人間ドック (Ningen Dock)
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29 巻, 5 号
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巻頭言
総説
原著
  • 後山 尚久, 萩原 暢子, 中野 未知子, 小林 喜美代, 石原 多恵, 福永 知子, 藤原 祥子
    2015 年 29 巻 5 号 p. 688-693
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:我が国の子宮頸がん検診率の低迷の要因を明らかにする目的で,子宮頸がん検診の受診行動に関する意識調査を実施した.
    方法:対象は2011年度に当施設で対策型子宮頸がん検診を受けた20~30歳代の638例,および2010年1月より2014年3月までに当施設で子宮頸がん予防ワクチンの任意接種を終了した116例であり,子宮頸がん検診に関する意識調査を自己記入式アンケートにて実施した.
    結果:20~30歳代の女性の子宮頸がん検診を受けなかった理由の75.1%は「なんとなく,きっかけがない」であり,「自分には無縁」が28.7%にみられた.今回検診を受けた理由の69.4%は「子宮頸がん検診クーポンの送付」であった.このことは,子宮頸がん検診の意義の伝達の徹底の必要性と何らかのきっかけの提供が検診への行動化に繋がることを示している.また,理想とする検診間隔として毎年とする意見が60.5%を占めていたが,実際には毎年および隔年の受診がそれぞれ16%であった.これに対して,予防ワクチンの存在を知り,それを実際に接種した女性の92.5%に今後の検診継続意欲が認められた.
    結論:検診行動の国際レベルへのシフトは,子宮頸がん検診の認知度の向上とともに,子宮頸がんは予防できるがんであるという,疾患を理解したうえでのきっかけの提供による行動化の推進にあることが推測された.
  • 古澤 洋子, 亀谷 正明, 木田 恆, 山内 英通
    2015 年 29 巻 5 号 p. 694-701
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドック受診者における呼吸機能の経年的変化と喫煙習慣の関連について検討した.
    方法:当健診センターの人間ドックを2008年と2013年ともに受診した30歳代から60歳代の4,178例(男性2,969名,女性1,209名)を対象とした.1秒量,1秒量の経年的変化量,%1秒量と喫煙習慣,禁煙期間,喫煙量との関連について検討した.
    結果:1秒量および%1秒量は男性において喫煙群が低値で,1秒量の経年的変化量は喫煙群が禁煙群および非喫煙群に比し低下が大きく,有意差を認めた.喫煙習慣における1秒量と%1秒量は,30歳代では差はみられなかったが,40~60歳代では喫煙群で禁煙群・非喫煙群に比し,有意に低下した.2008年に喫煙していた者のうち,喫煙継続群と2013年までに禁煙した群の1秒量の経年的変化量は34.4 mL/年,23.6 mL/年と喫煙群で有意に低下した.%1秒量は禁煙5年以上経過すると,非喫煙群と差がなくなり,喫煙群より有意に高かった.
    結論:1秒量,%1秒量は喫煙により低下し,1秒量の経年的変化量は大きい.しかし,50~60歳代の中高年層においても禁煙することにより,呼吸機能低下を小さくすることができる.
  • 天川 和久, 荒瀬 康司, 大本 由樹, 辻 裕之, 有元 佐多雄, 小川 恭子, 加藤 久人, 神野 豊久, 有賀 明子
    2015 年 29 巻 5 号 p. 702-707
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:呼吸機能低下と心血管系疾患の関連は以前より報告があるが,原因の詳細は明らかではない.今回,人間ドック受診者の呼吸機能低下と高血圧の関連について経年的に検討した.
    方法:1997年に当センターで人間ドックを受診し,高血圧がなく1998年から2006年までに最低1回は人間ドックを再受診した男性2,643例を対象とし,2006年までに高血圧が生じたかどうかを目的変数,1997年の各因子を説明変数とし検討した.高血圧の基準は収縮期血圧140 mmHg 以上か拡張期血圧90 mmHg以上,あるいは降圧剤を投与されている例を高血圧ありとした.因子は年齢(50歳未満と以上),BMI(23未満と以上),正常高値血圧の有無,脂質異常の有無(中性脂肪150 mg/dL以上かHDL-C 40未満かnon-HDL-C150 mg/dL以上,あるいは高脂血症治療薬を投与されている例を異常あり),糖尿病の有無(空腹時血糖126mg/dL以上か糖尿病治療薬を投与されている例をあり),飲酒歴の有無(週ビール6本相当以上をあり),喫煙歴の有無(喫煙経験者をあり),%1秒量(%FEV1:98以上と未満)とし,ロジスティックモデルを用いた単変量および多変量解析を行いp<0.05を有意差ありとした.
    成績:高血圧が生じたのは422例(16.0%)だった.高血圧発症に寄与する要因は単変量解析で年齢,BMI,正常高値血圧,脂質異常,糖尿病,喫煙歴,%FEV1に有意差が認められ,多変量解析で年齢,BMI,正常高値血圧,%FEV1に有意差が認められた.
    結論:呼吸機能低下が高血圧に関与する可能性が示唆された.
  • 栫 高子, 田口 裕一郎, 土居 範仁, 大垣 美紀
    2015 年 29 巻 5 号 p. 708-715
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドックの受診者をメタボリックシンドローム(以下,メタボ)群と非メタボ群の2群に分け,眼底写真の所見に違いがあるか調査する.
    方法:2011年5月6日から2012年4月28日に当院人間ドックを受診し,眼底写真撮影を行なった男性2,189名(48.3±8.4歳),女性728名(47.4±8.2歳)を対象とした.画像は眼科専門医が読影判定した.メタボ診断基準検討委員会の診断基準に従い,メタボ群と非メタボ群に分け,メタボの有無によって眼底所見に違いがあるかを検討した.統計処理はt検定,χ2検定,フィッシャー直接確率法とCochran-Mantel-Haenszel検定を用い,p<0.05を有意水準とした.
    結果:全対象者の2,917名中,メタボ群は408名,非メタボ群は2,509名となった.メタボ群では408名中128名(31.4%)が眼底写真に異常所見を認めた.非メタボ群では,2,509名中489名(19.5%)に眼底写真に異常所見を認めた.メタボは眼底異常所見と関連し,特に視神経乳頭陥凹拡大,網脈絡膜萎縮,糖尿病網膜症との関連が認められた.
    結論:メタボ群は眼底疾患の発生率が高い可能性がある.
  • 下平 雅規, 岡庭 信司, 羽生 憲直
    2015 年 29 巻 5 号 p. 716-722
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:空腹時血糖(FPG)正常者においてFPGと血圧の関係を検討した.
    方法:降圧薬,脂質改善薬,高尿酸血症治療薬を内服していない人間ドック受診者のうちFPG < 100mg/dLかつHbA1c < 5.6%であった1,114名を対象に,収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)とFPGを含めた各因子[年齢,性別,BMI,ウエスト周囲長,総コレステロール(TC),中性脂肪(TG),HDLコレステロール(HDL-C),LDLコレステロール(LDL-C),尿酸(UA),eGFR,家族歴(糖尿病,高血圧),生活歴(喫煙,飲酒)]の相関を検討した.さらにFPGにより対象を3分位に分け,T1群62~89mg/dL(398名),T2群90~94mg/dL(356名),T3群 95~99mg/dL(360名)として,3群間のSBP,DBPを検討した.
    結果:SBPとDBPはFPG,年齢,性別,BMI,ウエスト周囲長,TC,TG,LDL-C,UAと正の相関,HDL-C,eGFRと負の相関を認めた.重回帰分析の結果,FPGはSBPとDBPにおける独立した説明変数であった.さらに共分散分析により各因子を調整しても,T1群と比較してT2群,T3群ではSBPとDBPが有意に高かった.
    結論:FPG正常者においてFPGは血圧の独立した説明因子であり,FPGが高い集団では血圧がより高い.これはFPGが正常範囲であっても,血糖上昇と血圧上昇が密接に関係することを示すものである.
  • 大塚 博紀, 渡邊 絵美, 谷合 愛美, 萩原 美桜, 國分 昭紀, 菅原 知紀, 藤田 映輝, 徳田 宇弘, 菅野 壮太郎, 小野田 教高
    2015 年 29 巻 5 号 p. 723-730
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドックの次回利用意向に影響する因子を,受診者アンケートから明らかにして,次回利用につながる対応について検討することを目的とした.
    方法:2013年8月13日~2014年3月31日に当健診センターにて人間ドックを受診した3,101名から受診直後に回収されたアンケート2,112件(回収率68.1%)を対象とし,回収全数の解析と,回収率の高かった64歳以下での解析の2系統に分けて統計的解析を行った.
    結果:全数解析でも,64歳以下での解析でも,次回利用意向が否定的な者には,質がよく安心できるとする者が少なく,技師の対応がよいとする者も少なく,待ち時間が短いとする者も少なかった.
    結論:特に64歳までの受診者を次回利用につなげるためには,待ち時間の対策と,検査自体に苦痛が強い部門の職員へ健診センターにおいて求められる対応を周知し,接遇を向上させることが肝要である.
  • 田伏 洋治, 野田 美恵, 西川 亜友美, 饗庭 オリエ, 花井 佑子
    2015 年 29 巻 5 号 p. 731-736
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/29
    ジャーナル フリー
    目的:受診率向上には医師だけでなく看護師の役割も大きいとの考えから,2013年度より看護師の受診行動支援を改善した.この改善の効果を検討したので報告する.
    対象と方法:改善点の基本は,次の受診者の診察介助は別の看護師と交代することにより,受診行動支援により長い時間をかけることにあった.2012年4月~2014年3月までの改善前後の2年間における要受診判定者589名を対象とし,改善効果を受診率の変化で評価した.
    結果:改善前(2012年度)から改善後(2013年度)の受診率は,全健診においては62.6%から71.1%と8.5%の向上を,人間ドックに限れば58.3%から70.0%と11.7%の向上を得た.
    結論:医師による受診指導だけでなく,看護師による受診行動支援の重要性が確認できた.
症例報告
委員会報告
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