高齢ドライバーの踏切障害事故防止に向けた効果的な対策を検討するための知見を得ることを目的に,75歳以上の高年齢層のドライバーと低年齢層のドライバーに聞き取り調査を行った.調査では自動車運転中に踏切内に閉じ込められる映像を用い,閉じ込められたあとの行動やその行動の理由を聞き取った.調査の結果,踏切に閉じ込められた状況を正しく認識できた高年齢層は低年齢層と同程度の割合で安全上推奨される対処行動を採ることができた.また,その状況を正しく認識できなかった高年齢層に状況を説明しても,適切でない行動を採ることが多かった.つまり,適切な対処行動を採れるかどうかは踏切に閉じ込められた直後の状況認識によって異なっていた.また,対処行動を採れなかったドライバーには安全上推奨される行動を知らせることが有効であることが示唆された.そのため,関係各所と連携し啓発活動を行った.
足腰の痛みの緩和や怪我の予防,日常生活の運動機能の補助などに用いられる装具の一つとしてサポーターがある.プラスチックフレームなどを備えた硬性装具の効果については多くの先行研究があるが,布製のサポーターなどの軟性装具の装着効果の検証は,使用者の主観的な評価に留まっている場合が多い.本研究では,軟性装具である「3次元テーピング構造」の膝サポーターについて,より客観的な効果評価を行うことを目標に,装着者の動作解析,筋電計・筋硬度計による筋疲労の計測を行い,長時間歩行時の歩容への効果を検討した.その結果,当該サポーターを装着することにより,トゥクリアランスの繰り返し安定性の向上や,筋疲労の低減,膝関節の回旋の抑制による歩容の安定化などの傾向が見出され,歩行者固有の歩容を崩さずに安定化させる補助効果が認められた.