忍者研究
Online ISSN : 2433-9008
Print ISSN : 2433-8990
2020 巻, 3 号
忍者研究
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
表紙等
査読論文
  • 平山 優
    2020 年 2020 巻 3 号 p. 1-
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
    本稿は、二〇一九年に上田市で開催された国際忍者学会における記念講演「戦国時代の忍びの実像について」を論文化したものである。本稿では、まず、戦国期の忍びについて、戦国末期から近世にかけての人々がどのように認識していたかを、武家故実書の『武家名目抄』、近世初期成立の軍記である『甲陽軍鑑』での記述を検討した。そこでは、忍びとは①草、かまり、透波、乱波、突破など多様な呼称があり、②戦場では最前線に配置され、夜間の陣所警護、夜討などを任務としていた。また、夜間の敵城潜入や放火、乗っ取りなど、戦国大名にとって、正規軍同士の会戦以外の部分で、大きな活躍が期待され、③その出自はおもに、悪党(アウトロー)出身者)が多かったが、④戦国大名が課役として村町から動員した者もいた、などと記されていた。これらの記述を、戦国期の史料より検討してみると、これらの認識はほぼ正しく、忍びは、戦国大名の軍隊では「足軽」に編成され、おもに夜間の戦闘(夜討、潜入)や敵の城砦、陣所への潜入、放火、最前線での伏兵や略奪などをになっていたことを明らかにした。そして、戦国大名が彼らを登用した背景には、軍事的要請のほかに、領国内の治安維持を担わせるという意味があったことも指摘した。
  • 上田 哲也
    2020 年 2020 巻 3 号 p. 14-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
    本稿は熊本藩の忍びについて、細川家の史料を元に基礎的な研究を行う事を目的としている。熊本藩の忍びは「御忍之衆」と呼ばれており、寛永五年(1628)頃から活動していた事が諸史料から明らかになった。忍びの頭領を務めていたのは吉田助右衛門で、「御忍之衆」の複数の名簿で筆頭に名前が記されている。  忍具の発注に関する文書は吉田助右衛門によって記されたものだが、忍者関係の史料として非常に価値があるものだと考えられる。この文書には当時実際に使われていた忍具の名称が記されており、いくつかの忍具は『万川集海』や『忍秘伝』のものと名称が一致している事が分かった。またこの文書からは、これらの忍具を鍛冶屋が製作していた事も判明している。 「御忍之衆」は「島原の乱」に参加しており、原城への偵察活動や攻撃を実施している。特筆す べきは「御忍之衆」の一員が、天草四郎の最期に関わっていた事である。
  • 田村 梨紗
    2020 年 2020 巻 3 号 p. 25-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
    史実では徳川家康の家臣である服部半蔵は、今日では代表的な忍者として知られ、多くの創作作品で活躍している。半蔵は、猿飛佐助や霧隠才蔵の活躍した大正時代の第一次忍者ブームでは出番はなかった。昭和30 年代に、小説をはじめマンガやアニメ、テレビドラマ、映画や演劇作品などに忍者として描かれ、定着した。  「忍者・服部半蔵」の生成過程で重要な作品に、柴田錬三郎『赤い影法師』(昭和35)、山田風太郎の短編「忍者服部半蔵」(昭和39)がある。前者は服部半蔵を、主人公と深く関わり物語を貫く中心人物として描いた。後者は、「服部半蔵」とは特定の人物を指すのではなく、継承される名前であることを示した作品である。服部半蔵の有名無実さを的確に表現し、創作世界の「忍者・服部半蔵」の可能性を広げた。  「忍者・服部半蔵」の空虚な本質に、各作家が好みのイメージを代入し、独自な創作を加えたことによって、多様な表象が生まれたのである。
  • 西村 誠
    2020 年 2020 巻 3 号 p. 77-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
    忍者の精神統一のひとつである息長と簡易マインドフルネス訓練を比較し、一般成人や特定の臨床群でも習得可能な息長の実施手続きを検討した。息長は呼吸だけでなく、いくつかの注意集中スキルを組み合わせた複合的な精神統一方法と考えられた。特徴的な手続きとして、極端な長息、音を出さない呼吸、「気」を仮定した全身への注意、森羅万象と一体となる視覚イメージの利用が挙げられた。簡易マインドフルネス訓練から応用できるものとして、「思考や感情に心がさまよったら呼吸や身体の感覚に注意を戻す」といったマインドフルネスの教示、オーディオ録音の利用が挙げられた。身体操作としての息長呼吸に簡易マインドフルネス訓練の心的活動の教示を付け加えることで、効率的に「不動心」を身につけられる可能性が示唆された。息長の緒手続きにマインドフルネスの教示を加えた「忍者マインドフルネス」を試論した。
報告
事務局
裏表紙等
feedback
Top