地方分権改革から30年。権限移譲は進んだが、国の関与はなお根強い。NIRAフォーラム2025「国と地方の役割分担のあり方」では、人口減少・災害・デジタル化という環境変化を前提に、国と地域の機能をどう再設計するかを議論した。地方自治の目的は、住民のウェルビーイングの向上であり、そのためには、国と地方の財政責任を明確にし、自治体が自主性を発揮できる制度が必要である。そこで、NIRAの研究プロジェクトは、国は「標準的サービス」の提供と財源に責任をもち、自治体が標準を超える上乗せ・横出しについての限定的な財政責任を負うという制度設計を提案した。しかし、「標準的サービス」の線引きの難しさや行政サービスの非効率化など、実務面での課題も指摘され、今後の検討が求められる。人口減少に直面する地方自治体は、広域連携などによる行政サービスの再設計が不可欠である。例えば、地元資本を活用した官民連携によって持続的な収益モデルの構築、外国人の受け入れや地域人材の育成、「まちづくり会社」の活用、モバイル診療や診療報酬の地域差設定などによる医療サービスの地域間格差是正、そして、行政のデジタル化による効率化が重要である。今回の議論が示したのは、地方創生に唯一の解はないということだ。国と地方の役割を再設計し、多様な主体が自由にアイデアを出せる土壌とその財源を整え、地域が主体性と説明責任の下で試行錯誤できる制度に移行する。それこそが、行政・民間・住民が力を合わせ、地域の特色を生かした持続可能な社会を築くための出発点である。
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