目的:肝機能異常を示す受診者をパターン別に分類し,病態の特徴を明らかにし,実質的な特定保健指導に資する.
方法:2016年度の受診者21,730名(男性13,162名,女性8,568名)を対象とし,肝機能異常者を男女別に①群:ALT≧31 IU/LかつALT>AST,②群:AST≧31 IU/LかつAST>ALT,③群:γ-GTP≧101 IU/LかつALT・AST正常の3群に分類し,検査所見・背景・腹部超音波所見の比較検討を行った.
結果:①~③群は,それぞれ男性,30.8%,3.8%,2.5%,女性,7.5%,1.8%,0.5%でいずれも男性に高率であった.男女とも①群は②,③群に比し,飲酒頻度が有意に低率かつ脂肪肝が有意に高率で,主にMetSにおける肝病変である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を反映していると考えられた.②,③群における脂肪肝の頻度は,肝機能正常例における頻度とほぼ同等であり,②群は主にアルコール性肝障害,③群は飲酒による酵素活性の上昇を示していると考えられた.また,②,③群の男性は,喫煙や循環器疾患との関連を,③群の女性は,他の因子との関連も考慮すべきであると考えられた.③群における原因不明例には,自己免疫性肝疾患が混在している可能性があり,この場合は専門医における精査が必要と考えられた.
結論:肝機能異常例の病態を良く理解し,受診者には毎年の継続受診の指導を行うことが重要と考えられる.
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