目的:人間ドックにおける上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)時のプロポフォール(propofol: Pf)鎮静の有用性と問題点を明らかにする.
対象と方法:対象は,Pfによる鎮静を開始した2014年4月より2019年3月までに当院の人間ドックを受診した延べ8,889人(そのうち内視鏡を受けたのは8,375人,Pf使用者が4,309人)である.当院における人間ドックでは,胃X線検査またはEGDによる胃検診を行っており,そのうちEGDでは希望があれば鎮静による検査を選択できるようになっている.鎮静希望者は血管確保を行い,PfはEGD開始直前に0.8~1.2mg/kgを急速静脈内投与(ボーラス投与)した.Pfの投与量は年齢や体重を考慮して内視鏡施行医が指示し,全例血中酸素飽和度と脈拍のモニタリングを行った.有害事象はカルテ記録より検討した.鎮静下EGDを受けた受診者の感想は満足度調査を行った600人の結果より評価し,医療スタッフの意見は直接聞き取り調査を行った.
結果:Pfによる鎮静下EGDを導入して以来,人間ドック全体の受診者は年々増加し,初年度に比べて2018年度は約1.4倍になった.EGDを選択した受診者やPf鎮静下EGDを希望した受診者もそれに並行して増加した.有害事象は呼吸抑制(3.25%),体動(0.81%),覚醒遅延(0.56%)の順に多かったが,気管支痙攣をきたした1例を除いて重篤なものはなかった.受診者の感想は「安楽である」「帰宅時に車の運転ができる」などおおむね良好であったが,医療スタッフは「仕事量が増えた」といった意見が多かった.
結論:Pfによる鎮静下EGDの導入は,受診者数の増加に寄与する可能性がある.今後の課題として,より安全な検査を行うために有害事象への注意と医療スタッフの増員が必要である.
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