人間ドック (Ningen Dock)
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28 巻, 1 号
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巻頭言
Letters to the Editor
Response to "Letters to the Editor"
総説
原著
  • 茂木 智洋, 永田 浩一, 藤原 正則, 村岡 勝美, 飯田 直央, 那須 智子, 増田 典子, 小倉 直子, 島本 武嗣, 光島 徹
    2013 年 28 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:大腸3D-CTを異なる一定線量あるいは自動露出機構で撮影し,適正撮影条件を被ばく線量と画質から比較検討した.
    方法:任意型検診として大腸3D-CTを受診した836名を対象とした.64列CTの撮影条件を一定線量のA群:50mAs,B群:75mAs,C群:100mAs,そして自動露出機構のD群:Volume EC,SD20の4群とし,各群の平均被ばく線量を算出した.各群をさらにBMI(20未満,20以上25未満,25以上30未満,30以上)別に分けて平均被ばく線量と線量不足による画質劣化の有無を評価した.
    結果:各群の平均被ばく線量はA群で10.7mSv,B群で16.0mSv,C群で20.7mSv,D群で5.4mSvとなり,撮影線量を一定線量としたA~C群よりも自動露出機構のD群で平均被ばく線量が低かった.A~C群の各群では,BMIが高くなるにつれ撮影範囲が長くなることにより平均被ばく線量が高くなる傾向にあった.D群ではさらに体厚に合わせて線量が自動調整されるためBMIの違いによる変化が大きくなった.線量不足による画質劣化のために読影不能となる症例は全群で認めなかった.
    結論:自動露出機構群は一定線量群と比べると,読影に支障を来すことなく個人に適した線量が自動調整されることにより,平均被ばく線量を抑えることができた.適切な自動露出機構を設定し撮影することは臨床上有用であると考えられた.
  • 長 真由美, 吉村 理江, 渡邉 良二, 森 寿治, 東條 道徳, 中野 幸恵, 渋谷 克彦, 吉本 雅彦, 橋本 俊彦, 那須 繁
    2013 年 28 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:当施設で撮影した検診マンモグラフィで検出できなかった乳がん(以下,検診MMG非検出がん)について,精密医療機関でのMMG(以下,精査MMG)との所見を比較検討し,MMGの限界を明らかにすることを目的とした.
    方法:2007年1月から2011年12月までに当施設の超音波(以下,US)併用検診で発見された乳がん90例のうち,検診MMG非検出がん36例を対象として,検診MMG非検出がんおよび,精査MMG非検出がんの特徴を検討した.
    結果:検診MMG非検出がん36例のうち,半数以上は精査MMGでも検出不可能であった.精査MMGの検出例は2方向撮影,拡大撮影,スポット撮影などの追加撮影で病変が検出されていた.石灰化を伴わない非浸潤性乳管癌(以下,DCIS)および,腫瘍径10mm未満の浸潤癌はMMG非検出となる傾向であった.
    結論:MMGの描出能には限界があると示唆された.非浸潤癌や腫瘍径の小さいもの,もしくは浸潤が微小な乳がんはMMG非検出になる傾向を認め,MMGの検出能には限界があることが示唆された.発見率向上のためにはUS併用検診が望ましいと考えられた.
  • 伊藤 美奈子, 千勝 泰生, 松本 明美
    2013 年 28 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:生活をともにする夫婦の生活習慣と生活習慣病における類似性について分析した.
    方法:対象は2008年4月~2012年3月に当健診センターを受診した40~74歳の夫婦570組.夫と妻それぞれについて,6つの生活習慣(運動,朝食,間食,睡眠,喫煙,飲酒)のうち,保有する好ましくない生活習慣の数によって3群に分け,年齢,BMI,腹囲,体重変化,生活習慣病を比較した.上記で3群に分けた受診者の配偶者に関しても同様に3群比較を行った.夫婦の関連をみるために,夫が因子を有するときにその妻も有するオッズ比を求めた.
    結果:夫も妻も不良な生活習慣の数が多いほど,体重増加と腹囲が大きく,生活習慣病の保有率は高い傾向にあった.配偶者の比較でも同様の結果を得た.好ましくない生活習慣の数が多い受診者ほど配偶者の好ましくない生活習慣保有数も多かった.夫が不良な生活習慣を有するときにその妻も有するオッズ比は,6つの習慣すべてにおいて2以上となり有意差を認めた.夫が60歳以上の夫婦の方が60歳未満の夫婦に比べオッズ比が高かった.
    結論:夫婦の生活習慣は関連があり類似していることが示唆された.好ましくない生活習慣を有する受診者については,配偶者からの影響の可能性を意識した保健指導を早期に行うこと,また,単独受診者に対しては,次回から夫婦での受診を促し,夫婦単位で保健指導を行うことで効果的な習慣改善につながると思われる.
  • 高橋 有香, 泉 並木, 加藤 淳
    2013 年 28 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドックで軽度白血球増加より慢性骨髄性白血病と診断された症例を経験した.健診で軽度の白血球増加は散見されるが,2011年度の人間ドックにおける白血球増加症例について検討した.
    方法:当院白血球増加症例:2011年1月から12月にかけて当院人間ドックを受診した2,182例中13例で白血球が10,000/μL以上に増加していた.13例の白血球上昇の推定要因について検討した.
    症例提示:54歳女性.健診直前に咽頭痛,発熱があったが,近医で扁桃炎の診断で抗生剤を処方され,改善した.健診時白血球軽度上昇(13,000/μL)と軽度肝障害を認めた.再検にて末梢血に幼若白血球を認めたが,感染の影響も考え経過を追った.幼若白血球は変化せず,好塩基球も増加したため,血液疾患を疑い,精査により慢性骨髄性白血病と診断された.
    結果:白血球増加推定要因は喫煙が6例,一過性の感染が4例,原因不明が1例,今回提示例を含めて白血病が2例(全体の0.1%)であった.
    結語:白血球増加が軽度でも,重篤な疾患を見落とさないよう,健診後のフォローアップと二次検査が必要な症例に対しての精査が重要である.
  • 河合 裕子, 佐藤 勝彦, 小西 徹夫, 戸島 雅彦, 松本 桂輔, 杉江 広紀
    2013 年 28 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:PET(Positron Emission Tomography)がん検診の評価を高めていくためには,積極的な事後管理,すなわち異常所見を示す受診者への精査の受診勧奨および追跡調査が不可欠である.このために当院で行ってきた工夫を提示する.
    方法:当院におけるPETがん検診の受診者のうち,がんが疑われる受診者に精査を勧めた.他医療施設からの返信,あるいは書面による聞き取り調査により精査結果を確認した.積極的な事後管理前後での精査結果の返信回収率の変化とその効果を検討した.
    結果:2006年4月から2012年3月の6年間の当院でのPETがん検診受診者2,116例のうち,308例に対し精査を勧めた.308例のうち183例で返信が得られ,さらにこのうち33例でがんを認めた.したがって,6年間の当院におけるがん検出率は,33例/2,116例=1.56%であった.返信回収率の経過をみてみると,2006年から2008年までの返信回収率は平均31.7%と十分とはいえなかった.しかし,それまでの反省を踏まえて2009年から積極的に事後管理を行った結果,返信回収率は平均73.5%と上昇し,がん検出率も0.88%から1.88%へと上昇した.返信回収率を上昇させるために,事後管理には以下のような工夫を行った.まず,受診当日,医師が結果を説明し,異常があればどの医療施設を受診するかを相談する.受診後,受診者に送付する報告書に精査を必要とする場合には,画像のCD-Rを同封する.3ヵ月後,他医療施設からの返信がない場合には,受診者に2回,問い合わせの書面を郵送する.
    結論:PETがん検診の質の向上には,実績を集計することが重要である.このためには,単に異常を報告するだけではなく,より積極的な事後管理を行う必要がある.
  • 小林 伸行, 都築 隆, 永野 優子, 萬造寺 知子, 渡部 洋行, 土屋 敦, 土屋 章
    2013 年 28 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:腎結石と生活習慣関連病との関係が示唆されているが,本邦での多数例を対象とした検討は少ない.健診症例を対象とし,生活習慣関連因子と腎結石の関係を検討する.
    方法:2003年11月~2011年12月の健診初回受診例35,647名のBMI,収縮期・拡張期血圧,中性脂肪,総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,空腹時血糖,HbA1c,尿酸,飲酒,喫煙,運動,腎石灰化の存在と,腎結石との関係を単変量,多変量解析にて検討した.メタボリックシンドローム因子数と腎結石の有無について検討し,石灰化と比較した.
    結果:単変量解析では,BMI,収縮・拡張期血圧,中性脂肪,総・LDLコレステロール,空腹時血糖,尿酸,飲酒,喫煙,石灰化で,腎結石に有意な関連を認めた.多変量解析では,性別,年齢,石灰化,拡張期血圧,尿酸が有意であり,年齢,性別,石灰化の影響を除外した検討では,拡張期血圧が唯一有意であった.メタボリックシンドローム因子数では,腎結石「あり」群では因子数1,2,3の頻度が「なし」群を上回った.石灰化と結石について,「両方なし」,「石灰化のみ」,「結石のみ」,「両方あり」の順で,因子数2+因子数3の割合が増加した.
    結論:生活習慣関連因子の多くは,単変量解析で腎結石の存在に関連するが,総合的な多変量解析では拡張期血圧のみが有意であった.メタボリックシンドローム進展と結石の関係,石灰化が腎結石の前段階である可能性が示唆された.
  • 船津 和夫, 山下 毅, 横山 雅子, 近藤 修二, 斗米 馨, 和田 哲夫, 本間 優, 影山 洋子, 水野 杏一
    2013 年 28 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:脂肪肝は肝臓におけるメタボリックシンドロームの表現型と考えられ,脂肪肝には高血圧を伴っていることが多い.しかし,脂肪肝が高血圧の発症に関与しているかについては不明である.そこで,正常血圧者を対象に脂肪肝の高血圧発症への関与を検討した.
    方法:経年的に健診を受けている成人男性で,1999年に高血圧の治療を受けていない正常血圧者1,088名を対象とした.対象者を調査開始時の脂肪肝の有無により無脂肪肝群(874名)と脂肪肝群(214名)の2群に分け,10年後の高血圧発症の頻度を比較した.さらに,この2群を10年後の脂肪肝の有無により計4群に分け,各群における高血圧の発症頻度を比較した.次に,無脂肪肝群を対象に高血圧発症に関与する諸因子(年齢,BMI,飲酒量,クレアチニン,血清脂質など)を調整し,脂肪肝の発生が高血圧発症に関与しているかについて検討した.
    結果:脂肪肝群は無脂肪肝群に比べ10年後の高血圧の発症頻度は高かった.4群の比較では,10年後に脂肪肝を認めなかった群に比べ,脂肪肝を認めた群で高血圧の発症頻度が高い傾向がみられた.高血圧の発症に関与している諸因子を調整し,脂肪肝と高血圧との関連をみたところ,脂肪肝は独立した高血圧発症の要因ではなかった.
    結論:脂肪肝には高血圧が合併することが多いが,脂肪肝自体は高血圧発症の要因ではなかった.
  • 江川 重信, 佐藤 利幸, 岡田 正規, 馬場 郁子
    2013 年 28 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:HbA1cや空腹時血糖では検出が困難である,初期の耐糖能異常を検出することを目的として,テストミール負荷と,採血なしで血糖曲線下面積(血糖AUC)を測定するシステムの有効性を検証した.
    方法:糖尿病と診断されていない40歳以上の健診受診者50名を対象とし,皮膚表層に0.3mmの微細針アレイで微細孔を形成した後に,組織液採取用のゲルパッチを貼付し,ミールテストC(炭水化物75g)を負荷した.2時間後にゲルパッチを回収し,ゲル内のグルコース量から,2時間の血糖AUCを取得した.参照として,負荷前,負荷1,2時間後に,採血により血糖値を測定し,血糖AUCを算出した.併せてHbA1cやグリコアルブミン,尿中ミオイノシトール(MI)等を分析した.
    結果:本システムにより測定した血糖AUCは,血糖値から算出した血糖AUCと高い相関を示した(R=0.85).検出された耐糖能異常者は軽度のみであったが,本システムで求めた血糖AUCによる耐糖能異常の判別精度は,感度91%,特異度81%であり,尿中MIと同等以上の性能を示した.また被験者へのアンケートから,本システムの低侵襲性が確認された.
    結論:本システムにより,採血なしに簡便に,高い精度で耐糖能異常を検出することができた.食事負荷に併せた,本システムによる血糖AUC測定は,健診での初期の耐糖能異常の検出に有用であることが示唆された.
  • 大洞 昭博, 小島 孝雄, 加藤 隆弘, 森本 泰隆, 福田 信宏, 大島 靖広, 渡辺 一敏, 中村 清, 下村 順子, 大熊 晟夫, 出 ...
    2013 年 28 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:通常,肝細胞がん症例の多くはウイルス性肝炎に起因し,定期通院中の検査で発見される場合が多い.しかし,時として健診にて初めて発見されるものもある.今回,当院総合健診センターの人間ドックの腹部超音波検査にて発見された肝細胞がん症例について検討した.
    対象:当院総合健診センターにおいて2000年から2010年までに腹部超音波検査を受けた受診者107,652例(男性65,499例,女性42,153例,年齢18歳~90歳で平均48.8歳)を対象とした.
    結果:HBs抗原陽性者1,543例(全受診者の1.43%),HCV抗体陽性者713例(0.66%)で,その期間に発見された肝細胞がんは,6例で全例男性であった.77歳の高齢者を除けば平均年齢53.6歳(49歳~59歳)であった.原疾患はC型肝炎1例,B型肝炎5例であった.生活歴は,全例飲酒者で喫煙者は4例であった.血液生化学検査所見では,ASTやALT値の異常よりもZTT値異常例が多かった.アルブミン値や血小板数からは,肝予備能はよいことが予測された.指摘した腫瘍の大きさは,6~27mm(平均14mm)であった.治療は,2例に経皮的ラジオ波熱焼灼術が,4例に外科的切除が施行された.
    結語:肝炎ウイルスマーカー陽性の健診受診者では,AST,ALT値や血小板数が基準値内であっても,慢性炎症がある場合が多く,専門医療機関へ強く受診推奨すべきと考える.また,健診にて発見される肝細胞がんは,根治性の高い治療が選択できる可能性が高く,健診による早期発見の意義は大きいと考えられた.
短報
  • 石川 雅彦
    2013 年 28 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドック・健診ではさまざまな放射線検査が実施されるため,放射線検査に関連するインシデント・アクシデント発生の防止は,安全で良質な人間ドック・健診業務を実施するためにきわめて重要である.今回,放射線撮影室に関連して発生したインシデント・アクシデント事例の発生要因と再発防止について検討し,人間ドック・健診で放射線検査を実施する時の留意点について考察した.
    方法:日本医療機能評価機構のウェブサイトの公開データ検索を用いて,放射線撮影室に関与して発生したインシデント・アクシデント事例を抽出し,発生概要から発生要因と再発防止について検討した.
    結果:2012年5月時点で放射線撮影室をキーワードとして検索し,抽出された65例を対象とした.発生の状況は,放射線検査前12例,検査中14例,検査後39例であり,患者への影響は軽微なものから重篤なものまで,さまざまであり,報告者は放射線技師,医師,看護師等,多職種がみられた.
    結論:放射線検査は,業務プロセス上,複数の職種・職員が関与しているため,放射線撮影室に関与するインシデント・アクシデントの再発防止は単一職種や個人の努力のみでは,必ずしも容易ではない.安全で良質な人間ドック・健診に関わる放射線検査を実施するためには,多職種協働によるインシデント・アクシデントの未然防止システム構築の必要性が示唆された.
症例研究
  • 横山 長幸, 長坂 正幸, 長澤 正樹, 大谷 和文, 長谷川 実
    2013 年 28 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:完治する肺がんを発見するには,胸部単純直接X線写真(以下,胸部X線写真)ではなくてCTによらなくてはならないという意見があるが,このたび1,395例の胸部X線写真から6例の肺がんを発見したので報告し,読影の姿勢が重要であることを例証する.
    方法:平成21年3月から1年半の間に当院の人間ドックと総合内科外来を受診した呼吸器症状がない1395例を著者自身が単独で診察と読影をした.
    結果:胸部X線写真上,肺がんが疑われるか,あるいは否定できないと判断した45例のうち6例が当院で精査や手術を受けて肺がん(カルチノイドを含む)と確定診断された.そのうち4例はStageⅠAだった.
    結論:高い集中力,根気,緻密さをもって胸部X線写真を読影することによる,肺がん発見率0.4%の実例を提示する.
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