一食品製造企業従業員の定期健康診断結果を解析して健康度を評価した。この企業は同一地域に二つの工場を持ち,昼夜操業をしているので,第一/第二工場別,日勤者/夜勤者別,業務別に従業員を区分して健康度を比較して,工場特性,勤務時間帯,業務の健康度への影響を検討した。
この結果,かつては,労働条件が健康に強い影響を持っと考えられていたが,肉体労働の多い食品製造業でも,現在の労働条件は健康状態に大きな影響を持たず,むしろ,社会生活の方が影響が大きい現状が浮き彫りにされた。まだ,僅かに影響が示唆されたのは日勤と夜勤の違いであり,高血圧は夜勤者に多く,夜勤が血圧を高める影響を持つことが示されたが,また,夜勤をして,日中に休息を取り,夕刻に自由な社会生活をすることの少ない夜勤者のほうが,肝障害者が少ない実態も示唆された。但し,女性では肝障害が夜勤者に多い傾向はまったく見られず,女性が肝障害を起こすような生活をしていないことも示された。糖尿病,腎障害,高脂血症および貧血には現在の労働条件はほとんど影響がないと考えられる。胸部有所見,心電図有所見,聴力障害は頻度が少ないので,労働の影響を見ることが出来なかった。
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