認知神経科学
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14 巻, 3 号
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第16回認知神経科学会
シンポジウムⅠ-03
第17回認知神経科学会
会長講演
シンポジウムⅠ-01
  • 川口 英夫
    2013 年14 巻3 号 p. 149-156
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    近年普及してきた新しい脳機能計測法の一つであるNIRS(Near Infra-RedSpectroscopy)は、安全かつ低拘束状態で比較的簡便にヒトの脳機能を測定できるため、リハビリテーションなどの臨床現場や認知心理・教育などの分野で活用できるツールとして期待されている。一方、報告者は近年、ヒトの行動解析を通した『社会能力の定量化』を試みている。例えば、『社会能力』を把握するため、『社会的相互作用』が発現する場として2 人で実施するゲームを用いた。具体的には、積み木を用いたバランスゲームであるジェンガを採用した。この場面において、社会能力に困難のある高機能広汎性発達障害児(HFPDD : High FunctioningPervasive Developmental Disorders)と、社会能力に困難のない定型発達児の行動特徴を比較することで、『社会能力に関連する行動指標』の抽出を目指した。検者(成人)を一定とし、対戦相手であるHFPDD 児または定型発達児のゲーム時の行動特徴を比較した。モーションキャプチャ・システムを用いて可視化した行動軌跡について、場面間での行動特徴の相違に関しても検討した。さらに、重要な社会的シグナルと考えられる視線の方向および発話をコーディングし、行動データと比較した。行動解析の結果、対戦型ゲーム(ジェンガ)場面において、相手の番でも、相手の指先を追ってしまう行動が多く見られた。これは『行動の引き込み(entrainment)』が生じたと考えられる。さらにこのゲーム場面において、HFPDD 児の頭部の運動範囲は検者に比して狭く、定型発達児のそれは検者と同等であることが明らかとなった。実際に、検者の頭部の運動範囲で規格化したHFPDD 児と定型発達児の運動範囲の平均値は、危険率0. 1 %で有意に異なった。したがって、頭部の運動範囲を指標として、HFPDD 児と定型発達児の識別ができる可能性がある。次に、2 台のNIRS を用いて、上記の対戦型ゲーム場面において、ゲーム中の2 人の脳活動を同時に計測することを試みた。
シンポジウムⅠ-02
  • 武田 湖太郎, 佐藤 貴紀, 南部 功夫, 山田 亨, 梅山 伸二, 大高 洋平, 井上 芳浩, 大須 理英子, 和田 安弘, 加藤 宏之
    2013 年14 巻3 号 p. 157-161
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    脳卒中の後遺症のひとつに片麻痺があるが、機能が障害されたときや回復したときには脳活動に変化が生じていると考えられている。本稿では、Near-infraredSpectroscopy(NIRS)を用いて片麻痺例の脳活動を計測した研究を紹介する。われわれはNIRS の利点として挙げられている簡便性・低拘束性を活かし、片麻痺例を対象として経時的に脳活動を計測した。軽度片麻痺例では、急性期において片手運動時に両側一次感覚運動野が広く活動しており、運動機能が回復した発症後約1ヶ月以降では、健常者と同等の脳活動パタンがみられることが示された。NIRS 計測では、約30 mm 間隔で近赤外光照射Probe と検出Probe を配置し(Long-Ch)、脳を透過した光の変化量を検出することでヘモグロビン濃度長変化を検出するが、その計測過程で頭皮血流信号がアーチファクトとして混入することが近年問題視されている。この信号はProbe 間距離の短い計測チャネル(Short-Ch)により計測できるため、これらを運動関連領域全域に配置して計測を行い、頭皮血流がどのように分布するのかを調査した。また、Long-ChとShort-Chを同時に配置し、頭皮血流信号を一般線形モデルのデザインマトリクスに組み込むことで、片手運動時のNIRS 計測データから皮膚血流成分を除外する手法を開発したので報告する。
シンポジウムⅠ-03
  • 下田 信明, 武田 湖太郎, 加藤 宏之
    2013 年14 巻3 号 p. 163-167
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    高次脳機能障害のリハビリテーションにおける訓練課題となる可能性のある課題に心的回転課題がある。図形の心的回転課題は、立体を2 次元に投影した一対の図形を異なった回転角度で呈示し、その2 つの図形の同異を判断させる課題である。手の心的回転課題は、手の写真や線画を様々な回転角度で呈示し、その提示された手が左手か右手かを判断させる課題である。われわれは、NIRS を用いて図形の心的回転課題遂行時の脳機能を検討し、健常右手利き者は前頭葉、頭頂葉ともに右大脳半球優位を示し、左手利き者は前頭葉、頭頂葉ともに、わずかな左大脳半球優位を示すことを明らかにした。また、脳血管障害片麻痺患者と健常者を対象として、手の心的回転課題遂行時の脳機能についても検討し、全対象者に課題依存的な酸素化ヘモグロビン濃度長変化の一過性の増加が、前頭葉、頭頂葉の広い範囲でみられることを示した。手の心的回転課題遂行時に被験者は自身の手の運動をイメージしている可能性があることを利用して、複合性局所疼痛症候群や幻視痛による疼痛軽減に用いる試みが報告されており、また失行患者や半側無視患者ではこの課題の正答率が低いことが報告されている。手の心的回転課題は、脳損傷者にとって取り組みやすい課題であるため、そのリハビリテーションへの臨床応用の可能性がある。今後、本課題に関する基礎的研究を進めながら、臨床応用の可能性を探っていきたい。
シンポジウムⅠ-04
  • 谷口 敬道, 平野 大輔
    2013 年14 巻3 号 p. 169-176
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    近赤外分光法(near-infraredspectroscopy ; NIRS)は、「自然な状態の被検者の大脳皮質を、非侵襲的にリアルタイム計測する技術」であり、装置の可搬性が高くベッドサイドやリハビリテーション室など測定場所を自由に選択できる。測定原理による限界はあるがリハビリテーション領域で必要な脳機能情報を得ることができる。特に歩行などの粗大運動を含む人間の作業・活動中の脳機能情報を得ることができる唯一の手法であることは明白であり、その使用目的、使用方法による誤用を避ける努力を使用者が心がけながらNIRS の積極的な活用が求められる。重症心身障害児・者の応答性は、力動感を伴うわずかな印象であることが多いことから、複数の療育者が確認し、その応答を事実として受け止めながら療育の手立てとする。しかし、この時、療育者は、自分の介入による対象児・者の応答性に自信が持てないこともある。NIRS は、日常的な療育場面における測定が可能であり、測定課題は、家族、療育者が確認したい課題をそのまま設定することが可能という特長がある。対象児・者の課題に対する応答性を脳血流動態として客観的な情報を得ることと、関与者である家族や療育者の観察結果を合わせることによりエビデンスの高い療育方法を選定する可能性が考えられる。本稿では、2 事例の測定結果を示しながら重症心身障害におけるNIRS の意義について述べる。
シンポジウムⅡ-05
  • 西村 幸香
    2013 年14 巻3 号 p. 177-183
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    精神疾患における客観的指標による診断は、適切な治療の選択のために重要であるが、現時点では確立していない。近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による脳機能計測法は、自然な姿勢・環境で実施できるため、非侵襲的で簡便な精神疾患の臨床検査として、臨床応用可能性の高い測定法のひとつである。2009 年に厚生労働省の先進医療検査として承認された、「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」では、言語流暢性課題遂行中のNIRS 変化信号パターンの違いに注目し、うつ症状を呈する患者について、約7〜8割の精度で大うつ病性障害・双極性障害・統合失調症の操作的診断基準(DSM)と合致した結果を示すとされている。本稿では、脳画像研究の臨床応用を進める際のステップの1 つとして挙げられる先進医療制度と承認内容を紹介するとともに、東京都立松沢病院における取り組みの現状について報告する。現状では、先行研究で報告された精度(精神科医による臨床診断とNIRS 変化信号パターンによる分類の一致率)よりも低下する傾向であった。その理由として、研究と日常臨床における対象者の違いや併存疾患の存在、大うつ病性障害における状態像の反映、双極性障害における診断の確定の難しさや各エピソードの影響、統合失調症における臨床病期による波形パターンの違いが考えられた。
シンポジウムⅢ-03
  • 神作 憲司
    2013 年14 巻3 号 p. 185-192
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー
    我々は、非侵襲型ブレイン−マシン・インターフェイス(Brain-Machine Interface :BMI)研究を行い、特定の視覚刺激を注視した際に生じるP300様脳波を利用した環境制御システム(Environmental Control System : ECS)を開発している。このBMI-ECSに用いる視覚刺激の強調表示の手法として、これまでの輝度変化に加えて色変化(緑/ 青)を用いることで、使用感および正答率を有意に向上させることに成功した。また、当該課題遂行中のEEG-fMRI 信号を計測したところ、右の頭頂後頭部を中心として、輝度変化に加えて色変化(緑/ 青)を用いたことによる特徴的な脳活動が見いだされた。さらに、これらのBMI 技術と拡張現実(AugmentedReality : AR)技術を統合させ、AR-BMI 技術を開発した。これにより、操作者の環境を脳からの信号で制御するこれまでのBMI に加えて、代理ロボットを介してリモート環境を制御することをも可能とした。我々は、このBMI-ECSの実用化に向けて、着脱容易で長時間使用可能な脳波電極、独自の脳波計およびシステム(ソフトウェア)等を開発し、これらを用いて臨床研究をすすめている。こうしたBMI 技術をさらに研究開発していくことで、脳からの信号で操作できるインテリジェントハウスへと繋げることも可能であり、麻痺を伴う患者・障害者の活動領域拡張へと貢献していくことが期待できる。
原著(症例報告)
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