人間ドック (Ningen Dock)
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31 巻, 5 号
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巻頭言
特別寄稿
  • 清水 正雄, 足立 雅樹
    2017 年 31 巻 5 号 p. 653-660
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
     健診分野における画像診断として,X線を利用した胸部単純X線検査,上部消化管造影検査,マンモグラフィーと超音波を利用した腹部超音波検査が広く行われている.しかし,これらの各画像検査は施設間で機器や検査法,検者,読影法などのハード・ソフト面とも異なっているのが以前からの問題点である.これに対し統一化を関係各学会が連携し進めているが,いまだ浸透していないのが現状である.今回はX線基礎の再認識と胸部写真の撮影・記録法や現在のデジタル画像処理法の進歩や広義での人工知能AI(artificial intelligence)技術について報告する.読影は少なくともダブルチェックで過去画像があれば必ず対比することは大切であるが,クライアントの状態や年齢・性別など加齢変化も考えた総合判断が重要である.
原 著
  • 木村 達郎, 福本 真也, 森川 浩安, 中野 朱美, 田中 史生, 森崎 珠実, 河田 則文, 平田 一人
    2017 年 31 巻 5 号 p. 661-667
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:胸部単純X線検査は肺疾患,特に肺がんのスクリーニング検査として検診や健診において重要である.その一方で,胸部単純X線検査には診断の限界があり,陳旧性肺結核などの病変がある場合,肺がんの指摘が困難な場合もある.当施設では有所見者に対する積極的受診勧告を行っており,今回はその有効性について検討した.
    方法:2015年1月1日から1年間に,胸部単純X線検査を施行した5,603例の胸部D2判定者(要精密検査)の画像所見の内訳,最終診断病名,発見率を検討した.
    結果:D2判定者は230例(4.1%),呼び出しシステムにより197例(85.7%)に電話にて受診勧告を行った.また,32例(13.9%)に対して健診当日に胸部X線検査に異常ありと説明した.174例(75.7%)が当施設にてCT検査を施行した.肺野陰影は156例(89.7%),そのうち結節影は106例,すりガラス陰影は17例であった.経過観察必要な陰影は20例,4例が肺がんと診断された.肺がん発見率は0.07%であった.集積症例の肺がん存在期待値は3.93人であり,標準化発見比は1.02であった.
    結論:当施設における胸部単純X線検査にてD2判定となった症例の実態と呼び出しシステムの有効性を明らかにした.当施設のような最終診断,治療まで可能な施設では再受診率が高い傾向にあり,二次予防として肺がんの早期発見,早期治療に有効であると考えられた.
  • 水野 杏一, 山下 毅, 小原 啓子, 船津 和夫, 近藤 修二, 横山 雅子, 本間 優, 影山 洋子, 中村 治雄
    2017 年 31 巻 5 号 p. 668-674
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:心筋梗塞や脳卒中の発症は季節との関連性が報告されている.多くの研究は病院に入院した患者の統計である.そこで,一般企業の健康診断診受診者を対象に,心筋梗塞・脳卒中を発症した季節およびリスク因子を調べ,疾患の特徴と差異を検討した.また,心・脳血管障害発症例と非発症例の危険因子の差も検討した.
    対象と方法:A社(健康診断受診者10,450名)における1年間の心・脳血管障害発症月およびリスク因子を調査した.非発症例のリスク因子との比較も行った.
    結果:心・脳血管障害は12例(心筋梗塞5例,脳出血2例,くも膜下出血3例,脳梗塞2例)に発症した.全例男性,発症平均年齢は50.7歳で心筋梗塞は全例40歳代に発症していた.発症を月別に検討すると夏と冬の2峰性のピークを有していた.特に,心筋梗塞では8月と冬に発症が多かった.一方,脳卒中は季節に関らず通年発症していた.リスク因子にも特徴があり,心筋梗塞者は脳卒中に比べ内臓肥満が多かった.血圧高値は脳卒中例で86%と高頻度に認められた.特に脳出血(脳出血+くも膜下出血)例では全例血圧高値であった.高LDL-C血症は心筋梗塞全例に認められた.喫煙中であったものは心筋梗塞例が60%で脳卒中に比べ多かった.非発症例との比較では,心・脳血管障害発症者は非発症者と比べ,血圧,血糖,LDLコレステロール,中性脂肪が高く,肥満傾向であった.
    結論:心筋梗塞と脳卒中は血管障害を共通の病因として発症するが,心筋梗塞と脳卒中の発症の季節性とリスク因子は多少異なる.心筋梗塞は夏と冬に多く発症の季節性が示唆された.一方,脳卒中では1年を通じ発症していた.リスク因子に関して,心筋梗塞発症例は脳卒中に比べ肥満が多く,特に,内臓肥満が多く認められた.
  • 中野 理果, 星 秀美, 松木 美幸, 金目 亜由実, 酒井 純子, 高多 伸哉, 中村 俊夫, 松原 升
    2017 年 31 巻 5 号 p. 675-680
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:血圧脈波検査は,動脈硬化の指標となる上腕足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV)を簡便に測定することが可能である.本研究では,血圧脈波検査の結果がどのように健診結果に関わっているか,特に胸部X線写真の心血管陰影所見との関連を調べ,動脈硬化の早期診断への意義を検証した.
    方法:当センターで,血圧脈波検査を行った202名を対象とし,健診結果での動脈硬化危険因子(性別,年齢,BMI,収縮期血圧,LDLコレステロール,空腹時血糖値)を調べ,baPWV値との相関検定をした.また,胸部X線写真により,心胸郭比,大動脈径,大動脈弓石灰化の有無を測定し,baPWVとの関連を検討した.
    結果:baPWV値と危険因子との相関では,性別,BMI,LDLコレステロールで有意な関連はみられず,年齢,収縮期血圧,空腹時血糖値と高い相関を示した.胸部X線写真による所見では,baPWV値と大動脈径は高い相関がみられ,心胸郭比との相関も認められた.大動脈弓の石灰化がみられた群(n=64)とみられなかった群(n=138)とを比較すると,baPWVは,石灰化のある群で有意に高値となった.
    結語:動脈硬化に伴う形態学的な異常が血管系に出現する以前の段階でも,baPWV値が上昇することが示唆された.人間ドックにおいて,動脈硬化の早期診断の可能性がある指標の一つとして,血圧脈波検査の有用性が期待される.

  • 山門 實, 山本 浩史, 菊池 信矢, 新美 佑有, 谷 瑞希, 戸田 晶子, 山本 麻以, 石坂 裕子
    2017 年 31 巻 5 号 p. 681-688
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度の違いを「アミノインデックス技術」を用いて統計解析し,がん罹患の確率を評価し,精密検査対象者を抽出するがん検診法アミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AminoIndexTM Cancer Screening:AICS®,以下.AICS)は,7種のがんに対する検査として実用化されている.既報では,AICS受診者799例中の精密検査対象となるランクCの割合,精密検査結果等を報告したが,本報では,より大規模な受診者5,172例のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果,各種AICSの陽性的中率を報告する.
    方法:三井記念病院における2011年9月~2015年12月のAICS受診者5,172例(男性2,757例,女性2,415例)のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果を検討し陽性的中率を算出した.
    結果:ランクC判定者の精密検査により,肺がん1例,胃がん3例,大腸がん3例,前立腺がん6例,乳がん4例が発見された.各種AICSの陽性的中率は,AICS(肺):0.37%,AICS(胃):0.75%,AICS(大腸):1.19%,AICS(前立腺):1.80%,AICS(乳腺):3.57%,AICS(子宮・卵巣):0%であった.AICSによるがんの発見率は0.33%と,2015年度人間ドック全国集計成績報告の0.26%より高頻度であった.
    結論:これらの成績は,AICS®の新規がん検診としての有用性を推察させた.
  • 松下 まどか, 村本 あき子, 加藤 綾子, 森口 次郎, 今井 博久, 春山 康夫, 津下 一代
    2017 年 31 巻 5 号 p. 689-697
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:現在までに報告のある特定保健指導に関する文献を,システマティック・レビューおよびメタアナリシスし,効果の有無と改善の程度を検討する.
    方法:特定保健指導に関する文献(2008年4月~2014年9月)を,医学中央雑誌とPubMedを用い検索した.採択文献から特定健康診査(以下,特定健診)の階層化基準となる検査値の変化量を抽出し,加重平均差を用いてメタアナリシスを行った.
    結果:採用および除外基準により7研究を採択した.メタアナリシスより,対照群に比較し積極的支援群は,体重変化量(kg)の加重平均差-1.31(95%CI:-1.67,-0.94),BMI変化量(kg/m2)-0.45(-0.57,-0.33),腹囲変化量(cm)-1.49(-2.02,-0.95),収縮期血圧変化量(mmHg)-0.80(-1.46,-0.13),中性脂肪変化量(mg/dL)-7.47(-13.45,-1.49),HDLコレステロール変化量(mg/dL)0.88(0.53, 1.23),空腹時血糖変化量(mg/dL)-1.72(-2.84,-0.61),HbA1c変化量(%)-0.06(-0.10,-0.03)と有意に改善した.動機付け支援群は対照群に比較し,体重変化量-1.01(-1.30,-0.73),BMI変化量-0.40(-0.55,-0.26),腹囲変化量-1.15(-1.65,-0.64),中性脂肪変化量-6.95 (-11.74,-2.17),HDLコレステロール変化量0.71(0.04,1.37)と有意に改善した.すべての支援タイプを含む特定保健指導全体では対照群に比較し,体重変化量-1.10(-1.29,-0.92),BMI変化量-0.42(-0.49,-0.35),腹囲変化量-1.29(-1.62,-0.96),収縮期血圧変化量-0.67(-1.26,-0.07),拡張期血圧変化量-0.45(-0.88,-0.01),中性脂肪変化量-7.17(-10.56,-3.79),HDLコレステロール変化量0.79(0.49,1.09),空腹時血糖変化量-1.01(-1.97,-0.04),HbA1c変化量-0.07(-0.11,-0.04)と有意に改善した.
    結論:特定保健指導は,特定健診の階層化基準となる検査値の改善に有効である.一部検査値で異質性を認めており,対象者特性や保健指導法別サブグループ解析が求められる.
  • 金井 沙耶香, 伊藤 和幸, 祖父江 功, 森 則久, 山中 暁弘, 橋口 勝, 藤牧 爽花, 大橋 功男, 仲畑 輝香, 柘植 和子, 平 ...
    2017 年 31 巻 5 号 p. 698-708
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:胃X線画像によるHelicobacter pylori(Hp)感染胃炎所見の有効性を検討するとともに,画像によるHp感染胃炎所見の有無とABC分類とを対比し,ABC分類の偽A群(A群中のHp感染胃炎)を減らすための,Hp抗体価とペプシノゲン(PG)法の至適な判定基準を明らかにすることを目的とした.
    方法:平成26年6月から平成27年5月までの人間ドックにおいて,胃X線検査とABC検診を同時に受けた1,153例を対象とし,胃X線画像の胃小区像および皺襞の分布と性状によるHp感染胃炎所見と,Hp抗体価・PGⅠ値・PGⅡ値・PGⅠ/Ⅱ比との相関性を比較検討した.
    結果:ABC分類のHp感染陽性群では,97%がX線胃炎所見陽性を示したが,Hp感染陰性にも胃X線の胃炎所見陽性をみる偽A群が26%みられた.Hp抗体価については,60歳代以上のみHp抗体価3U/mL以上の陰性高値もHp陽性,PG法ではPGⅠ値30ng/mL以下,PGⅡ値15ng/mL以上,PGⅠ/Ⅱ比4以下のいずれかを満たす場合をHp陽性とするABC分類の修正案は胃がんリスク検診マニュアル2014のABC分類に比べ,A群が73%に減少し,A群中の胃炎所見陽性(偽A群)も60%の減少が得られた.
    結論:ABC検診のHp感染陽性と非常に高い一致率を示した胃X線画像所見に,年齢を加味したHp抗体価の基準値と,新たなPG法の判定基準値を追加するABC検診を併用することにより,Hp感染診断の精度が向上した.人間ドックでは,胃X線検査とABC検診を併用し,より正確なHp感染胃炎の診断を行い,Hpの情報提供,除菌勧奨,除菌後の検診等の事後指導に取り組むことが重要である.
  • 今泉 明, 長尾 健児, 神通 寛子, 田中 孝幸, 影山 陽子, 山本 浩史, 戸田 晶子, 谷 瑞希, 石坂 裕子, 山門 實
    2017 年 31 巻 5 号 p. 709-717
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:食事中タンパク摂取量の不足は,体内における必須アミノ酸の供給不足をもたらし,健康リスク因子になると考えられる.そこで,本研究では,日本人を対象に血漿中必須・準必須アミノ酸濃度が低値である集団の臨床的特徴を明確化することを目的として検討を行った.
    方法:日本人の人間ドック健診受診者10,102人より朝食前空腹時に採血を行い,血漿中の必須・準必須アミノ酸濃度を定量した.アミノ酸濃度を正規化し,必須・準必須アミノ酸の10種のうち,少なくとも1種類が平均-2×標準偏差よりも低い対象者を必須・準必須アミノ酸低値者と定義し,臨床検査指標の基準範囲逸脱者の割合に及ぼす影響を解析した.
    結果:全受診者の約17%が必須・準必須アミノ酸低値者であった.必須・準必須アミノ酸低値者においては,タンパク栄養不良と関連がある検査指標の基準範囲逸脱者の割合が非低値者に比較して統計的に有意に高いことに加え,貧血,循環器系疾患,感染症,炎症,免疫機能異常,副甲状腺機能・交感神経活性の亢進などと関連があると考えられる検査指標の,基準範囲逸脱者の比率も統計的に有意に高かった.
    結論:本研究で得られた知見から,血漿中必須・準必須アミノ酸プロファイリングは,QOL低下をもたらす健康リスクの早期発見バイオマーカーとしての有用性を示唆するものであると考えられる.
症例報告
  • 宇賀神 卓広, 渡辺 美穂, 津戸 直樹, 藤沼 澄夫
    2017 年 31 巻 5 号 p. 718-722
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
     完全房室ブロックは,房室伝導が途絶し,心室は房室接合部以下の自動能により心拍が維持される病態である.自動能が下位に移るほどQRS幅は広く徐脈となり,失神等の脳虚血症状や息切れ等の自覚症状を来しやすく,医療機関を受診しやすい.一方,自動能が上位の場合はQRS幅が狭く,自覚症状も乏しいことがあり,まれに健診の心電図で発見される.しかし,両者とも,不可逆性で症候性の場合にはペースメーカー植込みの適応である.今回,我々は,人間ドックの心電図で発見された完全房室ブロックの1例を経験した.労作時息切れはあったが,軽微なために放置されていた.精査の結果,特発性であり,ペースメーカー植込み術により症状は消失した.大部分は徐脈による症状で受診して発見されるが,まれに健診の心電図で発見されることもあり,完全房室ブロックは健診医療従事者にとって注意すべき疾患である.また,本症例のように,他疾患のない若年成人では,症状が軽く放置されている場合もある.特に,そのような症例では,健診の心電図で指摘されても2次受診しない可能性もあり,適切な受診勧奨が望まれる.
  • 田伏 洋治, 桂川 恵, 岡田 さおり, 山本 裕子, 門田 一宣, 寺山 耕司, 増南 輝俊, 松本 淳
    2017 年 31 巻 5 号 p. 723-729
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
     十二指腸潰瘍穿孔に対する大網充填術の20年後に発生した肝動脈瘤という非常にまれな症例を報告する.症例は,51歳,男性.2008年,人間ドックの腹部超音波検査で無症状の右肝動脈瘤(サイズが13mm)が発見された.精査受診を勧めたが放置し,1年後の人間ドックを再受診した.サイズに変化なく,本人の希望もあり1年毎の経過観察の方針がとられた.その後の瘤のサイズは緩徐に増大し,6年後に21×20mmになった.治療の勧めに同意し血管内治療が施行された.2年後の再発はみられていない.国内外の文献検索では,十二指腸潰瘍穿孔に対する大網充填術後の肝動脈瘤症例の報告はみられなかった.このような症例における,瘤の自然経過や治療方針に関して興味ある症例と思われた.
短 報
  • 後山 尚久, 萩原 暢子, 内藤 美希, 黒田 美里, 藤原 祥子
    2017 年 31 巻 5 号 p. 730-732
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸がん検診における経腟超音波検査の併用に関して,受診者の意識や希望を調査,検討した.
    方法:2012年4月20日~2014年7月31日(28ヵ月)に当院で子宮がん検診を受けた受診者のうち,アンケート調査に同意され,調査票の回収ができた3,720名を対象とし,経腟超音波検査の必要性に関する意識調査を行った.
    成績:子宮がん以外の婦人科疾患および卵巣疾患の検診希望がそれぞれ60.7%(2,258/3,720),37.6%(1,397/3,720)にみられ,77.7%(2,890/3,720)が子宮頸がん検診の際の経腟超音波併用検査の実施が必要と回答した.
    結論:子宮がん検診受診者の8割弱が経腟超音波併用検診の必要性を意識していることが判明し,その実施は検診受診者の希望に沿い,メリットに繋がる可能性が示唆された.
委員会報告
feedback
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