人間ドック (Ningen Dock)
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28 巻, 5 号
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巻頭言
総説
  • 髙橋 英孝
    2014 年 28 巻 5 号 p. 732-743
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドックデータベース(2009年)を用いて,脂質異常症,高血圧,糖尿病で薬物療法中の者における治療状況を明らかにした論文のレビューを行った.管理目標値は日本動脈硬化学会,日本高血圧学会および日本糖尿病学会によるガイドラインに従った.
    結果:1. 脂質異常症治療者(17,694人)の脂質管理状況:管理目標達成率は,LDL-C 72.3%,TG 69.7%,HDL-C 94.6%であった.2. 高血圧治療者(31,754人)の血圧管理状況:管理目標達成率は45.2%であった.また,140/90mmHg未満の割合は69.8%であった.3. 糖尿病治療者(7,020人)の血糖管理状況:管理目標達成率は44.8%であった.4. 生活習慣病治療者におけるコントロール不良に影響する要因:脂質異常症,高血圧,糖尿病で治療中にも関わらずコントロールが不良な要因として複数の生活習慣が挙げられた.
    結論:我が国の生活習慣病治療者の管理状況は十分とはいえない.疾病の進展および合併症発症を予防するためには,行動変容を含むさらに厳格な治療が必要である.
原著
  • 長野 美里, 村松 智恵, 鳥羽山 睦子, 杉浦 弘和, 武藤 繁貴
    2014 年 28 巻 5 号 p. 744-748
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:大腸内視鏡検査受診者の苦痛や身体への侵襲が少ない前処置方法の1つとして体位変換を取り入れ,その有効性を検討する.
    方法:2010年5月~2011年6月までに1次検診にて免疫学的便潜血陽性となり,下部消化管内視鏡検査が必要となった者について,前処置時に左側臥位を取り入れる群(左側臥位5分群と左側臥位15分群)と左側臥位を取り入れない群(非実施群群)の3群に割り付け,検査当日の腸管洗浄剤内服開始から検査可能と判断した平均前処置時間,検査当日の腸管洗浄剤の平均内服量,内視鏡検査時の平均腸管残留液吸引量,腸管洗浄度の比較検討を行った.
    結果:腸管洗浄剤内服開始から検査可能と判断した平均前処置時間は,非実施群145.2分,5分群144.1分,15分群157.1分であり,3群で有意差は認められなかった.洗浄剤の平均内服量も非実施群1,996mL,5分群1,935mL,15分群1,891mLであり3群で有意差は認められなかった.腸管洗浄度良好となった割合は,15分群が90.0%と最も多く,次いで5分群は77.2%,非実施群群は33.0%であった(p<0.01).
    結論:左側臥位は前処置において有効であると考えられる.
  • 田伏 洋治, 北村 育子, 木村 美智子, 岩﨑 武輝
    2014 年 28 巻 5 号 p. 749-755
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:アンケート形式による満足度調査を施行し,その評価と改善事項につき検討した.
    方法:2012年2月から2013年3月,宇治武田病院健診センターの人間ドック受診者1,353名全員に対し,健診終了後にアンケート用紙への満足度評価と意見の記載を依頼し,結果を毎月集計して健診職員に周知した.
    結果:1,231名(回収率91.0%)の回答から,検査の待ち時間を除き,事務職員の対応や医師・看護師の説明,健診の環境などにおいて高い満足度評価を得た.電子カルテによる診療部門と,健診部門の情報共有に関する高い評価をさらに高めるために,電子カルテに連動した要受診判定者に対する“当日の受診案内書の発行”という,健診と診療連携における新たな作業工程が生まれた.
    結論:アンケート調査および満足度評価の定期的な職員への周知は,職員のサービス意識向上と作業工程の改善において重要である.
  • 田代 明美, 井上 徳子, 岡本 道子, 太田 智美, 宇野 正敏, 水口 善夫, 松井 薫, 奥村 次郎, 伴 千秋, 岩﨑 武輝, 武田 ...
    2014 年 28 巻 5 号 p. 756-762
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸がん検診の受診率に影響する要因を検討した.
    方法:武田病院グループ医療機関に勤務するすべての女性職員のうち同意を得られた対象者に,質問紙を用いた無記名調査を実施した.調査項目は,①年齢・職種,②子宮頸がん検診受診の有無とその理由,③子宮頸がんとHPV検査に関する知識(10項目),④HPVワクチンに関する知識(5項目)とした.
    結果:女性職員約2,000人に調査紙を配布し,回収は1,872人だった.うち有効回答1,846人(98.6%)の年齢は,20歳代517人(28.0%),30歳代508人(27.5%)で半数以上を占めた.職種は看護職員が758人(41.1%)だった.子宮頸がん検診受診者は1,009人(54.7%)で,その理由は「健康管理のため」467人(46.3%),「検診補助制度の利用」230人(22.8%)だった.一方未受診は837名(45.3%)で理由は「検診の機会がない」644人(76.9%),「自覚症状がない」497人(59.4%)だった.子宮頸がん検診受診者は未受診者に比べて,市民検診補助制度の認知度が高かった.
    結論:子宮頸がん検診受診者は未受診者に比べて,市民検診補助制度の認知度が高かった.

  • 山門 實, 山本 浩史, 新原 温子, 山本 麻以, 谷 瑞希, 戸田 晶子, 石坂 裕子
    2014 年 28 巻 5 号 p. 763-767
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度(PFAA)のバランスの違いを「アミノインデックス技術」を用いて統計解析し,がん罹患の確率を予測する新規がん検診としてアミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AICS)が開発され,現在,肺,胃,大腸,前立腺,乳腺,子宮・卵巣の6種のがんに対するスクリーニング検査が実用開始された.第一報では,精密検査対象となるAICSランクCの割合とAICS値の分布の妥当性について,AICS導出時の理論値と人間ドック受診者での比較結果を報告したが,本報では,AICSランクC判定者に対する精密検査の結果について報告する.
    方法:三井記念病院の人間ドック健診受診者799例(男性494例,女性305例,平均年齢59±11歳)を対象とし,各がん種に対するAICSランクC判定者について精密検査を実施した.
    結果:AICSランクC判定者に対する精密検査結果より,胃がん,乳がん,前立腺がん各1例とともに,肺結節病変,萎縮性化生性胃炎,高度異型性結腸腺腫などの多くの前がん状態が発見された.AICSによるがんの発見率は0.38%と,2011年度人間ドック全国集計成績報告の0.26%と比較して高頻度であった.
    結論:これらの成績は,AICSが新規がん検診として有用である可能性を推察させた.
短報
  • 石川 雅彦
    2014 年 28 巻 5 号 p. 768-773
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドック,健診等で実施される採血の際には さまざまなインシデント・アクシデントが発生する可能性があり,それらの発生防止は,安全で良質な人間ドック・健診業務を実施するために重要である.今回,採血に関連して発生したインシデント・アクシデント事例の発生要因と再発防止策等,および人間ドック・健診等で採血実施の際の留意点について検討した.
    方法:日本医療機能評価機構のウェブサイトの公開データ検索を用いて,採血に関連して発生した事例を抽出し,発生概要から発生要因と再発防止に関して検討した.
    結果:2012年4月時点で抽出された96例を対象とした.発生の状況は,採血時76例,採血後8例,結果判定・報告時11例,その他1例で,採血時が最も多かった.その内容は,患者・検体の取り違え,末梢神経障害,検査結果報告の誤り・報告の遅延,報告忘れ等で,患者への影響も さまざまなものが認められた.報告されていた対策には,効果的と考えられるシステムレベルの対策案も挙げられていた.
    結論:人間ドック・健診等における安全で良質な検査業務の実施のためにも,業務プロセスの特徴を鑑みて,各種マニュアル整備,職員トレーニングの実施と評価,機器設定の点検やメンテナンス等を含めて,施設内で一貫したインシデント・アクシデント発生防止システムを構築する必要がある.
研究報告
  • 木村 美奈子, 飯塚 政弘, 保坂 薫子, 大隅 康之, 相良 志穂
    2014 年 28 巻 5 号 p. 774-780
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:近年,胃がん発生の危険因子であるHelicobacter pyloriH. pylori)の血中抗体と血清ペプシノゲン(PG)を用いた胃がんリスク検診が注目されており,当施設でも平成23年度よりこれらの検査をオプション検査として導入した.今回,胃X線検査で描出された所見とH. pylori抗体およびPG検査結果を比較することにより,胃X線検査のH. pylori感染予測における有用性を検討した.
    対象と方法:平成23年4月~平成24年3月の当施設健診受診者のうち,胃X 線検査と同時にH. pylori抗体検査またはPG検査を行った200人を対象とし,胃X線検査による萎縮性胃炎を中心とした慢性胃炎(以下,慢性胃炎)の有無とH. pylori抗体・PG検査結果を比較し,胃X線検査によるH. pylori感染診断の精度について検討を行った.
    結果:H. pylori抗体陽性例の96.8%,H. pylori抗体・PGともに陽性例の100%に胃X線検査で慢性胃炎が認められた.H. pylori抗体・PGともに陰性例では,胃X 線検査で慢性胃炎が認められた頻度は8.9%であった.H. pylori抗体陽性例およびH. pylori抗体陰性かつPG陽性例をH. pylori感染例と考えた場合,胃X線検査では感度91.5%,特異度93.3%,正診率92.3%でH. pylori感染が診断できた.
    結論:胃X線検査はH. pylori感染の予測において有用な検査と考えられた.
委員会報告
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