癪、夜泣きや不眠症に対する効果が認められてきた生薬である。近年、認知症に伴う精神・行動障害に対する有効性に関する報告が増えている。我々は、境界性人格障害および遅発性ジスキネジアの症状改善にも有効であることや、治療抵抗性の統合失調症の増強療法にも有用であることを報告した。本稿ではこれらの臨床試験を総説するとともに様々な精神疾患への応用についての考察を加えたい。
原著
  • 杉下 守弘, 逸見 功, JADNI研究
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 186-190
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】 Mini Mental State Examination (MMSE)(精神状態短時間検査)は最も広く使用されている認知症スクリーニング検査のひとつである。2006年、新たにMMSEの日本版(MMSE-J)(翻訳、翻案、杉下守弘、2006)を作成した。MMSE-Jの妥当性を、JADNIに参加した健常者107名、MCI 154名、AD 52名の合計313名を対象として検討した。38医療施設の認知症を専門とする医師が被験者313名を健常者、MCI(軽度認知障害患者)およびAD(アルツハイマー病患者)に分類した結果と、その後、MMSE-Jの検査を行い、MMSE-Jの得点による2分類(23点以下を認知症の疑いありとし、24点以上を認知症の疑いなしとして2群を作る分類)を比較して、予測的妥当性を検討した。100-7版の予測的妥当性は、感度0.86、特異度0.89であった。逆唱版の予測的妥当性は、感度0.88、特異度0.94であった。
     MMSE-Jのスクリーニング時の検査成績と、6カ月後の再検査成績のある、142名(健常者71名、MCI 47名、AD 24名)について、MMSE-Jのスクリーニング時の検査成績と、6カ月後の再検査成績の相関係数を算出した。相関係数は、100-7版で0.81、逆唱版で0.77であった。JADNIおよびADNIがおこなっている4つの心理テスト(MMSE、CDR、Logical MemoryおよびGDS)をもとにした分類(健常者、MCI、ADの3群に分類。健常者とMCIをまとめて1群とし、ADを1群として2群とする。)とMMSE-Jの得点による2分類(23点以下を認知症の疑いありとし、24点以上を認知症の疑いなしとして2群を作る。)を比較し、予測的妥当性を検討した。100-7版の予測的妥当性は、感度0.83、特異度0.92であった。逆唱版の予測的妥当性は、感度0.83、特異度1.00であった。信頼性を検討するため、MMSE-Jの内部一貫性をみるため、アルファー係数を計算した。100-7版0.58、逆唱版0.47であった。100-7版と逆唱版の相関係数は高く、スクリーニング時に0.89であり、6か月後の再検査時には0.92であった。以上のデータはMMSE-Jが認知症のスクリーニング検査として十分に使用可能であることを示している。
  • Manami Honda, Keiji Hashimoto, Kohei Miyamura, Hiroyoshi Goto, Masahir ...
    2010 年 12 巻 3+4 号 p. 191-197
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/01/01
    ジャーナル フリー
    Objective: The objective of this study was to prove the validity and reliability of 9 of the 29 tasks on the new computerized assessment software, the Higher Brain Functional Balancer (HBFB).
    Methods: A total of 70 apparently healthy elderly subjects (aged 63 to 86 y;27 males, 43 females)   participated in this prospective study.   The association between the MMSE and HBFB was tested by Pearson’s correlation coefficient analysis;internal consistency of 9 tasks of the HBFB was checked by Cronbach’s coefficient alpha (Cronbach’s α), and test-retest reliability of each task was established using intra-class correlations (ICC).   For test-retest reliability, subjects were administered 9 tasks of the HBFB twice at a 1-month interval.   The test-retest HBFB quotient, data on age, length of education, and results of the Mini-Mental State Examination (MMSE)   were recorded.
    Results: Pearson’s correlation coefficient analysis showed that the state of cognitive function according to the total scores of the MMSE correlated significantly with the total quotients of the HBFB (r=0.356, p=0.002).   The 9 tasks of the HBFB had appropriate internal consistency (Cronbach’s α=0.735).   Test-retest reliability analysis indicated that the “modified Trail Making Test”, “Flashing-Light Memory”, “Story” and “Route-99” tasks on the HBFB had fair-to-good reliability (ICC=0.364-0.742) ;however, reliability was poor with regard to scores of the other 5 tasks.
    Conclusions:This study provides evidence for the validity of total quotients of all tasks for screening of total cognitive function and for the reliability of 4 of the 9 tasks from the HBFB with regard to cognitive function in elderly people.
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