認知神経科学
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招待講演
  • Goldberg Elkhonon
    原稿種別: 招待講演
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 129-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    A new conceptual framework for understanding hemispheric specialization across evolution is proposed, and its multiple theoretical, clinical, and methodological implications are considered. According to the traditional understanding of hemispheric specialization, the “dominant” (usually left) hemisphere is in charge of language, whereas the “subdominant” (usually right) hemisphere is in charge of non-verbal, particularly visuo-spatial functions. While not incorrect, this understanding cannot be regarded as complete, since it does not permit any consideration of evolutionary continuities. Division of the brain into two hemispheres is not unique to humans ; it is a pervasive feature of the central nervous system throughout evolution. A number of morphological, cellular, and biochemical differences between the hemispheres exists, many of which are shared by multiple species. Therefore, it is only logical to assume that functional differences between the two hemispheres also exist and that they are invariant across multiple species. It is proposed that the fundamental functional difference between the two hemispheres is captured by the distinction between cognitive novelty and cognitive routines. According to this view, the left hemisphere is dominant in cognitive processing guided by previously formed, entrenched representations and strategies. In contrast, the right hemisphere is dominant for dealing with novel cognitive challenges, to which none of the previously formed routines or representations are readily applicable. The distinction between cognitive novelty and cognitive routines is universal and applicable to any organism capable of learning, unlike the verbal-nonverbal distinction which is applicable only to humans. Within this framework, language-mediated cognition is understood as a special case of cognition mediated by previously formed cognitive routines, verbal and non-verbal alike.

会長講演
  • 武田 克彦
    原稿種別: 会長講演
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 140-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    【要旨】最初に古典神経心理学の歴史的を振り返り、Gallがそれぞれの明瞭に異なる諸機能が大脳の明瞭に異なる脳回が担い、古典神経心理学の発展の先駆けとなったことを述べた。次にWernickeによる立体覚の障害された症例報告を紹介した。この症例報告を例に、古典神経心理学に対する批判をあげてそれにつき考察した。まず数量化や標準化のなされていない検査を用いているという批判につき、今後も質的研究は奨励されるべきとの考えを述べた。多数例の検討が必要であるという批判に対して、新しい診かたと正確な記述を必須とする少数例の検討の必要性を強調した。観察より実験が大事とする点では、今後も臨床的観察から明らかにされた所見を基礎に、実験的さらに解剖学的研究が導かれると述べた。Wernickeの報告後の中心後回の役割についての研究として、岩村らの研究を紹介した。それを受けて中心後回脳損傷例についての筆者らの検討に触れて、このような臨床研究と実験との往復が必要なことを述べた。Wernickeは症例報告例では触知心像が消失していると考察したが、これは現代でも支持される表象説につながる考えである。だがこの表象説に対しては疑義があることを論じた。最後に今後古典神経心理学を乗り越えるには、互いに干渉しあわない情報の流れだけを想定するのではなく、系の全体ないし他の系からの影響を受けることを考慮する考え方を導入する必要性を述べた。

教育講演
  • 小野内 健司
    原稿種別: 教育講演
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 149-156
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    【要旨】神経心理学的症状は多岐にわたる。神経心理学的なスクリーニング診察をしないで、やみくもに多くの神経心理学的検査を実施しても、患者の障害は明らかにはならず、かえって検査結果の解釈を誤ることもある。脳損傷患者は疲れやすいため、はじめて会う患者の神経心理学的なスクリーニング診察を短時間で行うには、コツが必要である。

     失語症患者の診察では、WAB失語症検査を参考にして診察すると失語症タイプ分類をするうえで有用である。すべての項目を実施すると長時間を要するので、その患者の障害レベルから課題を抜粋して実施し、「流暢性」「話し言葉の理解」「物品呼称」「音読・読解」「書字」の各言語操作能力の障害程度を大まかに把握する。その際、流暢性の評価は喚語困難や錯語の自己修正などにより発話が停滞していない部分で評価する。半側空間無視のスクリーニングでは線分二等分試験や線分抹消試験、線画の模写などを施行する。失行のスクリーングでは、検者の行う動作を模倣させて誤りがないか確認する。視覚性失認を呈する患者では、物品を見てもそれが何か分からず、形態の類似した他の物品に見間違えることがある。しかし触るとその物体が何か分かる。これらのスクリーニング診察を一通り終えたのちに、さらに詳しく障害を評価する目的で、その患者にあった既存の神経心理学的検査を実施すべきである。

セミナー
  • 大槻 美佳
    原稿種別: セミナー
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 157-164
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    【要旨】言語のしくみをめぐるトピックスを3つとりあげ、その諸問題を、言語症候から論じた。第一には言語の機能局在をどう考えるか、第二にはカテゴリー特異性・モダリティー特性をどう考えるか、第三には文処理の機能をどう考えるかである。言語の機能局在については、言語症候を、要素的症候に分解することが合理的であると考えた。要素的症候と責任病巣は以下である ; ① 発語失行/失構音(左中心前回中~下部and/orその皮質下)、② 音韻性錯語(左上側頭葉回後部~縁上回~中心後回)and/orその皮質下、③ 単語の理解障害(左側頭葉/中前頭回and/orその皮質下)、④ 呼称(左下前頭回、側頭葉and/orその皮質下)。カテゴリー特異性のある単語の理解・呼称障害は、その対象と関わる際に用いる入出力処理の部位と関係していた。これは、カテゴリー特異性と、モダリティー特異性が、密接に関わっていることを示している。このことより、言語の意味・概念の処理は、入出力と切り離せない構造をしていることが示唆される。文処理に関しては、臨床の諸データから、‘文法’と一括りにできない多様な側面があり、様々な脳部位が関与していることが示された。

原著
  • 鈴木 浩太, 稲垣 真澄
    原稿種別: 原著
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 165-171
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    【要旨】本研究では、読み書きの困難さを主訴に受診した8歳10カ月男児をMovement Assessment Battery for Children-Second editionにより発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder : DCD)であると診断し、対象児の特性に合わせた漢字指導を実施した。対象児は、知的水準よりも、読み書きの学力が低く、読み書きの困難さがあることが示された。読み書きの困難さの背景に、運動の不器用さと視知覚能力の低下が想定された。そこで、書字表出を最小限にし、良好な認知機能で漢字形態の知覚を補うことを目的として、聴覚法(音声言語化して覚える方法)と指なぞり法(大きな文字を指でなぞる方法)を併用した。漢字指導は、9歳10カ月~10歳10カ月の期間に実施し、小学校3年生の配当漢字を用いた。その結果、対象児は、多数の漢字を習得し、DCD児に対する漢字指導において聴覚法と指なぞり法の併用が有効である可能性が示唆された。

総説
  • 植野 仙経, 上田 敬太, 村井 俊哉
    原稿種別: 総説
    2018 年 20 巻 3+4 号 p. 172-181
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    【要旨】1900年ごろ、Kraepelinはその『精神医学教科書』において人物に対する見当識の障害を含むさまざまな見当識障害を記述した。また見当識障害について、健忘やアパシー、認知機能の低下が関与するものと妄想性のものとを区別した。その後、精神医学において妄想性人物誤認の現象は既知性や親近感・疎遠感といった気分ないし感情の側面から考察されるようになった。また1930年前後にフランスの精神医学者が記述したカプグラ症候群とその類縁症状は、1980年前後に妄想性同定錯誤症候群としてまとめられ、神経心理学的なアプローチが盛んに行われるようになった。1990年、Ellisらは同定錯誤に関する鏡像仮説を提唱した。それによれば、相貌の認知には顕在的認知の経路(相貌の意識的な同定)と潜在的認知の経路(相貌に対する情動的応答)とがあり、前者が損なわれれば相貌失認、後者が損なわれればカプグラ症状が生じるという鏡像的な関係がこれらの症状にはある。この仮説は妄想性人物誤認において感情や情動に関わる異常が果たす役割を重視しているという点で、伝統的な精神医学と同様の観点に立っている。一方でKraepelinの見解が示唆するように、妄想的ではない人物誤認(人物に対する見当識障害)にはアパシーや健忘を背景として生じる場合が多い。

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