【要旨】実行機能を中心に、神経心理学的検査の発達的研究と、発達障害を対象とした神経心理学的研究の知見をいくつか紹介した。発達的研究では、多くの検査得点に明瞭な発達的変化が認められ、しかも特に強い変化を示す年齢域は検査得点によって異なることが示された。特定の検査得点と他の検査得点の相関を検討すると、被験者の年齢群によって相関を示すかどうかが異なる場合があり、検査結果の解釈に注意が必要である。
ADHDとPDDを対象とした研究では、多くの検査得点が対照群との差を示すだけではなく、そのプロフィールは病型によって異なっていた。就学前の複数の検査得点を用いて就学後の読字能力を予測でき、発達性読字障害のリスクを早期に判断できる可能性が示された。
年齢に応じた標準得点を揃えることが難しく、また年齢ごとの各検査得点が反映する認知機能が十分に明らかにされていないことが今後の課題である。また、発達障害の諸病型に関して検査の感受性や特異性に多くを期待できず、臨床上の重要性は限られそうである。
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