目的:慢性腎臓病(CKD)の発症・進展予防に対して保健指導を効果的に行っていくため,尿中アルブミン値が正常(30mg/g・Cr未満)である人間ドック受診者に対して,5年後の尿中アルブミン値の変化を調べ,その関連因子について検討した.
方法:対象は,2009年および5年後の2014年に人間ドック健診を受診した9,694名中,糖尿病合併者と腎炎合併または既往者を除き,2009年に正常アルブミン尿であった8,386名(男性/女性:4,322/4,064名,平均年齢50.9±9.6歳)である.方法は,2014年の尿中アルブミン値の変化と2009年の各因子との関係を検討した.
結果:2009年に正常アルブミン尿であった受診者の423名(5.04%)が2014年に微量/顕性アルブミン尿に移行し,そのうち86.3%の例では,尿中アルブミン値が100mg/g・Cr未満であった.微量/顕性アルブミン尿に移行する関連因子は,2009年の尿アルブミン値が高値,年齢,BMI高値,臍周囲径,高血圧合併,低HDLコレステロール値,低アルブミン血症であった.生活因子では,喫煙,たんぱく質食品をよく食べるなどが移行に関連した.
考察:微量/顕性アルブミン尿に移行する関連因子のうち,年齢以外はメタボリックシンドロームに関連するものがみられ,血圧のコントロールや肥満の改善,禁煙,食生活の改善等で介入できるものが多いと考えられる.移行因子を持つ症例については,CKDへ進展する可能性も考慮して保健指導を行う必要がある.
抄録全体を表示