目的:人間ドックのデータから喫煙の呼吸機能に及ぼす影響を調査し,禁煙の契機となる指標を見出す.特に,喫煙量と性差について検討する.
方法:2016年1月~12月に当院の人間ドックを受診した34,383名のうち解析可能な32,544名を対象とした.喫煙歴別に喫煙群,禁煙群,非喫煙群の3群に分け,各群の平均FEV
1%,%FEV
1,喫煙指数について男女別に比較した.また,FEV
1% 70%未満の「閉塞性障害群」の頻度と,「閉塞性障害群」となる喫煙指数の至適カットオフ値を検討した.
結果:FEV
1%は3群間すべてで有意差がみられた.%FEV
1は,女性の禁煙群と非喫煙群の間に有意差はなかったが,その他すべてで有意差がみられた.喫煙指数は喫煙群と禁煙群ともに男性の方が女性より有意に高かった.「閉塞性障害群」の喫煙指数の至適カットオフ値は全体11.33 pack years,男性12.13 pack yearsであったが,女性では予測能の高いカットオフ値を見出すことはできなかった.「閉塞性障害群」の頻度は全体1.78%であった.男性の喫煙群4.22%,禁煙群2.66%,非喫煙群1.11%,女性は1.57%,0.68%,0.59%と女性は「閉塞性障害群」の頻度が低かった.
結論:喫煙指数12 pack years以上の男性喫煙者に対しては,特にCOPDの啓蒙と,積極的な禁煙指導を行うことが重要と考えられた.女性は男性に比べて「閉塞性障害群」の頻度が低かった.これは喫煙指数が男性より低いことや,喫煙が呼吸機能に与える影響が男女で異なる可能性があることが示唆された.
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