人間ドック (Ningen Dock)
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24 巻, 5 号
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巻頭言
総説
原著
  • 曽山 ゆかり, 山田 亮詞, 西川 晋史, 岡村 朋子, 真田 牧子, 坂口 玲子, 伊東 香代, 松田 武史, 木長 健, 三浦 正樹, ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1017-1023
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:メタボリックシンドローム(MS)は肥満,高血圧,脂質代謝異常,高血糖が複数合併する状態である.多数の研究により,MSが動脈硬化性疾患やその他多岐に及ぶ疾患発症に寄与することが示されている.本研究では,Body Mass Index(BMI)・腹囲径およびMSと,肥満に関連があるとされる消化器4疾患の相関を評価した.
    方法:2007年度1年間に当健診センターの人間ドックを受診した男性2,068名,女性1,305名を対象とした.逆流性食道炎(RE)と食道裂孔ヘルニア(EHH)は胃内視鏡検査により,胆石(GS)と脂肪肝(FL)は腹部超音波検査により診断した.MSの診断には腹囲径高値を必須とするか否かで異なる2つの基準を用いた.受診結果をもとに,BMI・腹囲径およびMSと上記消化器4疾患(RE,EHH,GS,FL)の各有所見率の相関を分析した.
    結果:男女ともにBMIはGSとFLの有所見率と,腹囲径はFLの有所見率と相関を示した.さらに,男性のみに腹囲径はREとEHHの有所見率と相関を示した.MSは2つの診断基準ともにFLの有所見率ならびに重症度と強い相関を示した.
    結論:BMIはGSとFL,腹囲径はRE,EHHとFLの各独立した発病予測因子となり,MSはFLの重症度予測因子となる可能性が示唆された.BMI・腹囲径高値者に対する消化器疾患の早期発見・早期介入や,MSにFLを合併する者へのMSの厳重な管理が重要と考えられた.
  • 小田 栄司, 河合 隆
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1024-1030
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:非糖尿病健常日本人において,年齢別,性別に解析した肥満指標と代謝性危険因子との間の相関係数を比較して,特徴を得る.
    方法:心血管疾患の既往がなく,降圧薬または脂質異常症改善薬を投与されていない非糖尿病日本人において,男女間,若年(50歳以下)男性と若年女性の間,高齢(51歳以上)男性と高齢女性の間,若年男性と高齢男性の間,若年女性と高齢女性の間で,肥満指標と代謝性危険因子との間の,年齢,喫煙,飲酒状態で補正した偏相関係数を比較した.
    結果:男女とも,代謝性危険因子との相関関係において,body mass index(BMI),体脂肪率および腹囲の間に有意差を認めなかった.肥満指標と中性脂肪,HDLコレステロール,gamma glutamyltransferase(GGT)およびalanine aminotransferase(ALT)との間には,女性と比べて男性に有意に強い相関がみられた.肥満と空腹時血糖との相関は,50歳以下では男性よりも女性で有意に強く,51歳以上では女性よりも男性で有意に強かった.
    結論:非糖尿病健常日本人において,肥満と中性脂肪,HDLコレステロール,GGTおよびALTとの相関は女性と比べて男性で有意に強く,肥満と空腹時血糖との相関は50歳以下では男性よりも女性で有意に強かった.
  • 細川 治, 真田 治人, 海崎 泰治, 辰巳 靖
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1031-1035
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:胃内視鏡検査の観察診断精度向上目的に実施した種々の方策の評価を試みた.
    方法:1997年から2000年までの内視鏡生検13,436例と2005年から2007年までの内視鏡生検7,448例を検討対象とした.生検病理診断をゴールドスタンダートとして,検査医の観察診断を検討した.両期間のあいだに,標準的な検査方法の確立,画像のダブルチェック体制,偽陰性および偽陽性画像を用いた症例検討会などの種々の研修を実践した.
    結果:内視鏡生検率は1997-2000年の36.1%から2005-2007年の27.9%に減少した.研修を受けた医師の偽陰性率は1997-2000年の34.8%から2005-2007年の23.9%に低下し,陽性反応的中率は研修不十分医師と比較して,研修済み医師の1997-2000年56.4%,2005-2007年60.9%は有意に高率であった.
    結論:研修により内視鏡による胃がん拾い上げ診断能の向上が示された.人間ドック施設においては内視鏡画像を事後画像点検や研修に利用することが望まれる.
  • 古賀 正史, 村井 潤, 斎藤 博, 向井 幹夫, 森脇 優司, 山本 徹也, 笠山 宗正
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1036-1040
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:糖尿病患者では尿中尿酸排泄増加のために血清尿酸は低値を示すことが知られている.今回,2型糖尿病患者における血清尿酸値と血糖コントロール指標[空腹時血糖,HbA1c,1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)]との関連を検討した.
    対象:当院人間ドック受診者のうち,2型糖尿病男性39名(年齢55.7±4.1歳,空腹時血糖124±32 mg/dL,HbA1c 6.5±1.2%,1,5-AG 12.1±7.5μg/mL,血清尿酸 6.4±0.9 mg/dL)を対象とした.高尿酸血症・痛風の薬物治療例は除外した.
    結果:血清尿酸値に対するステップワイズ多変量解析にて1,5-AGはトリグリセリド,HDLコレステロールとともに独立した正の説明変数であった.また,1,5-AGに対する多変量解析にて血清尿酸値はHbA1cとともに独立した説明変数であった.血清尿酸値は1,5-AGと有意の相関を認めた(R=0.406,p=0.0104)が,空腹時血糖, HbA1cとは有意の相関を認めなかった(各々R=-0.225,p=0.1694;R=-0.230,p=0.1594).
    結論:2型糖尿病患者では血清尿酸値と1,5-AG値は尿糖排泄を介した共通の機構により調節されることが示唆された.
  • 岩﨑 武輝, 奥村 次郎, 山本 嘉昭, 岡野 有希子, 水口 善夫, 宇野 正敏
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1041-1047
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:武田病院グループに参加している5健診施設における子宮頸がん検診受診者の分析と,要精検者に対するその後の指導について適切に行われているかを検証し,今後の課題を検討した.
    方法:5健診施設に平成19年6月より1年間に受診した子宮頸がん検診受診者9,866人について,日母の細胞診Class分類を用いて分析し,要精検者への受診勧奨とその後の受診実態などを検討した.
    結果:①受診者の年齢分布は,40歳代が一番多く2,999人で30.4%を占め,次いで,50歳代で2,586人,26.2%を占めた.②細胞診ClassⅢa以上と判定された要精検者は,45人を数え,Ⅲa:37人,Ⅲb:4人,IV:2人,V:2人を占め,受診者全体の0.46%を占めた.③要精検者の年齢分布は,30歳代が16人と一番多く35.6%を占めた.④要精検者については,全員に結果報告書で受診勧奨を行った.⑤受診勧奨した要精検者は3施設に見られたが,医師の紹介状の記載は4例のみで,うち1例は検査・処置をした報告に留まり,3例は返事がなく実態が不明であった.
    結論:子宮頸がん検診受診者9,866人のうち,受診者の年齢分布は,40歳代が一番多く2,999人で30.4%を占めた.細胞診ClassⅢa以上の要精検者は45人,0.46%を占めた.要精検者に対し,すべてに結果報告書にて受診勧奨を行ったが,ほとんど紹介状の記載がなかったため,その後の把握が十分ではなく,今後医療機関への紹介状を必ず記載し最終結果についても情報を得る必要性を感じた.
  • 田伏 洋治, 岩﨑 武輝, 武田 隆久, 和田 公平, 松本 淳, 西村 修
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1048-1053
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:咽頭梨状窩瘻は、胎生期の遺残で,急性化膿性甲状腺炎の感染ルートとなる異常所見である.主に小児に発症するため,成人の健診において無症状で発見される咽頭梨状窩瘻に関しては,頻度や急性化膿性甲状腺炎発症のリスクなどの健診判定基準は明確ではない.我々は,最近3年間に健診の上部消化管X線検査で5例に無症状の咽頭梨状窩瘻を発見した.そこで,判定と事後指導につき,関連論文から検討したので報告する.
    方法:関連論文はPubMedおよび医学中央雑誌から,成人,咽頭梨状窩瘻,急性化膿性甲状腺炎をキーワードに検索した.
    結果:論文検索からは,無症状で発見される咽頭梨状窩瘻の健診判定基準に関する記述は見られなかった.発症例の論文では,成人の急性化膿性甲状腺炎は,まれな疾患であり典型例では診断に苦慮しないが,注意すべき点は,1)小児期に既往があり長い無症状の期間の後発症する例があること,2)典型的な急性化膿性甲状腺炎の症状を示さない例,亜急性甲状腺炎に類似した例があり注意が必要である,などが問題点であった.
    結論:咽頭梨状窩瘻の異常所見が認められたときの判定と事後指導においては,指導区分は(B),事後指導は,急性化膿性甲状腺炎の発症は極めてまれであるが,頚部(特に甲状腺)に有痛性腫脹あるいは化膿性疾患が発症した場合には,医師にこの異常を持つことを告げることが早期診断に役立つ,との情報を与えておく.発症しても適切な診断・治療により生命を脅かす疾患ではないことから,不安を与えない説明を心がける.
  • 人間ドック施設における呼吸機能検査に関する調査委員会 , 大森 久光, 福田 敬, 岩崎 榮, 福地 義之助, 工藤 翔二, 山門 實, 相 ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 1054-1059
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
    目的:「人間ドック健診成績判定及び事後指導に関するガイドライン」の改訂に伴い,呼吸機能検査の評価に使用される新・旧判定基準による呼吸器疾患,ことに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の判定について比較することにより,新基準の有用性を検証する.
    方法:日本人間ドック学会に所属する7施設を受診した119,235名(男性79,235名,平均年齢50.4±10.7歳;女性40,000名,50.0±11.0歳)の集積データから,新・旧基準により%1秒量,%肺活量,1秒率を算出して,COPDの判定結果を比較した.
    結果:D判定(受診勧奨)と判定された者は,旧基準では0.9%(男性1.1%,女性0.5%)であったのに対して,新基準では13.2%(男性14.4%,女性10.7%)に増加した.喫煙歴,呼吸器疾患既往歴有無別の検討では,C判定(積極的支援)からD判定に変更された割合は,呼吸器疾患の「既往歴あり」かつ「喫煙者」が男女ともにそれぞれ28.7%,19.1%と最も頻度が高かった.
    結論:新基準の導入により,COPDの早期発見が可能となった.この結果は,人間ドック健診施設での呼吸機能検査の判定には,新ガイドラインの判定基準,すなわち%1秒量による判定を用いることが不可欠であることを示すものである.
第22回人間ドック認定医研修会
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